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解決編
59.
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(side萱島晴人)
思わぬ言葉に息を呑んだ。
蓮が、そんなに前から俺の事を好きだった…?
目を丸くする俺に苦笑しながら蓮が続ける。
「俺には幼少期の記憶がかなりハッキリ残ってる。だけど、最初の方は殆ど無に等しい。」
記憶があるのに『無』ってどういう事だろう?
「俺は誰にも興味を持てなかったから。人と話す必要も無いと思ってたし、家族すらどうでも良かった。世界には自分独りで、それを当たり前だと思ってたんだ。」
翔君や美優さんから少し聞いた事はあったけど、本人の口から聞くのは初めてだった。
幼い頃の蓮が人とコミュニケーションを取る意思が無かったって、本当だったんだ。
「だけど、何故か晴の事だけは意識してた。」
静かな目が真っすぐに俺を射抜く。
「一緒にフランスに行った時の事も良く覚えてる。晴は俺に『話したくないなら話さなくていい』って言った。親達がどうにか俺を喋らせようとしてる最中に。それで『蓮と話してみたいけど』って笑ったんだ。俺はそれを聞いて、初めて言葉を発した。『晴』って、呼んだんだ。」
お前は寝てたから知らねぇだろうけど、と言って笑う蓮に胸がぎゅっとなる。
幼い頃、一緒にフランスに行った記憶は朧気だ。
俺は蓮みたいに記憶力が良くないから、自分が言った言葉すらも覚えてなくて。
だけど、蓮と話したいと思ってたのは確かだと思う。
沢山残ってる写真の中で、俺はいつも蓮の隣で蓮に視線を向けてたから。
そんな蓮が初めて発した言葉が、俺の名前だったなんて…。
「それから、晴ならどうするかって考えるようになった。晴の考えてる事を理解したくて、周りとも話すようになって。いつの間にか晴を喜ばせたいと思うようにすらなった。」
幼稚園の頃、泣くと直ぐに蓮と遥が駆けつけてくれた。
今にして思うと、別のクラスだった(蓮に至っては確か園長室にいたんじゃなかったかな)2人が来てくれるって、どんだけ甘やかされてんのって感じだけど。
俺はそれで安心して、離れないで欲しくて態とベソベソしてる時すらあって。
「俺にとって晴だけは、最初から特別だったんだ。晴がいなかったら、俺は自分が孤独な事にすら気付いて無かった。」
その言葉にハッとした。
そうだ、誰にも興味が持てないって事は世界に自分が独りきりって事で。
ふと、色の無い世界で立ち尽くす蓮の姿が脳裏を過る。
蓮が目を覚ます前に見た不思議な夢。
内容は良く覚えてないけど、何故か蓮のその姿だけが記憶に焼き付いていて。
幼い蓮はあんな風にたった独りきりで生きてたんだ…。
それはどんなに寂しかった事だろう。
「蓮…」
思わず隣に座る蓮の手を握ると、逆に大きな掌に包まれる。
「大丈夫だからそんな顔すんな。俺はお前に『楽しい』も『嬉しい』も教えてもらった。自分が孤独だった事に気付いた時にはもう、隣には晴がいた。」
だから辛い事なんかなかったと言いながら、蓮がそっと俺の頭を撫でる。
「俺の世界は晴を中心に回ってた。
だけど、まだ自分の心に疎かった俺はお前に対する気持ちを親愛だと思ってたんだ。」
世界の中心が、俺?
戸惑って見た蓮の真剣な瞳が、それが誇張でも何でもない事を語ってる。
子供の頃の蓮にとって、俺はそんなに大きな存在だったって事?
「お前を守る為に手を組むようになった遥は気付いてたみたいだけどな。『晴に対する私の好きとアンタの好きは違う』とか何とか言ってたから。
自覚してないだけで、俺はとっくにお前を恋愛的な意味で好きになってた。」
それってさ…
「それって、生まれてからずっと俺の事しか見てなかったみたいに聞こえる…あっ…!」
動揺のあまり思わず心の声が漏れてた。
ヤバイ、自分でこんな事言うの超恥ずかしい…!
てかそこまでは言ってなかったじゃんね!?
