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おはよう俺の記憶 ※シエラ

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気が付くと辺りが明るかった。
鳥がチュンチュン鳴いてる声もする。
朝かぁ…まだ眠いなぁ。
あー、でも今日は棚卸しだから早めに行かないと。
昨日雨だったからチャリ濡れてるだろうな。
今日は電車で行くか…。

「坊ちゃん?……お目覚めですか⁉︎」

おいおい、誰だ俺を坊ちゃんなんて呼ぶのは。
俺もう27歳よ⁉︎

「旦那様!坊ちゃんの意識が…!」

てか一人暮らしの部屋から女の人の声するんですが…。
あ、やべぇ!ひょっとして俺、昨日テレビつけっぱで寝た⁉︎

「電気代…!!」

叫んで起き上がった俺は混乱する。
目の前には、大人の女性が1人と男性が3人。
え、誰⁉︎
全員が俺の顔を覗き込んでいて、心なしか顔色が悪い気がする。
てか女性は赤毛の碧眼だし、男3人に至っては緑髪なんですけどぉ!!
何これ、俺まだ夢見てんの??

「シエラ…?」

呆けたまま何も言わない俺に、一番年長の男の人が小さな声で呼びかけてきた。
うっわぁ!デケェ人だな!
しかも筋肉やば!海外アスリートかよ!

「シエラ!」

もう一度、今度は大きな声で呼びかけられた時、頭の中でパチンって音がした。
俺は…違うな。僕は、シエラだ。

「お、お父、様?」

「……そうだ。身体はどうだ?」

一瞬驚いたような顔をした父上が僕の肩に手を置く。
僕が見回すと、部屋には2人の兄上達とメイドのマーヤ。

「あの…僕…?」

「昨日応接室でお倒れになっている所を旦那様が発見なさったんですよ…。
あぁ、良かった、坊ちゃん…。」

涙目のマーヤが説明してくれる。
父上と兄上達はいつも通り無表情だけど、おそらく心配してくれたんだろう。
じゃなければ、こうして僕の部屋に集まってくれてないだろうから。

「デラを呼んでくれ。」

父上の弟であり不死鳥の軍医でもあるデラ叔父上は、僕の部屋に入るなりホッと息を吐いた。

「あぁ、良かった。顔色はまだ少し悪いけど大丈夫そうだね。」

僕の手首で脈を取ったり、下瞼を引っ張って色を診たりしながら続ける。

「シエラ、君は半日も気を失ってたんだよ。…舌を出してご覧。うん、喉も大丈夫だ。…倒れた時に打ってできたコブはあるけど、1週間もすれば治るからね。」

デラ叔父上が優しく触った所に手をやると、確かに頭の後ろにコブができていた。
地味に痛い…。

「兄上、もう大丈夫そうですよ。私が暫く居るようにするので兄上は仕事へ行って下さい。お前達2人もね。」

父上は勿論、兄上達も不死鳥の団員だから今は鍛錬や領の見回りに出かける時間だ。
僕のせいで仕事に行けないなんて迷惑をかけてしまった。

「父上、兄上。ご迷惑をかけてすみません。僕は大丈夫なのでお仕事に行って下さい。」

「何かあったら直ぐにお知らせします。」

僕と叔父上が言うと、父上は頷いて部屋を出て行った。
最後にチラリとこちらを見てたんだけど、兄上2人も全く同じ動きをしてたから密かに笑いそうになった。本当に似た物親子だな。

「さて。」

マーヤは僕のためにお茶を淹れに行ってくれてる。今部屋には僕と叔父上だけだ。

「シエラ、どうしてこうなったか原因に心当たりはあるかな?」
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