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解決編
36.
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場面がコロコロ変わるので🟰で区切ります。
●●●
3月30日、日本最大の国際空港は晴天だった。
満開を迎えた桜と、青空に飛び立つ機体のコントラストが眩しい。
そんな空港の一角に止まった、1台の車。
麗かな春の朝に不似合いの不穏な空気を放つそれには、2人の男が乗っている。
「そろそろ時間だ。中の様子は?」
「荷物受け取りレーンを出た所に、2人待機しています。」
「敷地の外はどうだ。」
「車2台で警戒しています。」
「いいだろう。そろそろ頃合いだ。」
彼等は目的である女性の写真をもう一度じっくり見る。
切れ長の目と黒髪のロングヘアが特徴的な、滅多にお目にかかれないような美人だ。
「下賤の血ではあるが…姿形と言い能力と言い、子を孕ませる器としては申し分ないな。」
年嵩の方の男の言葉に、隣に座る若い男が頷く。
「だからこそ当主様は危険視しておられるんですね。」
「そうだ。失敗は許されないぞ。」
彼等の目的は、今日アメリカから帰国するその女性の拉致。
一族の今後の繁栄の為、絶対に成功させなくてはならない任務だ。
『南野遥を確認しました。追跡します。』
内部で待機していた男からの連絡に、一気に緊張感が増す。
「了解。対象の服装は?」
『ショッキングピンクのニットに白のミニスカート、靴は豹柄のハイヒールで、サングラスをかけています。』
「それはまた…随分と派手な格好だな。」
「下々の流行りなのでは?」
「こちらにとっては恰好の目印になると言うのに…愚かだな。」
車内でそんなやりとりが行われる中、遥を追跡する男2人は壁に寄って立ち止まった。
スーツケースを引いた遥が向かったのは、女子トイレ。
利用者がひっきりなしに行き交うそこに男である彼等が入れば、騒ぎになってしまう。
だが、これくらいは想定内だった。
「ここで待つ。出入り口は1つだ、何の心配もない。」
よく見える所で、出てくる利用者を見張る。
彼等の役割は、遥が空港の外に出た瞬間に薬を嗅がせて気絶させる事。
そして、待機している車に乗せる事だ。
空港の外は人の数は多いものの、案外目撃され辛い。
誰もが、自分の荷物や次の目的地の事で手一杯だからだ。
それを利用して遥を拉致するのが、男達の計画だった。
『辺りに切藤拓也、翔、蓮及び笹森の姿はありません。』
空港の外周を見回る2台の車からは、切藤家の姿は確認されていないようだ。
監視の報告によると、拓也は自分の病院へ、翔は勤務先へ、蓮は家から出ていないらしい。
昨日傍受した電話で『迎えはいらない』と遥が言っていたが、その通りにしているのだろうか。
「了解。例の女を殺し損なったから警戒はしている筈だ。くれぐれも油断するなよ。」
トイレの前で待機する男が言うと、電話の向こうで息を呑む音がする。
それは車内で待機する若い方の男で、カッと顔を赤くして震えていた。
『お前のせいで』と、言外に言われている気がしたからだ。
この若い男にはもう、後が無かった。
本家と分家で計り知れない格差のある霊泉家で、彼はギリギリ本家筋のポジションに生まれた。
ただ、同じ本家と言えど血の濃い『上』の人間と、血の薄い『下』の人間は扱いが違う。
自分達のような人間が担うのは、汚れ仕事ばかりだ。
その日も命令を受けて、ある女を見張っていた。
そして、当主の孫である翔を誑かしたその薄汚い女を、腹の子諸共始末するべく階段から突き落としたのだ。
まさか、邪魔が入るなんてーー。
任務を失敗しただけでも怒り心頭の『上』に、更に目撃されたなんて事は到底言えなかった。
いつバレるかと神経を擦り減らしていたが、それは『事故』として処理されて。
何故目撃者が自分の存在を明かさなかったのか気にはなったが、丸く収まりそうな所を突き回す必要は無い。
自分1人では、目撃者を特定する事すら不可能なのだ。
口封じをするべく闇雲に探すよりも『証言して逆恨みされる事に怖気付いたに違いない』と、そう結論付ける方がよほど気が楽だった。
ただ、当主は『失敗』を許さない。
今日この空港に招集されたのは、いずれも信頼厚い側近達。
本気度が伺えるメンバーの中に自分がいるのは、いざと言う時に囮となり楯となる為。
これはしくじった自分への罰なのだと、男は正確に理解していた。
だからこそ、今回の任務で失敗する訳にはいかない。
分家へ追放されるなんて不名誉は、死んでも避けたなければならないのだから。
🟰🟰🟰
