【完結】桜の記憶 幼馴染は俺の事が好きらしい。…2番目に。

あさひてまり

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高校生編side晴人 たくさんの初めてを君と

92.手料理

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それから飛ぶように時間が過ぎて放課後ーーとはならなかった。


『これ、蓮様に渡して!気に入らなければ捨ててもいいですって!』

そう。

蓮がプレゼント受け取るのを全部断ったもんだから、蓮といる事が多い俺はこうやってプレゼントを押し付けられた。

無碍に断る訳にもいかず(泣かれそうになった)受け取っちゃって。

放課後教室に迎えに来た蓮が、デカイ紙袋5つにまとめたプレゼントを抱えた俺を見て渋い顔してたけど、お前のせいだからな?


更にだ。帰るために校門を出ると…


「「蓮様!!おめでとうございますっっ♡♡」」


他校の女子によって花道が出来上がってた。

そして…

「あの~、切藤君。」

おずおずと話しかけて来たのは守衛さん。

「皆さんプレゼントを僕に預けてしまって…。
あ、これで全部です。」

どうやら蓮本人に受け取ってもらうのは無理だって情報が流れたらしい。

「…どーも。」

蓮は無関係な守衛さんを突っぱねる事もできず、また巨大紙袋が5つ増えて。


大荷物になった俺達を、蓮父の秘書さんが迎えに来てくれたのが救いだった。




家の前に止まった蓮父のベンツから降りて家に入ると、父さんはもう出かけてた。

時間がないから、手を洗って材料を準備して調理開始だ。


それにしても…今日は改めて蓮のモテぶりを思い知らされた。

あの中にはきっとガチ恋勢もいる訳で。

もし俺と蓮が付き合う事になったら、いったい何人の女の子が泣くんだろう…。


ピピピピピ


タイマーの音でハッとした。

集中、と軽く頬を叩いて作業に戻る。


手際良くーーとはいかないけど、練習の甲斐あって出来は上々だ。

ホッとしながらカトラリーをセットして、グラスを並べて。

料理をセッティングした所でインターフォンが鳴った。

「はーい!時間ピッタリじゃん!」

ドアを開けると、本日の主役が笑った。

「だろ?これ陽子から差し入れ。」

それは高級フルーツ店が出してるジェラート。

「マジ⁉︎蓮母にお礼言っといて!」

蓮が手を洗ってる間にジェラートを冷凍庫に押し込む。

この日のための試作品(7回分)で冷凍庫がパンパンだからちょっと焦った。

ふぅ、何とか入った!


さあ来い!蓮!


パァンッ


「ハッピーバースデー!!!」

「うおっ!ビビった!」

クラッカーと共に迎えた俺は蓮のリアクションに笑った。

「はい、座って座って!」

蓮の手を引いて向かったテーブルの上では、ロールキャベツがホカホカと湯気を立ててる。

『俺でもできて、お祝いにもいける』これは、フランス風のトマトベース仕立て。

サイドメニューはシーザーサラダと、ポテトのチーズ焼き。

それから近所の美味しいパン屋さんのバゲットに、ワイングラスに注いだ『ノンアルなのにワイン風』が売りのジュース。


俺的にはかなり頑張った!