自意識過剰で引かれたかもとチラリと蓮を見ると、呆れたような表情で。
「だから、そうだって言ってんだろ。俺は晴以外好きになった事ないし、ずっと晴だけ見て来た。」
キッパリと言われてジワジワと顔が熱くなる。
思い違いじゃなくて、蓮は本当にずっと俺の事が好きだったんだ。
「小1の時、上級生に絡まれて学校行けなくなっただろ?あの時から、お前を苦しめるものを何もかも排除したいと思うようになった。むしろ最初から近付けなければいいんだって、周りを牽制するようにもなって。」
「ハイジョ?ケンセイ?」
不穏な単語が聞こえて、茹だった頭がちょっと冷静になる。
蓮は俺の反応なんて無かったみたいに淡々と話してるけど、その目の奥が翳って。
「晴が俺のせいで怪我して、意識無くして。
目を覚ますまでの間、俺には絶望しかなかった。
脳震盪だって理解してるのに頭ん中パニックで…もし晴が死んだら俺も死のうって、そればっかり考えてた。」
「えぇっ!?」
あの時、目を覚ました俺の第一声は『え、誰か死んだの?』だった。
だって、それくらい蓮が酷い顔をしてたから。
まさか、本当にそんな事考えてたなんて露ほども知らずに。
「その時気付いたんだ。俺は晴がいないと生きていけないんだって。」
「そんな事…」
言わないでって、自分の命をもっと大切にして欲しいと言いかけて、続ける事ができなかった。
静かな口調で語られるその言葉が比喩でも大袈裟でもない事が、痛い程伝わったから。
「自覚してからは、お前が自分の目の届かない所にいるのすら不安だった。
霊泉家の誘いを受けようとしたのは、権力があればお前を囲って守れると思ったからだ。」
結局、それも晴が嫌がると思ってやめたと言う蓮。
「俺の物事の判断基準は全部、自分が晴と一緒にいられるかどうかだった。」
だから、と続ける蓮の声が暗くなる。
「晴が中学受験するように仕向けた。
俺は霊泉家対策で帝詠学院に行くのが決まってたから、離れるなんて有り得ねぇと思って。」
蓮と遥は同じ学校で、自分だけが別。
あまり会えなくなるかもしれないと言われて、当時ショックを受けた事を思い出す。
「俺の都合で晴の未来を変えた事に対して、遥は
いい顔しなかったけどな。俺に対する当たりがキツくなった。
だけど、俺は晴と離れずにいられるって幸福に酔って全部聞き流してて。」
そう言えば、入学してから蓮と遥の言い合いが多くなってた気がしなくもない。
「クラスも部活も同じで、登下校も毎日一緒で。
…それが俺の望みだった。
俺が晴を守って、晴は俺を頼って。
友達なんかいなくていいから、ずっと2人だけでいたかった。」
遥が言ってた『友達も作らせない気だった』って話は、こう言う事だったのか。
「だけど、ちょっと目を離した隙に晴は剣道部に入って。俺は離れてる間に他の人間の目に留まるのが嫌で…晴が前髪で顔隠してるのを、内心で喜んでたんだ。」
確かに、見た目の事で絡まれた苦い経験から、当時の俺は前髪で目を隠すようにしてた。
だけどさ、別に顔が出てても蓮が心配するような事は無かったと思うよ?
そんな疑問が顔に出てたのか、蓮が溜息を吐いた。
「晴は鈍いから。部活の時前髪アップにしたお前が噂になって、上級生が見に来たりしてたの気付いてねぇだろ。」
「えっ?噂?」
「…お前が美人で可愛いって気付いた野郎共が、沸いて出てきやがったんだよ!」
「な、何を言ってるの?」
ってか急に誉めないで欲しい、お世辞でも照れるから。
「あ"~、ったく!無自覚だからタチが悪ぃんだよ!」
苛ついたように髪をかき上げた蓮が、苦々しく続ける。
「とにかく、晴にチョッカイ出そうとする奴等がいたって事!勿論、お前の目に触れる前に潰したけどな。」
つまり、また絡まれそうになってたのを蓮が事前にやめさせてくれてたって事?
