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高校生編side蓮
51.思いでとこれから(※エロ有り)
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「萱島晴人。」
呼ばれて、晴が卒業証書を受け取りに段上へ向かう。
『晴人ー!』
『晴ちゃーん!』
『萱島せんぱーい!』
男女問わず声援が飛んで、晴が照れたように笑った。
「彼氏、今の見ました?隠れファンが増えるんじゃありません?」
俺の横に座るクロが小突いてくる。
「…まあ、今日で最後だし。金輪際関わらせねぇから。」
「怖ッ!でも式が終わったら、後輩がここぞとばかりにアタックしてくるかもよ?」
それは懸念している。
晴は後輩に人気があって隠れファンが多い。
隠れている分には何をしてくる訳でもないので放っているが、最後だからと寄って来るなら話は別だ。
「あ、啓太君の番だ!啓太くーん!」
段上の中野にも大きな声援が湧き、晴も席から呼びかけているのが見えた。
うちの学校の卒業式は他校と比べると特殊だ。
式典用のホールの2階席に保護者、3階席に在校生と言う配置で、卒業生と来賓は所謂アリーナ席。
どのような卒業式にしたいか生徒会を中心に自分達で決める為、毎年違った催しとなる。
学校側からの要望は『卒業証書授与』のみ。
それ以外は校則の範囲内で自由だから、俺達特進は服装すら制限がない。
『最後だし、コスプレになる前に制服着とこーぜ。』
何となく晴が喜びそうでそう言ったのがクラスの相違になり、今年の特進は全員制服で出席している。
因みにその制服姿は晴のお気に召したようなので俺としては窮屈な思いをした甲斐があるってもんだ。
「続いて特進クラス。赤嶺昴。」
アナウンスが入り、俺達のクラスへの授与が始まった。
来賓席に座る面々が、真剣な面持ちで段上に視線を向け出す。
1年の4月に30人いたクラスメイトは、18人にまで減っていた。
これでも今年は多い方で、この精鋭達の中から将来を担う人物が輩出されていく訳だ。
来賓の中には有望株への投資目的で来てる奴もいるし、生徒側もそれでコネを作れたりとウィンウィンの関係だったりする。
「下級生見て!団扇持ってる!」
クロが笑う先にはアイドルのライブさながらの光景。
銀髪を輝かせた赤嶺が手を振って応えると、爆発的な歓声が上がった。
「これほんとに卒業式かよ。」
呟く俺の横でクロが耳を塞ぐ。
あ?コイツ何してんだ?
「切藤蓮」
疑問を持ったのと同時に名前を呼ばれて立ち上がった時だった。
『『きゃぁぁぁぁぁあ!!!』』
耳をつん裂くような悲鳴が方々で上がり、来賓席がギョッとしている。
構わず段上に行くと、理事長が苦笑しながらこっちを見ていた。
「おめでとう。相変わらず凄い歓声だな。」
卒業証書を渡しながら囁かれる。
受け取って振り向くと、眩しい程のフラッシュ。
1、2階席は団扇で埋め尽くされ、何故か3回席でもそれが振られている。
『ねぇ!目ぇ合ったんだけど!』『待ってあのピアスうちも買う!』『制服ヤバイヤバイ死ぬ!』
ヒートアップする会場を尻目に晴に目線を向けた。
式の前にはヤキモチを焼いていたが、機嫌が直った今は大丈夫そうだ。
楽しそうにこっちを見て「蓮ー!」なんて声を上げていて。
何故かその手には『ハートして』の団扇。
伊藤辺りに持たされたんだろう。
こんなに大勢の人間がいて、紛れもない好意がそこにあっても俺の目に入るのはただ1人だ。
「ん。」
親指と人差し指をクロスして、たった一人に向ける。
一瞬惚けたようにそれを見ていた俺の唯一は、自分の団扇を確認してボッと赤くなった。
『『ぎぃやぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!』』
会場が大パニックになり、止むを得ず20分の休憩を挟む事になったこの卒業式は後に伝説になった。…らしい。
式が終わり、最後のHRを終えて校舎の外へ出ると待ち構えていた女子の群れに捕まった。
『最後だから』を合言葉のように掲げて話しかけたりスマホを向けて来るのがウザイ。
そんなもんより、式の最中にクロと話した内容の方が問題だ。
視線を巡らせると、騒ぐ一団から少し離れた所に晴を見つけた。
男の後輩に、触れられそうな程近付かれた状態で。
「先輩のが欲しいんです!」
どうやら晴の第二ボタンを狙っているらしいソイツに、分からせる為近付く。
「全部俺のだから諦めて。」
晴の腰を抱きながら言うと、諦めたのか肩を落として去って行った。
「チッ、油断も隙もねぇな…。
晴、お前も。簡単にやろうとしてんじゃねぇよ。」
俺の怒りに、晴は「アイツもM大志望なのかな?
