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解決編
56.
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『もう1つのプロローグ』章にある『ニ度と咲かない桜』を読んでからお読みいただくのを推奨します!(今回の話だけだとなんのこっちゃかもしれません。。)
side蓮中学編の上にありますのでぜひ。
●●●
(side 萱島晴人)
目を開けると暗闇の中に立ってた。
これは…夢?
猛烈な眠気に襲われた記憶が残ってるから、多分そうなんだろうな。
何故か進むのが正しいような気がして歩き出す。
暫くすると闇が薄くなってきて、薄っすら光が見えて来た。
どこに続くか分からないのに不思議と恐怖感は一切なくて、むしろ早くいかなきゃって気になる。
だって、きっと待ってるから。
ーー誰が?
そう疑問に思った瞬間光が膨張して、眩しさに目を閉じた。
「ーーーー。」
誰かの話し声が聞こえる。
良く耳に馴染んだ低い声と、あまり聞き覚えの無い声。
ゆっくりと目を開くと、太陽を直接見た時みたいに緑の光がシパシパする。
暗闇に慣れた目を懸命に凝らすと…眩しいのに納得。
だって俺、めっちゃ太陽に近い…ってか、空に浮いてるんだもん。
摩訶不思議な状況に焦りが無いのは、これが夢だって分かってるからだろう。
むしろ「やっぱりね」って安心すらしてる。
下を見ると広がるのは、青々とした芝生。
それから大きな桜の木があって、満開なのは春だからなのかな。
その奥の白い建物は教会っぽいけど、フランスで見たそれよりだいぶ新しく人工物感が強い。
もしかして、結婚式場なのかもって思い付いた。
良く見ると桜の木の下に男の人が2人いて、その片方が真っ白なタキシードを着てるし。
うん、間違いなさそう。
って事はこの人が新郎で、もう片方のチャコールグレーのスーツの人は…親族とかかな?
2人は身長差が結構あって、スーツの人はめちゃめちゃスタイルが良い。
蓮とか翔君みたいな体型だなぁ。
そう思った瞬間、急に視界が変わった。
身体は上に残したまま、意識だけが地上に降りた感じ。
と、さっきよりグッと近くなった男性に視線を向けて息を呑んだ。
翔君?
雰囲気は本人よりもう少しクールな感じだけど、顔立ちは良く似てる。
少し長めの黒髪、切れ長の目、薄い唇、秀でた額。
整いすぎたその美貌にハッとする。
もしかして…蓮、なのか?
そう思って見れば、間違いなく蓮のような気がしてくる。
翔君と見間違えたのはきっと、俺が知る姿より大人っぽさが増してるから。
つまりこれは、数年後の蓮って事…?
混乱しながらも横に目を向ければ、こっちは…
お、俺…!?
白い肌にブルーグレーの目、アッシュブラウンの髪。
何か今よりもっとフランスの血が出てるような…。
え、俺こんな感じの仕上がりになるの???
いくら夢とは言えビックリだけど、俺はともかく蓮を見れたのは嬉しい。
だって、死ぬほどイケメンなんだもん。
今よりもっと色気が増してるし、蓮母みたいなオーラすら感じる。
一流の芸能人って言われても納得しかない。
未来の恋人の姿に目を輝かせる俺の耳に、会話が聞こえてくる。
最初に聞こえたのもこの2人の…俺達の声だったんだろうな。
ほら、自分の声って別人っぽく聞こえじゃん?
「蓮、今は何処にいるの?」
「今はアメリカ。いつまでいるかは分かんねえけど。」
「相変わらずスゲェなぁ。今度は何?」
「映画。来年公開する。」
「マジ⁉︎絶対観るわ!」
そんな会話から、蓮が国際的に活躍してる事が分かる。
しかも映画って、本当に芸能人なんだ!
背伸びして蓮の髪についた桜の花弁を取る未来の俺を、蓮が眩しそうに見つめる。
なんか、照れるかも…。
その仲睦まじい様子に悶える脳内で、ふと疑問が沸いた。
あれ?そう言えば、何か久しぶりに会ったみたいな事言ってるけど…。
って言うか俺は何で新郎みたいな恰好してるんだ?
さっきは結婚式かと思ったけど…だって…じゃあ、なんで蓮と会うのが久々なの?
どうして今日の主役じゃなくて、そんな『参列者』みたいな恰好なの?