それは初耳だ。
「蓮、ありがと。」
お礼を言うと、蓮が虚を突かれたみたいな顔をする。
「礼を言われる資格なんて、俺には無い。
…俺はお前が顔隠してる理由知ってるのに、それを喜んでたんだぜ?最低だろ。」
そう言う蓮の声音には自嘲するような響きがあった。
「蓮…?」
戸惑う俺を他所に、蓮の話は続いていく。
「俺は周りの目がこれ以上晴に向くのが嫌で、焦ってて。そんな時に遥から留学の話をされた。クリスマスに俺の家に集まった時だから、俺は晴より先に聞いてたんだ。」
え、それも俺は暫く秘密にされてたの?
「誤解しないで欲しいんだけど、霊泉家の事もあるから俺…って言うか俺の家には先に報告する必要があったんだよ。」
あ、そう言う事か。
「正直、遥がいなくなる事は俺にとってどうでも良かった。むしろ『早く行け』ぐらいに思ってたんだ。アイツはずっと、俺が晴を独占するのを阻止してたから。」
舌打ちでもしそうなこの表情を見たら、遥はきっと怒るだろうな。
「だけど遥は、自分がいなくなった後の俺の行動を読み切ってた。俺が晴を囲い込もうとするって。
まあ、実際その通りだったんだけど。俺は高校で特進クラスに行くも無かったし、大学だって晴に合わせるつもりでいたから。」
「えっ…」
またもや重大な事実に息を呑むと、蓮が僅かに口許を歪めた。
どこか苦しそうなその仕草に胸が騒ぐ。
さっきから感じてるこの違和感は何だろう…。
「遥は俺が晴の人生の妨げになるって危惧して、自分が日本にいる間に少しでも俺を遠ざけようとしてた。その思惑は成功して、晴は俺以外の人間と過ごす時間が増えていって。俺はそれが許せなくて、焦って…。晴が未来の話をした時、制御できなくなった。」
あの日の事を言ってるって、直ぐに分かった。
遥から留学の話をされた帰り道。
神社の桜の木の下で、俺はこう言ったんだ。
『俺の彼女に、幼馴染ですって蓮のこと紹介してやるから楽しみにしてろよ!』って。
蓮はそれに対して『聞きたく無い』って言って、俺にキスした。
あの時は混乱するばっかりだったけど、今にして思うと相当無神経な発言だったと思う。
だって、蓮はずっと俺の事が好きだったのに。
想い続けてる好きな相手から、自分じゃない未来の恋人の話とかされたら…。
気持ちに気付いてなかったとは言え、蓮を酷く傷付けたのは確かだ。
「ごめん、蓮!俺…」
「お前は何も悪くない。同意も無くキスするとか本当にどうかしてた。晴に全く意識されてないって分かって、どうにかして俺を見て欲しくて、そればっかりだった。告白する勇気も無い癖に…マジで馬鹿だよな。嫌な思いさせて悪かった。」
頭を下げようとするのを慌てて止める。
「あんなの、口効かなくなって当然…ってか絶縁されなかったのが奇跡だって思ってる。
俺の様子がおかしい事に気付いた遥に、散々説教されてさ。その時、翔の事が好きだって打ち明けられたんだ。…俺は初めて遥を凄いと思った。」
俺とは全然違ったから、と言う蓮。
「遥はさ、翔には美優がいるって知ってて、それで翔の幸せを願いながら一途に想い続けてた。
そこで漸く、自分勝手に思いをぶつけるだけじゃダメなんだって反省して。
晴と距離を開けるって遥の提案に乗るついでに、遥に協力する事になった。
って言っても、翔が実家に帰る日を教えたりとかそんな程度だけど。
その代わり、俺が暴走しそうになった時は遥が止めてくれた。修学旅行とか、お前に話しかけられない事がキツくて最悪だったけど、何とか持ち堪えたられたのはアイツのお陰だと思う。」
そして、ゆっくりと言葉を紡ぐ。
「あの頃から俺にとって遥は『目障りな幼馴染』から『同志』になったんだ。」
俺が蓮を避けてる間、そんな風に2人の関係は変わってたんだ…。
「京都から帰って『桜守り』のやりとりをしてたのも、その協力関係からくるものだった。
遥に『本人にバレないように翔に渡して欲しい』って頼まれて。」
「うん、遥から聞いた…」
