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子供には「薬」で誤魔化せ ※シエラ

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不死鳥の幹部でもある叔父上は、軍医と言えど相当に鍛えている。
そのガッシリとした大きな身体は父上を思い起こさせて、僕は身を竦めた。
原因はおそらく…と言うか確実にチョコレートだと思う。
小瓶の中のチョコを口に含んだら頭の中に声が響いて…。
僕のじゃない記憶が一気に雪崩れ込んできた。
「リョウ」として生きた27年間の記憶。
人の顔や土地の記憶、自分が言った言葉や人から言われた言葉。
いい思い出、忘れたい思い出、後悔したこと、やりたかったこと…。
全ての記憶が映像になって頭の中でひしめき合う。
それはまるで何百台ものテレビに囲まれてるような感覚だった。

目が痛い!煩い!!

処理しきれなくなった情報量に悲鳴を上げた僕の意識はそこで途切れた。
そして気が付いた時には、ベッドの上。

つまり、これはあれなのかな?
ラノベとかで良くある前世の記憶的な?
黙ってしまった僕に、叔父上がスッと手を差し出す。
その大きな掌にあったのは、例の小瓶…。

「あっ。」

「倒れた君の側に落ちていたのをマーヤが見付けたんだ。見覚えはあるかい?」

どうしよう。僕があれを飲んだせいで、持って来たトッドが怒られたら…。
もしかしたら、床に落としたメイドが叱られるかもしれない。
黙ってしまった僕に、叔父上が言う。

「シエラ、私は君を叱りつけるために聞いてるんじゃない。医者として、より詳しく患者の状態を知っておきたいんだ。
その方が、何かあった時に対応できるだろう。」

叔父上の目は、患者を診る医者のそれだった。
自分の仕事に責任と誇りを持つ目。
僕の中のリョウの記憶が、信用しろと言っている。

「叔父上、これからお話しすることで僕以外を叱らないと約束してくださいますか?」

「場合によるが、シエラがそう言うのなら悪意のある人間は絡んでないんだろう?」

僕は頷くと、事のあらましを話した。
父上に送られた小瓶を見たことがあった事。
それを偶然見付けて、好奇心に負けて口にしてしまった事。
誰が贈ったかや、何処にあったかは敢えて言わなかった。
多分、叔父上なら大方予想できてしまっただろうけど。

「なるほど。お前の意識が無い間に中身を調べたんだが、これは媚……ゴホン。いや、薬として扱われる物だ。子供には強すぎる。」

途中、言葉を濁しながらも叔父上は続ける。

「好奇心は悪いことではないよ。だが、時として危険な場合もあることを覚えておきなさい。これが万が一毒物だったら、お前は死んでいただろう。」

そう言われて、我ながらなんて軽率だったんだろうと思う。

「はい。ごめんなさい、叔父上。」

ションボリとする僕に、叔父上は微笑んだ。
父上と顔も背格好も似てるけど、叔父上の方が表情が柔和だし口調も穏やかだ。

「反省したなら煩くは言わない。今日は1日良く休みなさい。」

お礼を言う僕にヒラリと手を振って叔父上は部屋を出て行った。
入れ替わりで、お茶を淹れて戻って来たマーヤが僕の世話を焼く。

「デラ様より、良く休ませるようにと言付かりましたよ。さ、坊ちゃん。お昼ご飯まで少しお眠り下さいな。」

温かいお茶でほっこりした僕は、あっと言う間に眠りに落ちていったーーー。
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