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中学生編side蓮
9.入学(※微 性表現有り)
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受験に関して、晴の両親の説得が1番のネックだと思っていた俺の予想はハズレた。
翌週には、家族会議の末やらせてみる事になったと憲人さんから報告されたからだ。
「受験勉強の大変さと、入学してからも勉強漬けだって結構脅したんだけど。それでも絶対やるって言うから。』
入浴中の晴がいないリビングで、憲人さんから話を聞く。
「それにね、実は国際交流に力を入れてる私立に入れる事は考えてたんだよ。
本人の希望が無ければ公立でいいかなって思ってたんだけど…。蓮君は気付いてるよね、あの一件があってから、晴が前髪切ろうとしない事。」
俺は苦い思いで頷く。
外見で理不尽に責められた小1の時の事件は、晴の心に傷を残していた。
邪魔そうにしながらも、ブルーグレーの瞳を隠すように前髪を伸ばしているのは、自己防衛だろう。
魅入られそうなそれが隠されているのは、俺にとっては残念なのと同時に安心でもあった。
他人に晴の瞳を見せたくない。
だけど、晴が自分の容姿を嫌がるようになった事には心が痛む。
「本人が全く望んでないのに髪も肌もどんどん色素が薄くなって…神様って意地悪だよねぇ。
国際交流が盛んな学校なら、それも気にならなくなるかなって思ってたんだ。」
確かに、交換留学生や親族に外国人がいる生徒達の中でなら晴の容姿も目立たないだろう。
「帝詠学院も当てはまるけど、あそこは学力が高いから。晴にはちょっと荷が重いかなって思ってだんだ。でも、やる気になってるみたいで良かったよ。」
憲人さんが、蓮君と遥ちゃんに感謝だねと笑う。
俺は自分が晴と離れたくなくて、晴がそう思うように仕向けた。
それを間違っているとは思わないし、こらから先も必要があれば同じようにするだろう。
勉強は俺が教えればいいし、学校内では俺が守れる。
晴を理不尽な目に合わせたりなんかさせる訳がない。
「お風呂空いたよ~!蓮、泊まるよね?」
髪から雫を垂らす晴を捕まえて、タオルでそれを拭ってやる。
シルクみたいに柔らかい髪、風呂上がりでほんのり色付いた白い肌。
そしてーー気を許した相手にだけ見せるブルーグレー。
前髪を上げて覗き込む俺を見つめる晴からはいい匂いが立ち昇る。
「ん?何?」
言葉を紡ぐその唇を意識して、俺は咄嗟に目を逸らした。
「別に。お前、ちゃんと髪乾かして来いよ。
俺は帰る。」
えーっ!と言う晴の言葉を背に、俺はチャリに跨った。
胸の鼓動が早くて、耳が熱い。
晴の事を好きだと自覚はしていたが…その身体を強く意識したのは初めてだった。
もし憲人さんの目が無かったら、晴の唇に触れていただろう。
いや、それだけじゃなくて、きっとーーー。
思いを振り払うようにペダルを漕いで、家まで疾走した。
それ以降、そう言う意味で晴に触りたい気持ちが強くなった。
髪を撫でて、肌をなぞって、唇を合わせたい。
本人の前では決して出さないように気を付けたが、欲望は忠実だ。
時が少し流れた12歳の誕生日。
「蓮…。」
目の前にはこちらを見上げる晴。
風呂上がりの髪から水滴が落ちて、ほんのり色付いた肌を伝う。
いつかと全く同じシュチュエーションだが、違うのは…晴がパジャマの上だけしか着ていない事と、向かい合わせに俺の膝を跨いで座っている事。
密着した体温と、立ち昇る匂いにクラクラする。
「ね、触って?」
膝立ちになった晴がスルリとパジャマをたくしあげる。
露わになった白い太腿に思わず手を這わせると、さらに上へと導かれ…そして。
淡いピンクの晴のモノが目に入り、ゴクリと唾を飲む。
「蓮のだから、好きにして?」
躊躇う心にトドメを刺されて、強く晴の腰を引き寄せた。
そして、ソレに触れた瞬間ーー。
