【完結】桜の記憶 幼馴染は俺の事が好きらしい。…2番目に。

あさひてまり

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高校生編side晴人 守る為に闘う事と事件の決着

66.明らかになる真相

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自主謹慎中の蓮がどうしてここにいるんだろう。

って言うか…

「何?その格好…」

思わずそっちが先に出てしまったのは許して欲しい。
だってさ、蓮の格好がすげぇのよ。

黒のセーターに黒のレザーパンツ。
その上に黒のロングコートを着て、足元はこれまた黒のブーツ。
頭に被ったハットも黒のオールブラックコーデだ。
胸元にプレートが付いた長めのシルバーネックレスと、耳にもシルバーのピアス。
指輪も4つくらいしてる。

それでさ、カラコン入れて瞳がブルーなの!!

それはもうな神々しいまでのイケメンで…
状況も忘れて思わず見惚れてしまった。

「あー、陽子の手伝い。変?」

陽子ってのは蓮母の事だ。

「めちゃめちゃカッコイイ…。」

あ、やばい!オブラートに包まず思ったまま口走っちゃった!

ほら、蓮が驚いてこっち見てる。
誤魔化さなきゃと一瞬焦ったけど…なんか凄い機嫌良さそうだからいいかな?笑ってるし。

「「ぎぃやぁぁぁぁあぁぁあぁぁあ!!」」

金縛りにあったみたいに固まってた周りが突然騒ぎ出す。
男女問わず拝んだり泣いたり忙しそうだ。

だけど蓮はそっちはガン無視で俺の腰を引いて鬼丸と橋本先輩から引き離した。
そのまま守られるみたいに胸に抱き込まれて心臓がフル稼働する。

やばいやばいやばい!
いつもの香水と違う、大人っぽいセクシーな香りが余計に落ち着かない。



「き、切藤!!教師にこんな事していいと思ってるのか!!」

動揺しまくる俺の意識は、大声に引き戻された。

鼻血が止まったらしい鬼丸が床から身を起こして喚いてる。
転んで鼻を打っただけで元気っぽいな。

「正当防衛だろ。こんだけ目撃者いるんだから下手に喋んない方がいいんじゃね?」

蓮の言葉に、周りが一斉に頷く。
そうだよね、鬼丸が殴りかかる所皆んな見てるもんね。

「もうやめれば?アンタなら嵌められた気持ち分かる筈だろ?」

鬼丸がピタリと動きを止める。

「どう言う事?」

「コイツも被害者なんだよ。」

おれの疑問に蓮が答えてると、誰かが呼んだのかバタバタと先生達が駆け付けて来た。
その先頭にいる校長は酷く顔色が悪い。

「20年前、ある高校の持ち物検査で生徒の鞄から煙草が見付かった。
その生徒は無実を訴えたが学校側は認めず退学。
後に別の奴がその生徒の鞄に煙草を入れた事が発覚するも、既に生徒の消息は不明。
…その時の被害者がアンタだろ?」

鬼丸がビクリと身体を揺らす。

「それで、その時の担任教師が校長、貴方ですよね?」

「な、なんで…それを…」

俺達の所まで辿り着いた校長の顔面は蒼白だ。

「貴方は教員になった田丸を自分の下で働かせる事にした。口止めなのか負い目なのかは知らないが、貴方が田丸の行いを見て見ぬふりしてきた事は確かだ。」

特進クラスに異常な敵意を見せていた鬼丸。
普通、教師がそんな事したら問題になるのにそうならなかったのは、校長の事勿れ主義のせいだと思ってた。

だけど、違ったらしい。
校長は過去の事から、意図的に田丸を見逃してたんだ。

「話しは聞かせてもらったよ。」

ふいに聞こえた声に振り返った先には…

「り、理事長!」

校長の声が震えてる。

「校長、貴方を任命したのは前理事長だが責任は私にもあるようだ。田丸君と共に話しを聞こう。
生徒の皆んなには申し訳無かった。
数日の内に必ず明確な説明をするから、それまで待ってもらえるだろうか。」

