【完結まで残り1話】桜の記憶 幼馴染は俺の事が好きらしい。…2番目に。

あさひてまり

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高校生編side蓮 

45.浮かれる(※エロ有り)

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「蓮ってば、何か雰囲気柔らかくなったんじゃなーい?」

聞こえてきた女の声を無視してドリンクにホイップクリームを絞り出す。

「それはね、今彼があり得ない程浮かれているからなんだよ。」

続く男の声も無視してフタを付けて。

「そーなの?それにしては表情筋死んでるけど。」

「ああ見えて心の中ではサンバ踊ってるから。」

「蓮がサンバとかギャップエグいんですけどぉ!」

ゲラゲラ笑う男女の前に完成したドリンクをダンッと置くと、態とらしい悲鳴が上がった。

「…よし、お前ら金払え。」

バイト先に現れたコイツらに善意で奢ってやろうとした俺が馬鹿だった。

レジに移動すると、ニヤニヤしていたクロとカンナが俄に慌て出す。

「ごめんて!祝福の気持ちなんだって!」

「そーだよぉ、好きピとラブラブなんでしょ?」

カンナの言葉に、店から追い出すモードに入っていた身体が止まる。

頭に思い描くのは、その好きピの姿だ。


付き合い始めて2週間。

付き合い始めて、2週間。

つまり晴の彼氏としてそれだけの日にちが経った訳だ、晴の彼氏として。

これがコピペの失敗じゃない辺り、俺の浮かれ具合が分かるってもんだろう。

登下校と学校内だけじゃ飽き足らず、バイト後に萱島家の庭で晴と話してから帰るのが恒例化していて。

もしかして負担になってるんじゃないか…なんて考えは、俺を見て弾けるような笑顔になる晴の前に霧散する。

昨日の夜もそうで、嬉しそうに駆け寄って来る晴に内心悶えまくった。

外からも家の中からも死角になる庭の隅、風呂上がりでいい匂いのする晴を抱き締めるのは至福の一時だ。

濡れたままの髪を気遣って早めに帰ろうとすると、

「えっ…暖かいし大丈夫だって。」

なんて、引き止めるような言葉に思わず笑みが溢れる。

「帰って欲しくない?」

「………うん。」

合わない目線、赤くなった耳、ギュッと俺の袖を掴む指。

ダメだ、可愛いすぎるーー。

その全てが俺の心を掻き乱して、ついキスが深くなってしまう。

辿々しく応える舌も、漏れる吐息も堪らない。

何より、この想いが一方通行ではないと言う事実に胸が一杯になる。

このまま家に連れ帰って、もっとキスして全身を愛撫して。

快楽でトロトロにして、俺のモノを晴の中にーー


ーーいや待て、それはできない。

晴はつい最近まで男同士はセックスできないと思っていた。

修旅の時は帰国してから説明すると濁したから、今もやり方は知らないままだろう。

怖がらせないようにゆっくりと、まずは座学から教えるべきだ。

…でも、腕の中でこんな気持ち良さそうにしてるし。

今から実践で教えるのも全然有りなのでは…?

魅力的過ぎるその考えに取り憑かれていると、少し苦し気な声が聞こえた。

なかなか慣れずキスの息継ぎが下手な晴の唇を解放して考える。

やはりダメだ、こんな純粋な生き物に早急にアレコレ教えるなんて。

身体の構造から仕組みから懇切丁寧に説明して、時間をかけて準備しなくては。

「土曜バイト無くなったから、家泊まりに来ねぇ?土日ずっと一緒にいれんじゃん。」

両親の不在をいい事に誘うと、晴はあっさり頷いた。

その土日で俺がナニを教えようと企んでいるのかなんて、想像もしてないんだろう。

お前の彼氏、修旅の時のお前を思い出して毎日抜いてる男なんだけど。

あの時の晴は最高だったーー。


「何か固まってるけど、もしかして幸せに浸ってる的な?表情全く変わらないけど。」

「うーん…多分俺らで言う所の『ニヤニヤが止まらん』的な?表情全く変わらないけど。」

好き勝手言う声に思考を現在に引き戻される。

マジでウゼェなコイツら…。

「てか、俺カンナに付き合ってる事言ったつもりねぇんだけど?」

隣のクロをジロリと睨むと、発信者は慌てるどころかカウンター越しに身を乗り出して来た。

「カンナ所か俺にも報告無かったんですけどね!」

あ?それでコイツここ数日ムスッとしてた訳?