「んっ…」
普段の晴から想像もつかないような艶を含んだ声に、全身の血が逆巻く。
湧き上がる欲望に身を任せて晴を押し倒して、そしてーーー。
「………はっ?」
見知った自室の天井が視界に入り、一瞬意味が分からなくなる。
夢…?マジかよ…。
よく考えたら、晴があんな色気全快で迫ってくるなんて有り得ない。
リアル過ぎた感触を思いてゾクリとした時、気が付いた。
これは…つまりアレか。
違和感はパンツの中。
ヌルっとしたものは、正にそうだろう。
晴で精通したとかーーー罪悪感が凄いんだが…。
この日から、度々この夢を見るようになる事は言わずもがな。
1人で抜くようになってからも、その対象は晴だった。
心も、身体も、全て欲しい。
他の誰にも触らせたくない。
自分の中の独占欲が強い事に気付いたのは、この頃。
そんな風に俺の心と身体が変化していく中、晴にもまた変化が訪れていた。
と言っても俺みたいに欲望に塗れた感じじゃなく、健全な方に。
「よーっし、いいぞ晴!合格圏内に入って来た!」
晴の頭を撫で回す翔に蹴りを入れて引き離す。
「翔先生!蓮、何すんだよ!」
自分を庇う晴にデレッと笑う翔。
マジでガチでウザイ。
晴が帝詠を受ける事を表明すると、晴の意思がそれならばと切藤家は両手を上げて歓迎した。
そして、なんと翔を家庭教師として送り込んできやがった訳だ。
塾よりもリラックスして勉強できる環境が良かったのか、はたまた翔の教え方がいいのか…晴の成績はメキメキ上がっていった。
勉強に苦手意識があっただけで、晴は理解力があるし素直な性格は物事を吸収しやすい。
テストで合格圏に入る事が多くなり、それは俺も素直に嬉しい。
だが、である。
「翔先生!オヤツにしたいです!」
「オッケー♡」
『オッケー♡』じゃねぇんだよ、張っ倒すぞクソ兄貴。
晴は『翔先生』と呼んで生徒気分を満喫してるし、翔も満更じゃなさそうに…と言うかデレデレしている。
「オイ、触んな。」
俺はすぐ晴を撫でようとする翔にイライラが募る一方だ。
晴と翔を2人きりにしたくなくて勉強の度に見張っていたが、ついに翔から追い出された。
「カリカリする人がいると捗りませーん!
下に笹森さん迎えに来てるからいってらー!」
意味不明だが、その言葉通り車で迎えに来ていた父親の秘書に拉致られて、俺は道場に連れて来られた。
どうやら、父親と旧知の警察関係者が俺に空手を教えるらしい。
いや、何も聞いてねぇけど。
父親曰く『護身術大事!』との事だ。
連れて来られたもんは仕方ないと習い始めた空手は、結構面白かった。
霊泉家の接触があってからサッカークラブを辞めて、暇だったのもあったかもしれないが。
後に警察の上層部に入り、幾度となく手助けしてくれるようになる駿河さんのマンツーマン指導で、俺は上達していった。
「流石すぎるな、これならあっという間に昇段できるぞ。」
いざと言う時に晴を守れるかもしれないというのがモチベーションになって、結局、受験の終わりとほぼ同時期に黒帯になる訳だが、それはまた別の話。
「ま、そんな感じ。」
「ふーん。」
近況を報告しろと煩い遥に、翔のカテキョで晴が頑張ってる事やら、俺の空手の事を説明する。
遥は塾に通い出したようだが、苦手分野もなく満点を連発してらしいから大丈夫なんだろう。
三家族全てが晴を応援する中で、遥だけがイマイチ反応が薄いのが疑問だ。
晴が帝詠を目指す事を、1番喜ぶだろうと思っていたのに。
『晴が帝詠…?』
『そ。お前もいるのは気に入らねぇけどな。』
いつもなら『こっちの台詞よ!』とか何とか食ってかかってくる反応が無い。
『あ?何だよ。』
振り返ると、遥は今まで見た事が無いような表情をしていた。
苦しいような、怒っているような、泣きそうなような。
『だから、何?』
何も言わない遥に尋ねても答えが無い。
珍しい事だが、俺はそれ以上踏み込まなかった。
晴の事で浮かれていたのと、晴に対する時よりは格段に遥の心情に興味が無かったから。