見つめる先で、蓮の手が俺の腕に伸びる。
「晴人くーん!!」
何処からか聞こえた女性の声に、蓮が自分の手をグッと握り込んだ。
力なく垂れた腕に気付くことなく、未来の俺が振り返る。
視線を追うと、教会の大きな窓からこっちに手を振る小柄な女性。
遠くて顔は朧気だけど、身に着けてるのは間違いなく…
ウエディングドレス…?
え?
つまり、どう言う事?
俺の相手は…生涯を共にするのは、あの女性?
蓮じゃなくて…?
混乱する俺を尻目に、未来の俺が大きく手を振る。
「あはっ、行かなきゃ!蓮、楽しんでいってね!
そう言って駆け出した。
蓮に背を向けてーー。
『な、何で…待ってよ!!』
思わず出した大声が、空気に溶けて消える。
届かないそれに焦った時、もう一人の俺がクルリと振り返った。
「あ、そうだ!」
弾んだ声と、楽しげな瞳。
「スピーチ啓太なんだよ!お互いに中学からの約束果たすとか凄くない⁉︎」
そう笑って、今度こそ去って行く。
スピーチが啓太…って事は、本当に結婚するんだ。
蓮はといえば、静かに去っていく俺の姿を見つめていて。
でも、さっき一瞬腕を伸ばしかけたのを俺は知ってる。
『蓮!何で止めないんだよ!』
聞こえないのも忘れて大声を出して…ピタリと止まった。
蓮の瞳の中に、諦めと絶望が見えたから。
『蓮…?』
急激に周りの気温が下がったように感じる。
寒い、手足が冷たくて堪らない。
晴れ渡っていた空は灰色に曇り、舞い散る桜の花弁が黒い煤みたいに地面に降る。
その変化に驚いて蓮を見ると、当然のようにそれを受け止めていて。
まるでこの色の無い世界が、蓮にとっての日常みたいにーー。
何も映してない瞳から一筋の涙が流れて、俺は堪らず叫ぶ。
『蓮!!』
何やってんだよ、未来の俺!
こんな…こんな寂しい世界に蓮を独りにするなよ!!
『蓮、こっち向け!』
胸が張り裂けそうに痛んで、蓮に向かって必死に手を伸ばす。
だけど、上空にある俺の身体は蓮に触れる事はない。
意識はこんなに近くにいるのに、声すらも届かなくて。
それどころか、自分の身体に引っ張られるみたいに徐々に遠ざかっていく。
『ダメだ…嫌だ!!』
必死に抗うのに、強い風に攫われて抵抗できない。
空へ放り出された俺の目は、もう蓮を捕らえる事もできなくなって。
『蓮!俺はここにいるから!!』
それでも、声をかぎりに叫ぶ。
だって、俺には分かるから。
弾むようなあの声は、空元気の時のそれ。
自分の気持ちを隠してる時の、俺の精一杯の強がりだって。
『------!!』
一際強い突風に煽られたのを最後に、フツリと意識が途切れた。
===
(side 切藤蓮)
目を開いてすぐに感じたのは、違和感だった。
妙に目線から地面が近く、自分の手足が小さい。
見回すとここが実家のリビングである事は分かったが、最近の記憶とは一致しなかった。
これは…3歳頃の家の風景だったような気がする。
頭の中からその辺りの記憶を引っ張り出すと、ビンゴだった。
これが夢なのか走馬灯なのか知らないが、俺は時を16年遡ってるらしい。
一人で立っているかと思いきや、背後には若かりし陽子の姿。
と、その腕が伸びて来てひょいっと抱えあげられる。
ゲ、やめろババァ…
この歳で母親の抱っことかどんな罰ゲームだよ。
だけど、思わず出た声も逃れようと動かしたはずの身体も変化は無い。
どうやら俺の意志で声は出せないし、動く事もできないらしい。
為す術なく連れて行かれた先では衝撃の光景が待っていた。
「れーんー!」
徳人さんに抱っこされた、2歳の晴が俺を呼ぶ。
かっっわ…
幼児特有のフクフクした晴はまさに天使だった。
だけど、その姿はすぐに視界から消えてしまう。
当時の俺が全く晴を見ていなかったから、と思いきや違った。
態々遠くに移動して、そこからチラチラ晴の方を伺って。
相当興味があるんだと、案外分かりやすい態度をとっていた自分に呆れる。
と、急に場面が変わってフランスの晴の祖父の家になった。
俺のベッドにもぐりこんできて、寝てしまった晴。
「晴」
初めて言葉を発した時の、胸がむず痒いような感覚。
自覚したのは小学生になってからだったけど、どうやら俺はこの時既に恋に落ちていたらしい。
長ぇな…遥といい勝負だ。
そんな遥と言い争う自分を見て、また場面が切り替わったのを悟った。
晴に言いがかりを付けた上級生に制裁を与えた頃の事だ。
登校できなくなり泣く晴を見て、相手を憎悪したのを良く覚えている。
また場面が変わった。
俺はサッカークラブでの事件で、怪我を負って意識を失った晴の枕元にいる。
晴に何かあったら生きていけないんだと、重たい恋と執着を自覚したのはこの頃だった。
「ずっと一緒にいよう」と晴が言ってくれたのも。
ただ、それは幼い頃の深い意味の伴わない可愛らしいもので。
次のシーンではもう、制服を着た中学生の俺達になっていた。
この頃の関係性は、以前と少し変わっていて。
主に俺が想いを隠せなくなって、何も気付かない晴に焦れて。
一方的にキスしたシーンでは、現在の俺が必死に抗ったが無駄だった。
オイ!夢か走馬灯か知らねえが、こんな風に人生の振り返りを見せてくるならやり直しさせろよ!
