【完結まで残り1話】桜の記憶 幼馴染は俺の事が好きらしい。…2番目に。

あさひてまり

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高校生編side晴人 好きな人が、自分を好きかもしれない。

82.温かいクリスマス

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翔君が帰った後、一人考える。

俺はできれば周りの皆んなには祝福して欲しいと思ってたけど、そう思えない理由がある人だっているのかもしれない。

翔君は放っとけって言ったけどさ、やっぱり先輩にはちゃんと話したいって思うんだ。


筋肉が付きにくくて競技に不利な俺は、同じような体質の先輩の勇姿に何度も救われた。

そんな憧れの先輩に、できれば分かって欲しい。

もし無理だったとしても、きちんと話した上での事ならしょうがないって思えるかもしれない。


それから、啓太とサッキーにも伝えよう。

この二人には事後報告じゃなくて、俺の気持ちを分かって欲しいから。

これが、今の俺にできる覚悟。


足りない事を嘆くんじゃなくて、今できる事を精一杯やろう。

それで、それができたら蓮に返事をしよう。

蓮に比べたら何もかも、まだ足りないかもしれないけど。
それでも蓮が好きだから隣にいさせて欲しいって。



そう決意したら、ここ暫くのモヤモヤが落ち着いた。

翔君には本当に感謝だ。


俺は久しぶりに気持ちが軽くなって、家族で平和にクリスマスを過ごした。






『今、家の前出れる?』

22時過ぎ、蓮からLAINが来た。

何事だろうと外に出ると、黒いコート姿の蓮が立ってる。

「メリクリ!ご飯美味かった?」

「メリクリ。美味いけどマナーがメンドイ。」

フレンチのフルコースだったらしい蓮の感想に笑う。

すると、蓮が紙袋を差し出した。

「ん、クリプレ。」

「え⁉︎」

驚いて反射的に受け取っちゃったよ。

この紙袋と大きさからして、もしかして…。

蓮の許可を貰って開けてみると、やっぱりだ。

「…ヤバイ、めっちゃカッコいい…。」

感動して呟く様な声になる。

中身は、チェックマークみたいなロゴで有名なブランドのスニーカーだった。

いつだったか「カッコイイなぁ」って、蓮の前で漏らした気がする。

それを覚えててくれたんだ…。

喜びで胸がいっぱいになって…ハタと気付いて急速に凍り付いた。


これ、限定モデルだから3万近くするじゃん!

「れ、蓮!すげぇ嬉しいけどこんな高い物貰えないよ!」

「伝手で安く買えたから気にすんな。」

「そ、そうなの…?や、でも…。」

「サイズいけっかな。履いてみ?」

サッサと取り出して地面に置かれたスニーカー。

もう返品できなくなっちゃったじゃん!

いや、返品なんかしたくないけども!


「ピッタリだ…。蓮、本当にありがと。
凄い嬉しい。」

そう言うと蓮が笑顔になった。

その顔を見ながら、ちょっと躊躇いがちに続ける。

「それで…その、一応俺も用意してるんだけど…。」

「…マジで?」

目を見開く蓮。

「あぁっ、でも期待しないで!」

そう言いながら、玄関に用意してたちょっと重さのあるプレゼントを渡す。


「えっ、スゲェ何これ。」

箱を開けた蓮がビックリしてる。

20センチくらいの雫型の置物。

ガラス製のその中では、透明な液体に白い結晶が浮かんでる。

「ストームグラスって言って、気温とか天候で中の結晶の形が変わるんだって。
蓮の部屋シンプルだから、これなら邪魔しないし見てて面白いかなって思って。」

今は寒いからか、雪の結晶みたいになってて綺麗だ。

これ自体は凄く良い物なんだよ?
俺も自分で欲しいくらい。

言い訳じゃないけど、ノーバイトの高校生には5千円だって大金な訳ですよ。

だから俺的には頑張ったつもりなんだけど、スニーカーとの金額の差が大き過ぎてちょっと申し訳ない。

ガッカリさせちゃったかな…?


