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高校生編side晴人 守ってくれるのは大切だからだって思いたい
56.決意
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「それで怪我したのか!」
話しを聞いてた啓太に頷く。
「うん、頭は軽い脳震盪とちょっと切っただけ。」
「手は?」
「3針縫った。ここ、ほんのり跡があるよ。」
俺は左手の甲のほんっっとに薄い跡を見せる。
「ほぼ分かんなくなって良かったね!
何か萱島君の肌に傷あると目立ちそうだし。」
白いからさ、と言う黒崎君に思わず笑う。
「それ、蓮も同じような事言ってた。」
意識を失って数分で目を覚ました俺の目に飛び込んで来たのは、真っ青な顔の蓮だった。
その表情は絶望そのものと言った感じで、俺は思わず「え、誰か死んだの?」なんて聞いちゃったんだよね。
俺のその言葉に、蓮は消えそうな声で「死ぬとか言うなよ」と言ったきり、怪我してない方の俺の手を握ってずっと俯いてた。
その後すぐ病院に行って、蓮父が自ら傷を縫ってくれた時も俺から離れようとしなくて大変だったし、包帯を巻かれた頭と手を見つめる顔は弱りきってて。
いつもクールな蓮のそんな様子を見たのは初めてで、相当心配かけちゃったんだなと反省した。
「傷が残るかもって。晴の肌こんなに白くて綺麗なのに…。」
「蓮、俺大丈夫だよ?」
俯く蓮を覗き込んで言うと、蓮は視線を逸らす。
「もう俺のために何もしなくていいから。」
一瞬拒絶に聞こえたけど、ギュッと俺の手を握る強さにそうじゃないんだなと悟る。
蓮は今回の騒動の経緯を誰かに聞いたんだろう。
「するよ!これからも同じような事があったら俺は同じようにする!」
俺が強く言うと、蓮の声が大きくなった。
「馬鹿!それでこんな怪我したんだぞ⁉︎
俺は目をつけられやすいんだよ!
そんなの慣れてるし大丈夫だから!」
蓮はいつでもポーカーフェイスで、泣いたりなんて全然しない。
だけど…だけどさ。
「傷付かない訳ないじゃん。」
ポツリと漏らすと、蓮の手がピクリと動いた。
「蓮はさ、クールだし大人っぽいからこれくらい大丈夫だって皆んなどっかでそう思ってるんだよ。
でもさ、口とか顔に出さないだけで、いっぱい色んな事思ってるでしょ?」
握られた蓮の手をギュッと握り返す。
「だから、俺が蓮の変わりに言うって決めたんだ!もう決めたの!」
「…俺は自分より、晴が傷付く方が嫌だ。」
「え?俺もそうだよ?一緒だね!」
ヘラヘラ笑う俺に蓮が驚いた顔をする。
「俺も、俺より蓮が傷付くほうがヤダよ?
あ!だったらさぁ、俺たちずっと一緒にいればいいんだよ!」
俺って天才だ!
「そしたらさ、最強パワーだから無敵じゃん!
な!蓮!……蓮?わぁっ!!」
反応のない蓮の顔を覗き込むと、蓮が俺の肩に顔を埋めてきた。
そのまま背中に手が回ってギュッと抱きしめられる。
「晴、俺はーーーーーーーー」
この時蓮は何て言ったんだっけ?
良く聞こえなくて、聞き返したけど答えてくれなかった気がする。
ただ、次の日からいつも通りの蓮に戻って俺はホッとした。
元気になってくれて本当に良かった。
「なーるほどね。そこから溺愛の始まりかぁ。」
「ん?」
「や、何でも!」
黒崎君が曖昧に笑う。
「あ、ってかそろそろ帰らないと!