お皿もこだわって選んで(父さんの趣味で我が家は食器類の山)美味しそうに見えるように、蓮に喜んでもらえるようにアレコレ悩んだんだけど…。

どう、かなぁ。

反応のない蓮に急に不安になる。

蓮が山程貰ってたプレゼントは、大半がブランド物の包みだった。

そう言うのに比べたら、見劣りはするよね。

やっぱり物にした方が良かったのかも…。





「あの…蓮?」

全く動かなくなった蓮におずおずと話しかける。

「………マジかよ…これ晴が作ったのか?」

心底驚いてる様子の蓮に頷く。

「う、うん。最近家で手伝いしてるから…。」

それだけじゃないけど、めちゃめちゃ練習したのは蓮には内緒にしたい。

「凄ぇ!!マジで嬉しい…!!」

キラキラした笑顔で言う蓮は、いつもより少し幼く見えて。

あ、これ本気で喜んでるやつだ。

気持ちが明るくなって、ホッと息を吐いて席に着いた。

乾杯して、蓮がロールキャベツにナイフを入れるのを見守る。

ジュースを飲んでるふりしてるけど、心臓がドキドキして全く味が分からない。

美味しいって思ってくれますように…。




一口食べて、蓮が目を見開いた。

「………美味うっま………」

噛み締めるようなそれは、オーバーリアクションされるよりもずっとずっと気持ちが伝わって来る。

「晴、マジで美味い。こんな美味い物初めて食った…。」

「よ、良かったけどそれは言い過ぎ…!」

子供の頃から高級料理に慣れ親しんでるはずの蓮に苦笑しながら返すと、真剣な瞳で見つめられる。

「いや、本気で。お前が作ってくれた料理が俺には1番。」

その言葉にじわじわと顔が赤くなる。

好きな人にそう言ってもらえて嬉しくない訳がない。

擽ったくて、恥ずかしくて、蓮の顔を見れなかった。

「晴、ありがとな。」

コクリと頷いて、何とか顔を上げる。

「蓮、17歳おめでと!」

改めてそう伝えると、蓮が嬉しそうに笑った。






「ご馳走様。マジで美味かったわ。」

「いや本当良かったよ。」

こんなに喜んでくれるなら、他のメニューも練習しておこう。

「晴、ジェラート食べるよな?」

お皿を下げる俺に、蓮が聞いてくる。

「うん、冷凍庫に…あっ!待って!!」

そこには7回分の試作品達が!!!

時すでに遅し。

大量のロールキャベツ(フローズンモード)を前に蓮が固まってる。

「あぁぁぁぁぁ!!見ないで!!」

めちゃめちゃ練習したのバレた!

恥ずかしすぎ!!

床にしゃがみ込んで頭を抱える俺の前に、蓮が座る気配がした。

「晴、顔上げろ。」

「むりぃぃ」

「もしかして、スゲェ練習してくれた?」

「ううっ、言わないでぇ」

頑張った感を出さずスマートにしたかったのに。


「俺さ、蓮のファンの子達みたいにセンスも無いし、ブランドとかも詳しくないし…。
蓮が料理がいいって言ったから、せめてそれぐらいサラッとこなしてるように思われたくて…。」

なのに、結局バレるって言う。

「はぁぁ。」

ほら、蓮だって呆れて…

「可愛い過ぎかよ。」

「え?」

思わず顔を上げると、今度は蓮が頭を抱えてる。

「俺のために練習したとかマジやべぇ…萌え殺す気か…。」

「モエコロス?」

蓮は俺と視線を合わせると、頭を撫でてくれた。

「俺はさ、お前が俺の為に何かしてくれんのスゲェ嬉しい。練習してくれたのも込みで、今までで1番幸せな誕生日だわ。」

「…本当?他のプレゼントより?」

「本当だって。」

スリスリと指の甲で俺の頬を撫でながら蓮が笑う。

「それに、今日の貰い物は全部陽子にやった。」

「へっ⁉︎」

「今度チャリティーオークションやる知り合いがいるらしいから、一つも開封せずに紙袋ごと渡して来た。こっちが拒否ってんのに押し付けて来たんだから、どうしようが俺の勝手だろ。」

「そっ、そっか?」

「晴のしかいらねぇから、来年もまた俺の為に何か作って欲しい。で、練習してる所も全部見せて。」

「え⁉︎それサプライズになんないじゃん!」

「いい。可愛いから見たい。」

「か、可愛いって言うな…!!」

多分何の説得力もないだろうな。

赤面して、涙目になって、それでも喜んでるのが隠しきれないから。


「晴、キスしていい?」

「…………うん。」


消え入るような小さな声でも聞こえたらしい。

しゃがんだまま、チュッと唇が重なった。


「もう一回。」

蓮が言って、また唇が降ってきて。

触れ合うだけのキスを繰り返した。



何度も、何度もーーーーー。








●●●
晴「誕プレ、家族とか友達のはちゃんと受け取りなね?」
蓮「…うす。」(晴人以外にはお返しがメンドイから本当はいらない)

貰った物達

翔→バイク用インカム

啓太&黒崎→カラオケ&サイゼ奢り

萱島家→ゲームソフト

両親→株式投資用未成年口座(☜new!)




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