そう答えると、蓮が一拍おいて尋ねる。
「…晴は、あの時あの場所にいたんだよな?」
偶然とは言え盗み聞きしてた気まずさから、蓮の目を見れずに頷く。
「だよな。あー、クソ!何で気付かなかったのか…」
「ううん、あんな所誰も来ると思わないでしょ…。
って言うか、声で蓮と遥だって分かったのに覗いたのは俺だし…」
激しい後悔が滲む声に慌てて言葉をつなげる横に振った。
「いや、晴は悪くない。幼馴染が自分を置いて2人で何かしてるの知ったら普通に気になるだろ。
俺達が注意を怠ったの結果だ。よりによって1番誤解させたくない相手に目撃されるなんて…。しかも、事故の瞬間まで。」
あのキスが事故だったのは遥から聞いてもう分かってるけど、やっぱりちょっとドキリとする。
顔には出さなかったつもりだけど、直ぐに蓮に手を握られた。
「あの頃は、遥が留学したら霊泉家とのパワーバランスがどうなるか心配してて。遥と恋人だって印象付けるのが何よりいいと思ったんだ。万が一にも奴等の目が晴に目が向かないようにしたかった。」
俺の手を包む長い指先が、少しだけ震える。
「秘密にしてたのは、ターゲットになってない晴は知らない方が安全だと判断したから。それと、怖がらせたくなかったのもある。」
「うん、蓮父も翔君も遥もそう言ってたし、そこは俺の為を思ってくれたんだって納得してる。」
子供の頃の話はね、と心の中で付け足したけど。
とにかく今は蓮の話が聞きたかった。
俺の返事にホッと息を吐く気配があって、蓮は続ける。
「遥の気持ちの話は、俺がどうこう言う問題じゃねぇから黙ってた。誰に言うのも言わねぇのもアイツの自由だって思って。」
うん、確かにそれもそう。
「だけど…それでお前に嫌な思いさせるなら、遥に助言なり何なりするべきだったと思う。」
後悔を滲ませながら、それでも蓮は俺の目を真っ直ぐに見た。
「あんなシーン見せて、嫌な思いさせてごめんな。それでも、信じて欲しい。俺はずっと晴しか好きじゃない。遥との事は完全な事故だ。」
分かってたけど、蓮の口からそれを聞けて力が抜ける。
知らずに強ばってた背中を優しく撫でられて、支えられて。
「相川に言われるまで、ずっと記憶から消してた。
それ位最悪で…マジで晴には悪いと思ってるけどファーストキスがお前だった事を神に感謝した。」
因みに蓮が言うには、遥のファーストキス(幼少期)も翔君らしい。
「お互い好きな相手との初めてがあったから、何とか立ち直れた。何て言うか…近いのは母親とキスするみたいな感覚。」
母さんとキス…
「うげっ」
いや、母さんの事は好きだけど!
冗談でほっぺチューされそうになるのだって本気でキツイ…。
「それ程の苦行だったとは…俺はそれ見て何であんな勘違いを…」
ブツブツ言ってると、蓮が苦笑した。
「いや、それは本当にな。どうせ見ちまったなら最後の罵り合いまでいて欲しかったわ。」
あれを見てれば俺達にそんな空気1ミリも無かったって分かった筈だから、と。
いや、でもだってさぁ。
「蓮がキスしてるって思ったら、苦しくて…」
あの場に居続けることなんてとてもできなかった。
そう続けると、蓮の表情が驚きに変わる。
そして、気付けばその腕の中にいた。
「ごめんな、晴。お前が苦しい思いしてるなんて、その後も俺は微塵も気付いてなかった。」
この低い声と温もりは、どうしてこんなにも落ち着くんだろう。
だけど、次に言われた言葉が衝撃的で思わず蓮から身体を離してその顔を見上げてた。
「俺は、晴にフラれたと思ってたから。」
「…えっ!?」
●●●
語られてるのはside蓮中学編1話『始まり』~15話『元通り』の中盤辺りの内容です。
現在、曖昧な関係だからと晴に触れないように心がけてる蓮。
だけど、不安そうな顔されると直ぐ手が出て(←抱擁的な意味で)しまいます。笑
そして晴は自分で思ってる程隠せてない。笑
思わぬ言葉に息を呑んだ。
蓮が、そんなに前から俺の事を好きだった…?
