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高校生編side晴人 好きな人が、自分を好きかもしれない。

74.好きの、その先は

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今俺は、落ち着かない気持ちでカフェの椅子に腰掛けてる。

茶色を基調とした少し暗めの店内。
観葉植物とか、間接照明とか、英語の本とか。

この世のお洒落をかき集めたようなその空間は、働くスタッフまでも美形揃いだ。

しかも全員英語で会話してるの。


落ち着かない。
非常に落ち着かない。


どうして俺がこんな場違いな所にいるのか。
それは、例の計画の9個目の質問のせいだったりする。

取り敢えず、3~8個目までをダイジェストでお送りしたい。一問一答形式で。



『3.彼は貴方を危険から守ってくれる?』

朝、満員電車で壁ドン?ドアドン?して潰されないようにしてくれました。
それと、道を歩く時は必ず車道側を歩いてくれてる事に気が付きました。



『4.彼は貴方の悩みを真剣に聞いてくれる?』

使えなくなった剣道部の備品の話しをしたら、「自分のせいみたいな気にしかたはすんなよ?」と言ってくれました。
その上で、伝手をあたってみると約束してくれました。



『5.貴方が他人と話してる時の彼の反応は?』

これに関しては普通と言うか…俺の友人とは何故か常にバチバチしてるので、残念ながら良く分かりません。



『6.貴方が他人に触れてる時の彼の反応は?』

同上です。



『7.彼は貴方を思ってちゃんと叱ってくれる?』

今日返却された数学の小テストが赤点で、それがバレて怒られました。
再テストまで勉強を見てくれるそうです。
合格したら俺の好きなホットチョコレートを奢ってくれるらしいので頑張ります。



『8.彼は貴方の手作りの物を喜んでくれる?』

夜ご飯に俺が卵焼きを作ったら、彼が一人で全部完食していました。そう言えば前にもこんな事があった気がします。
ただ、無類の卵焼き好きの可能性も捨てきれません。







さぁ、ここまでの8問の結果、どう思う?

何かさ…正直良く分かんなくない?

兄弟みたいな扱いされてる気もしなくもない。

5個目と6個目に関しては判別不能だし。
全くあの二人は!
…って言うか蓮が啓太に突っかかるから!


やっぱりブルボンヌ先生の教えも、俺なんかじゃ上手く活かせないみたいだ。
残念です、先生…。



と、まぁこんな感じで俺の計画はほぼ頓挫しちゃってたんだけどさ。


『9.彼は貴方にバイト先(仕事先)をきちんと明かしてくれてる?』

って言うのを見て思った。


…そう言えばカフェでバイトしてるって聞いた事はあるけど、店の名前とか場所までは知らないなぁ。


「サッキーさ、蓮のバ先って行った事ある?」

あれ以来、良く俺と啓太に絡みに来る黒崎君に聞いてみる。

「あるよ!え、もしかして晴君ないの?」

コクンと頷くと、彼は仰天した。
因みに、お互いの呼び方が苗字から昇格したのはここ数日。

「マジか!じゃあ今日行ってみようよ!
暫く部活ないんでしょ?」


と、言う訳で放課後。

用事があるらしい啓太と別れて、俺は黒崎君の案内で蓮のバイト先に向かったのである。

「絶対サプライズがいい!!」と言う彼に負けて、蓮に内緒で。

「特進の先輩の紹介で始めたらしいよ。
英語で日常会話ができるのが採用条件なんだけど、高校生でも高時給で働けるんだって。」

その時点でちょっとヤバイ感じはしてた。

英語が必須のカフェって、どんなん?って。


まさか、こんなお洒落空間だとはーーー。
予想の遥か上をいってたよ…。


「切藤って今日います?俺ら友達なんですけど。」


店内のテーブルに案内されると、黒崎君は気軽な感じでスタッフに聞いた。

「いますよ。今あそこで接客中なので、終わったらここのオーダー取りに行くように言っときますね。」

言われた方を向くと、ウェイター姿の蓮がいた。

白シャツに黒のパンツ、腰には長い黒エプロン。

脚が長過ぎるな。
そしてめちゃめちゃカッコイイ!

これだけでも見に来て良かった!!


そんな浮かれた俺の目に入って来たのは、蓮がオーダーを取ってる相手。

大学生くらいの、スラリとした綺麗な女性だ。
ニットのワンピースから覗く脚を組み替えて、それが蓮の脚を掠める。

そんな彼女に、屈んで何かを話す蓮。

ピンクのネイルをした細い指が、蓮の腕に触れる。

サラサラの茶色いロングヘアを耳にかけて、上目遣いに蓮を見るその瞳には熱が篭っていて。

強請るように蓮の服の袖を引っ張ると、小首を傾げて何か言った。

それに、蓮が笑顔で答える。



その光景に、ツキンと胸が痛んだ。


「は、晴君!あれ接客だからね⁉︎
しょうがなくだから!!」

「…楽しそうだね。」

「あー…やべぇ。これ、俺ガチで怒られるやつじゃん。」

ボソリと言う黒崎君の声が、どこか遠くに聞こえる。


店内には他にも蓮に熱い視線を向ける女性客がいて、その人気ぶりを改めて感じた。

こう言う事、良くあるんだろうな。
しょうがないよね、カッコイイもん。


でもーー

だけどーー


俺以外に、笑いかけないで。



自分を納得させようとしたのに、ドロリとした感情が湧き上がって狼狽する。


蓮のモテっぷりを目にするのなんて慣れてるのに。


どうしてこんなに、酷く自分勝手な思いが出てくるんだろう。

こんなの、知られたくないーー。


「あ、俺帰ろうかな。忙しそうだし。
案内してくれたのにごめんね。」

精一杯の平気なふりで言った。

この場を去らないと、胸を塗りつぶしていく黒い感情が漏れてしまいそうで。

「待って待って!」

拗れるからって必死に言う黒崎君を残して、俺はドアへ向かう。


その時運悪く、新しいお客さんが入って来た。


「welco……はっ⁉︎」


あっ


こっちを向いた蓮と目が合った。


「あ、えっと、バイト頑張って?」


目を見開く蓮と、その腕を甘えた表情で突く女性から顔を背けてドアから滑り出た。




あまりにも不自然だったと思う。

でも、心の中のドロドロを隠せてればそれでいい。

黒崎君には申し訳ないけど、彼ならきっと「用事で帰った」とか上手く言ってくれるだろう。


明日蓮に会ったら「また今度行くね」って、笑って言えるようにしないとーー。







蓮が俺の事を好きかもしれない、なんて思って。

それを確かめたくて、やり方が分かんないからサイトを参考に計画なんかしちゃってさ。


正直、浮かれてたんだ。


「好き」の先にある「両思い」がキラキラして見えたから。

蓮も俺の事が好きだったら、どんなに幸せだろうって。



だけど、俺の「好き」の先にあるのはそんな綺麗な物とは程遠かった。

暗い、制御できない衝動。

自分勝手なこの気持ちを、蓮にぶつけてしまうかもしれない。


それが、堪らなく怖いーー。






「晴人君?」



暗く沈んでいく思考を、聞き覚えのある声が引き留めた。




●●●
3~8
そんな兄弟いる??笑

蓮のバ先は個人経営のカフェです。


晴人の恋愛力を鍛えるターン!
声の主は、誰でしょう。



































































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