ごめんな、遅くまで!」
時刻はもう18時だ。冬の18時はもう真っ暗。
そろそろ解散しなきゃな。
「二人とも、本当にありがとね。
一緒にいてくれなかったら、俺…。」
言い淀む俺の頭を啓太がポンポン叩く。
「何かあったら遠慮なく連絡しろよー?」
「俺らも楽しかったし!また遊ぼーね!」
父さんが車で送るって言ったけど、二人は笑顔で固辞して帰って行った。
俺も駅まで送りたかったんだけどなぁ。
家の中が静かになると、考えてしまうのはやっぱり今日の事だ。
沈みそうになる気持ちを何とかしたくて、俺は開きっぱなしのアルバムに目を落とした。
怪我の翌日に撮ったこの写真は、包帯姿がレアだからって言う俺に苦笑いしながら母さんが撮ってくれたやつだ。
思えば、この騒動の後から蓮は少し雰囲気が変わった気がする。
態度とか言葉とかはいつも通りなんだけど…
それまでよりもっと大人っぽくなった。
それに、俺に対して過保護になったと思う。
1人でふらふらするなって言われて、何処にでもついて来たし。
そして何より、優しさを感じることが多くなった。
運動会のリレーの事とか、他にもたくさん蓮の優しさに助けられた。
それは、中学に上がってからもずっとそうでーー。
口は悪くなったけど、根本の優しさは変わらなかったし、俺は蓮を理解してるつもりだった。
だけど、中3の時。
蓮にキスされて、そこで初めて蓮の考えてる事が分からなくなった。
蓮と遥が付き合い初めて、遥がいなくなって二人になって。
俺はずっと蓮を理解してる「つもり」になってたんだと気付いたんだ。
そこから不安になって、蓮と自分が釣り合わない現実と周りの言葉に追い詰められて。
蓮の言葉とか態度の裏には色んな思いがあるって昔の俺は知ってたのに。
それを確かめもせずに勝手に自己完結して、一方的に別れを告げて。
自分が傷付きたくなくて、蓮を傷付けてしまった。
ずっと一緒にいるって言ったのにーー。
それなのに、勝手に反故にした俺に対しても、蓮はずっと約束を守ってくれてたんだ。
Tシャツの事も、プールでの事も、取り調べの事も。
そして、今回の事だってそうだ。
ごめんな、蓮。
本当にごめんーーー。
俺は自分勝手で臆病で…蓮の本心を確かめようとしなかった。
だけど、こんな俺でも分かる事がある。
俺はもう、蓮を傷付けたくない。
蓮が傷付けられてるのも見たくない。
それが、俺を守るためにやってくれた事だとしても。
今回の事件に関して、蓮は俺の事を話さないだろう。
このまま免罪で処罰が下るかもしれない。
だけど、俺が先生に説明しようとした所で無駄だった。
それなら、今俺ができる事は一つだ。
俺が、犯人を捕まえるーーー。
●●●
最後の文だけ探偵物みたい笑
話しを聞いてた啓太に頷く。
「うん、頭は軽い脳震盪とちょっと切っただけ。」
「手は?」
「3針縫った。ここ、ほんのり跡があるよ。」
俺は左手の甲のほんっっとに薄い跡を見せる。
「ほぼ分かんなくなって良かったね!
何か萱島君の肌に傷あると目立ちそうだし。」
白いからさ、と言う黒崎君に思わず笑う。
「それ、蓮も同じような事言ってた。」
意識を失って数分で目を覚ました俺の目に飛び込んで来たのは、真っ青な顔の蓮だった。
その表情は絶望そのものと言った感じで、俺は思わず「え、誰か死んだの?」なんて聞いちゃったんだよね。
俺のその言葉に、蓮は消えそうな声で「死ぬとか言うなよ」と言ったきり、怪我してない方の俺の手を握ってずっと俯いてた。
その後すぐ病院に行って、蓮父が自ら傷を縫ってくれた時も俺から離れようとしなくて大変だったし、包帯を巻かれた頭と手を見つめる顔は弱りきってて。
いつもクールな蓮のそんな様子を見たのは初めてで、相当心配かけちゃったんだなと反省した。
「傷が残るかもって。晴の肌こんなに白くて綺麗なのに…。」
「蓮、俺大丈夫だよ?」
俯く蓮を覗き込んで言うと、蓮は視線を逸らす。
「もう俺のために何もしなくていいから。」
一瞬拒絶に聞こえたけど、ギュッと俺の手を握る強さにそうじゃないんだなと悟る。
蓮は今回の騒動の経緯を誰かに聞いたんだろう。
「するよ!これからも同じような事があったら俺は同じようにする!」
俺が強く言うと、蓮の声が大きくなった。
「馬鹿!それでこんな怪我したんだぞ⁉︎
俺は目をつけられやすいんだよ!