『訳分かんねぇ。行くぞ。』
だから、気付かなかった。
遥が、背を向けた俺に強い視線を注いでいた事に。
「入学おめでとーう!!」
暖かい春風が吹く中、俺は中学生になった。
頑張りの甲斐があって無事に合格した晴も一緒だ。
オマケに遥も。
「ほらほら、並んで!撮るぞー!」
入学式について来た翔の合図で写真を撮る。
てかコイツ晴の事撮りすぎだっつの。
「テンション上がるな!」
真っ新な制服を身に付けた晴の笑顔が眩しい。
チラチラとこっちを見て来る周りの新入生から晴を隠して圧を放つ。
晴に他人が寄って来ないように、牽制は早い方がいい。
「蓮、それやめて。」
遥が俺を睨んで腕を引っ張って来る。
なんかコイツ機嫌悪いな、メンド。
「おい、触んな。」
「うっさいわね。」
「腕組んで撮るの?いいね!」
「「え?」」
晴の的外れな言葉に驚いてる間に、翔がそれを写真に収めていた。
俺の右腕を遥、左腕を晴が掴む謎の構図。
「ははっ!なんか蓮を2人が取り合ってるみたいじゃん!」
「見せてー!」
「くだらねぇー。」
晴と俺翔のスマホを覗き込むが、遥の反応が無い。
「遥?」
晴もそれに気が付いたのか声をかける。
「あ、うん。ねぇ、早くご飯行こ。」
写真はスルーして三家族の両親がいる方へ向かって行く遥。
「どうしたんだろ?」
「さぁ。腹減ったんじゃね?」
心配そうな晴の頭を撫でて適当な事を言う。
「それより、制服どうよ。」
「ん?」
俺は忘れてない。
7年前、翔の制服姿に見惚れていたお前の事。
「え、似合うよ?」
「もう一声」
「カッコいいよ♡」
「お前に聞いてねんだよ。」
茶々を入れてくる翔に言い返すと晴が笑う。
まぁ、いいか。
これで高校卒業までの6年間、晴を離さずにいられるんだから。
●●●
チョイチョイ出てくる蓮父の秘書の名前は笹森さん。side蓮のプロローグ「行方」で蓮と会話してるのもこの人。
side晴人でほんのちょっと出た、蓮が黒帯持ってるのはこの時習ったからです。
教えてくれたのは47話「反撃」で会話にでてくる柴犬好きの駿河さん。
警察のエリート中のエリートです。
翌週には、家族会議の末やらせてみる事になったと憲人さんから報告されたからだ。
「受験勉強の大変さと、入学してからも勉強漬けだって結構脅したんだけど。それでも絶対やるって言うから。』
入浴中の晴がいないリビングで、憲人さんから話を聞く。
「それにね、実は国際交流に力を入れてる私立に入れる事は考えてたんだよ。
本人の希望が無ければ公立でいいかなって思ってたんだけど…。蓮君は気付いてるよね、あの一件があってから、晴が前髪切ろうとしない事。」
俺は苦い思いで頷く。
外見で理不尽に責められた小1の時の事件は、晴の心に傷を残していた。
邪魔そうにしながらも、ブルーグレーの瞳を隠すように前髪を伸ばしているのは、自己防衛だろう。
魅入られそうなそれが隠されているのは、俺にとっては残念なのと同時に安心でもあった。
他人に晴の瞳を見せたくない。
だけど、晴が自分の容姿を嫌がるようになった事には心が痛む。
「本人が全く望んでないのに髪も肌もどんどん色素が薄くなって…神様って意地悪だよねぇ。
国際交流が盛んな学校なら、それも気にならなくなるかなって思ってたんだ。」
確かに、交換留学生や親族に外国人がいる生徒達の中でなら晴の容姿も目立たないだろう。
「帝詠学院も当てはまるけど、あそこは学力が高いから。晴にはちょっと荷が重いかなって思ってだんだ。でも、やる気になってるみたいで良かったよ。」
憲人さんが、蓮君と遥ちゃんに感謝だねと笑う。
俺は自分が晴と離れたくなくて、晴がそう思うように仕向けた。
それを間違っているとは思わないし、こらから先も必要があれば同じようにするだろう。
勉強は俺が教えればいいし、学校内では俺が守れる。
晴を理不尽な目に合わせたりなんかさせる訳がない。
「お風呂空いたよ~!蓮、泊まるよね?」