「マジで嬉しいわ!」

そんな俺の心配を蹴散らす明るい声。

「これさ、昔は航海士が使ってたやつだろ。
それがインテリアになってるってスゲェな。」

大事そうにストームグラスを抱えて言われるけど、俺はそこまで知らなかった。
蓮は色々詳しいよね。

「なんか金額の差が凄くて申し訳ないけど、喜んでくれたなら良かったよ。」

ホッとして本音を言うと、蓮が笑う。

「これ自体も気に入ったし、晴が選んでくれたってのがで俺にとってはプライスレスだから。」

な、何か恥ずかしい!

狼狽えると、蓮が顔を覗き込んで来た。

「俺の部屋に飾るからさ…見に来いよ。」


蓮は「今度」じゃなくて「いつか」って言った。

前は蓮の部屋に行くのなんて当たり前だったけど、今は違う。

蓮の告白の返事を俺が待たせてる状態。

そんな中で部屋に誘ったら、俺が警戒するとか、返事を急かす事になるって考えてくれたんだと思う。

蓮は、本当に優しい。

いつだって、俺の負担にならないようにしてくれる。

そんな蓮に、俺はまだ返す言葉を持ってない。

全然平気そうにしてたって、もどかしい思いさせてるよな。

ごめん。

だからせめて、これだけは伝えたい。


「あのね…蓮。俺、真剣に考えてる。
ただ、ちょっと時間が欲しいんだ。
その…待たせてごめんな?」

俺の中でけじめを付けたいから、待ってて欲しい。

そんな願いを込めて言うと、優しい手が頭に置かれた。

「晴のそう言う所好きだわ。」

「え?」

良く聞こえなくて聞き返すと、蓮は首を振った。

「何でもない。考えてくれてんのは分かってるから…前向きに検討をお願いします。」

突然の敬語に驚くと、蓮は悪戯っぽくこっちを見てる。

「は、はい。前向きに検討します。」

俺は答えて…我慢できずに二人して吹き出した。


「冷えただろ?もう帰るから家入れ。」

蓮が俺の体温を確かめるように頬に触れる。

「…うん。」

もっと一緒にいたいけど、それを言う事はまだできなくて。

「冬休み、バイト忙しいんだよね?」

少しでも引き伸ばそうと、既に本人から聞いて知ってる内容を確認する。

「人足りねぇから、ほぼバイト。
あ、でも三ヶ日は流石に休みだから初詣行こうぜ。どこ空いてる?」

その言葉にテンションが上がる。

「2日は啓太と遊ぶからそこ以外なら大丈夫!」

「…じゃあ1日。」

一瞬舌打ちが聞こえたような気がしたけど気のせいかな。

「オッケー!時間はまたLAINでいい?」

頷く蓮に、ニヤケそうになる。

新年早々会えるんだ!!

ってか、次の約束があるってだけでこんなに気持ちが違うのか。

ずっと蓮との予定をビッシリ入れられたらいいのにーーーなんて考えてヘラヘラ笑いそうになったから、そろそろ家に入ろう。

「蓮、スニーカーありがと!また来年な!」

手を振って背を向けようとすると、グイッと引っ張られた。

抱きしめられたり、キスされたりするんじゃないかと胸が高鳴る。

至近距離で一瞬見つめ合ってーー

それでも欲しい温もりは与えられなかった。

「風邪引くなよ。」

そう言って頭を撫でるだけで、蓮は家の方へ俺の背を押す。


今度こそ家に入ると、蓮がそこを離れる気配がした。


あの日以来、1番の触れ合いとなった頭を撫でる仕草。

竹田先輩に見られて動揺した俺の心情を慮って、それ以上触らないようにしてるんだって事は分かってる。


分かってるけどーーー


思い浮かんだ言葉に、首を横に振った。




冬休みが明けたら啓太とサッキーに俺の話しを聞いてもらおう。

それから、竹田先輩にもーー。


早く蓮に好きって伝えたいな。





●●●
啓太に先を越されるのが許せない蓮。
1日早く会う権利をゲット!笑

ストームグラスの素敵さ、私の文では全然伝えられない!!
ご存知ない方はぜひグーグル先生に聞いてみて下さい!笑

























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