(side 切藤蓮)
遥から再び連絡があったのは、離陸時間が1時間前に迫ったときだった。
スピーカーにした中野のスマホから聞こえるのは、遥の声と周りの物音。
「お前、今どこにいんだよ。」
『何処って、搭乗手続き終わってラウンジにいるけど?』
コイツ、俺達が止められない状況になるまで敢えて連絡無視してやがったな。
「オイ、この馬鹿女ーー」「蓮のお説教はいらないわよ、後でちゃんと拓也さんに怒られるし。
で、私はどうしたらいいの?」
俺が作戦を立てている事を微塵も疑わない言い方に、溜息が出る。
一度目の電話が切れてから俺達がどんだけ焦ったか…目をかっぴろげて見せてやりたい。
当初遥を囮にする事に難色を示していた親父と翔だったが、俺の『アイツがやるって決めて止まる訳ねぇだろ。』と言う説得(?)に、納得せざるを得なかった
遥のそう言った性格は子供の頃から嫌と言うほど目にして来たから。
『そうだな…遥ちゃんだもんな。分かった、では彼女を絶対に守りつつ丈一郎を家から引っ張り出せる策を練ろう。』
親父の号令で意見を出し合ったが、何せ時間が無い。
俺が大筋を決めた計画を細部まで詰め終わった頃には、全員が疲弊してグッタリとソファに沈み込んでいた。
こっちの苦労も知らず『ラウンジのケーキが美味しい』なんてゴミみたいな情報を付け加えて来る女に、薄っすら殺意が湧く。
ーーそれでも、これから危険に飛び込むのは遥だ。
その本人が全幅の信頼を置いて来るのなら、応えなくては。
「いいか、遥。まず絶対に無茶はしないって約束しろ。」
そう前置きしてから、確認作業に入る。
「服はどんだけ持って来てる?」
『パリコレ並みに奇抜な物から、引き篭もり並みに地味な物まで一通り。』
よし、読み通りだ。
遥なら、変装の可能性を考えて準備して来ると思っていた。
「上出来。そしたら、両方一段階くらい落とした服がいい。奴等は遥を尾行する筈だ。まず派手な服で印象付けて、途中のトイレで地味な方に着替えろ。」
『別人に変身するって訳ね。』
「そうだ、それで奴等の目を欺いて到着ロビーに出られる。」
🟰🟰🟰
遅い…あまりにも遅すぎる。
男達は苛々と組んだ腕を組み替えた。
遥がトイレに入ってから、ゆうに40分は経過している。
まさか、見逃したのか?
しかし、あんな派手な服装の人間に気付かない訳がない。
不安に駆られた男達だったが、たった今出てきた1人の女に目がいく。
白のニットにデニム、キップをかぶり、マスクとサングラスをしている。
スニーカーを穿いたその足が遠ざかって行くのを見ながら、違和感を覚えた。
あのスーツケースは、遥と同じ物だ。
そこで気が付いた。
「着替えたんだ!急げ、追うぞ!」
やや遠くなってしまったが、十分に間に合う距離だ。
以前蓮が電話で『警戒するように』と話していたから、目立たない格好に変えたのかもしれない。
「しかし、ただ服を変えただけとは…頭の出来を疑うな。」
うっかり騙されそうになった事など忘れて、男達は遥を嘲った。
時間が経ったせいか、周りに人は少なくなっている。
何もかもが自分達に味方しているかの様だ。
このままロビーへ入れば、外まではあと少し。
計画の成功を確信した男達の口角が上がる。
しかし、彼等には知らない事実が3つあった。
まず1つ目は、『トイレから出るのはなるべく時間を置いてから…できれば30分以上経ってからな。』
電話で蓮に言われた遥が、その約束を忠実に守っていた事。
2つ目は、昨日から爆発的に拡散されているSNSの事だ。
内容は、大人気KPOPアイドルグループの1人が『お忍びで来日する』と言うもの。
空港に着く時間が午前中だと特定までされていて、今もなお界隈を大きく賑わせている。
そして3つ目。
これも2つ目のKPOPアイドルに関する事だが、彼女が所属する5人組のグループは、全員が黒髪のロングヘアーである。
彼女達のファン層は10代~20代の前半。
この年頃と言うのは、自分の推しの髪型や服装を真似る傾向にある。
更に言うと、今はその世代の殆どが春休み中で時間に融通が効く。
それら全てを踏まえた結果、どうなるか。
遥を完全に射程圏内に入れた男達が、ロビーへと続く角を曲がった時だった。
目に入って来たのは、人、人、人の群れ。
何百と言う黒髪ロングのうら若き女性達の目が、食い入るようにこちらを見ている。
SNSの情報を聞き付けて集まった彼女達は、ずっと失望していた。
ゲートから出てくるのは一般客ばかりで、お目当ての推しが現れる気配が無い。
丁度到着便が落ち着いたタイミングなのか、先程からは人影すらまばらである。
もしかして、ガセだったんじゃないの?