この行動のせいで、今後暫く口をきいてもらえなくなるのが辛い。
数か月後に一応仲直りはしたものの「幼馴染」でいる事を望まれて。
「さよなら、蓮。」
忘れられない決別の言葉に、高校生まで飛んだ事を悟る。
この夏祭りの後からは、俺の人生の地獄だった。
連日の夜遊び、飲酒、暴力事件と、随分自暴自棄になってたもんだと思う。
今にして思うと他にもっとやれる事あんだろ…とツッコミたくなるが、当時の俺は何も考えられなくなっていた。
遥とクロのサポートで何とか持ち直して、ひょんな事から晴と話す機会ができて。
小火と停学騒ぎを経て、再び傍にいられるようになった。
初めてのデートして告白して。
返事が保留になってる間に晴が襲われる事件が起こって。
傷付く晴を見ているのが何より辛くて、一生俺が守りたいと改めて思った。
告白の返事を貰えたのは修学旅行のフランスでの事。
あまりにも嬉しくて「恋人」と言う響に酔いしれて。
初めて身体を繋げた時は、幸せでどうにかなりそうだった。
こんな甘い日々が続いていくんだと、何も疑わずに。
随分記憶に新しいシーンは、晴とバイトの事で揉めている場面だ。
ここでも自分を抑えようとするが、やはり何もできなくて。
お互い意地になって、そこからすれ違っていく。
避けられて、バイトだと嘘をつかれて、おまけに首にはキスマらしき痕がついてて。
今なら全部理由がわかるのに、俺は晴を疑って。
手酷く抱いて、晴を囲いこもうとする自分に恐怖を覚え家を出た。
そして、霊泉家との騒動で連絡できなくなって。
晴を遠ざけて、傷付けて。
そこまでしたのに結局は晴を巻き込んでしまった。
それでも晴は俺を拒絶する事はしなくて。
助け出した晴を抱きしめた時の感触が、ずっと腕に残っている。
繋いだ手も、全部話すと約束した事も。
そして、霊泉家の最後のあがきで俺は致命傷を負った。
頭を損傷して、相当悪い状態だったのは覚えている。
記憶の最後は、懸命に俺の名前を呼ぶ晴。
その無事を確認して意識はブツッと途切れて。
気が付くと子供の姿に戻って、今までの人生を振り返っていた。
因みにこの流れをもう数回は繰り返してる。
時折、意識が何処かへ浮上しそうな事があるが、気が付くとまたここに戻っていて。
自分が生きてるのか死んでるのかもよく分からない。
気がかりなのは晴の事で、自分を責めてるんじゃないかと心配になる。
晴のせいなんて事は1ミリたりとも無いし、むしろ巻き込んだ俺を責めていい筈なのに。
晴に謝りたい。
全部話すって言う約束を、果たしたい。
あれだけ傷つけておいて、許してもらえるとは思ってないけれど。
傍にいられなくてもいいから、どうかもう一度。
幸せそうに笑うお前の顔を、見たいんだーー
眩しさに目を開くと、目の前には満開の桜の木があった。
奥に見えのは白亜の教会。
今までは無かった展開だけど、俺はこの続きを知っている。
ほら、白いタキシードの晴と、それを呼ぶ女の声。
ふと、その声が相川に酷似している事に気付いた。
「あは、行かなきゃ!蓮、楽しんで行ってね。」
そう言って晴が去って行く…前に、それは起こった。
「色々あったけどさ…、蓮が来てくれて嬉しいよ。』
そんな台詞は、知らない。
繰り返し見た夢ではこんなシーンは無かった。
これは本当に夢なのか?