「君の恋人はしっっかり報告してくれましたけどねぇ、誰かさんと違って!」

確かに、クロと中野に話した事は晴から聞いている。

「じゃあいいだろ。2人して同じ事話してどうすんだよ。」

「違うじゃん!そこは先に蓮から聞きたかったんじゃん!」

「ダルいって。お前が修旅の時気付いたの分かったから態々言わなくていいと思ったんだよ。」

「え?」

騒がしかったクロが急に大人しくなったのを訝しく思いながら続ける。

「自由行動の後ロビーに集合した時。気付いてたろ。」

「た、確かに…ほぼ確でそうだろうなっては思ってたけど。ってか、何で分かったの!?」

「あ?お前の雰囲気。」

「…やだ、アタシってば愛されてる?」

何でそうなんだよ、シナを作るなキメェから。

「愛されてるじゃーん、良かったね悠真♡」

ケラケラ笑うカンナとのコントが始まって、俺は溜息を吐いた。

「それに、お前に言うと晴に余計な事教えそうだと思って。」

『愛人』だの『アタシはそれでもいいの』だの盛り上がっていたクロが俺の言葉にまた身を乗り出す。

「おっ前!マジで失礼だな!余計な事なんて言わないか…ら…。」

語気が尻すぼみになって行く様子に違和感を感じる。

まさかコイツ、既に何か言いやがったのか?

「はーい!うち、ハルちゃんに会ってみたーい!
今日もどうせ会うんでしょ?蓮に付いてく!」

「ざけんな馬鹿!」

突拍子も無いカンナの提案に、クロへの追求を忘れて声を上げる。

「だって気になるじゃん、蓮をこーんなメロメロにする好きピ♡めっカワなんでしょ?」

メロ…いや、まぁそうだし間違いなくめっカワだけど…じゃねぇ!乗せられてんなよ俺。

「今日は会わねぇから。アイツ塾だし。」

会わせるつもりなんて毛頭無いが、晴が今日塾なのは本当だ。

部活ができなくなって空いた時間を勉強に充てるべく、体験に行っている。

夜は美香さんの帰りを待って家族会議らしいから、流石に今日は萱島家には寄らずに帰る予定だ。

俺的には会える時間が減るから正直賛成はしかねるが、晴の気が紛れるなら塾通いも仕方ない。

あ、てか俺がバイトの時間調整して送り迎えすりゃいいじゃん。

よし、万事解決だな。

「じゃあ土日!」「(晴と2人っきりで過ごす予定だから)ぜってぇ無理。」「ケチ!マジ心狭い!」

食い下がるカンナとの応酬に集中していた俺は気付かなかった。

妙に静かになったクロが「いや、大丈夫…だよね?」等とぶつぶつ呟いていた事に。







「晴、おはよ。」

「…!!ひょはよ!」

「…僕の息子『ひょはよ』って言った?どこで育て方間違ったんだろ…。」

翌日の朝、迎えに行った萱島家での会話だ。

謎の挨拶をして部屋に鞄を取りに行く晴の背中を見ながら憲人さんが遠い目をしている。

「そう言えば塾どうなったの?」

「うん、通わせる事になったよ。ただね、晴の様子がおかしいの、実は昨日の塾終わりからなんだよねぇ。」

何かあったのかな?と首を傾げる憲人さんに見送られて俺達は萱島家を出たんだが…。

その日、一日中晴の様子はおかしかった。

妙に裏返る声、一度も合わない視線。

極め付けは、

「なぁ、明日どうす」「あー!…と、サッキーが見えた気がしたんだけど、気のせいかな…?」

明日からの連泊について話そうとすると不自然に話題を変えてくる。

しかもどうやら、やんわりその約束を断ろうとしているらしい。

ほーお、そんなんで俺が逃がすとでも?



