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高校生編side晴人 守る為に闘う事と事件の決着

71.またね

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3日後、理事長の言ってた通り全校集会が行われた。

今、体育館では個人名を伏せつつ、事件の概要から動機までしっかり説明がなされてる…らしい。






「らしい」って言うのは、俺がそれに参加してないから。

俺は今、理事長の許可を得てある人の元へ向かってる。



え?あの後、蓮とキスの続きしたのかって?

してないよ!してません!

学生は勉強が仕事ですのでね。
ちゃんと授業受けて帰りましたよ、ええ。


蓮は蓮母の手伝いがもう少しあるらしく、明日から学校に復帰する事になってる。

全校集会で蓮の無実も話されるだろうし、復帰には何の懸念も無い。

無いんだけど…ほら、この前全身ブラックの爆イケなお姿で現れたじゃん?

あれを、こっそりスマホで撮影してた生徒がいたらしくて。

拡散されて全校生徒が見る事になったそれは、間違いなくうちの高校の伝説になると思う。

多分、他校にも知られてるんじゃないかな。

蓮のファンクラブは人数の把握ができなくなってるらしい。

この分だと今までより、蓮に話しかけたり告白する人が増えるんじゃないかな。

俺はそれがちょっと不安で、モヤモヤする…。




そんな事を考えてると、目的の場所に辿り着いた。

「下まで、運ぶの手伝うよ。」

特進クラスの教室のドアを開けて言った俺に、輝くミルクティー色が揺れたーーー。






「別に手伝ってなんて言ってないけど。」

教科書が入った段ボールを持って少し後ろを歩く俺に向かって、相川さんが言った。

彼女は鞄と小物類を持ってる。

「うん、勝手にごめんね?」

ここ数日ですっかり相川さんの憎まれ口に慣れちゃって、前みたいな苦手意識は消滅した。

「本当に辞めちゃうんだね。」

今日、相川さんは学校を去る。

「当たり前でしょ。顔イジッてんのバレたんだから。アンタみたいに脳天気な考え方の人間ばっかじゃないのよ。」

それをネタに変な絡まれ方されたらウザイし、と言う彼女は、俺の方は見ないけどちゃんと話してくれる。

「これからどうするの?」

「県外の高校に編入。辞めるって言ったら、理事長が世話してくれたわ。
別に高校行かなくても良かったんだけど。」

投げやりに言う彼女の表情は見えない。

「うーん、でも折角頭良いんだからって思ったんじゃない?」

「別に良くないわよ。特進にいるために必死に頑張ってただけ。まぁ、アンタみたいに馬鹿じゃないけど。」

最後の一言いる?と思ったけど、これが相川さんの通常運転だからなぁ。

「でも、ノート取るの天才だって。」

「は?」

「前に蓮が言ってた。相川さんのノートを教科書にするべきだって。」

まだ俺と蓮が話してた頃、そう聞いた事があった。

「…蓮が……?」

足を止めて振り返った相川さんの目が見開かれてる。

「……知らなかった。」

静かにそう言うと、彼女はまた歩き出した。



「アンタ、蓮とはどうなったのよ。」

「ふぇっ⁉︎」

「『ふぇっ⁉︎』じゃないわよ。蓮の事好きなんでしょ?」

や、やっぱり相川さんにはバレてた。

「えっと、はい、そうです。」

「で?」

「『で?』とは?」

「もうヤッたの?」


ドシャッ!!

「ちょっと!人の荷物落とさないでよね!」

「だ、だって相川さんが…!!」

「はぁ?何動揺してんの?
両思いで、悪い女に引き裂かれたてた仲が復活したんだから仲直りセッ」「わぁぁぁぁ!」

相川さん!!