それとも…
現実にあった事を、夢の中でなぞっている?
命を取り留めた後、晴に全てを打ち明けて謝罪して。
晴は許そうとしてくれたけど、一度できた溝は簡単には埋まらない。
一緒にいる事でお互いを苦しめていると気づいて、そしてーー
別々の道を歩む事になった。
そうだ、俺と晴は8年前に破局している。
信じたくなくて、夢だと思い込んでいただけ。
これはまぎれもない現実の事だーー。
「スピーチ啓太なんだよ!お互いに中学からの約束果たすとか凄くない⁉︎」
衝撃にグラリと揺れる頭の中に、弾んだ晴の声が響く。
幸せそうな輝く笑顔に、やっと気が付いた。
傍にいられなくてもいいから、お前の幸せそうな笑顔が見たいと。
その願いが今、叶ったんだ。
立ち尽くす視界から色が失われていく。
陽の光が消えて、桜の花弁が煤のように纏わりついて。
そうか、俺は結局独りになるんだな。
だけど、甘んじて受けるべきだ。
全ては自分自身の責任なんだから。
そして望みが叶った今、俺が生きている意味はなくなった。
誰にも勘付かれないように、自分の命の後始末をしてーー
『蓮!!』
ふいに呼ばれた気がして、空を見上げる。
それが晴の声に聞こえた辺り、俺はもう正気じゃないんだろう。
それでも、もう一度聞きたいと耳を澄ませる。
『蓮!俺はここにいるから!!』
その必死な声に、確かな存在を感じた。
姿は見えないけど、だけどーー。
晴が、ここにいる?
胸が震えて全身を熱が駆け巡る。
『こんな未来ありえない!蓮が好きなのは蓮なんだから!!』
突風に桜の花弁が舞い上がる。
煤のようだったそれは薄紅に戻って、竜巻のように俺の周りを舞って。
『何があってもずっと一緒にいたいのは、蓮だけだ!!』
涙声のそれに、ぼんやりしていた頭が覚醒した。
「晴!!!」
封じられていた声が解放されて、声の限りに最愛の名前を叫ぶ。
何が夢で現実か分かんねぇけど。
だけど、確かな事が一つ。
晴が泣いてるなら、何を置いても駆けつける。
例えこの先に何が待ち受けていたとしても。
吹き上げる突風が威力を増して、目の前が桜色で染まっていく。
息苦しい程の薄紅の群れの中に、キラリと光る何かを見付けて手を伸ばした。
決死の想いで掴んだそれは、よく掌に馴染んで。
「これは…」
驚いたのを最後に、意識がプツリと途切れた。
===
(side 萱島晴人)
「ん…。」
目を覚ますと、いつもの病室だった。
「痛った…超体痛い…。」
椅子に座ってベッドに突っ伏したまま眠ってたせいで全身バキバキだ。
よく思い出せないけど、桜の木が出てくる夢を見てた気がする。
それと、最後に凄く大切な本音を叫んだような…。
ここ最近の迷いを吹き飛ばす、根本みたいな…,
「…あれ?」
妙に眩しいと思って向けた視線の先に息を呑んだ。
昨日枕元に置いてた筈の桜守りが、蓮の掌の上で朝陽を反射してる。
「え、何で…?」
恐る恐る取ろうとしたその時、蓮の指先がピクリと動いた。
「…!?」
焦りと期待と、ぬか喜びへの不安。
色んな感情に押しつぶされそうになりながらも、蓮の顔を見つめる。
だけどそこには、いつもと変わらない綺麗な寝顔。
やっぱりね、と思いながらも落胆は拭えない。
期待しちゃったからこそ辛くて、涙が溢れてくる。
「蓮…」
止まらない涙をどうする事もできずに、蓮の顔を見つめていた時だった。
ふるりと長い睫毛が震えて、その下から瞳が覗いて。
ゆっくりと、こっちを向いた。
「晴…」
酷く掠れたその声に、思考が停止して動けない。
そんな俺の頬に伸びてきた蓮の指が涙を拭う。
「泣かせてごめんな」
「…ッ蓮!!」
縋り付く背中に、蓮の腕が回って。
力が入らない筈なのに抱きしめようとしてくれた事が嬉しくて、涙が止まらなくて。
「ずっと、待ってた…!」
しゃくりあげながら、蓮が目覚めたら最初に言おうと決めてた言葉を伝える。
「おかえり…蓮!!」
●●●
よし、こっちのプロローグも回収(?)できた。
完結に向けて、蓮と晴にはしっかり話し合ってもらいましょう!
side蓮中学編の上にありますのでぜひ。
●●●
(side 萱島晴人)
目を開けると暗闇の中に立ってた。
これは…夢?