」とか頓珍漢な事を言っている。
「……あ~、うん。もうそれでいいわ。」
後輩野郎が哀れになるくらい鈍いが、まぁ気付かないならその方がいい。
「切藤、苦労するな。」
この3年間、俺がいない隙に晴狙いの野郎が近づかないようにしていた中野が笑いながらやって来る。
最後の最後にやらかしてるけどな、お前。
寄ってきたクロも含めていつもの如く揉めたり、晴の提案で写真を撮ったりする。
赤嶺と白田にも話しかけられて、落ち着いたら会う約束を交わした。
「晴、そろそろ出ようぜ。」
一段落して声をかけると、晴の表情が僅かに沈んでいる。
「どうした?」
視界の端で伊藤と話しているのは確認していた。
「え?いや、えっと…ちょっと寂しくて。」
少し違和感はあったが、伊藤が何かする訳ないかと思い直して晴の言葉に納得した。
「俺はやっと卒業できたって感じだけど。」
「マジ?」
「これでようやくお前と暮らせる。」
微笑む俺を見た女子が騒ぎ出して、晴が慌てたように背中を押してくる。
「…ッ蓮、早く行こ!」
はい、ヤキモチ可愛い。
それが顔に出ていたのか晴は不服そうだ。
「ねえ、何?」
「いや?キスしてぇなと思って。」
途端に赤くなるのも可愛い。
「後でだったら、いいよ。」
顔を背けてボソリと言われた言葉に、思わず手を伸ばした。
「晴…」
「バッ、後でだってば!」
ペシペシと叩かれた手を耳に這わせる。
「真っ赤だな。」
シてる時みたいに低く囁くと、晴の腰からヘニャリと力が抜けた。
さり気なくそれを支えて、抗議する晴と連れ立って校門を出る。
未だにうろついていた他校の女達が、配置された警備員に追い払われている。
「はいそこ!イチャついてないでカラオケ行くよー!」
クロと中野と合流して、いつも通りカラオケに行く事になった。
「俺、今日のために尾崎練習してきたから!」
なんて自慢気なクロには絶対言わないが、出会えた事に感謝している。
晴と離れて荒れていた俺を、体を張って助けてくれた存在。
まさか、一生付き合っていくであろう『友達』が俺にできるとは思わなかった。
明るさの裏に色々と抱えるこの友人の未来が、幸多いことを願う。
「この日の為に付き合わされたから、俺は何回も聞いてるんだけどな。」
呆れた顔の中野は、俺にとってはライバルだ。
晴と仲が良すぎて気に入らないが、絶対に晴を裏切らない奴だと言う事も理解している。
晴の親友がコイツなのは、まぁ納得してやってもいい。
それくらいには認めている。
そしてーー。
「マジ!?早く行こうよ!」
絶対に叶わないと絶望した事もあった、今俺の隣で笑っている大切な人。
子供の頃から欲しくて仕方なかった、俺の唯一。
晴の存在が無ければ、俺は他人と関わろうともしなかった。
何もかもどうでも良くて薄っぺらかった俺の人生にできた『友達』と『好敵手』と『恋人』。
全てを閉ざしていたガキの頃の自分に言ったら、信じるだろうか。
いや、多分信じないだろうな。
だけど、多分ーー。
『晴の1番が俺だ』って言ったら、喜ぶんだろうな。
そんな予感に、口許を綻ばせた。
「おぉぉ~!満開じゃん!!」
青空をバックに咲き誇るの満開の薄紅を見上げる。
晴が見つけた神社の桜は、今年も見事に満開だ。
「晴、準備終わった?」
「ん~…7割?」
「マジ?引越し明日だぞ。」
「いや大丈夫、細々した物が終わってないだけだから!」
明日には業者が来るのにそれで大丈夫なのか?