目を丸くする俺に苦笑しながら蓮が続ける。
「俺には幼少期の記憶がかなりハッキリ残ってる。だけど、最初の方は殆ど無に等しい。」
記憶があるのに『無』ってどういう事だろう?
「俺は誰にも興味を持てなかったから。人と話す必要も無いと思ってたし、家族すらどうでも良かった。世界には自分独りで、それを当たり前だと思ってたんだ。」
翔君や美優さんから少し聞いた事はあったけど、本人の口から聞くのは初めてだった。
幼い頃の蓮が人とコミュニケーションを取る意思が無かったって、本当だったんだ。
「だけど、何故か晴の事だけは意識してた。」
静かな目が真っすぐに俺を射抜く。
「一緒にフランスに行った時の事も良く覚えてる。晴は俺に『話したくないなら話さなくていい』って言った。親達がどうにか俺を喋らせようとしてる最中に。それで『蓮と話してみたいけど』って笑ったんだ。俺はそれを聞いて、初めて言葉を発した。『晴』って、呼んだんだ。」
お前は寝てたから知らねぇだろうけど、と言って笑う蓮に胸がぎゅっとなる。
幼い頃、一緒にフランスに行った記憶は朧気だ。
俺は蓮みたいに記憶力が良くないから、自分が言った言葉すらも覚えてなくて。
だけど、蓮と話したいと思ってたのは確かだと思う。
沢山残ってる写真の中で、俺はいつも蓮の隣で蓮に視線を向けてたから。
そんな蓮が初めて発した言葉が、俺の名前だったなんて…。
「それから、晴ならどうするかって考えるようになった。晴の考えてる事を理解したくて、周りとも話すようになって。いつの間にか晴を喜ばせたいと思うようにすらなった。」
幼稚園の頃、泣くと直ぐに蓮と遥が駆けつけてくれた。
今にして思うと、別のクラスだった(蓮に至っては確か園長室にいたんじゃなかったかな)2人が来てくれるって、どんだけ甘やかされてんのって感じだけど。
俺はそれで安心して、離れないで欲しくて態とベソベソしてる時すらあって。
「俺にとって晴だけは、最初から特別だったんだ。晴がいなかったら、俺は自分が孤独な事にすら気付いて無かった。」
その言葉にハッとした。
そうだ、誰にも興味が持てないって事は世界に自分が独りきりって事で。
ふと、色の無い世界で立ち尽くす蓮の姿が脳裏を過る。
蓮が目を覚ます前に見た不思議な夢。
内容は良く覚えてないけど、何故か蓮のその姿だけが記憶に焼き付いていて。
幼い蓮はあんな風にたった独りきりで生きてたんだ…。
それはどんなに寂しかった事だろう。
「蓮…」
思わず隣に座る蓮の手を握ると、逆に大きな掌に包まれる。
「大丈夫だからそんな顔すんな。俺はお前に『楽しい』も『嬉しい』も教えてもらった。自分が孤独だった事に気付いた時にはもう、隣には晴がいた。」
だから辛い事なんかなかったと言いながら、蓮がそっと俺の頭を撫でる。
「俺の世界は晴を中心に回ってた。
だけど、まだ自分の心に疎かった俺はお前に対する気持ちを親愛だと思ってたんだ。」
世界の中心が、俺?
戸惑って見た蓮の真剣な瞳が、それが誇張でも何でもない事を語ってる。
子供の頃の蓮にとって、俺はそんなに大きな存在だったって事?
「お前を守る為に手を組むようになった遥は気付いてたみたいだけどな。『晴に対する私の好きとアンタの好きは違う』とか何とか言ってたから。
自覚してないだけで、俺はとっくにお前を恋愛的な意味で好きになってた。」
それってさ…
「それって、生まれてからずっと俺の事しか見てなかったみたいに聞こえる…あっ…!」
動揺のあまり思わず心の声が漏れてた。
ヤバイ、自分でこんな事言うの超恥ずかしい…!
てかそこまでは言ってなかったじゃんね!?