猛烈な眠気に襲われた記憶が残ってるから、多分そうなんだろうな。
何故か進むのが正しいような気がして歩き出す。
暫くすると闇が薄くなってきて、薄っすら光が見えて来た。
どこに続くか分からないのに不思議と恐怖感は一切なくて、むしろ早くいかなきゃって気になる。
だって、きっと待ってるから。
ーー誰が?
そう疑問に思った瞬間光が膨張して、眩しさに目を閉じた。
「ーーーー。」
誰かの話し声が聞こえる。
良く耳に馴染んだ低い声と、あまり聞き覚えの無い声。
ゆっくりと目を開くと、太陽を直接見た時みたいに緑の光がシパシパする。
暗闇に慣れた目を懸命に凝らすと…眩しいのに納得。
だって俺、めっちゃ太陽に近い…ってか、空に浮いてるんだもん。
摩訶不思議な状況に焦りが無いのは、これが夢だって分かってるからだろう。
むしろ「やっぱりね」って安心すらしてる。
下を見ると広がるのは、青々とした芝生。
それから大きな桜の木があって、満開なのは春だからなのかな。
その奥の白い建物は教会っぽいけど、フランスで見たそれよりだいぶ新しく人工物感が強い。
もしかして、結婚式場なのかもって思い付いた。
良く見ると桜の木の下に男の人が2人いて、その片方が真っ白なタキシードを着てるし。
うん、間違いなさそう。
って事はこの人が新郎で、もう片方のチャコールグレーのスーツの人は…親族とかかな?
2人は身長差が結構あって、スーツの人はめちゃめちゃスタイルが良い。
蓮とか翔君みたいな体型だなぁ。
そう思った瞬間、急に視界が変わった。
身体は上に残したまま、意識だけが地上に降りた感じ。
と、さっきよりグッと近くなった男性に視線を向けて息を呑んだ。
翔君?
雰囲気は本人よりもう少しクールな感じだけど、顔立ちは良く似てる。
少し長めの黒髪、切れ長の目、薄い唇、秀でた額。
整いすぎたその美貌にハッとする。
もしかして…蓮、なのか?
そう思って見れば、間違いなく蓮のような気がしてくる。
翔君と見間違えたのはきっと、俺が知る姿より大人っぽさが増してるから。
つまりこれは、数年後の蓮って事…?
混乱しながらも横に目を向ければ、こっちは…
お、俺…!?
白い肌にブルーグレーの目、アッシュブラウンの髪。
何か今よりもっとフランスの血が出てるような…。
え、俺こんな感じの仕上がりになるの???
いくら夢とは言えビックリだけど、俺はともかく蓮を見れたのは嬉しい。
だって、死ぬほどイケメンなんだもん。
今よりもっと色気が増してるし、蓮母みたいなオーラすら感じる。
一流の芸能人って言われても納得しかない。
未来の恋人の姿に目を輝かせる俺の耳に、会話が聞こえてくる。
最初に聞こえたのもこの2人の…俺達の声だったんだろうな。
ほら、自分の声って別人っぽく聞こえじゃん?
「蓮、今は何処にいるの?」
「今はアメリカ。いつまでいるかは分かんねえけど。」
「相変わらずスゲェなぁ。今度は何?」
「映画。来年公開する。」
「マジ⁉︎絶対観るわ!」
そんな会話から、蓮が国際的に活躍してる事が分かる。
しかも映画って、本当に芸能人なんだ!
背伸びして蓮の髪についた桜の花弁を取る未来の俺を、蓮が眩しそうに見つめる。
なんか、照れるかも…。
その仲睦まじい様子に悶える脳内で、ふと疑問が沸いた。
あれ?そう言えば、何か久しぶりに会ったみたいな事言ってるけど…。
って言うか俺は何で新郎みたいな恰好してるんだ?
さっきは結婚式かと思ったけど…だって…じゃあ、なんで蓮と会うのが久々なの?
どうして今日の主役じゃなくて、そんな『参列者』みたいな恰好なの?
見つめる先で、蓮の手が俺の腕に伸びる。
「晴人くーん!!」
何処からか聞こえた女性の声に、蓮が自分の手をグッと握り込んだ。
力なく垂れた腕に気付くことなく、未来の俺が振り返る。
視線を追うと、教会の大きな窓からこっちに手を振る小柄な女性。
遠くて顔は朧気だけど、身に着けてるのは間違いなく…
ウエディングドレス…?