「必要最小限なのにさ!新巻出る度に遡って読みたいのに!」
どうやら新居に漫画を持ち込みたくて美香さんと揉めているらしい。
「あー、それは確かに読みてぇわ。」
子供の頃、『晴が好きだから』と読み始めた海賊の漫画は完結に近付いている。
「だよね!?え、じゃあ家行こう!蓮が言えば母さんOKするから、絶対!」
笑顔全開の晴を引き寄せて、腕の中に収める。
「何で?」
「ん、可愛かったから。」
はしゃぐ様子が愛おしい。
何より、明日から毎日この顔を見られると言う事象が幸せで仕方ない。
内心では俺だって、晴と同じくらいはしゃいでいる。
「てか、帰る前にやる事あんじゃねぇの?」
「あ!忘れてた!」
ここに来た本来の目的を忘れていたらしい晴に呆れながら、スマホを自撮り棒に固定する。
「待って!超良くない!?ちゃんと桜入ってるし!」
満開の桜をバックにツーショ撮ろうよ!
と言うのが晴の望みで、今日の目的だ。
その理由が「新居に飾りたいから」だと言われた時は幸せに頭を抱えた。
ここは俺にとって特別な場所だ。
初めて晴と唇を重ねたーーいや、無理矢理だったけど。
「晴、キスしていい?」
「え?」
「今度はちゃんと合意の上で。」
後悔している。
堪えきれずに自分の気持ちを押しつけてしまった事を。
ふいに唇に暖かい感触がして、背伸びした晴と目が合った。
「蓮、好きだよ。」
そして、もう一度唇が重なる。
胸に渦巻く苦い思いが甘く溶けて、晴の頭を抱き寄せた。
数えきれない程のキスをして、お互いを感じる。
この先の全てが光輝いて見えた。
幸せすぎて、
少し、怖いくらいにーー。
晴の荷造りが間に合った引越しは無事に完了して、今日から2人の生活が始まる。
借り物ではあるが、2人だけの空間ができたようで声が弾んだ。
「あ、コラ、濡れるよ!」
「いいよ。このまま一緒に風呂入ろう。」
「え?ちょ…わっ!」
エプロン姿でコップを洗うその背中に興奮して、バスルームに連行した。
手早く服を脱がせて、晴を抱えて湯船に浸かる。
「なんか、いいね。」
「だな。脚伸ばせるし。」
「借り物だけど、俺達だけの空間だから落ち着く。」
同じように思っていた事が嬉しくて、抱きしめる力を強める。
「…蓮?」
「そう、この家俺達しかいないんだぜ?
何処でも遠慮せずヤれるな。」
「えっ!?…あんっ…んっ、ん…」
胸の突起を弄ると、甘い声がバスルームに響く。
「ここでシたい?ベッドがいい?」
「あ…ベッドが…いい…」
「仰せのままに。」
抱き上げてベッドに下ろすと、晴が腕を伸ばして抱き付いてきた。
「俺ね…蓮と2人の家ができて嬉しい。」
「ーーッ、俺も…嬉しくてどうにかなりそう。」
貪るように口付けて、余裕なく言う。
「ハァ…晴、悪い。今日は手加減できねぇわ…」
「ん…しなくていいよ…俺も、何も気にせず蓮と繋がりたい…」
覆い被さって、強くその肌を吸った。
「蓮、きて…早く…!」
「……晴、晴!好きだ…!」
理性がブツンと音を立て切れ、欲望のままに甘い身体を味わった。
何度も交わって、晴から何も出なくなっても止まれなくて。
少し落ち着いてからも、晴のナカから出る事ができなかった。
「あっ…もう、おかしくなりそ…ちょっと休憩…」
限界を迎えた晴に、緩く腰を動かす。
「眠い?寝てもいいから、もうチョイ晴のナカにいさせて。」
「うん…俺…蓮のなんでしょ?全部…好きにしていいよ…」
落ち着きは秒速で興奮に変わり、硬くなったモノで強く晴のナカを抉る。
「な、なんっ…で…」
激しくなった動きに晴が戸惑うが、こればっかりは…。
「今のは晴が悪い…!」
「ひゃっ、やぁぁん、もう出ないぃ!」
「大丈夫。出さなくてもイケるようになろうな?」
「やっ、うそ…あぁぁぁぁぁ!!」
ようやく晴を解放できたのは、朝陽がカーテンの隙間から入って来た頃だった。
●●●
side晴人109~111話辺りの話しです。
楽しそうな卒業式だ。笑
3年間(中学からなら6年)ひたすら塩だった推しの突然のファンサはヤバイ。
呼ばれて、晴が卒業証書を受け取りに段上へ向かう。
『晴人ー!』
『晴ちゃーん!』
『萱島せんぱーい!』
男女問わず声援が飛んで、晴が照れたように笑った。