髪から雫を垂らす晴を捕まえて、タオルでそれを拭ってやる。
シルクみたいに柔らかい髪、風呂上がりでほんのり色付いた白い肌。
そしてーー気を許した相手にだけ見せるブルーグレー。
前髪を上げて覗き込む俺を見つめる晴からはいい匂いが立ち昇る。
「ん?何?」
言葉を紡ぐその唇を意識して、俺は咄嗟に目を逸らした。
「別に。お前、ちゃんと髪乾かして来いよ。
俺は帰る。」
えーっ!と言う晴の言葉を背に、俺はチャリに跨った。
胸の鼓動が早くて、耳が熱い。
晴の事を好きだと自覚はしていたが…その身体を強く意識したのは初めてだった。
もし憲人さんの目が無かったら、晴の唇に触れていただろう。
いや、それだけじゃなくて、きっとーーー。
思いを振り払うようにペダルを漕いで、家まで疾走した。
それ以降、そう言う意味で晴に触りたい気持ちが強くなった。
髪を撫でて、肌をなぞって、唇を合わせたい。
本人の前では決して出さないように気を付けたが、欲望は忠実だ。
時が少し流れた12歳の誕生日。
「蓮…。」
目の前にはこちらを見上げる晴。
風呂上がりの髪から水滴が落ちて、ほんのり色付いた肌を伝う。
いつかと全く同じシュチュエーションだが、違うのは…晴がパジャマの上だけしか着ていない事と、向かい合わせに俺の膝を跨いで座っている事。
密着した体温と、立ち昇る匂いにクラクラする。
「ね、触って?」
膝立ちになった晴がスルリとパジャマをたくしあげる。
露わになった白い太腿に思わず手を這わせると、さらに上へと導かれ…そして。
淡いピンクの晴のモノが目に入り、ゴクリと唾を飲む。
「蓮のだから、好きにして?」
躊躇う心にトドメを刺されて、強く晴の腰を引き寄せた。
そして、ソレに触れた瞬間ーー。
「んっ…」
普段の晴から想像もつかないような艶を含んだ声に、全身の血が逆巻く。
湧き上がる欲望に身を任せて晴を押し倒して、そしてーーー。
「………はっ?」
見知った自室の天井が視界に入り、一瞬意味が分からなくなる。
夢…?マジかよ…。
よく考えたら、晴があんな色気全快で迫ってくるなんて有り得ない。
リアル過ぎた感触を思いてゾクリとした時、気が付いた。
これは…つまりアレか。
違和感はパンツの中。
ヌルっとしたものは、正にそうだろう。
晴で精通したとかーーー罪悪感が凄いんだが…。
この日から、度々この夢を見るようになる事は言わずもがな。
1人で抜くようになってからも、その対象は晴だった。
心も、身体も、全て欲しい。
他の誰にも触らせたくない。
自分の中の独占欲が強い事に気付いたのは、この頃。
そんな風に俺の心と身体が変化していく中、晴にもまた変化が訪れていた。
と言っても俺みたいに欲望に塗れた感じじゃなく、健全な方に。
「よーっし、いいぞ晴!合格圏内に入って来た!」
晴の頭を撫で回す翔に蹴りを入れて引き離す。
「翔先生!蓮、何すんだよ!」
自分を庇う晴にデレッと笑う翔。
マジでガチでウザイ。
晴が帝詠を受ける事を表明すると、晴の意思がそれならばと切藤家は両手を上げて歓迎した。
そして、なんと翔を家庭教師として送り込んできやがった訳だ。
塾よりもリラックスして勉強できる環境が良かったのか、はたまた翔の教え方がいいのか…晴の成績はメキメキ上がっていった。
勉強に苦手意識があっただけで、晴は理解力があるし素直な性格は物事を吸収しやすい。
テストで合格圏に入る事が多くなり、それは俺も素直に嬉しい。
だが、である。
「翔先生!オヤツにしたいです!」
「オッケー♡」
『オッケー♡』じゃねぇんだよ、張っ倒すぞクソ兄貴。
晴は『翔先生』と呼んで生徒気分を満喫してるし、翔も満更じゃなさそうに…と言うかデレデレしている。
「オイ、触んな。」
俺はすぐ晴を撫でようとする翔にイライラが募る一方だ。
晴と翔を2人きりにしたくなくて勉強の度に見張っていたが、ついに翔から追い出された。
「カリカリする人がいると捗りませーん!