「で?何で俺の事避けてる訳?」

「さ、避けてなどは…」

放課後、帰ろうとする晴を家に引っ張り込んで壁ドン体勢で問い詰める。

「ほら、晴…?言わねぇと無理矢理吐かせるぞ?」

脅しても、晴は黙秘する気らしい。

「ふーん。じゃあ身体こっちに聞くわ。」

首筋を舐ってシャツの中の背中で胸の尖りを捏ねる。

「やっ…んんっ!」

頑固な癖に身体の方は素直で、すぐに反応し始めた晴のベルトを引き抜き下着の中に手を入れる。

キスしながら触った晴の中心は、あっと言う間に芯を持った。

「あぁっ、ダメ…あッあッ!」

引き出した官能を高めるため、床に膝をついてそれを口に含む。

立っていられない程感じているのに、壁に押し付ける俺のせいで座り込む事もできない晴はガクガクと震えている。

「言う?」

その様子に尋ねるも、なおも首を横に振られてカッと胸の底が熱くなった。

容赦していた舌の動きを激しくして、音を立てて吸い上げる。

「ひゃぁぁん!」

強制的に射精させようとする俺に翻弄される晴が、身を捩って悲鳴を上げた。

その様子に微かな愉悦を感じながらも、さっき感じた熱さがドロドロと形を変えて胸の底から湧き出す。

俺は、晴に何かしたんだろうか。

気持ちが一方通行では無い事に喜び浮かれていたのは俺だけか?

理由も分からないまま避けられて、これじゃあまるで…

付き合う前と、何も変わらないーー。

嬌声を上げて蜜を溢し続ける程に快楽を与えても、晴を近くに感じられない。

『恋人』として、もっと深く、繋がりたい。


「うっ…ふぅ…」

泣き声が耳に届いてハッとした時には、完全にやらかしていた。

俺の中指の先が、晴の後ろの窄まりに今まさに入り込もうとしていて。

慌てて手を退けると、腕の力が緩んで漸く解放された晴が大粒の涙を流してペタリと座り込んだ。

「晴!?ちょっ、泣くな…もうしないから、なっ!?」

情けない程焦りまくって、抱き上げて向かい合わせに膝の上に乗せる。

晴の背中を撫でて宥めながら、罪悪感で一杯だった。

何が『座学から』だ、簡単に理性吹っ飛ばしてんじゃねぇぞ。

焦燥感から魔が差したなんて言い訳だ。

剰えそれで泣かすとか最低だろ。

もしかして、俺がこんなんだから晴はーー。

後悔しか無いが、とにかく謝り倒すしかない。

『やっぱり考え直す』なんて言われたら、冗談抜きで俺は立ち直れないだろう。

絶対にーー


「別れたくない~~~~!!」


「…………………は?」



今、俺声に出してないよな。

じゃあ何で思った事が音として聞こえたわけ?

唖然としていると、晴が泣きながら俺の胸に顔を埋めてきた。

何だコレ、可愛いな…。

…じゃなくて、冷静にどんな状況だよ。

つまり『別れたくない』って言ったのは晴なんだよな?

いや、冷静になった所でますます訳分からん。

「お、落ち着け、晴。ちゃんと話そう。」

懸命に宥めながら身体を離そうとすると、晴がギュッとしがみついてくる。

その行動に俺の心臓もギュッと掴まれて、思わず呟いた。

「可愛い…好きすぎる…。」

涙の元凶にそんな事言われても…と思い至ったがもう遅い。

重ね重ね最悪だ、俺ってこんなポンコツだったんか…。

「……も…。」

「え?」

俺の胸に顔を埋めて抱き着きながら、くぐもった声で何か言う晴に耳を澄ませる。

「…グスッ…おれも…すきぃ…。」

「ン"ッ!?」

その破壊力たるや。


あ?そう言えば…。

衝撃からか、この部屋に連れ込んだ時の事を思い出した。

俺は告白してから今日まで、晴を自分の部屋に入れないようにしていた。

それは俺のテリトリーに晴がいる事象に、抑えが利かなくなるのを防ぐためだ。

だから、晴は久しぶりに入る俺の部屋にキョロキョロしていて。

そして、自分が贈ったストームグラスが飾られているのを見て顔を綻ばせていた。

良く考えたら、俺に不満があるならそんな顔しないよな?

じゃあ、何でだーー?


泣き止んだ晴が語った内容に俺が驚愕するのは、数分後の事。








●●●
side晴人99話~101話辺りの話しです。


更新が遅くなりまして申し訳ありません!!
前回から1ヶ月…マジかよ…となりました作者も。
必ず完結させますので、見限らず今後ともお付き合いくださいませ🙇‍♀️
お読みいただきありがとうございます♡



























久々すぎて内容忘れたわーい🤚と言うお声が聞こえてきそう笑
色々ありまして、落ち着いたのでまた更新再開します!




蓮はバイト先でテイクアウトの担当もします。
カンナとクロはそこを狙って現れました。
仲良しなこの2人ですが、恋仲にはなりません。
何故かと言うと…

カンナ「お姉ちゃんの元セフレが彼氏とか死んでも無理♡」

































































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