え?
つまり、どう言う事?
俺の相手は…生涯を共にするのは、あの女性?
蓮じゃなくて…?
混乱する俺を尻目に、未来の俺が大きく手を振る。
「あはっ、行かなきゃ!蓮、楽しんでいってね!
そう言って駆け出した。
蓮に背を向けてーー。
『な、何で…待ってよ!!』
思わず出した大声が、空気に溶けて消える。
届かないそれに焦った時、もう一人の俺がクルリと振り返った。
「あ、そうだ!」
弾んだ声と、楽しげな瞳。
「スピーチ啓太なんだよ!お互いに中学からの約束果たすとか凄くない⁉︎」
そう笑って、今度こそ去って行く。
スピーチが啓太…って事は、本当に結婚するんだ。
蓮はといえば、静かに去っていく俺の姿を見つめていて。
でも、さっき一瞬腕を伸ばしかけたのを俺は知ってる。
『蓮!何で止めないんだよ!』
聞こえないのも忘れて大声を出して…ピタリと止まった。
蓮の瞳の中に、諦めと絶望が見えたから。
『蓮…?』
急激に周りの気温が下がったように感じる。
寒い、手足が冷たくて堪らない。
晴れ渡っていた空は灰色に曇り、舞い散る桜の花弁が黒い煤みたいに地面に降る。
その変化に驚いて蓮を見ると、当然のようにそれを受け止めていて。
まるでこの色の無い世界が、蓮にとっての日常みたいにーー。
何も映してない瞳から一筋の涙が流れて、俺は堪らず叫ぶ。
『蓮!!』
何やってんだよ、未来の俺!
こんな…こんな寂しい世界に蓮を独りにするなよ!!
『蓮、こっち向け!』
胸が張り裂けそうに痛んで、蓮に向かって必死に手を伸ばす。
だけど、上空にある俺の身体は蓮に触れる事はない。
意識はこんなに近くにいるのに、声すらも届かなくて。
それどころか、自分の身体に引っ張られるみたいに徐々に遠ざかっていく。
『ダメだ…嫌だ!!』
必死に抗うのに、強い風に攫われて抵抗できない。
空へ放り出された俺の目は、もう蓮を捕らえる事もできなくなって。
『蓮!俺はここにいるから!!』
それでも、声をかぎりに叫ぶ。
だって、俺には分かるから。
弾むようなあの声は、空元気の時のそれ。
自分の気持ちを隠してる時の、俺の精一杯の強がりだって。
『------!!』
一際強い突風に煽られたのを最後に、フツリと意識が途切れた。
===
(side 切藤蓮)
目を開いてすぐに感じたのは、違和感だった。
妙に目線から地面が近く、自分の手足が小さい。
見回すとここが実家のリビングである事は分かったが、最近の記憶とは一致しなかった。
これは…3歳頃の家の風景だったような気がする。
頭の中からその辺りの記憶を引っ張り出すと、ビンゴだった。
これが夢なのか走馬灯なのか知らないが、俺は時を16年遡ってるらしい。
一人で立っているかと思いきや、背後には若かりし陽子の姿。
と、その腕が伸びて来てひょいっと抱えあげられる。
ゲ、やめろババァ…
この歳で母親の抱っことかどんな罰ゲームだよ。
だけど、思わず出た声も逃れようと動かしたはずの身体も変化は無い。
どうやら俺の意志で声は出せないし、動く事もできないらしい。
為す術なく連れて行かれた先では衝撃の光景が待っていた。
「れーんー!」
徳人さんに抱っこされた、2歳の晴が俺を呼ぶ。
かっっわ…
幼児特有のフクフクした晴はまさに天使だった。
だけど、その姿はすぐに視界から消えてしまう。
当時の俺が全く晴を見ていなかったから、と思いきや違った。
態々遠くに移動して、そこからチラチラ晴の方を伺って。
相当興味があるんだと、案外分かりやすい態度をとっていた自分に呆れる。
と、急に場面が変わってフランスの晴の祖父の家になった。
俺のベッドにもぐりこんできて、寝てしまった晴。
「晴」
初めて言葉を発した時の、胸がむず痒いような感覚。
自覚したのは小学生になってからだったけど、どうやら俺はこの時既に恋に落ちていたらしい。
長ぇな…遥といい勝負だ。
そんな遥と言い争う自分を見て、また場面が切り替わったのを悟った。
晴に言いがかりを付けた上級生に制裁を与えた頃の事だ。
登校できなくなり泣く晴を見て、相手を憎悪したのを良く覚えている。
また場面が変わった。
俺はサッカークラブでの事件で、怪我を負って意識を失った晴の枕元にいる。
晴に何かあったら生きていけないんだと、重たい恋と執着を自覚したのはこの頃だった。
「ずっと一緒にいよう」と晴が言ってくれたのも。
ただ、それは幼い頃の深い意味の伴わない可愛らしいもので。
次のシーンではもう、制服を着た中学生の俺達になっていた。
この頃の関係性は、以前と少し変わっていて。
主に俺が想いを隠せなくなって、何も気付かない晴に焦れて。
一方的にキスしたシーンでは、現在の俺が必死に抗ったが無駄だった。
オイ!夢か走馬灯か知らねえが、こんな風に人生の振り返りを見せてくるならやり直しさせろよ!