確かに空港職員は『その様な予定はございません!』の一点張りだったけれど。
悲壮な空気を漂わせた彼女達は、諦めモードで次の乗客を見て言葉を失った。
ラフな服装でも分かる、抜群のスタイルの良さ。
サラサラの黒髪ストレートのロングヘアー。
そしてキャップ、マスク、サングラスと言う如何にも『お忍び』っぽい格好。
更に言うと、後から登場したスーツの2人組が(男達にとっては非常に不名誉な事に)ボディガードに見えたのだ。
「イヴだ!!」
誰かが叫んだのを皮切りに、大歓声が上がる。
真っ先に駆け寄った数人に続いて、女波が大挙して押し寄せる。
遥を追っていた後方の男達は、あっという間に囲いの外に弾かれてしまった。
「クソッ!どけ小娘共!」
激昂して叫ぶも、その低音は凄まじい高音に掻き消される。
それどころか…
「ちょっと!このオヤジうちのお尻触ったんだけど!」
「痴漢だ!」
「最低!誰か警察呼んで!」
大騒ぎの渦中にあっても、敵を同じくした女子の結託は鋼の如し。
「こ…この俺が…痴漢だと!?」
動揺している間に、誰が呼んだのか本当に警官がやって来た。
まだ距離はあるが、確実に目が合っている。
これは相当に不味い。
何故なら、遥を気絶させる為の薬品を所持しているのだ。
「一旦退却するぞ!」
唯一残された後方の退路に逃げ込みながら振り返ると、遥の姿はもう見えなくなっていた。
「畜生、どうなってるんだ!」
「遥を『イヴ』と呼んでいた…別人と間違われているんじゃないのか?」
何て不運なんだ…しかし、暫く追う事はできない。
「対象を見失った!服装が変わっているから気を付けろ!」
急いで仲間に連絡し、新たな服装の説明をしていたその時。
目の前に数人の警察官の姿が飛び込んで来た。
「先程はどうも。別室でお話しを聞かせていただきたいのですが?」
いつの間に、こんなに近付かれていたのだろうか。
咄嗟に切った電話の向こうで何か言っていた気がしたがーー
2人にはもう、どうする事もできなかった。
🟰🟰🟰
時を同じくする頃、空港の周りで切藤家を警戒する車にも異変が起こっていた。
「なんだ…この渋滞は…。」
事前調査では、この道はそれ程混まない筈だった。
それなのに、観光シーズンと言う事を加味しても余りある程の渋滞に見舞われている。
計画では、捉えた遥を乗せた車を挟むように2台で護衛する筈だったのだがーー
「これでは難しいな。」
恐らく、合流する事すらできないだろう。
ーー偶然にしては出来すぎなのではないか?
ーーいや、事故でもないのに渋滞を引き起こすなんてできる訳かないか。
一瞬、何かの力が働いている事を疑ったが思い直す。
「渋滞で身動きが取れない。悪いが後はそちらに任せる。」
念の為2台で来ていて良かった。
そう思って、もう片方に任務を託そうとした。
したの、だがーー。
🟰🟰🟰
「ふざけるな、この下郎が!」
口角から泡を飛ばして怒鳴っているのは、もう一台の護衛担当者。
彼は、先程の男とは空港を挟んだ反対側で待機していた。
こちらも渋滞はしていたものの、身動きが取れない程ではなく。
そろそろ合流の為に動こうかと、思っていた矢先だった。
ガツンッ
鈍い音がして、前の車が手で触れそうな距離にいる事に気付く。
ぶつかった、と認識した時にはもう車外に飛び出していた。
怒りの原因は、これが当主から賜った大切な車だから。
ーーなんて事は無く、単純に男が短気だったからだ。
特に『下々の者』が自分に楯突くとなると、我を忘れる。
霊泉家の中でも特に『尊い血』を重んずる、所謂過激派の1人であった。
そんな彼の前に立ち塞がってしまったコンパクトカーからは、何の応答もない。
「出てこい、土下座しろ!」
相手の車の窓ガラスを乱暴に叩くと、ドアが開いた。
溢れる怒りのままに殴りかかろうとした男は、動けない事に気付く。
な、なんだ!?