低くゆったりした理事長の声に、生徒達は頷く。
出張ばかりであまりいないけど、うちの学校が大人気になったのはこの人が理事長に就任してからだ。

俺達を対等に扱ってくれるその姿に皆んな一目置いてる。

「ありがとう。では、先生方、生徒を教室へ。」

先生達が生徒を連れて教室へ戻って行く。

残ったのは、当事者である俺達だけだ。

「田丸君、立てるか?」

校長の言葉に、鬼丸は震えながら俯けていた顔を上げた。
その目に宿るのは、憎悪。

「アンタのせいだ!あの時、アンタが俺の言う事を信じなかったから俺の人生は滅茶苦茶になった!!
ずっと憎んでた!だからアンタの誘いを受けてこの学校に来たんだよ!
俺を嵌めた奴はチャラチャラした見た目なのに成績がいい奴だった…この学校の特進みたいになぁ!
だから、アンタの大好きな特進の生徒を俺が退学に追い込むのを見せてやりたかったんだよ!」

泣きながら叫ぶ鬼丸は、確かに被害者なのかもしれない。だけど…。

「俺達はタナカアキトじゃない。」

蓮の声に鬼丸がビクリと身体を震わせた。
その人が鬼丸を嵌めた犯人なんだろう。

「俺は特進だけど、その前に『切藤蓮』だ。
特徴が似てたとしても完全に別人だろ?
俺はお前を嵌めた奴みたいな事絶対しねぇし、万が一それをやろうとする奴がいたら止める。」

そう。蓮達はその人とは別人なんだ。

「先生、煙草は俺の鞄に入ってたんだよ。蓮はそれを庇ってくれた。先生が嫌う『特進』の生徒は、そんな風に他人の事守ってくれる人もいるんだよ。」

優しい黒崎君も、何だかんだ協力してくれた相川さんも。

「俺の大事な人達を、『特進だから』って一括りにして欲しくない!
ちゃんとその人自身を見て欲しい。」

「………うっ…。」

「すまない、田丸君。全て私のせいだ…。」

静かに泣き崩れる鬼丸に、校長が声をかける。

「私は君が退学になってからずっと行方を探していた。やっと見付けた時には、君は教師を目指していた。君があの状況から教師になるのはどんなに大変だっただろう…。教員免許を取ってから、なかなか就職先が決まらない君に声をかけたのは、私のせめてもの贖罪だったんだ。
だけど、憎い私の助けなんて君には必要無かったね。未来ある若い君に、こんな事をさせてしまって…全部私のせいだ。」

鬼丸はそれに対して何も言わなかったけど、もう叫んだり暴れたりする事は無くて。
校長と共に、大人しく別室に向かうその背中が震えていたのは、怒りじゃなくて後悔だからだって思いたい。

生徒の引率を終えた大川先生が迎えに来て、橋本先輩を促す。

「萱島、切藤、相川さん。」

俺達の前を通る時、先輩が俺達の名前を呼んだ。

「本当にごめん…。」

後悔が滲むその声に、俺達は頷く。

蓮の事、試合に出れないかもと嘆く剣道部の事。

色々な思いはあるけど、全て受け止めた先輩がまたやり直せるといいな、と思う。






「さて、君達には特に謝らなければならないね。」

俺達だけになると、理事長が言った。

「蓮、自主謹慎はもう終わりだ。陽子さんにも私から謝罪しよう。」

その言葉に蓮じゃなくて黒崎君が反応する。

「何で理事長が『蓮』って呼んでんの⁉︎」

「あ?親戚だから。」

「「はぁ⁉︎」」

蓮の言葉にハモ黒崎君と啓太。
相川さんも目をまるくしてる。

「俺の母親の妹の旦那。」

つまり叔父さんって事。俺は知ってたけどね。

「「お前の家系どうなってんだよ!!!」」


ーー再びハモった二人の声が校内に木霊した。





●●●
次回はほんのりイチャイチャしたり、事件の取りこぼしを拾ったりです!













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