自意識過剰で引かれたかもとチラリと蓮を見ると、呆れたような表情で。
「だから、そうだって言ってんだろ。俺は晴以外好きになった事ないし、ずっと晴だけ見て来た。」
キッパリと言われてジワジワと顔が熱くなる。
思い違いじゃなくて、蓮は本当にずっと俺の事が好きだったんだ。
「小1の時、上級生に絡まれて学校行けなくなっただろ?あの時から、お前を苦しめるものを何もかも排除したいと思うようになった。むしろ最初から近付けなければいいんだって、周りを牽制するようにもなって。」
「ハイジョ?ケンセイ?」
不穏な単語が聞こえて、茹だった頭がちょっと冷静になる。
蓮は俺の反応なんて無かったみたいに淡々と話してるけど、その目の奥が翳って。
「晴が俺のせいで怪我して、意識無くして。
目を覚ますまでの間、俺には絶望しかなかった。
脳震盪だって理解してるのに頭ん中パニックで…もし晴が死んだら俺も死のうって、そればっかり考えてた。」
「えぇっ!?」
あの時、目を覚ました俺の第一声は『え、誰か死んだの?』だった。
だって、それくらい蓮が酷い顔をしてたから。
まさか、本当にそんな事考えてたなんて露ほども知らずに。
「その時気付いたんだ。俺は晴がいないと生きていけないんだって。」
「そんな事…」
言わないでって、自分の命をもっと大切にして欲しいと言いかけて、続ける事ができなかった。
静かな口調で語られるその言葉が比喩でも大袈裟でもない事が、痛い程伝わったから。
「自覚してからは、お前が自分の目の届かない所にいるのすら不安だった。
霊泉家の誘いを受けようとしたのは、権力があればお前を囲って守れると思ったからだ。」
結局、それも晴が嫌がると思ってやめたと言う蓮。
「俺の物事の判断基準は全部、自分が晴と一緒にいられるかどうかだった。」
だから、と続ける蓮の声が暗くなる。
「晴が中学受験するように仕向けた。
俺は霊泉家対策で帝詠学院に行くのが決まってたから、離れるなんて有り得ねぇと思って。」
蓮と遥は同じ学校で、自分だけが別。
あまり会えなくなるかもしれないと言われて、当時ショックを受けた事を思い出す。
「俺の都合で晴の未来を変えた事に対して、遥は
いい顔しなかったけどな。俺に対する当たりがキツくなった。
だけど、俺は晴と離れずにいられるって幸福に酔って全部聞き流してて。」
そう言えば、入学してから蓮と遥の言い合いが多くなってた気がしなくもない。
「クラスも部活も同じで、登下校も毎日一緒で。
…それが俺の望みだった。
俺が晴を守って、晴は俺を頼って。
友達なんかいなくていいから、ずっと2人だけでいたかった。」
遥が言ってた『友達も作らせない気だった』って話は、こう言う事だったのか。
「だけど、ちょっと目を離した隙に晴は剣道部に入って。俺は離れてる間に他の人間の目に留まるのが嫌で…晴が前髪で顔隠してるのを、内心で喜んでたんだ。」
確かに、見た目の事で絡まれた苦い経験から、当時の俺は前髪で目を隠すようにしてた。
だけどさ、別に顔が出てても蓮が心配するような事は無かったと思うよ?
そんな疑問が顔に出てたのか、蓮が溜息を吐いた。
「晴は鈍いから。部活の時前髪アップにしたお前が噂になって、上級生が見に来たりしてたの気付いてねぇだろ。」
「えっ?噂?」
「…お前が美人で可愛いって気付いた野郎共が、沸いて出てきやがったんだよ!」
「な、何を言ってるの?」
ってか急に誉めないで欲しい、お世辞でも照れるから。
「あ"~、ったく!無自覚だからタチが悪ぃんだよ!」
苛ついたように髪をかき上げた蓮が、苦々しく続ける。
「とにかく、晴にチョッカイ出そうとする奴等がいたって事!勿論、お前の目に触れる前に潰したけどな。」
つまり、また絡まれそうになってたのを蓮が事前にやめさせてくれてたって事?
