【完結】桜の記憶 幼馴染は俺の事が好きらしい。…2番目に。

あさひてまり

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解決編

24.(※エロあり)

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現在と回想を行き来するので🟰で区切ります。

side蓮高校編52話『予兆』を深堀りして、解決編『1』の後半、『2』辺りの蓮視点になります。

●●●

(side 切藤蓮)




霊泉丈一郎とその息子の逮捕。

世間は大騒ぎしてるが、時刻も内容も全て計画通りだ。

政府関係者、警察高官、報道責任者との緊密な連携により成し得た大捕物。

だけど、まだ油断はできない。

責任逃れや罪の揉み消しは奴等の十八番。

その為に何をやらかすか分かったもんじゃない。


だから、

霊泉家の天敵がいる京都の、ある土地へ。

人気高級旅館の予約が取れたのも、多忙な美香さんが休暇を取得できたのも、全ては偶然じゃない。

入念に練られた計画通りだ。


ただ一つ想定外だったのは…何に替えても守るべき存在が、そこから外れてしまった事。

自らの足で安全圏を出て、そしてーーいまも尚、行方が分からない。


霊泉家の事を相川達に明かすつもりは無かったが、現状で晴の手掛かりを持ってるのはコイツらだけ。

何があろうと『自己責任』とまで言ってるし、仮にも旧家『月島』の直系なら、もしもの場合は何かしら身を守る術はあるだろう。

まぁ、無かったとしても見捨てる事に大した抵抗は無い。

そう判断して、俺がコイツらの身を案じて躊躇ってると思ってるらしい中野に乗る方向で行く事にした。

これから話さなければならない記憶に、内心で葛藤しながら。

俺自身が思い出したく無いのに加えて、聞きたく無い事実も、恐らくコイツらは知ってる。

大谷の件も相川の件も、俺は晴から何も聞いていなかった。

晴にはまだ秘密がある。

少しずつスレ違っていく中で感じた確かな違和感を、知るのが怖いーー。



🟰🟰🟰



話しは大学入学直後、遥から『アメリカで医師免許を取る』とメールが来た頃にまで遡る。

正直言って予想だにしていなかったそれに、俺は戸惑っていた。

遥と医者の組み合わせは、どうしても翔を連想させる。

メールのやり取りでは何度か『彼氏ができた』旨の報告は受けていた。

だけど、どれも長続きはせず。

そんな状況での『医者になる』宣言は…つまり遥はまだ翔を諦めてないのか?

いや、でも3年以上会ってない筈だし…何より遥が好きな男の為に自分の将来を決めるとは考え辛い。

熟慮した挙句『翔君の話しはしない事』と言う約束を守る事にした。

大学卒業まで帰国しないのは変わらないから、この件は晴には黙ってるつもりだ。

『どうして医学部にしたのか』なんて聞かれても、馬鹿正直に『翔の事好きだからじゃね?』なんて言う訳にもいかねぇし。

本当にそれが理由かは分からないが、遥が今も翔を好きだとしても何も言えない。

本来なら『次の恋をしろ』とか言うのが正しいんだろうけど。

俺だったら、晴を諦めるなんて絶対に無理だから。


だから『頑張れよ』と返信するに留めておいた。



それから少し経ったGWの直前。

晴が伊藤と偶然会った日、俺は翔に呼び出されていた。

待ち合わせのカフェには既に翔がいて、その隣りにはーー美優の姿があった。

これはどんなに鈍い奴でもピンと来るだろう。

『美優と婚約したんだ。』

案の定の内容に、内心ヒヤリとする。

弾けるような笑顔の兄を祝いたい気持ちは大いにある。

義姉となるのが美優だって言うのにも、何の異論も無い。

だけど、素直には喜べなかった。

『入籍は年明けかな』と言う2人を見送って、帰路に着く。

複雑な心境で帰った家に晴がいて、心からホッとした。

あぁ…癒される…。

それでも、まだ動揺していた俺は、この時の晴の違和感を見逃したまま部屋に入ってしまった。

「遥ーーー。」

名前を口に出すとツキリと胸が痛んだ。

自分でも予想外だった。

まさかこんなに、遥に対して心が揺れている事に。

遠くなった距離でもずっと支えてくれたその存在が、自分の中で大きくなっていた事にーー。

俺にとって遥は同志であり、妹のようにも姉のようにも感じるようになっていた。

『入籍したら晴と遥にも報告するから、それまで内緒な!』

嬉しそうな翔の表情が脳裏を掠める。

「どうすんだよ…。」

それを聞いた時の遥の心境を思うと…柄にもなく弱々しい呟きが漏れる。

俺から遥に言うべきか…?