下に笹森さん迎えに来てるからいってらー!」
意味不明だが、その言葉通り車で迎えに来ていた父親の秘書に拉致られて、俺は道場に連れて来られた。
どうやら、父親と旧知の警察関係者が俺に空手を教えるらしい。
いや、何も聞いてねぇけど。
父親曰く『護身術大事!』との事だ。
連れて来られたもんは仕方ないと習い始めた空手は、結構面白かった。
霊泉家の接触があってからサッカークラブを辞めて、暇だったのもあったかもしれないが。
後に警察の上層部に入り、幾度となく手助けしてくれるようになる駿河さんのマンツーマン指導で、俺は上達していった。
「流石すぎるな、これならあっという間に昇段できるぞ。」
いざと言う時に晴を守れるかもしれないというのがモチベーションになって、結局、受験の終わりとほぼ同時期に黒帯になる訳だが、それはまた別の話。
「ま、そんな感じ。」
「ふーん。」
近況を報告しろと煩い遥に、翔のカテキョで晴が頑張ってる事やら、俺の空手の事を説明する。
遥は塾に通い出したようだが、苦手分野もなく満点を連発してらしいから大丈夫なんだろう。
三家族全てが晴を応援する中で、遥だけがイマイチ反応が薄いのが疑問だ。
晴が帝詠を目指す事を、1番喜ぶだろうと思っていたのに。
『晴が帝詠…?』
『そ。お前もいるのは気に入らねぇけどな。』
いつもなら『こっちの台詞よ!』とか何とか食ってかかってくる反応が無い。
『あ?何だよ。』
振り返ると、遥は今まで見た事が無いような表情をしていた。
苦しいような、怒っているような、泣きそうなような。
『だから、何?』
何も言わない遥に尋ねても答えが無い。
珍しい事だが、俺はそれ以上踏み込まなかった。
晴の事で浮かれていたのと、晴に対する時よりは格段に遥の心情に興味が無かったから。
『訳分かんねぇ。行くぞ。』
だから、気付かなかった。
遥が、背を向けた俺に強い視線を注いでいた事に。
「入学おめでとーう!!」
暖かい春風が吹く中、俺は中学生になった。
頑張りの甲斐があって無事に合格した晴も一緒だ。
オマケに遥も。
「ほらほら、並んで!撮るぞー!」
入学式について来た翔の合図で写真を撮る。
てかコイツ晴の事撮りすぎだっつの。
「テンション上がるな!」
真っ新な制服を身に付けた晴の笑顔が眩しい。
チラチラとこっちを見て来る周りの新入生から晴を隠して圧を放つ。
晴に他人が寄って来ないように、牽制は早い方がいい。
「蓮、それやめて。」
遥が俺を睨んで腕を引っ張って来る。
なんかコイツ機嫌悪いな、メンド。
「おい、触んな。」
「うっさいわね。」
「腕組んで撮るの?いいね!」
「「え?」」
晴の的外れな言葉に驚いてる間に、翔がそれを写真に収めていた。
俺の右腕を遥、左腕を晴が掴む謎の構図。
「ははっ!なんか蓮を2人が取り合ってるみたいじゃん!」
「見せてー!」
「くだらねぇー。」
晴と俺翔のスマホを覗き込むが、遥の反応が無い。
「遥?」
晴もそれに気が付いたのか声をかける。
「あ、うん。ねぇ、早くご飯行こ。」
写真はスルーして三家族の両親がいる方へ向かって行く遥。
「どうしたんだろ?」
「さぁ。腹減ったんじゃね?」
心配そうな晴の頭を撫でて適当な事を言う。
「それより、制服どうよ。」
「ん?」
俺は忘れてない。
7年前、翔の制服姿に見惚れていたお前の事。
「え、似合うよ?」
「もう一声」
「カッコいいよ♡」
「お前に聞いてねんだよ。」
茶々を入れてくる翔に言い返すと晴が笑う。
まぁ、いいか。
これで高校卒業までの6年間、晴を離さずにいられるんだから。
●●●
チョイチョイ出てくる蓮父の秘書の名前は笹森さん。side蓮のプロローグ「行方」で蓮と会話してるのもこの人。
side晴人でほんのちょっと出た、蓮が黒帯持ってるのはこの時習ったからです。
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