この行動のせいで、今後暫く口をきいてもらえなくなるのが辛い。
数か月後に一応仲直りはしたものの「幼馴染」でいる事を望まれて。
「さよなら、蓮。」
忘れられない決別の言葉に、高校生まで飛んだ事を悟る。
この夏祭りの後からは、俺の人生の地獄だった。
連日の夜遊び、飲酒、暴力事件と、随分自暴自棄になってたもんだと思う。
今にして思うと他にもっとやれる事あんだろ…とツッコミたくなるが、当時の俺は何も考えられなくなっていた。
遥とクロのサポートで何とか持ち直して、ひょんな事から晴と話す機会ができて。
小火と停学騒ぎを経て、再び傍にいられるようになった。
初めてのデートして告白して。
返事が保留になってる間に晴が襲われる事件が起こって。
傷付く晴を見ているのが何より辛くて、一生俺が守りたいと改めて思った。
告白の返事を貰えたのは修学旅行のフランスでの事。
あまりにも嬉しくて「恋人」と言う響に酔いしれて。
初めて身体を繋げた時は、幸せでどうにかなりそうだった。
こんな甘い日々が続いていくんだと、何も疑わずに。
随分記憶に新しいシーンは、晴とバイトの事で揉めている場面だ。
ここでも自分を抑えようとするが、やはり何もできなくて。
お互い意地になって、そこからすれ違っていく。
避けられて、バイトだと嘘をつかれて、おまけに首にはキスマらしき痕がついてて。
今なら全部理由がわかるのに、俺は晴を疑って。
手酷く抱いて、晴を囲いこもうとする自分に恐怖を覚え家を出た。
そして、霊泉家との騒動で連絡できなくなって。
晴を遠ざけて、傷付けて。
そこまでしたのに結局は晴を巻き込んでしまった。
それでも晴は俺を拒絶する事はしなくて。
助け出した晴を抱きしめた時の感触が、ずっと腕に残っている。
繋いだ手も、全部話すと約束した事も。
そして、霊泉家の最後のあがきで俺は致命傷を負った。
頭を損傷して、相当悪い状態だったのは覚えている。
記憶の最後は、懸命に俺の名前を呼ぶ晴。
その無事を確認して意識はブツッと途切れて。
気が付くと子供の姿に戻って、今までの人生を振り返っていた。
因みにこの流れをもう数回は繰り返してる。
時折、意識が何処かへ浮上しそうな事があるが、気が付くとまたここに戻っていて。
自分が生きてるのか死んでるのかもよく分からない。
気がかりなのは晴の事で、自分を責めてるんじゃないかと心配になる。
晴のせいなんて事は1ミリたりとも無いし、むしろ巻き込んだ俺を責めていい筈なのに。
晴に謝りたい。
全部話すって言う約束を、果たしたい。
あれだけ傷つけておいて、許してもらえるとは思ってないけれど。
傍にいられなくてもいいから、どうかもう一度。
幸せそうに笑うお前の顔を、見たいんだーー
眩しさに目を開くと、目の前には満開の桜の木があった。
奥に見えのは白亜の教会。
今までは無かった展開だけど、俺はこの続きを知っている。
ほら、白いタキシードの晴と、それを呼ぶ女の声。
ふと、その声が相川に酷似している事に気付いた。
「あは、行かなきゃ!蓮、楽しんで行ってね。」
そう言って晴が去って行く…前に、それは起こった。
「色々あったけどさ…、蓮が来てくれて嬉しいよ。』
そんな台詞は、知らない。
繰り返し見た夢ではこんなシーンは無かった。
これは本当に夢なのか?
