ショコラ伯爵の悩ましい日常

あさひてまり

文字の大きさ
上 下
14 / 65

妖精に助けられる ※ユーナリア

しおりを挟む
「お嬢様!」

混乱する私の手を引っ掴むと、ディアスが走り出した。

「賊です!馬を逃がして我々の脚を断ったんです!」

真っ青になる私に説明すると、後ろから男達の声が聞こえた。

「チッ!勘のいいジジイだぜ!
しかしラッキーだな!食い物狩りに来たら別の獲物がいやがった!!」

そこからはもう、必死だった。
走って走ってーーー。
ディアスが引っ張ってくれてるけど、私の足は限界。口の中は血の味がする。

そしてとうとう囲まれてしまった。
ディアスは私を守るために怪我をしてしまった。
あぁーー何もかも私のせいだわ!
賊に髪を引っ張られて生きた心地がしない。
誰かたすけてーー!!神様ーー!!


「それはいただけないな。女性には優しく接したまえ。」


場違いな程の貴族然とした物言いが森に響いたのは、その時だった。

目の前に現れた青年は、それこそ「貴族のお手本」みたいに優雅な方。
仕立ての良いお洋服にスッと伸びた背筋、指先まで神経の通った所作は、どう見ても上位貴族のそれーー。
そして何より、あまりの顔面の破壊力に驚嘆したわ。
私の人生でこれ程までに美しい方を見たことがなかったの。

淡雪のように白く滑らかな肌にエメラルドの瞳。
小さな鼻梁と少し薄い艶のある唇。
完璧な配置のそれらを、少し癖のある柔らかそうな髪が包んでいる。
神か妖精だと言われても、納得してしまうような美しさ。
その美麗さにも関わらず、性別が男性だとすぐに分かったのは漂うオーラかしら。
儚さと凛々しさって同居できるのね…。

なんて思ってる間に助けられてたわ。
一瞬のことすぎて何が起きたのか分からなかった…。
ただ、私達を助けてくれた麗人が大切そうに手元の何かを見つめているのが印象的だったわ。その光景を見てディアスが呟いた、
「ショコラ伯爵」と言う言葉も。
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

そばにいてほしい。

15
BL
僕の恋人には、幼馴染がいる。 そんな幼馴染が彼はよっぽど大切らしい。 ──だけど、今日だけは僕のそばにいて欲しかった。 幼馴染を優先する攻め×口に出せない受け 安心してください、ハピエンです。

いくら気に入っているとしても、人はモノに恋心を抱かない

もにゃじろう
BL
一度オナホ認定されてしまった俺が、恋人に昇進できる可能性はあるか、その答えはノーだ。

帰宅

pAp1Ko
BL
遊んでばかりいた養子の長男と実子の双子の次男たち。 双子を庇い、拐われた長男のその後のおはなし。 書きたいところだけ書いた。作者が読みたいだけです。

『これで最後だから』と、抱きしめた腕の中で泣いていた

和泉奏
BL
「…俺も、愛しています」と返した従者の表情は、泣きそうなのに綺麗で。 皇太子×従者

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

シャルルは死んだ

ふじの
BL
地方都市で理髪店を営むジルには、秘密がある。実はかつてはシャルルという名前で、傲慢な貴族だったのだ。しかし婚約者であった第二王子のファビアン殿下に嫌われていると知り、身を引いて王都を四年前に去っていた。そんなある日、店の買い出しで出かけた先でファビアン殿下と再会し──。

愛人少年は王に寵愛される

時枝蓮夜
BL
女性なら、三年夫婦の生活がなければ白い結婚として離縁ができる。 僕には三年待っても、白い結婚は訪れない。この国では、王の愛人は男と定められており、白い結婚であっても離婚は認められていないためだ。 初めから要らぬ子供を増やさないために、男を愛人にと定められているのだ。子ができなくて当然なのだから、離婚を論じるられる事もなかった。 そして若い間に抱き潰されたあと、修道院に幽閉されて一生を終える。 僕はもうすぐ王の愛人に召し出され、2年になる。夜のお召もあるが、ただ抱きしめられて眠るだけのお召だ。 そんな生活に変化があったのは、僕に遅い精通があってからだった。

悪役令息の七日間

リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。 気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】

処理中です...