「お、俺達そんなんじゃないし!」

「あ”?」

「うっ、怖!だから、両思いとかじゃないんだって!」

「はぁぁ⁉︎」

勢い良く振り返って睨んで来るけど、本当の事だからね⁉︎

「…マジで、どーなってんのよ…。」

次の瞬間には頭を抱える相川さん。

「アンタ、自分は蓮に相応しくないってまだ思ってんの?」

「うーん、相川さんに言われた時は、それに納得しちゃったんだよね。」

だけど…

「今回の事があって、蓮の隣に立ちたいって思ったんだ。能力とか見た目とかが釣り合ってないのは分かってるよ?ただ、蓮の心には寄り添ってたいなって。」

蓮は、俺が必要だって言ってくれた。
俺に救われてるんだって。

「蓮が望むなら、もう周りは気にしない。
俺にも蓮が必要だから。」

それが、どんな形でも。

「『それがどんな形でも』とか思ってんでしょ。」

ギクッ

「顔に書いてあんのよ。
あのねぇ、アンタは凡人じゃないから。」

「え?」

「最初は私もそう思ってたけど、ここ数日で変わったわ。アンタは、度を超えたお人好し。」

「えぇ⁉︎」

「あと無鉄砲。激ニブ。」

「ディスッてるよね?」

「それと多分、。」

「…え?」

「そこがブレなければいいんじゃないの?
周りは色々言って来るだろうけど、私の攻撃に負けなかったんだからこの先も大抵の事は大丈夫よ。
保証してあげてもいいわ。」

驚くのと同時に、いかにも相川さんらしい言い方に笑みが溢れる。

「うん。ありがとう。超自信持てる。」

「なんか腹立つわね。」

「相川さんだっていつも一言多いじゃん。」


そんな風に会話しながら校門が見えて来た時だった。

もういいからと、俺の段ボールを奪った相川さんの足がピタリと止まる。

その視線の先にいたのはーー。

「あ、来た来た!おーい!」

「このリムジンって相川さんの迎え?相川グループってスゲェな。」

黒崎君も啓太が手を振る光景を、相川さんが呆然と見てる。

「何で…?」

「何でって、俺たちチームじゃん?」

「そう。仲間の門出を見送り。」

相川さんの肩が僅かに震える。
懸命に涙を堪えて、彼女は俺を見た。

「悪かったと思ってるわ…。」

小さな、呟くような言葉は、相川さんの精一杯の謝罪だと思う。

「うん。もう気にしてないよ。」

俺が答えると、彼女は泣き笑いのような顔をした。

キラキラするミルクティー色はやっぱり綺麗で、彼女にピッタリだと思う。



「相川さん!また会えたら、話しかけてもいい?」

校門を出て行く後ろ姿に向かって呼びかけた。


「…好きにすれば?」


ははっ。俺にはそれで十分伝わったよ。

啓太と黒崎君も、やれやれって感じで笑ってる。

「ねぇ!」

迎えの車に乗り込む寸前、相川さんが声を張り上げた。

「もういらないから、捨てといて!」

そう言って投げた何かを受け取ると、それは…

ノートだった。

「ちょっ!!これ『相川ノート』じゃん!
これあれば全教科のテスト一夜漬けでいけるって言われてるやつ!!!」

特進では有名だったみたいで、黒崎君が興奮してる。

「それで平均取れないようだったら絶望的な馬鹿ね。いるんだったら、最低限はきちんとしなさいよ!」

そう言うと、相川さんは後部座席に乗り込んだ。


蓮の隣にいたいって俺の気持ちを、後押ししてくれたんだーーー。



「相川さん!ありがとう!!!」



発車する車に向かって叫んだ言葉は、彼女に届いただろうかーーー。













「お嬢様、換気のために窓を開けてもよろしいですか?」

「え?」

『相川さん!ありがとう!!!』

「…止めますか?」

「いいわ。このまま走って。」

「良いご友人ができたのですね。」

「……………………うん。」







●●●
登場初回から晴人に敵意剥き出しだった相川。
色々と引っ掻き回してくれましたが、和解しての退場となります。
初めて素の自分を受け入れてくれた『チーム』の皆んなと、また会えるといいね。


























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