それは初耳だ。
「蓮、ありがと。」
お礼を言うと、蓮が虚を突かれたみたいな顔をする。
「礼を言われる資格なんて、俺には無い。
…俺はお前が顔隠してる理由知ってるのに、それを喜んでたんだぜ?最低だろ。」
そう言う蓮の声音には自嘲するような響きがあった。
「蓮…?」
戸惑う俺を他所に、蓮の話は続いていく。
「俺は周りの目がこれ以上晴に向くのが嫌で、焦ってて。そんな時に遥から留学の話をされた。クリスマスに俺の家に集まった時だから、俺は晴より先に聞いてたんだ。」
え、それも俺は暫く秘密にされてたの?
「誤解しないで欲しいんだけど、霊泉家の事もあるから俺…って言うか俺の家には先に報告する必要があったんだよ。」
あ、そう言う事か。
「正直、遥がいなくなる事は俺にとってどうでも良かった。むしろ『早く行け』ぐらいに思ってたんだ。アイツはずっと、俺が晴を独占するのを阻止してたから。」
舌打ちでもしそうなこの表情を見たら、遥はきっと怒るだろうな。
「だけど遥は、自分がいなくなった後の俺の行動を読み切ってた。俺が晴を囲い込もうとするって。
まあ、実際その通りだったんだけど。俺は高校で特進クラスに行くも無かったし、大学だって晴に合わせるつもりでいたから。」
「えっ…」
またもや重大な事実に息を呑むと、蓮が僅かに口許を歪めた。
どこか苦しそうなその仕草に胸が騒ぐ。
さっきから感じてるこの違和感は何だろう…。
「遥は俺が晴の人生の妨げになるって危惧して、自分が日本にいる間に少しでも俺を遠ざけようとしてた。その思惑は成功して、晴は俺以外の人間と過ごす時間が増えていって。俺はそれが許せなくて、焦って…。晴が未来の話をした時、制御できなくなった。」
あの日の事を言ってるって、直ぐに分かった。
遥から留学の話をされた帰り道。
神社の桜の木の下で、俺はこう言ったんだ。
『俺の彼女に、幼馴染ですって蓮のこと紹介してやるから楽しみにしてろよ!』って。
蓮はそれに対して『聞きたく無い』って言って、俺にキスした。
あの時は混乱するばっかりだったけど、今にして思うと相当無神経な発言だったと思う。
だって、蓮はずっと俺の事が好きだったのに。
想い続けてる好きな相手から、自分じゃない未来の恋人の話とかされたら…。
気持ちに気付いてなかったとは言え、蓮を酷く傷付けたのは確かだ。
「ごめん、蓮!俺…」
「お前は何も悪くない。同意も無くキスするとか本当にどうかしてた。晴に全く意識されてないって分かって、どうにかして俺を見て欲しくて、そればっかりだった。告白する勇気も無い癖に…マジで馬鹿だよな。嫌な思いさせて悪かった。」
頭を下げようとするのを慌てて止める。
「あんなの、口効かなくなって当然…ってか絶縁されなかったのが奇跡だって思ってる。
俺の様子がおかしい事に気付いた遥に、散々説教されてさ。その時、翔の事が好きだって打ち明けられたんだ。…俺は初めて遥を凄いと思った。」
俺とは全然違ったから、と言う蓮。
「遥はさ、翔には美優がいるって知ってて、それで翔の幸せを願いながら一途に想い続けてた。
そこで漸く、自分勝手に思いをぶつけるだけじゃダメなんだって反省して。
晴と距離を開けるって遥の提案に乗るついでに、遥に協力する事になった。
って言っても、翔が実家に帰る日を教えたりとかそんな程度だけど。
その代わり、俺が暴走しそうになった時は遥が止めてくれた。修学旅行とか、お前に話しかけられない事がキツくて最悪だったけど、何とか持ち堪えたられたのはアイツのお陰だと思う。」
そして、ゆっくりと言葉を紡ぐ。
「あの頃から俺にとって遥は『目障りな幼馴染』から『同志』になったんだ。」
俺が蓮を避けてる間、そんな風に2人の関係は変わってたんだ…。
「京都から帰って『桜守り』のやりとりをしてたのも、その協力関係からくるものだった。
遥に『本人にバレないように翔に渡して欲しい』って頼まれて。」
「うん、遥から聞いた…」
そう答えると、蓮が一拍おいて尋ねる。