「彼氏、今の見ました?隠れファンが増えるんじゃありません?」
俺の横に座るクロが小突いてくる。
「…まあ、今日で最後だし。金輪際関わらせねぇから。」
「怖ッ!でも式が終わったら、後輩がここぞとばかりにアタックしてくるかもよ?」
それは懸念している。
晴は後輩に人気があって隠れファンが多い。
隠れている分には何をしてくる訳でもないので放っているが、最後だからと寄って来るなら話は別だ。
「あ、啓太君の番だ!啓太くーん!」
段上の中野にも大きな声援が湧き、晴も席から呼びかけているのが見えた。
うちの学校の卒業式は他校と比べると特殊だ。
式典用のホールの2階席に保護者、3階席に在校生と言う配置で、卒業生と来賓は所謂アリーナ席。
どのような卒業式にしたいか生徒会を中心に自分達で決める為、毎年違った催しとなる。
学校側からの要望は『卒業証書授与』のみ。
それ以外は校則の範囲内で自由だから、俺達特進は服装すら制限がない。
『最後だし、コスプレになる前に制服着とこーぜ。』
何となく晴が喜びそうでそう言ったのがクラスの相違になり、今年の特進は全員制服で出席している。
因みにその制服姿は晴のお気に召したようなので俺としては窮屈な思いをした甲斐があるってもんだ。
「続いて特進クラス。赤嶺昴。」
アナウンスが入り、俺達のクラスへの授与が始まった。
来賓席に座る面々が、真剣な面持ちで段上に視線を向け出す。
1年の4月に30人いたクラスメイトは、18人にまで減っていた。
これでも今年は多い方で、この精鋭達の中から将来を担う人物が輩出されていく訳だ。
来賓の中には有望株への投資目的で来てる奴もいるし、生徒側もそれでコネを作れたりとウィンウィンの関係だったりする。
「下級生見て!団扇持ってる!」
クロが笑う先にはアイドルのライブさながらの光景。
銀髪を輝かせた赤嶺が手を振って応えると、爆発的な歓声が上がった。
「これほんとに卒業式かよ。」
呟く俺の横でクロが耳を塞ぐ。
あ?コイツ何してんだ?
「切藤蓮」
疑問を持ったのと同時に名前を呼ばれて立ち上がった時だった。
『『きゃぁぁぁぁぁあ!!!』』
耳をつん裂くような悲鳴が方々で上がり、来賓席がギョッとしている。
構わず段上に行くと、理事長が苦笑しながらこっちを見ていた。
「おめでとう。相変わらず凄い歓声だな。」
卒業証書を渡しながら囁かれる。
受け取って振り向くと、眩しい程のフラッシュ。
1、2階席は団扇で埋め尽くされ、何故か3回席でもそれが振られている。
『ねぇ!目ぇ合ったんだけど!』『待ってあのピアスうちも買う!』『制服ヤバイヤバイ死ぬ!』
ヒートアップする会場を尻目に晴に目線を向けた。
式の前にはヤキモチを焼いていたが、機嫌が直った今は大丈夫そうだ。
楽しそうにこっちを見て「蓮ー!」なんて声を上げていて。
何故かその手には『ハートして』の団扇。
伊藤辺りに持たされたんだろう。
こんなに大勢の人間がいて、紛れもない好意がそこにあっても俺の目に入るのはただ1人だ。
「ん。」
親指と人差し指をクロスして、たった一人に向ける。
一瞬惚けたようにそれを見ていた俺の唯一は、自分の団扇を確認してボッと赤くなった。
『『ぎぃやぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!』』
会場が大パニックになり、止むを得ず20分の休憩を挟む事になったこの卒業式は後に伝説になった。…らしい。
式が終わり、最後のHRを終えて校舎の外へ出ると待ち構えていた女子の群れに捕まった。
『最後だから』を合言葉のように掲げて話しかけたりスマホを向けて来るのがウザイ。
そんなもんより、式の最中にクロと話した内容の方が問題だ。
視線を巡らせると、騒ぐ一団から少し離れた所に晴を見つけた。
男の後輩に、触れられそうな程近付かれた状態で。
「先輩のが欲しいんです!」
どうやら晴の第二ボタンを狙っているらしいソイツに、分からせる為近付く。
「全部俺のだから諦めて。」
晴の腰を抱きながら言うと、諦めたのか肩を落として去って行った。
「チッ、油断も隙もねぇな…。
晴、お前も。簡単にやろうとしてんじゃねぇよ。」
俺の怒りに、晴は「アイツもM大志望なのかな?