いや、でも…あくまでもまだ婚約だし。

縁起でもないが、婚約破棄だってそう珍しくない。

入籍までまだ猶予はある、今はまだ言うべきじゃないだろう。

その時が来るまでは、俺の胸にしまっておく。

そう結論付けて、この件は敢えて考えないようにした。




🟰🟰🟰


「その時、伊藤由奈莉と話した内容が『ハルカが初恋の人をまだ好き』だって晴ちゃんから聞いたわ。」

相川はそう言うと、眉を顰めて続ける。

「それと『ハルカが医者を目指してる』って話もここで知ったみたい。」

この時…と言うより、現在進行形で晴は恐らく、遥の初恋が俺だと思っている。

そして、俺達が過去に付き合っていたと誤解している。

その遥が医者を目指すと聞いたら…俺が翔を想像したように、晴はきっと…

「ハルカが蓮を追いかけてると思ったでしょうね。下手したら、ヨリを戻そうとしてるって考えてもおかしくないわ。」

嫌な予想をハッキリ言葉にされて、奥歯を噛み締めた。


晴が俺と遥の関係を誤解していた事。

伊藤がうっかり遥の好きな相手を明かしそうになって、中途半端に濁した事。

遥の将来の夢が変わった事を、翔に関係すると思った俺が言わずにいた事。


これらが絡まり合って、より大きな誤解を生んでしまっていた。

誰が悪いかと言えば、俺が悪い。

どうしてあの時気付いてやれなかったんだろう。

ほんの少し感じだ違和感を追求していれば、こんな事にはならなかったのにーー。

晴は不安を感じながら、それでも何も言わずに俺と接していた。

「蓮さんの事、信じてたんですね。」

呟やくような木村の言葉に、胸が痛む。

不安にかられながらも、俺が遥と『ヨリを戻す』なんて無いと信じてくれていたのに…。

「いや、これもう誰も悪くなくないか?だって誰一人悪意がないだろ。」

中野が俺の肩に手を乗せてそう言うと、ふと思案顔になる。

「でもさ、相川さん達の話しだと晴人は『蓮も遥の事が好き』って思ってるんだろ?それは何処でそうなったんだろうな。」

確かに、今の話しだと『遥が今も俺の事を好き』だと誤解するのは分かる。

だけど、俺もそうだって言うのは一体何処で確信したんだ?

俺達の視線を受けて、相川と木村が顔を見合わせる。

「それが…蓮さんが晴人君を追い返したって話に憤慨しすぎて、その辺りの記憶が曖昧なんです。」

「それまでアンタ達が上手くいってないなんて知らなかったのよ。バイトの事でちょっと揉めたのは聞いてたけど、クリスマスに仲直りしたって話しだったし。
大学で蓮に追い返された後、余りにも元気がないのを見兼ねて一から十まで吐かせたから情報量が多くて。」