それとも…
現実にあった事を、夢の中でなぞっている?
命を取り留めた後、晴に全てを打ち明けて謝罪して。
晴は許そうとしてくれたけど、一度できた溝は簡単には埋まらない。
一緒にいる事でお互いを苦しめていると気づいて、そしてーー
別々の道を歩む事になった。
そうだ、俺と晴は8年前に破局している。
信じたくなくて、夢だと思い込んでいただけ。
これはまぎれもない現実の事だーー。
「スピーチ啓太なんだよ!お互いに中学からの約束果たすとか凄くない⁉︎」
衝撃にグラリと揺れる頭の中に、弾んだ晴の声が響く。
幸せそうな輝く笑顔に、やっと気が付いた。
傍にいられなくてもいいから、お前の幸せそうな笑顔が見たいと。
その願いが今、叶ったんだ。
立ち尽くす視界から色が失われていく。
陽の光が消えて、桜の花弁が煤のように纏わりついて。
そうか、俺は結局独りになるんだな。
だけど、甘んじて受けるべきだ。
全ては自分自身の責任なんだから。
そして望みが叶った今、俺が生きている意味はなくなった。
誰にも勘付かれないように、自分の命の後始末をしてーー
『蓮!!』
ふいに呼ばれた気がして、空を見上げる。
それが晴の声に聞こえた辺り、俺はもう正気じゃないんだろう。
それでも、もう一度聞きたいと耳を澄ませる。
『蓮!俺はここにいるから!!』
その必死な声に、確かな存在を感じた。
姿は見えないけど、だけどーー。
晴が、ここにいる?
胸が震えて全身を熱が駆け巡る。
『こんな未来ありえない!蓮が好きなのは蓮なんだから!!』
突風に桜の花弁が舞い上がる。
煤のようだったそれは薄紅に戻って、竜巻のように俺の周りを舞って。
『何があってもずっと一緒にいたいのは、蓮だけだ!!』
涙声のそれに、ぼんやりしていた頭が覚醒した。
「晴!!!」
封じられていた声が解放されて、声の限りに最愛の名前を叫ぶ。
何が夢で現実か分かんねぇけど。
だけど、確かな事が一つ。
晴が泣いてるなら、何を置いても駆けつける。
例えこの先に何が待ち受けていたとしても。
吹き上げる突風が威力を増して、目の前が桜色で染まっていく。
息苦しい程の薄紅の群れの中に、キラリと光る何かを見付けて手を伸ばした。
決死の想いで掴んだそれは、よく掌に馴染んで。
「これは…」
驚いたのを最後に、意識がプツリと途切れた。
===
(side 萱島晴人)
「ん…。」
目を覚ますと、いつもの病室だった。
「痛った…超体痛い…。」
椅子に座ってベッドに突っ伏したまま眠ってたせいで全身バキバキだ。
よく思い出せないけど、桜の木が出てくる夢を見てた気がする。
それと、最後に凄く大切な本音を叫んだような…。
ここ最近の迷いを吹き飛ばす、根本みたいな…,
「…あれ?」
妙に眩しいと思って向けた視線の先に息を呑んだ。
昨日枕元に置いてた筈の桜守りが、蓮の掌の上で朝陽を反射してる。
「え、何で…?」
恐る恐る取ろうとしたその時、蓮の指先がピクリと動いた。
「…!?」
焦りと期待と、ぬか喜びへの不安。
色んな感情に押しつぶされそうになりながらも、蓮の顔を見つめる。
だけどそこには、いつもと変わらない綺麗な寝顔。
やっぱりね、と思いながらも落胆は拭えない。
期待しちゃったからこそ辛くて、涙が溢れてくる。
「蓮…」
止まらない涙をどうする事もできずに、蓮の顔を見つめていた時だった。
ふるりと長い睫毛が震えて、その下から瞳が覗いて。
ゆっくりと、こっちを向いた。
「晴…」
酷く掠れたその声に、思考が停止して動けない。
そんな俺の頬に伸びてきた蓮の指が涙を拭う。
「泣かせてごめんな」
「…ッ蓮!!」
縋り付く背中に、蓮の腕が回って。
力が入らない筈なのに抱きしめようとしてくれた事が嬉しくて、涙が止まらなくて。
「ずっと、待ってた…!」
しゃくりあげながら、蓮が目覚めたら最初に言おうと決めてた言葉を伝える。
「おかえり…蓮!!」
●●●
よし、こっちのプロローグも回収(?)できた。
完結に向けて、蓮と晴にはしっかり話し合ってもらいましょう!
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