「…晴は、あの時あの場所にいたんだよな?」
偶然とは言え盗み聞きしてた気まずさから、蓮の目を見れずに頷く。
「だよな。あー、クソ!何で気付かなかったのか…」
「ううん、あんな所誰も来ると思わないでしょ…。
って言うか、声で蓮と遥だって分かったのに覗いたのは俺だし…」
激しい後悔が滲む声に慌てて言葉をつなげる横に振った。
「いや、晴は悪くない。幼馴染が自分を置いて2人で何かしてるの知ったら普通に気になるだろ。
俺達が注意を怠ったの結果だ。よりによって1番誤解させたくない相手に目撃されるなんて…。しかも、事故の瞬間まで。」
あのキスが事故だったのは遥から聞いてもう分かってるけど、やっぱりちょっとドキリとする。
顔には出さなかったつもりだけど、直ぐに蓮に手を握られた。
「あの頃は、遥が留学したら霊泉家とのパワーバランスがどうなるか心配してて。遥と恋人だって印象付けるのが何よりいいと思ったんだ。万が一にも奴等の目が晴に目が向かないようにしたかった。」
俺の手を包む長い指先が、少しだけ震える。
「秘密にしてたのは、ターゲットになってない晴は知らない方が安全だと判断したから。それと、怖がらせたくなかったのもある。」
「うん、蓮父も翔君も遥もそう言ってたし、そこは俺の為を思ってくれたんだって納得してる。」
子供の頃の話はね、と心の中で付け足したけど。
とにかく今は蓮の話が聞きたかった。
俺の返事にホッと息を吐く気配があって、蓮は続ける。
「遥の気持ちの話は、俺がどうこう言う問題じゃねぇから黙ってた。誰に言うのも言わねぇのもアイツの自由だって思って。」
うん、確かにそれもそう。
「だけど…それでお前に嫌な思いさせるなら、遥に助言なり何なりするべきだったと思う。」
後悔を滲ませながら、それでも蓮は俺の目を真っ直ぐに見た。
「あんなシーン見せて、嫌な思いさせてごめんな。それでも、信じて欲しい。俺はずっと晴しか好きじゃない。遥との事は完全な事故だ。」
分かってたけど、蓮の口からそれを聞けて力が抜ける。
知らずに強ばってた背中を優しく撫でられて、支えられて。
「相川に言われるまで、ずっと記憶から消してた。
それ位最悪で…マジで晴には悪いと思ってるけどファーストキスがお前だった事を神に感謝した。」
因みに蓮が言うには、遥のファーストキス(幼少期)も翔君らしい。
「お互い好きな相手との初めてがあったから、何とか立ち直れた。何て言うか…近いのは母親とキスするみたいな感覚。」
母さんとキス…
「うげっ」
いや、母さんの事は好きだけど!
冗談でほっぺチューされそうになるのだって本気でキツイ…。
「それ程の苦行だったとは…俺はそれ見て何であんな勘違いを…」
ブツブツ言ってると、蓮が苦笑した。
「いや、それは本当にな。どうせ見ちまったなら最後の罵り合いまでいて欲しかったわ。」
あれを見てれば俺達にそんな空気1ミリも無かったって分かった筈だから、と。
いや、でもだってさぁ。
「蓮がキスしてるって思ったら、苦しくて…」
あの場に居続けることなんてとてもできなかった。
そう続けると、蓮の表情が驚きに変わる。
そして、気付けばその腕の中にいた。
「ごめんな、晴。お前が苦しい思いしてるなんて、その後も俺は微塵も気付いてなかった。」
この低い声と温もりは、どうしてこんなにも落ち着くんだろう。
だけど、次に言われた言葉が衝撃的で思わず蓮から身体を離してその顔を見上げてた。
「俺は、晴にフラれたと思ってたから。」
「…えっ!?」
●●●
語られてるのはside蓮中学編1話『始まり』~15話『元通り』の中盤辺りの内容です。
現在、曖昧な関係だからと晴に触れないように心がけてる蓮。
だけど、不安そうな顔されると直ぐ手が出て(←抱擁的な意味で)しまいます。笑
そして晴は自分で思ってる程隠せてない。笑
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