暫くして、どうやら胸ぐらを掴まれているのだと認識した。
そこで初めて、目の前の相手を視界に入れる。
コンパクトカーに、どうやってこの巨体を捩じ込んでいたのだろうか。
そう思ってしまう程、ガタイのいい外国人だ。
「君がぶつかってきたんだろう!後部座席には子供が乗っているんだぞ!」
イカツい顔を歪める相手は、流暢な日本語で話した。
胸を締め上げられた男は苦しい筈なのに、その言葉に我を忘れる。
「黙れ!蛮国人が我が祖国の言語を口にするな!」
その刹那、男の足がブランと宙に浮いた。
「君のような人間が相互理解を阻むと、何故気付かない?」
青い瞳が怒りに燃えてその腕を振ると、片手で持ち上げられた男の体が、ブンッと力の無い人形の様に揺れた。
まるで重さなど感じていないかのようだ。
遠くからサイレンの音がする。
道路でこんな事を繰り広げれば、通報されるに決まっていた。
ハッと我に返って逃げようと暴れるが、太い腕は微塵も揺るがない。
それどころか、益々キツく締め上げてくる。
男は漸く、手を出してはいけない人間に喧嘩をふっかけたのだと気付いた。
だが、時すでに遅し。
苦しさに呻く男は泡を吹いて、やがて意識を失った。
🟰🟰🟰
「何をやってる!どいつもこいつも!!」
残された2人ーー敷地内に停めた車の中の2人は、度重なる仲間の失態に焦っていた。
このまま作戦が失敗したら、遥は『切藤』の護りの中。
脅す材料が無ければ、蓮は当主にはならないだろう。
この世で尤も誉れ高い地位を拒絶する姿は腹立たしいが、与一郎があんな事になった今、他に相応しい者などいないのだ。
年嵩の方の男が一族を憂える一方で、隣の若い男は怯えていた。
恐れていた『都堕ち』が目前まで迫っている。
どうにかして打開策を、と思っていた彼の目に飛び込んで来たのは…人目を憚るように歩く黒髪の女。
空港から駐車場へ向かう後ろ姿に、心臓が早鐘を打つ。
その特徴が、内部からの連絡で聞いた着替え後の服装と合致していたから。
しかも、唯一変わっていないらしいスーツケースも聞いていたそれ。
尊き先祖の御魂はまだ、自分を見捨ててはいなかったのだ。
「遥がいます!」
指差した先を見たもう1人の男は瞠目し、急いで車を発進させた。
何故今ここに1人でいるのかは不明だが、『変装』が成功していると思い込んでいるんだろう。
油断したその背後にゆっくりと近付き、そしてーー。
「~~~ッ!!」
暴れる身体を抑え込んで、車の後部座席に転がす。
「荷物が見つかったら厄介だ!」
そう言われて、急いでスーツケースも引き込んだ。
急発進した車の中で、予備で持っていた薬を嗅がせる。
グッタリと動かなくなった所でサングラスを外した。
念の為の変装なのか、舞台女優のようなかなり濃いメイクをしている。
トイレに40分も籠っていたのは、これを完成させる為だったんだろう。
だが、無駄な事だ。
スーツケースを漁って見つけたパスポートには確かに『HARUKA MNAMINO』の表記。
そこまで確認すると、運転席の男に手柄を取られる前に行動を起こした。
手にしたスマホでタップする番号は、勿論ーー。
「当主様、捕まえました!」
ーー南野遥の命は、貴方様の手中です。
電話の向こうから、満足そうな唸りが聞こえた。
●●●
前回を超えるロング回でしたね。笑
三人称、激烈に難しいな…。
『男』ばっかり書いちゃってるけど、それぞれどのポジションの『男』の事か伝わってるかしら…💦
いやいや、読者様の素晴らしい頭脳ならきっと大丈夫ですよね!信じてます!笑
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3月30日、日本最大の国際空港は晴天だった。
満開を迎えた桜と、青空に飛び立つ機体のコントラストが眩しい。
そんな空港の一角に止まった、1台の車。
麗かな春の朝に不似合いの不穏な空気を放つそれには、2人の男が乗っている。
「そろそろ時間だ。中の様子は?」
「荷物受け取りレーンを出た所に、2人待機しています。」
「敷地の外はどうだ。」
「車2台で警戒しています。」
「いいだろう。そろそろ頃合いだ。」
彼等は目的である女性の写真をもう一度じっくり見る。
