【完結まで残り1話】桜の記憶 幼馴染は俺の事が好きらしい。…2番目に。

あさひてまり

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高校生編side晴人 守る為に闘う事と事件の決着

59.昨日の敵は今日も敵?

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「何の用?」

人目を避けて移動した空き教室で、腕組みした相川さんが言った。

「えっと、突然ごめん。昨日蓮の事で、相川さんが何か知ってるんじゃないかと思って。」

「…遠回しな言い方やめれば?文化祭の腹いせに私がやったって言いたいんでしょ?」

敵意剥き出しの相川さん。
だけど…

「あ、それは無い。相川さんだとは思ってないよ。」

「…は?」

いや、だってさ。

「うーん、上手く言えないんだけどね。
昨日の事件と、文化祭の小火の犯人が同一人物なんじゃないかって考えたんだけど…」

あれから考えて、もしかして小火の犯人が俺に罪を被せるために鞄にタバコを仕掛けたのかもって思い至った。

「そうだとしたら、相川さんじゃないだろうなって。
放火って、そんなのもう犯罪でしょ?
どんな理由があっても、相川さんはそこの線引きはちゃんとあると思う。」

文化祭で木村さんから聞いた、中学時代に相川さんが木村さんにさせたてた事は良くないけど。
それでも、犯罪に繋がるような事…お金を寄越せとか、何かを盗めとかは一才無かったみたいだし。

「だけど、昨日蓮が連れて行かれた時に凄く動揺してたでしょ?顔色、今も悪いし。」

「……。」

「何か知ってるなら教えて欲しいんだ。」

「…何も知らないわよ!」

そう言って教室を出ようとした相川さんの腕を咄嗟に掴む。

「離ッ」「お願い!本当にお願いします!」

抵抗する相川さんに必死に訴える。

「蓮の無実を証明したいんだ!
あれは元々俺の鞄に入ってて…!
蓮は俺を庇っただけなのに、蓮がやったと思われてる!」

蓮が自主謹慎になったって学校中が知ってる。
その中にはきっと、蓮が上手く言い逃れたんだと思ってる人もいて…。

「蓮は何も悪い事してないのに、そんな風に思われるなんて間違ってる!
蓮だって疑われたら嫌だし、信じてもらえなかったら傷付くのに…」

相川さんの表情が一瞬動いた気がした。

「相川さんが俺の事気に入らないのは知ってるよ!だけどそれは蓮には関係無い。
蓮のために、知ってる事があれば教えて欲しい!」

沈黙した相川さんと俺は暫く無言で見つめ合った。

「…アンタは自分のせいで蓮が謹慎になった責任から逃れたいだけでしょ。偽善者。」

彼女の冷たい目と言葉に、一瞬息が止まる。

バカ、傷付くのは覚悟してただろ!

落ち着くためにゆっくり息を吸った。

「…確かに、責任は感じてるよ。
でも、逃れたいからこうしてるんじゃない。
蓮が俺のせいで傷付くのが嫌なんだ。」

相川さんは何も言わずに床を見つめている。

「蓮を守りたいんだよ…。お願い…。」

「……私は何も知らない。」

「相川さ…」「ウッサイわね!」

手を振り払われる。

「待って!」バンッ!!

目の前で強く締められたドアが俺達を隔てた。
去って行く彼女の背中があっという間に見えなくなる。

ダメだった…。

彼女は何か知ってる気がしたけど、例えそうだとしても俺には話さない。

俺が嫌われてるから…。
そのせいで大事な情報が得られない。

もっと冷静に話す事ができたはずだ。
感情的にならずに、彼女を説得できてたらーー。

自分の無力さが悔しい。

思わず滲みそうになった涙を乱暴に拭って教室を出る。
立ち止まってる暇はない。
次にできる事をやらなければーーー

「あっ」

良く前を見てなかった俺は何かにぶつかった。

目の前にいるのは細身で背の高い男子。
確か同じ学年で…中学から一緒だけど一回も同じクラスにはなった事ない奴。

「あ、えっと…ごめんね、大谷君。」

咄嗟に名前を思い出して謝ると、全然違う方向の応えが返って来た。

「庇われたなら、余計な事しない方が彼のためなんじゃない?」

え、もしかして…

「さっきの会話聞いてた?」

大谷君はゆっくり頷いた。

「正確には聞こえた。密談にしては声が大きいよ。」

狼狽える俺に構わず彼は続ける。

「守られた君が、自分からトラブルに突っ込んでいくのはどうなのかな。
下手したら君も謹慎になるかもよ?」

まるでこれ以上探るなと警告してるようにも聞こえるけど、銀縁の眼鏡の奥の感情は読みにくい。

「それは分かってるよ。ただ、俺なりに色々考えてこうしてるんだ。
大谷君はさ、自分の大切な人が自分を守る為に犠牲になってもじっとしてられる?」

彼の反応は無い。

「俺は無理だよ。守ってもらうだけじゃなくて、俺だって守りたい。蓮が笑顔でいられるようにしたい。」

一方的じゃなくて対等でいたいんだ。

俺の主張聞いてた大谷君は、少し黙るとポツリと言った。

「…なるほど。とても参考になった。ありがとう。」

そして、くるりと背を向けて去って行く。

え?何なの?

呆気に取られてると、不意に彼が振り向いた。

「本気で覚悟ができたらいつでも訪ねておいでよ。僕が持ってるカードは多分、君だけに切る権利がある。」








謎の展開に頭が追い付かず、大谷君を無言で見送ってしまった俺はフラフラと中庭に来た。

ちょっと寒いけど、誰も来ないし考え事するには持って来いだ。

もう一限目は始まっちゃったからここで時間を潰そう。
サボるのなんて初めてだけど、どうしても一度頭の中を整理したい。


大谷君は何か知ってるっぽいけど、彼が言う「本気の覚悟」って何だろう。


ザリッ


急な背後の靴音に俺は飛び上がった。
やば、先生に見付かった⁉︎

だけど、そこにいたのは意外な人物。

「アンタのせいで一限間に合わなかったじゃない。どうしてくれんのよ。」

「相川さん…」

「ま、私はアンタと違って出席しなくても全く問題無いけど。
馬鹿はちゃんと授業出た方がいいんじゃないの?」

「仰る通りです…。」

「私はアンタみたいな平凡が、トップの中のトップである蓮に纏わり付いてるのが気に入らないのよ!」

「纏わり付いてるつもりは無いけど、釣り合ってないのは分かってるよ?」

「…あー、もう!何か調子狂うのよね…。
とにかく!アンタなんかのせいで蓮が謹慎だなんて気に入らないから教えてあげるわよ!」

「え?」

「…だけど、私だって信じられないし証拠も無いんだからね。」

打って変わって少し自信なさそうに言うと、相川さんは話し始めた。




●●●
大谷は登場人物紹介にほんのちょっとだけ登場してます!

































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