」とか頓珍漢な事を言っている。
「……あ~、うん。もうそれでいいわ。」
後輩野郎が哀れになるくらい鈍いが、まぁ気付かないならその方がいい。
「切藤、苦労するな。」
この3年間、俺がいない隙に晴狙いの野郎が近づかないようにしていた中野が笑いながらやって来る。
最後の最後にやらかしてるけどな、お前。
寄ってきたクロも含めていつもの如く揉めたり、晴の提案で写真を撮ったりする。
赤嶺と白田にも話しかけられて、落ち着いたら会う約束を交わした。
「晴、そろそろ出ようぜ。」
一段落して声をかけると、晴の表情が僅かに沈んでいる。
「どうした?」
視界の端で伊藤と話しているのは確認していた。
「え?いや、えっと…ちょっと寂しくて。」
少し違和感はあったが、伊藤が何かする訳ないかと思い直して晴の言葉に納得した。
「俺はやっと卒業できたって感じだけど。」
「マジ?」
「これでようやくお前と暮らせる。」
微笑む俺を見た女子が騒ぎ出して、晴が慌てたように背中を押してくる。
「…ッ蓮、早く行こ!」
はい、ヤキモチ可愛い。
それが顔に出ていたのか晴は不服そうだ。
「ねえ、何?」
「いや?キスしてぇなと思って。」
途端に赤くなるのも可愛い。
「後でだったら、いいよ。」
顔を背けてボソリと言われた言葉に、思わず手を伸ばした。
「晴…」
「バッ、後でだってば!」
ペシペシと叩かれた手を耳に這わせる。
「真っ赤だな。」
シてる時みたいに低く囁くと、晴の腰からヘニャリと力が抜けた。
さり気なくそれを支えて、抗議する晴と連れ立って校門を出る。
未だにうろついていた他校の女達が、配置された警備員に追い払われている。
「はいそこ!イチャついてないでカラオケ行くよー!」
クロと中野と合流して、いつも通りカラオケに行く事になった。
「俺、今日のために尾崎練習してきたから!」
なんて自慢気なクロには絶対言わないが、出会えた事に感謝している。
晴と離れて荒れていた俺を、体を張って助けてくれた存在。
まさか、一生付き合っていくであろう『友達』が俺にできるとは思わなかった。
明るさの裏に色々と抱えるこの友人の未来が、幸多いことを願う。
「この日の為に付き合わされたから、俺は何回も聞いてるんだけどな。」
呆れた顔の中野は、俺にとってはライバルだ。
晴と仲が良すぎて気に入らないが、絶対に晴を裏切らない奴だと言う事も理解している。
晴の親友がコイツなのは、まぁ納得してやってもいい。
それくらいには認めている。
そしてーー。
「マジ!?早く行こうよ!」
絶対に叶わないと絶望した事もあった、今俺の隣で笑っている大切な人。
子供の頃から欲しくて仕方なかった、俺の唯一。
晴の存在が無ければ、俺は他人と関わろうともしなかった。
何もかもどうでも良くて薄っぺらかった俺の人生にできた『友達』と『好敵手』と『恋人』。
全てを閉ざしていたガキの頃の自分に言ったら、信じるだろうか。
いや、多分信じないだろうな。
だけど、多分ーー。
『晴の1番が俺だ』って言ったら、喜ぶんだろうな。
そんな予感に、口許を綻ばせた。
「おぉぉ~!満開じゃん!!」
青空をバックに咲き誇るの満開の薄紅を見上げる。
晴が見つけた神社の桜は、今年も見事に満開だ。
「晴、準備終わった?」
「ん~…7割?」
「マジ?引越し明日だぞ。」
「いや大丈夫、細々した物が終わってないだけだから!」
明日には業者が来るのにそれで大丈夫なのか?