切れ長の目と黒髪のロングヘアが特徴的な、滅多にお目にかかれないような美人だ。
「下賤の血ではあるが…姿形と言い能力と言い、子を孕ませる器としては申し分ないな。」
年嵩の方の男の言葉に、隣に座る若い男が頷く。
「だからこそ当主様は危険視しておられるんですね。」
「そうだ。失敗は許されないぞ。」
彼等の目的は、今日アメリカから帰国するその女性の拉致。
一族の今後の繁栄の為、絶対に成功させなくてはならない任務だ。
『南野遥を確認しました。追跡します。』
内部で待機していた男からの連絡に、一気に緊張感が増す。
「了解。対象の服装は?」
『ショッキングピンクのニットに白のミニスカート、靴は豹柄のハイヒールで、サングラスをかけています。』
「それはまた…随分と派手な格好だな。」
「下々の流行りなのでは?」
「こちらにとっては恰好の目印になると言うのに…愚かだな。」
車内でそんなやりとりが行われる中、遥を追跡する男2人は壁に寄って立ち止まった。
スーツケースを引いた遥が向かったのは、女子トイレ。
利用者がひっきりなしに行き交うそこに男である彼等が入れば、騒ぎになってしまう。
だが、これくらいは想定内だった。
「ここで待つ。出入り口は1つだ、何の心配もない。」
よく見える所で、出てくる利用者を見張る。
彼等の役割は、遥が空港の外に出た瞬間に薬を嗅がせて気絶させる事。
そして、待機している車に乗せる事だ。
空港の外は人の数は多いものの、案外目撃され辛い。
誰もが、自分の荷物や次の目的地の事で手一杯だからだ。
それを利用して遥を拉致するのが、男達の計画だった。
『辺りに切藤拓也、翔、蓮及び笹森の姿はありません。』
空港の外周を見回る2台の車からは、切藤家の姿は確認されていないようだ。
監視の報告によると、拓也は自分の病院へ、翔は勤務先へ、蓮は家から出ていないらしい。
昨日傍受した電話で『迎えはいらない』と遥が言っていたが、その通りにしているのだろうか。
「了解。例の女を殺し損なったから警戒はしている筈だ。くれぐれも油断するなよ。」
トイレの前で待機する男が言うと、電話の向こうで息を呑む音がする。
それは車内で待機する若い方の男で、カッと顔を赤くして震えていた。
『お前のせいで』と、言外に言われている気がしたからだ。
この若い男にはもう、後が無かった。
本家と分家で計り知れない格差のある霊泉家で、彼はギリギリ本家筋のポジションに生まれた。
ただ、同じ本家と言えど血の濃い『上』の人間と、血の薄い『下』の人間は扱いが違う。
自分達のような人間が担うのは、汚れ仕事ばかりだ。
その日も命令を受けて、ある女を見張っていた。
そして、当主の孫である翔を誑かしたその薄汚い女を、腹の子諸共始末するべく階段から突き落としたのだ。
まさか、邪魔が入るなんてーー。
任務を失敗しただけでも怒り心頭の『上』に、更に目撃されたなんて事は到底言えなかった。
いつバレるかと神経を擦り減らしていたが、それは『事故』として処理されて。
何故目撃者が自分の存在を明かさなかったのか気にはなったが、丸く収まりそうな所を突き回す必要は無い。
自分1人では、目撃者を特定する事すら不可能なのだ。
口封じをするべく闇雲に探すよりも『証言して逆恨みされる事に怖気付いたに違いない』と、そう結論付ける方がよほど気が楽だった。
ただ、当主は『失敗』を許さない。
今日この空港に招集されたのは、いずれも信頼厚い側近達。
本気度が伺えるメンバーの中に自分がいるのは、いざと言う時に囮となり楯となる為。
これはしくじった自分への罰なのだと、男は正確に理解していた。
だからこそ、今回の任務で失敗する訳にはいかない。
分家へ追放されるなんて不名誉は、死んでも避けたなければならないのだから。
🟰🟰🟰
(side 切藤蓮)
遥から再び連絡があったのは、離陸時間が1時間前に迫ったときだった。
スピーカーにした中野のスマホから聞こえるのは、遥の声と周りの物音。
「お前、今どこにいんだよ。」
『何処って、搭乗手続き終わってラウンジにいるけど?』
コイツ、俺達が止められない状況になるまで敢えて連絡無視してやがったな。
「オイ、この馬鹿女ーー」「蓮のお説教はいらないわよ、後でちゃんと拓也さんに怒られるし。
