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衝撃の再会 ※シエラ
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トッドが来た日から半年がたった。
僕は相変わらず鍛錬すらさせて貰えてないけど、前程気にならなくなった。
元々身体を動かすこと自体があまり好きではないし、それなら本を読んだり知識を増やす方がずっと楽しい。
そのせいか、最近ますます父上や兄上と距離ができてる気がするけど、もうしょうがないよね。
寂しくないかと言われれば嘘になるけど…。
こんな時、母上が生きてたら違ったのかなぁなんて思ってしまう。
その日も書庫で本を選んだ僕は、最近お気に入りの場所ーー応接室へそれを運んだ。
この部屋、めったに使わない割に日当たりが良くて暖かいんだよね。
厨房で淹れてもらったリョクチャをお供に、僕は読書を始める。
そうすると時間が経つのはあっと言う間だ。
ハッとした時には夕暮れ時になっていた。
いけない。そろそろ団の鍛錬が終わって父上が帰って来る。
応接室には来ないだろうけど、もし見つかったら勝手に使ったことを叱られるかもしれない。
慌てた僕は手にしていた本を取り落としてしまった。
ローテーブルの下に落ちた本を拾うため床に膝をつけて潜り込んだ時、それを見つけた。
ソファの下の細い隙間に何かが光っている。
気になった僕は辺りを見回して、展示用として壁にかけられている装飾された模擬刀を手にした。
細身の剣は思いの他すんなりとソファの奥まで入る。
光る何かがこっちに来るように剣を滑らせると、アッサリと成功した。
でてきた物を見て僕は、やっぱり、と思う。
それは半年前、トッドが父上に渡したお土産の小瓶だった。
キラキラと輝く金色が綺麗で、埃もかぶっていない。
おそらく、あの時テーブルに所狭しと並べられていたお土産や注文品を片付けたメイドが落としたんだろう。
このソファ、めちゃめちゃ重くて年に1回しか動かさないから誰も気付かなかったんだろうな。
よくよく観察すると、栓の部分が蝋付してある。全くの新品未開封。
僕は逡巡したものの、好奇心の方が勝ってゆっくりと栓を開けた。
中には何か液体の様な物が入っているみたいだ。瓶が括れた形状なので底の方に溜まった液体が良く見えない。
僕は瓶を傾けて小指にそれをつけてみた。
黒っぽいトロリとしたそれは、なんだかスパイシーな香りがする。
「どこかで嗅いだ匂いだ…。」
僕は思わず独りごちた。
記憶の奥底にあるような気がするのに思い出せない。
だけど、絶対に知ってる。
僕は恐る恐る小指の先を舐めてみけど、少量すぎて良く分からない。
今度は量を増やそうと人差し指に出して舐めてみる。
「にっっっがっっっ!!!」
悶絶するような苦さだ。
口の中が渋くて、カップに残っていたリョクチャを急いで流し込む。
これは薬か何かだろうか?
『やべぇ!激苦っすね!ーーって元々はこんな薬みたいなんですか⁉︎』
ふいに頭の中で声がした。
なんだろう、これ?
『これがーーになるなんて信じられないですよ!!』
何なんだ?これが何になるって言うんだ?
突然の頭の中の声に混乱しつつも、この液体の正体が分かりそうな期待に胸が高鳴る。
もっと飲めば、きっと…!!
興奮した僕は、瓶に直接口を付けてゴクリと飲んだ。
『いくらーー好きでも飲めないっすよね!』
だから、何なんだよ!教えてくれ!
『チョコって本当、奥が深いですねぇ。』
チョコ!!!
そうだ!!これはチョコレートだ!!!!
そう思った瞬間、頭の中に信じられない量の映像や音が流れ込んでくる。
情報の処理が追い付かなくてパンクしそうだ。
「情報リテラシー!!!!」
謎の言葉を叫んで僕は意識を失ったのだった。
僕は相変わらず鍛錬すらさせて貰えてないけど、前程気にならなくなった。
元々身体を動かすこと自体があまり好きではないし、それなら本を読んだり知識を増やす方がずっと楽しい。
そのせいか、最近ますます父上や兄上と距離ができてる気がするけど、もうしょうがないよね。
寂しくないかと言われれば嘘になるけど…。
こんな時、母上が生きてたら違ったのかなぁなんて思ってしまう。
その日も書庫で本を選んだ僕は、最近お気に入りの場所ーー応接室へそれを運んだ。
この部屋、めったに使わない割に日当たりが良くて暖かいんだよね。
厨房で淹れてもらったリョクチャをお供に、僕は読書を始める。
そうすると時間が経つのはあっと言う間だ。
ハッとした時には夕暮れ時になっていた。
いけない。そろそろ団の鍛錬が終わって父上が帰って来る。
応接室には来ないだろうけど、もし見つかったら勝手に使ったことを叱られるかもしれない。
慌てた僕は手にしていた本を取り落としてしまった。
ローテーブルの下に落ちた本を拾うため床に膝をつけて潜り込んだ時、それを見つけた。
ソファの下の細い隙間に何かが光っている。
気になった僕は辺りを見回して、展示用として壁にかけられている装飾された模擬刀を手にした。
細身の剣は思いの他すんなりとソファの奥まで入る。
光る何かがこっちに来るように剣を滑らせると、アッサリと成功した。
でてきた物を見て僕は、やっぱり、と思う。
それは半年前、トッドが父上に渡したお土産の小瓶だった。
キラキラと輝く金色が綺麗で、埃もかぶっていない。
おそらく、あの時テーブルに所狭しと並べられていたお土産や注文品を片付けたメイドが落としたんだろう。
このソファ、めちゃめちゃ重くて年に1回しか動かさないから誰も気付かなかったんだろうな。
よくよく観察すると、栓の部分が蝋付してある。全くの新品未開封。
僕は逡巡したものの、好奇心の方が勝ってゆっくりと栓を開けた。
中には何か液体の様な物が入っているみたいだ。瓶が括れた形状なので底の方に溜まった液体が良く見えない。
僕は瓶を傾けて小指にそれをつけてみた。
黒っぽいトロリとしたそれは、なんだかスパイシーな香りがする。
「どこかで嗅いだ匂いだ…。」
僕は思わず独りごちた。
記憶の奥底にあるような気がするのに思い出せない。
だけど、絶対に知ってる。
僕は恐る恐る小指の先を舐めてみけど、少量すぎて良く分からない。
今度は量を増やそうと人差し指に出して舐めてみる。
「にっっっがっっっ!!!」
悶絶するような苦さだ。
口の中が渋くて、カップに残っていたリョクチャを急いで流し込む。
これは薬か何かだろうか?
『やべぇ!激苦っすね!ーーって元々はこんな薬みたいなんですか⁉︎』
ふいに頭の中で声がした。
なんだろう、これ?
『これがーーになるなんて信じられないですよ!!』
何なんだ?これが何になるって言うんだ?
突然の頭の中の声に混乱しつつも、この液体の正体が分かりそうな期待に胸が高鳴る。
もっと飲めば、きっと…!!
興奮した僕は、瓶に直接口を付けてゴクリと飲んだ。
『いくらーー好きでも飲めないっすよね!』
だから、何なんだよ!教えてくれ!
『チョコって本当、奥が深いですねぇ。』
チョコ!!!
そうだ!!これはチョコレートだ!!!!
そう思った瞬間、頭の中に信じられない量の映像や音が流れ込んでくる。
情報の処理が追い付かなくてパンクしそうだ。
「情報リテラシー!!!!」
謎の言葉を叫んで僕は意識を失ったのだった。
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