【完結】桜の記憶 幼馴染は俺の事が好きらしい。…2番目に。

あさひてまり

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高校生編side晴人 たくさんの初めてを君と

91.誕生日

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「ふあぁぁ~。……ん?」

よく寝た、と体を起こしたら朝の9時だった。

「ひぃッ!!」

学校始まってる!!

大急ぎで着替えようとして…気が付いた。

今日、土曜日だから休みじゃん。

安堵の溜息を吐いてベッドに逆戻りする。

よーし、もう一回寝よ。

こういう時って得した気分になるよね。

「…あれ?」

ふと自分の体を見下ろして違和感を覚えた。

俺昨日、パジャマ着てなかったっけ?

今着てるのスウェットなんだが?

しかも、朝弱いのに妙にスッキリ起きれてる。

睡眠の質がよかったってやつなのかな?


まぁいいや。

目が覚めちゃったし、取り敢えず朝ご飯食べよう。

そう思って部屋を出た所で。

ガチャ

部屋の隣にある客間のドアが開いた。


「えっ⁉︎蓮?」

出て来たのは、スウェット姿の眠そうな蓮。

父さんのを借りたのか、足首が少し出てる。

父さんだって178センチあるんだけど…蓮ってばどこまで成長期なんだろうか。

狡い。俺なんか165センチしかないのに。

俺のフランスの血は何処で仕事サボってるわけ?

色素ばっか無駄に薄くなってんだけど、もしかして一つのタスクしかこなせないタイプなの?

どう考えても過剰だろ!静脈透けてんだぞ、こちとら!!!


「おはよ。身体大丈夫か?」

脳内で4分の1の血統を罵ってた俺は、その一言で我に返った。

身体?そもそも何で蓮が泊まってるんだっけ?

昨日の記憶を手繰り寄せる。





『明日休みじゃん!蓮、アベンジャーzu観よ!』

夜更かししてネトフリで映画を観ようと誘うと、父さんが言った。

『父さんアトリエに籠るから、もし泊まるなら蓮君に客間使ってもらって。洗ったスウェット置いてあるから。』

次の日バイトが午後からの蓮も了承して、楽しく二人で映画を観終えた。

かなり遅い時間になったから、そろそろ上行く?と提案したら。

『晴、よな?』

蓮にそう言われて頷いたんだーーー。



いつも通り気持ち良くなって、蓮のもしたくなって。

それで、それでーーー?


 を、舐めーーー⁉︎⁉︎



うわぁぁぁぁぁ!!!!


完全に思い出した!

それは、技術はてんでお粗末だけど間違いなく…フェ……


ぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!


恥ずかしい!何て事してんだ昨日の自分!!


羞恥に悶えまくる俺を見て、蓮が口の端を上げた。


「覚えてんだな?」

「お、覚えてない…」

「ふーん。じゃあ何でこんな真っ赤なん?」

スリッと耳を撫でられて身体がビクッとする。

「まだ昨日の引きずってる?スゲェ敏感。」

「…!!やめ…!」

静止のために蓮を見上げると目が合った。

昨日絡んだ視線と、壮絶な色気を放ってた表情を思いだしてーーー。

ガクンッ

「晴⁉︎」

腰が抜けた所を蓮に支えられた。

「も…やだ…。」

顔を見られないように蓮の肩に擦り付けると、頭上で笑う気配がする。

「悪い、揶揄いすぎたわ。」

「忘れて…!二度と思い出さないで…!!」

「それは無理。」

「何で⁉︎」

思わず顔を上げると、チュッと額に唇が当たった。

「死ぬほど可愛かったから。あれは永久保存。」

そう言うと、俺をヒョイと抱えてリビングへの階段を降りて行く。

「や、やめてぇぇぇぇぇ!!」

叫びながら、もう絶対あんな事はするまい!と心に決めたのだった。



…いや、うん。

それからも何回か二人でシてるけども。

でもでも、口では一度もしてないから!!!








さて、そんな日々が過ぎて3月末。

俺、16歳になったよ!!