で、私はどうしたらいいの?」
俺が作戦を立てている事を微塵も疑わない言い方に、溜息が出る。
一度目の電話が切れてから俺達がどんだけ焦ったか…目をかっぴろげて見せてやりたい。
当初遥を囮にする事に難色を示していた親父と翔だったが、俺の『アイツがやるって決めて止まる訳ねぇだろ。』と言う説得(?)に、納得せざるを得なかった
遥のそう言った性格は子供の頃から嫌と言うほど目にして来たから。
『そうだな…遥ちゃんだもんな。分かった、では彼女を絶対に守りつつ丈一郎を家から引っ張り出せる策を練ろう。』
親父の号令で意見を出し合ったが、何せ時間が無い。
俺が大筋を決めた計画を細部まで詰め終わった頃には、全員が疲弊してグッタリとソファに沈み込んでいた。
こっちの苦労も知らず『ラウンジのケーキが美味しい』なんてゴミみたいな情報を付け加えて来る女に、薄っすら殺意が湧く。
ーーそれでも、これから危険に飛び込むのは遥だ。
その本人が全幅の信頼を置いて来るのなら、応えなくては。
「いいか、遥。まず絶対に無茶はしないって約束しろ。」
そう前置きしてから、確認作業に入る。
「服はどんだけ持って来てる?」
『パリコレ並みに奇抜な物から、引き篭もり並みに地味な物まで一通り。』
よし、読み通りだ。
遥なら、変装の可能性を考えて準備して来ると思っていた。
「上出来。そしたら、両方一段階くらい落とした服がいい。奴等は遥を尾行する筈だ。まず派手な服で印象付けて、途中のトイレで地味な方に着替えろ。」
『別人に変身するって訳ね。』
「そうだ、それで奴等の目を欺いて到着ロビーに出られる。」
🟰🟰🟰
遅い…あまりにも遅すぎる。
男達は苛々と組んだ腕を組み替えた。
遥がトイレに入ってから、ゆうに40分は経過している。
まさか、見逃したのか?
しかし、あんな派手な服装の人間に気付かない訳がない。
不安に駆られた男達だったが、たった今出てきた1人の女に目がいく。
白のニットにデニム、キップをかぶり、マスクとサングラスをしている。
スニーカーを穿いたその足が遠ざかって行くのを見ながら、違和感を覚えた。
あのスーツケースは、遥と同じ物だ。
そこで気が付いた。
「着替えたんだ!急げ、追うぞ!」
やや遠くなってしまったが、十分に間に合う距離だ。
以前蓮が電話で『警戒するように』と話していたから、目立たない格好に変えたのかもしれない。
「しかし、ただ服を変えただけとは…頭の出来を疑うな。」
うっかり騙されそうになった事など忘れて、男達は遥を嘲った。
時間が経ったせいか、周りに人は少なくなっている。
何もかもが自分達に味方しているかの様だ。
このままロビーへ入れば、外まではあと少し。
計画の成功を確信した男達の口角が上がる。
しかし、彼等には知らない事実が3つあった。
まず1つ目は、『トイレから出るのはなるべく時間を置いてから…できれば30分以上経ってからな。』
電話で蓮に言われた遥が、その約束を忠実に守っていた事。
2つ目は、昨日から爆発的に拡散されているSNSの事だ。
内容は、大人気KPOPアイドルグループの1人が『お忍びで来日する』と言うもの。
空港に着く時間が午前中だと特定までされていて、今もなお界隈を大きく賑わせている。
そして3つ目。
これも2つ目のKPOPアイドルに関する事だが、彼女が所属する5人組のグループは、全員が黒髪のロングヘアーである。
彼女達のファン層は10代~20代の前半。
この年頃と言うのは、自分の推しの髪型や服装を真似る傾向にある。
更に言うと、今はその世代の殆どが春休み中で時間に融通が効く。
それら全てを踏まえた結果、どうなるか。
遥を完全に射程圏内に入れた男達が、ロビーへと続く角を曲がった時だった。
目に入って来たのは、人、人、人の群れ。
何百と言う黒髪ロングのうら若き女性達の目が、食い入るようにこちらを見ている。
SNSの情報を聞き付けて集まった彼女達は、ずっと失望していた。
ゲートから出てくるのは一般客ばかりで、お目当ての推しが現れる気配が無い。
丁度到着便が落ち着いたタイミングなのか、先程からは人影すらまばらである。
もしかして、ガセだったんじゃないの?