使えねぇ上に『追い返された』を強調してくる辺りが腹立たしい。

「なんか…花が…いや、関係ないか…とにかく!ここまではお互いの情報が擦り合わさったわね。」

小声でブツブツ言ってた独り言は聞き取れなかったが、相川が目線で促して来る。

「それで、その先はどうなったの?」





🟰🟰🟰


同棲生活はすこぶる順調だった。

当初はハウスキーパーを雇おうと思ってたが、俺と達だけの空間に他人が入るのが嫌で、家事は自分達でしてる。

憲人さんには『晴を甘やかすな』と言われたが、晴の為なら何をするのも楽しい。

実際、夕食作り以外はほぼ俺がやってる。

朝が弱い晴の代わりに洗濯して、簡単な朝食(トーストとカップスープ)を作り、出来上がったら晴を起こして一緒に食べる。

俺が二限からの日も晴の一限に合わせて家を出て、授業が終わったら迎えに行く。

帰ったら秒速で課題を終わらせて、部屋中を掃除。

掃除ロボットがいるから床はシートで拭くだけ、ホコリを叩いて換気して、トイレと洗面所も綺麗にする。

この辺りで課題を終えた晴が夕食を作り始めるから、俺は風呂掃除。

晴の飯は本当に美味い。

本人は『形が…』なんて気にしてるが、あの手から創造された物が不味い訳がない。

俺もその気になればできるんだろうが、敢えてやらないのは晴の飯が食べたいからだ。

ただ、エプロンを付けた後ろ姿が可愛すぎてキッチンで盛ってしまうのが問題で、俺は何度も怒られてるけど。


俺が迎えに行けない日は、晴が俺の大学に来る事もある。

これに対しては、極力避けたいのが本音だ。

透き通る白い肌、風に揺れる少し伸びたアッシュブラウンの髪、小柄だけど長い手足。

男女問わず、すれ違い様にチラリと横目で見られている事に本人は気付いてない。

『蓮の幼馴染君てさ、雪とか桜みたいな儚げな雰囲気あるよね。』

大学で連んでる大介にそう言われた時は危機感が募ったが、どうやら晴は俺を迎えに来るのが好きらしい。

俺としても、毎回嬉しそうに駆け寄って来る様子を見てしまうと『来るな』とは言い辛い。

そんな訳で、できる限り頻度は抑えつつ、晴を待たせないように秒速で駆け付けるようにしている。

ただ、時にはどうしても遅れる事もあって。

『悪い、教授に捕まって遅くなった。もう着いてるよな、何かあった?』

いつもの待ち合わせ場所にいない晴に焦って電話すると、門の前にいるとの返事。

電話が切れた瞬間猛ダッシュする俺を見て、周りがビビッてるがどうでもいい。

「晴。」

直前で息を整えて、ゆったり歩きながら呼びかける。

余裕無さすぎなダセェ所を晴に見られたくないから。

「蓮、お疲れ!」

100億点の笑みを貰って思わず抱き締めそうになったが、晴に身を引かれた。

「ま、待った!ここはダメ!」

大学の門の前なんて人の目が多すぎる、って事らしい。

晴に好奇の目が注がれるのが嫌で、大学では俺達の関係を知る奴はいない。

いつかのクソ女みたいに、晴がダルい絡まれ方をされるのを防止する目的もある。

触れないのは不満だが仕方ない。

そう気持ちを切り替えて、今日のデート確認をしようとしたんだが…。

「やっぱ、帰る。」

唐突な予定変更に体調不良を心配するが、晴は上目遣いで続けた。

「…ダメ?」

その瞳の奥に、甘えと密かな情欲を感じて喉が鳴った。

深いキスを強請る時に似たその顔は、俺の理性を簡単に追い込む。

言葉を発するのももどかしくて、晴の手を引いてタクシーに乗り込んだ。


家のドアを開けた時にはもう限界で、直様唇を奪った。

甘い声を上げる晴を片手で抱き上げて、空いてる手でリュックと服を剥ぎ取っていく。

真っ白な肌を晒した晴をベッドに横たえて、性急に覆いかぶさった。

「ま、待って…」「無理。我慢できねぇ。」

準備が…と慌てる晴を宥めて、身体中に舌を這わせていく。

酷い飢餓状態のような身体を満たせるのは、目の前のこの存在だけだ。

そそり立つお互いのモノを擦り合わせて熱を吐き出してから、ほんの少し余裕を取り戻してバスルームへ向かった。

ボンヤリした晴は、普段なら絶対に嫌がる後ろの準備もやらせてくれる。

なかなか無い機会に、そこを舐め回したい気持ちを懸命に我慢してゆっくりと自身を沈めた。

うねるナカが、俺を奥へと誘い込むのが堪らなく気持ちいい。

弱い場所を擦り上げると、晴の身体が震えた。

「んっ、イイ…もっと…」

強請られて、いつもみたいに焦らす余裕も無く腰を振る。

「晴、好き…可愛すぎてヤバイ…」

気持ちを吐き出す度にナカが締まって、晴が喜んでるのが伝わって。

望むままに、何度も甘く鳴かせ続けた。


ようやく理性が仕事するようになったのは、4つめ目のゴムを付け替えようとした時。

ほぼ眠ってるような状態の晴を見て、やっと動きが止まる。

「やべッ…晴、大丈夫か?」

やりすぎを自覚して問いかけると、晴は小さく「ん…。」と言って、俺の腰に足を絡めた。

その動きに興奮してまた律動を再開しそうになったが、これ以上は晴が無理だ。

代わりに、白い太腿に鬱血痕を幾つも付ける事で何とか持ち堪えた。

抱き上げてシャワーを浴びてから、綺麗にしたシーツに横たわる。

穏やかな寝息を立てる晴を抱き締めて、これ以上ない幸せを感じていた。




🟰🟰🟰


「…なんか惚気しか無かった気がするけど…。」

「あ、でも!リリナの件はこの頃なのでは?」

ウンザリ顔の相川とは裏腹に、木村がポンと手を叩く。

「リリナって、テレビに出てる『高学歴モデル』?」

「そうです、蓮さんと同じキャンパスなんですよね?」

中野の疑問に答えつつ俺に話が振られる。

「いや知らねぇ。どいつ?」

「は?蓮モーションかけられてたんじゃないの?」

「そんなんイチイチ覚えてられっかよ。」

言い寄って来る女なんて正直全員一緒に見える。

「こ、これだからモテ男は…!」

ギョッとしつつ相川が中野にスマホ検索させた画像は、確かに見覚えがあった。

「あぁ、環境学部の奴か。ソイツと晴が?」

「どうやら、蓮の事で晴ちゃんにマウント取ってきたらしいわよ。」

「は?」

俺の記憶ではピーチク煩いコイツに対して発したのは『邪魔。』の一言だった筈なんだが。

大体いつ晴に接触した…?

まさか、俺が教授に捕まって晴を待たせた日か?

「クソ、やっぱこっち来させるんじゃなかった。」

「安心して。どうやら言い返したみたいだから。」

「…晴が言い返した?」

「私も意外だったけど。『蓮がお世話になってます』とか言われて、『それは俺が言うやつだから!』って思ったんだって。」

他人との争いを極端に嫌うあの晴が…。

俺の恋人として、独占欲を見せてくれたのか?


「晴人君、強くなりましたよね。蓮さんに愛されて自信がついたんだと思います。」


かつて晴と自分の弱さを重ねていた木村の言葉が、胸に落ちて波のように揺らめいた。





●●●
エチシーン回想がありますが、相川達にはしっかりオブラートに包んで伝えてると思って下さい。
蓮も流石にその辺は配慮します。笑























高校入学組の相川、『桜守り』の存在を知らないので解決編『21』からずっと「花が…」ってモニョモニョ言ってる。笑

大事な所だ、頑張って思い出してくれ!
























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