当日は啓太とサッキーと蓮に祝ってもらった。

帰りには蓮からプレゼント貰って、「虹みたいなロゴ」で有名なブランドのバックパックとパーカーの二本立てに目を剥いた。

こ、これも高校生にとってはお高いやーつ…。

めちゃくちゃ嬉しいんだけど、翌月に迫った蓮の誕生日に何あげたらいいか分かんなくなって。

高い物は無理だから、せめて欲しい物をあげたくて本人に聞いた。

そしたら…

『晴の作った飯が食いたい』

とのご回答でした。


…マジで???

俺さ、卵焼きと味噌汁くらいしか作れないのよ。

貴方それご存知ですよね?

って言うか、そんなんでいいの⁉︎

金額の事言うのはあれだけど、釣り合い全然取れてませんけど⁉︎

狼狽えて聞いた俺に、蓮はしっかり頷いた。

『それがいい』


…なるほど。

本人がそう言うなら仕方ない。

俺の料理なんかで満足してくれるなら作ろうじゃないか!!

だけどさ、誕生日に卵焼きと味噌汁って…どう?

うん、無しだよね。

しかも俺の誕生日(3月28日)から蓮の誕生日(4月7日)までとにかく日にちがない。

理由話すのは恥ずいけど、助けを求める事にした。


『ふーん。蓮君の為に料理ねぇ。』

別に、ニヤニヤする父さんなんて想定内だから。

ぜ、全然恥ずかしくなんかないんだからね!


『晴でも作れてちょっと特別感出せるとしたらじゃない?』


そう言われて早速一緒にキッチンに立った。

俺が分かりやすいように注意点やコツを教えてくれる。

メモを取って難しい顔をする俺に、父さんが笑いかけてきた。

『大丈夫だよ。晴、最近料理手伝ってくれてるじゃん。知らずにスキル上がってるはずだよ?』

確かに、部活に行かなくなって暇を持て余した俺は、父さんの家事を手伝うようになった。

だけど「手伝い」くらいでスキルが上がる訳ーーー

ーーあったわ。

料理って全くやらないのと少しでも齧ってるのじゃ、感覚が全然違うものなんだなぁ。

そんな事に感動しつつ出来上がった料理は申し分ない出来だ。

そりゃそうか。父さんと一緒に作ったんだもんね。

本番は俺一人でやりたいから、今日から特訓だ!


何を作るか蓮にバレないようにしたくて、蓮がバイトで家に来ない日と、家に来ても早めに帰った日に練習する。

父さんは今度開催される展覧会の準備で忙しそうだったから一人で作ったんだけど、初日は失敗。

2回目は形はいいけど味が薄い。

3回目はその逆。

…なんてやってたもんだから、ほぼ毎日のように同じメニューを食べる事になってしまった。

いや、でも蓮の為ならこれくらい!

と思って頑張ったさ。

『え、冷凍保存できるよ?』って聞くまでは。

マジか。もっと早く教えてくれマイファザー。


それからは作ったら1つだけ味見して、改善点が分かったら残りは冷凍するようにした。
父さんが忙しい時にでも使ってもらおう。




そうやってみっちり練習した成果を出す時が遂にやってきた。

そう!今日は蓮の誕生日!17歳!

家に帰ったら俺は準備を始めて、蓮には19時来てもらう事になってる。

父さんは用事があるらしくて夕方から不在。
母さんはいつもの如く夜勤。

つまり、蓮と二人っきりでお祝いできる。

嬉しいし恥ずかしいしで何かもう苦しい!


なーんて、浮かれながら学校に足を踏み入れた時だった。

「「きゃ~!!蓮様~!!!」」

黄色い悲鳴の先には、女子の大群。

全員手にはプレゼントを持ってーー

ぎゃあっ!こっち来る!!

軽く2クラス分くらいの人数が突進してくる様子はかなり恐怖。

思わず後ずさると、蓮が片手で俺の腰をガッチリ掴んだ。

そして、群衆へ一言。


「邪魔。」


シーンと静まる女子達に目もくれず、蓮は俺の腰を抱いて歩き出した。


「ちょ、蓮!いいのか⁉︎」

「いい。受け取って変に期待されたら迷惑。」

そ、そうですか…。


『キャア~~!!!素気ない所も素敵!!!』


背後で再び女子の悲鳴が聞こえたから、効果はあんまり無さそうだけどね。









●●●
因みにバレンタインも同じような感じでした。
でも、晴はあんまり覚えてません。
それはside蓮の方で。












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