確かに空港職員は『その様な予定はございません!』の一点張りだったけれど。
悲壮な空気を漂わせた彼女達は、諦めモードで次の乗客を見て言葉を失った。
ラフな服装でも分かる、抜群のスタイルの良さ。
サラサラの黒髪ストレートのロングヘアー。
そしてキャップ、マスク、サングラスと言う如何にも『お忍び』っぽい格好。
更に言うと、後から登場したスーツの2人組が(男達にとっては非常に不名誉な事に)ボディガードに見えたのだ。
「イヴだ!!」
誰かが叫んだのを皮切りに、大歓声が上がる。
真っ先に駆け寄った数人に続いて、女波が大挙して押し寄せる。
遥を追っていた後方の男達は、あっという間に囲いの外に弾かれてしまった。
「クソッ!どけ小娘共!」
激昂して叫ぶも、その低音は凄まじい高音に掻き消される。
それどころか…
「ちょっと!このオヤジうちのお尻触ったんだけど!」
「痴漢だ!」
「最低!誰か警察呼んで!」
大騒ぎの渦中にあっても、敵を同じくした女子の結託は鋼の如し。
「こ…この俺が…痴漢だと!?」
動揺している間に、誰が呼んだのか本当に警官がやって来た。
まだ距離はあるが、確実に目が合っている。
これは相当に不味い。
何故なら、遥を気絶させる為の薬品を所持しているのだ。
「一旦退却するぞ!」
唯一残された後方の退路に逃げ込みながら振り返ると、遥の姿はもう見えなくなっていた。
「畜生、どうなってるんだ!」
「遥を『イヴ』と呼んでいた…別人と間違われているんじゃないのか?」
何て不運なんだ…しかし、暫く追う事はできない。
「対象を見失った!服装が変わっているから気を付けろ!」
急いで仲間に連絡し、新たな服装の説明をしていたその時。
目の前に数人の警察官の姿が飛び込んで来た。
「先程はどうも。別室でお話しを聞かせていただきたいのですが?」
いつの間に、こんなに近付かれていたのだろうか。
咄嗟に切った電話の向こうで何か言っていた気がしたがーー
2人にはもう、どうする事もできなかった。
🟰🟰🟰
時を同じくする頃、空港の周りで切藤家を警戒する車にも異変が起こっていた。
「なんだ…この渋滞は…。」
事前調査では、この道はそれ程混まない筈だった。
それなのに、観光シーズンと言う事を加味しても余りある程の渋滞に見舞われている。
計画では、捉えた遥を乗せた車を挟むように2台で護衛する筈だったのだがーー
「これでは難しいな。」
恐らく、合流する事すらできないだろう。
ーー偶然にしては出来すぎなのではないか?
ーーいや、事故でもないのに渋滞を引き起こすなんてできる訳かないか。
一瞬、何かの力が働いている事を疑ったが思い直す。
「渋滞で身動きが取れない。悪いが後はそちらに任せる。」
念の為2台で来ていて良かった。
そう思って、もう片方に任務を託そうとした。
したの、だがーー。
🟰🟰🟰
「ふざけるな、この下郎が!」
口角から泡を飛ばして怒鳴っているのは、もう一台の護衛担当者。
彼は、先程の男とは空港を挟んだ反対側で待機していた。
こちらも渋滞はしていたものの、身動きが取れない程ではなく。
そろそろ合流の為に動こうかと、思っていた矢先だった。
ガツンッ
鈍い音がして、前の車が手で触れそうな距離にいる事に気付く。
ぶつかった、と認識した時にはもう車外に飛び出していた。
怒りの原因は、これが当主から賜った大切な車だから。
ーーなんて事は無く、単純に男が短気だったからだ。
特に『下々の者』が自分に楯突くとなると、我を忘れる。
霊泉家の中でも特に『尊い血』を重んずる、所謂過激派の1人であった。
そんな彼の前に立ち塞がってしまったコンパクトカーからは、何の応答もない。
「出てこい、土下座しろ!」
相手の車の窓ガラスを乱暴に叩くと、ドアが開いた。
溢れる怒りのままに殴りかかろうとした男は、動けない事に気付く。
な、なんだ!?
