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高校生編side晴人 守る為に闘う事と事件の決着

65.生徒vs

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久しぶりに出した大声は、いつの間にか大きな人垣ができていた廊下に響き渡った。

対面にいる啓太と黒崎君が目を丸くしてるけど、ふつふつ沸く怒りが抑えられない。

「自分が思い描いてたイメージと違ったからって相手を責めるのはお門違いなんだよ!」

それで勝手にガッカリされて、トラウマになったりするんだからな⁉︎

それに、整形がなんだ!
某国の芸能人だってしてるけど皆んな好きじゃん!

「一度でも好意を抱いた相手になら、理解する努力をするべきだ!それができないならそっと離れろ!糾弾して相手を傷付ける権利なんてないんだから!
それがファンとしての感情でも同じ事!
『もう失望しました!ファン辞めます!』みたいな謎の宣言いらないんだよ!!」

俺の言葉に、周りでヒソヒソ言ってた人達が視線を逸らす。

皆んな相川さんのファンだって言ってただろ!
掌返して率先して悪口言うとか無いから!

『ほんとそれ。』
『アイドルファンを生業とする者として許せない行為。』
『こんな大勢の前で言う必要ないじゃんね。』

人垣が騒めく。

「ち、違う!俺は騙されたんだ!
小火だってこの女が言ったからやっただけで…!」

部が悪くなった橋本が叫ぶけど、混乱してるのか自分の罪を大々的に発表してしまってる。

穏便に済ませたかったのに、自分から告白したんじゃしょうがない。

「じゃあ聞くけど、相川さんに『こうするね』って話したの?逆にに相川さんから『こうして欲しい』って言われた?」

「そ、それは…」

「『相手のため』だと思ってやった事って、その本人の同意が無かったらただの自己満なんだよ…。」

俺がいい例だ。
『蓮のため』だと思って距離を置いたけど、結局は自分が決めた事だって気付いた。
俺が、俺の為に選んだ選択。

「そう言うのってさ、大抵上手くいかないんだと思う。だって独りよがりなんだから。
結果的に、その人を傷付けたり迷惑かけたり…。」

本当に、正に俺の話し。

蓮が俺から離れたいんだって、確かめもせずに思い込んで勝手に離れて。

巡り巡って、今回の事件で蓮に嫌な思いをさせてしまった。

「自己満だから、相手に見返りを求めても返って来ないのは当たり前だと思う。」

橋本が、俺を追放する事で相川さんに何を求めてたのかは分からないけど。
少なくとも感謝はされると思ってたんだろう。

だから、罪を追求されて逆上した。

「ただ、好きな人のために何かしたいって思いが君を動かしてたなら…きちんと話しをして、自分から罪を告白して欲しかったんだ。
やり方は良く無かったと思うけど、その気持ちはとても分かるから。」

思わず泣き笑いのような顔になって橋本を見ると、彼は力が抜けたように座り込んだ。

「こんなはずじゃ…俺みたいな特進の成り損いを『特別』だと思ってもらうにはそれしかないと思って…。」

涙を流す橋本に、俺は少しだけ胸が痛む。
やってしまった事は許されないけど、彼もまた、好きな相手との格差に苦しんでいたのかもしれない。

「先輩、どうか自分から話して下さい。
先生にでも、警察にでも…自主すれば罪は軽くなるはずです。俺は貴方を警察に突き出したくないんです。」

俺の言葉に、橋本先輩は無言ながらもゆっくり頷いた。

良かった。

「それと、俺の鞄にタバコを入れた時の事も。
あれは協力者がいないと」「そこまでだ!!」

俺の言葉を遮る怒号に、全員がそちらを向いた。

そこに立っていたのは、鬼丸ーーー。

「話しは聞いた!後は教師に任せて教室に戻れ!」

その少し慌てたような素振りに、俺の疑心は強まる。

「先生、昨日のーー」「お前が犯人だったんだな⁉︎詳しい話しは俺が聞く!来い!」

橋本先輩の言葉を無視してどこかへ連れて行こうとしてる。
この人、橋本先輩に口止めして罪を背負わせようとしてるんじゃ…。

「先生、自主するって言ってる奴を無理矢理連れてくのはルール違反っすよ。」

声を上げたのは黒崎君だ。

「自主?コイツはたった今断罪されたじゃないか!」

「いやいや、俺達がしてたのは『説得』なんで。
それに応じて自主するのを、まさか教師が止めたりしないですよねぇ?」

飄々と、だけど確かな非難の響きを持った黒崎君の声に、鬼丸が顔を歪める。

「それに、先輩に話しを聞くなら先生はもう何人かいるべきだと思います。
一対一だと、どうしても主観が入りやすいですから。」

冷静な啓太の言葉。

「先生、私も関係者です。話しを聞くなら私も行きます。」

キッパリ言い放つ相川さん。

「な、なんだと…?」

思わぬ伏兵に、このままでは不味いと鬼丸が焦ってるのが分かる。


「せ、生徒が教師に意見するな!
子供は黙って大人の言う事を聞いてればいいんだ!」

「先生、俺達は確かに子供です。だから、信用できる大人の態度を見せて下さい。
これからの人生で、俺達が大人を信用していいんだって思えるように。お願いします。」

俺の言葉に鬼丸が黙り込んだ時だった。

「昨日のタバコは、切藤のじゃない。俺が君の鞄に入れたのを知って庇っただけだ。」

橋本先輩が俺に向かって言った。

「余計な事をーー」「先生、聞きましたよね?蓮に謝罪して下さい。」

「な、なんだと⁉︎」

「昨日先生は蓮だって決め付けて何時間も拘束してましたよね。その事に対して謝罪するべきだと思います。それと、共犯者を明らかにするべきです。」

「きょ、共犯者…?」


俺は鬼丸から顔を逸らして橋本先輩を見つめる。

「俺の鞄に入れたのは集会の時ですよね?
あの時間は先生が見張りに立ってたから自由に行動は出来なかった。違いますか?」


頷いた橋本先輩が言葉を続ける。

「生徒会の資料を取りに行くと言って体育館を出た。引率の先生がいれば出入りも可能だと言われて…。」

周りがザワザワし始めて、対局にいる啓太と黒崎君も驚いたようにこっちを見てる。

その騒めきの中、橋本先輩が意を決したように何か言おうとするのと、鬼丸が動くのが一緒だった。

「その先生はーー」「黙れ!!!」

拳を振り上げた鬼丸が橋本先輩に迫るのがスローモーションみたいに見える。

あぁ!俺は何で竹刀を生徒会に置いて来ちゃったんだよ!

後悔しても遅い。
武器が無くても反射的に走り出してしまった身体はもう止まらない。

鬼丸と橋本先輩の間に身体を滑り込ませて、来る衝撃に目をギュッと閉じる。

絶対馬鹿力だから、痛いだろうな。




ゴッ!!!!









あ…れ…?

凄い音がしたけど痛く無い。

おかしいな、打撃ってインパクトの時が一番痛いはずなんだけど…。

やけに周りも静かだし。

恐る恐る目を開けると、俺の足元に鬼丸が転がってた。
鼻血を出しながら痛みに床をのたうってるけど、俺の目はそんな物より驚きの光景を映し出していた。


長い脚を突き出して、おそらく鬼丸を転ばせたのであろうその人物はーー。


「蓮……。」



どうして、ここに?




●●●
やっと登場させられた!笑












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