「必要最小限なのにさ!新巻出る度に遡って読みたいのに!」
どうやら新居に漫画を持ち込みたくて美香さんと揉めているらしい。
「あー、それは確かに読みてぇわ。」
子供の頃、『晴が好きだから』と読み始めた海賊の漫画は完結に近付いている。
「だよね!?え、じゃあ家行こう!蓮が言えば母さんOKするから、絶対!」
笑顔全開の晴を引き寄せて、腕の中に収める。
「何で?」
「ん、可愛かったから。」
はしゃぐ様子が愛おしい。
何より、明日から毎日この顔を見られると言う事象が幸せで仕方ない。
内心では俺だって、晴と同じくらいはしゃいでいる。
「てか、帰る前にやる事あんじゃねぇの?」
「あ!忘れてた!」
ここに来た本来の目的を忘れていたらしい晴に呆れながら、スマホを自撮り棒に固定する。
「待って!超良くない!?ちゃんと桜入ってるし!」
満開の桜をバックにツーショ撮ろうよ!
と言うのが晴の望みで、今日の目的だ。
その理由が「新居に飾りたいから」だと言われた時は幸せに頭を抱えた。
ここは俺にとって特別な場所だ。
初めて晴と唇を重ねたーーいや、無理矢理だったけど。
「晴、キスしていい?」
「え?」
「今度はちゃんと合意の上で。」
後悔している。
堪えきれずに自分の気持ちを押しつけてしまった事を。
ふいに唇に暖かい感触がして、背伸びした晴と目が合った。
「蓮、好きだよ。」
そして、もう一度唇が重なる。
胸に渦巻く苦い思いが甘く溶けて、晴の頭を抱き寄せた。
数えきれない程のキスをして、お互いを感じる。
この先の全てが光輝いて見えた。
幸せすぎて、
少し、怖いくらいにーー。
晴の荷造りが間に合った引越しは無事に完了して、今日から2人の生活が始まる。
借り物ではあるが、2人だけの空間ができたようで声が弾んだ。
「あ、コラ、濡れるよ!」
「いいよ。このまま一緒に風呂入ろう。」
「え?ちょ…わっ!」
エプロン姿でコップを洗うその背中に興奮して、バスルームに連行した。
手早く服を脱がせて、晴を抱えて湯船に浸かる。
「なんか、いいね。」
「だな。脚伸ばせるし。」
「借り物だけど、俺達だけの空間だから落ち着く。」
同じように思っていた事が嬉しくて、抱きしめる力を強める。
「…蓮?」
「そう、この家俺達しかいないんだぜ?
何処でも遠慮せずヤれるな。」
「えっ!?…あんっ…んっ、ん…」
胸の突起を弄ると、甘い声がバスルームに響く。
「ここでシたい?ベッドがいい?」
「あ…ベッドが…いい…」
「仰せのままに。」
抱き上げてベッドに下ろすと、晴が腕を伸ばして抱き付いてきた。
「俺ね…蓮と2人の家ができて嬉しい。」
「ーーッ、俺も…嬉しくてどうにかなりそう。」
貪るように口付けて、余裕なく言う。
「ハァ…晴、悪い。今日は手加減できねぇわ…」
「ん…しなくていいよ…俺も、何も気にせず蓮と繋がりたい…」
覆い被さって、強くその肌を吸った。
「蓮、きて…早く…!」
「……晴、晴!好きだ…!」
理性がブツンと音を立て切れ、欲望のままに甘い身体を味わった。
何度も交わって、晴から何も出なくなっても止まれなくて。
少し落ち着いてからも、晴のナカから出る事ができなかった。
「あっ…もう、おかしくなりそ…ちょっと休憩…」
限界を迎えた晴に、緩く腰を動かす。
「眠い?寝てもいいから、もうチョイ晴のナカにいさせて。」
「うん…俺…蓮のなんでしょ?全部…好きにしていいよ…」
落ち着きは秒速で興奮に変わり、硬くなったモノで強く晴のナカを抉る。
「な、なんっ…で…」
激しくなった動きに晴が戸惑うが、こればっかりは…。
「今のは晴が悪い…!」
「ひゃっ、やぁぁん、もう出ないぃ!」
「大丈夫。出さなくてもイケるようになろうな?」
「やっ、うそ…あぁぁぁぁぁ!!」
ようやく晴を解放できたのは、朝陽がカーテンの隙間から入って来た頃だった。
●●●
side晴人109~111話辺りの話しです。
楽しそうな卒業式だ。笑
3年間(中学からなら6年)ひたすら塩だった推しの突然のファンサはヤバイ。
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