暫くして、どうやら胸ぐらを掴まれているのだと認識した。
そこで初めて、目の前の相手を視界に入れる。
コンパクトカーに、どうやってこの巨体を捩じ込んでいたのだろうか。
そう思ってしまう程、ガタイのいい外国人だ。
「君がぶつかってきたんだろう!後部座席には子供が乗っているんだぞ!」
イカツい顔を歪める相手は、流暢な日本語で話した。
胸を締め上げられた男は苦しい筈なのに、その言葉に我を忘れる。
「黙れ!蛮国人が我が祖国の言語を口にするな!」
その刹那、男の足がブランと宙に浮いた。
「君のような人間が相互理解を阻むと、何故気付かない?」
青い瞳が怒りに燃えてその腕を振ると、片手で持ち上げられた男の体が、ブンッと力の無い人形の様に揺れた。
まるで重さなど感じていないかのようだ。
遠くからサイレンの音がする。
道路でこんな事を繰り広げれば、通報されるに決まっていた。
ハッと我に返って逃げようと暴れるが、太い腕は微塵も揺るがない。
それどころか、益々キツく締め上げてくる。
男は漸く、手を出してはいけない人間に喧嘩をふっかけたのだと気付いた。
だが、時すでに遅し。
苦しさに呻く男は泡を吹いて、やがて意識を失った。
🟰🟰🟰
「何をやってる!どいつもこいつも!!」
残された2人ーー敷地内に停めた車の中の2人は、度重なる仲間の失態に焦っていた。
このまま作戦が失敗したら、遥は『切藤』の護りの中。
脅す材料が無ければ、蓮は当主にはならないだろう。
この世で尤も誉れ高い地位を拒絶する姿は腹立たしいが、与一郎があんな事になった今、他に相応しい者などいないのだ。
年嵩の方の男が一族を憂える一方で、隣の若い男は怯えていた。
恐れていた『都堕ち』が目前まで迫っている。
どうにかして打開策を、と思っていた彼の目に飛び込んで来たのは…人目を憚るように歩く黒髪の女。
空港から駐車場へ向かう後ろ姿に、心臓が早鐘を打つ。
その特徴が、内部からの連絡で聞いた着替え後の服装と合致していたから。
しかも、唯一変わっていないらしいスーツケースも聞いていたそれ。
尊き先祖の御魂はまだ、自分を見捨ててはいなかったのだ。
「遥がいます!」
指差した先を見たもう1人の男は瞠目し、急いで車を発進させた。
何故今ここに1人でいるのかは不明だが、『変装』が成功していると思い込んでいるんだろう。
油断したその背後にゆっくりと近付き、そしてーー。
「~~~ッ!!」
暴れる身体を抑え込んで、車の後部座席に転がす。
「荷物が見つかったら厄介だ!」
そう言われて、急いでスーツケースも引き込んだ。
急発進した車の中で、予備で持っていた薬を嗅がせる。
グッタリと動かなくなった所でサングラスを外した。
念の為の変装なのか、舞台女優のようなかなり濃いメイクをしている。
トイレに40分も籠っていたのは、これを完成させる為だったんだろう。
だが、無駄な事だ。
スーツケースを漁って見つけたパスポートには確かに『HARUKA MNAMINO』の表記。
そこまで確認すると、運転席の男に手柄を取られる前に行動を起こした。
手にしたスマホでタップする番号は、勿論ーー。
「当主様、捕まえました!」
ーー南野遥の命は、貴方様の手中です。
電話の向こうから、満足そうな唸りが聞こえた。
●●●
前回を超えるロング回でしたね。笑
三人称、激烈に難しいな…。
『男』ばっかり書いちゃってるけど、それぞれどのポジションの『男』の事か伝わってるかしら…💦
いやいや、読者様の素晴らしい頭脳ならきっと大丈夫ですよね!信じてます!笑
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