そんなの慣れてるし大丈夫だから!」
蓮はいつでもポーカーフェイスで、泣いたりなんて全然しない。
だけど…だけどさ。
「傷付かない訳ないじゃん。」
ポツリと漏らすと、蓮の手がピクリと動いた。
「蓮はさ、クールだし大人っぽいからこれくらい大丈夫だって皆んなどっかでそう思ってるんだよ。
でもさ、口とか顔に出さないだけで、いっぱい色んな事思ってるでしょ?」
握られた蓮の手をギュッと握り返す。
「だから、俺が蓮の変わりに言うって決めたんだ!もう決めたの!」
「…俺は自分より、晴が傷付く方が嫌だ。」
「え?俺もそうだよ?一緒だね!」
ヘラヘラ笑う俺に蓮が驚いた顔をする。
「俺も、俺より蓮が傷付くほうがヤダよ?
あ!だったらさぁ、俺たちずっと一緒にいればいいんだよ!」
俺って天才だ!
「そしたらさ、最強パワーだから無敵じゃん!
な!蓮!……蓮?わぁっ!!」
反応のない蓮の顔を覗き込むと、蓮が俺の肩に顔を埋めてきた。
そのまま背中に手が回ってギュッと抱きしめられる。
「晴、俺はーーーーーーーー」
この時蓮は何て言ったんだっけ?
良く聞こえなくて、聞き返したけど答えてくれなかった気がする。
ただ、次の日からいつも通りの蓮に戻って俺はホッとした。
元気になってくれて本当に良かった。
「なーるほどね。そこから溺愛の始まりかぁ。」
「ん?」
「や、何でも!」
黒崎君が曖昧に笑う。
「あ、ってかそろそろ帰らないと!
ごめんな、遅くまで!」
時刻はもう18時だ。冬の18時はもう真っ暗。
そろそろ解散しなきゃな。
「二人とも、本当にありがとね。
一緒にいてくれなかったら、俺…。」
言い淀む俺の頭を啓太がポンポン叩く。
「何かあったら遠慮なく連絡しろよー?」
「俺らも楽しかったし!また遊ぼーね!」
父さんが車で送るって言ったけど、二人は笑顔で固辞して帰って行った。
俺も駅まで送りたかったんだけどなぁ。
家の中が静かになると、考えてしまうのはやっぱり今日の事だ。
沈みそうになる気持ちを何とかしたくて、俺は開きっぱなしのアルバムに目を落とした。
怪我の翌日に撮ったこの写真は、包帯姿がレアだからって言う俺に苦笑いしながら母さんが撮ってくれたやつだ。
思えば、この騒動の後から蓮は少し雰囲気が変わった気がする。
態度とか言葉とかはいつも通りなんだけど…
それまでよりもっと大人っぽくなった。
それに、俺に対して過保護になったと思う。
1人でふらふらするなって言われて、何処にでもついて来たし。
そして何より、優しさを感じることが多くなった。
運動会のリレーの事とか、他にもたくさん蓮の優しさに助けられた。
それは、中学に上がってからもずっとそうでーー。
口は悪くなったけど、根本の優しさは変わらなかったし、俺は蓮を理解してるつもりだった。
だけど、中3の時。
蓮にキスされて、そこで初めて蓮の考えてる事が分からなくなった。
蓮と遥が付き合い初めて、遥がいなくなって二人になって。
俺はずっと蓮を理解してる「つもり」になってたんだと気付いたんだ。
そこから不安になって、蓮と自分が釣り合わない現実と周りの言葉に追い詰められて。
蓮の言葉とか態度の裏には色んな思いがあるって昔の俺は知ってたのに。
それを確かめもせずに勝手に自己完結して、一方的に別れを告げて。
自分が傷付きたくなくて、蓮を傷付けてしまった。
ずっと一緒にいるって言ったのにーー。
それなのに、勝手に反故にした俺に対しても、蓮はずっと約束を守ってくれてたんだ。
Tシャツの事も、プールでの事も、取り調べの事も。
そして、今回の事だってそうだ。
ごめんな、蓮。
本当にごめんーーー。
俺は自分勝手で臆病で…蓮の本心を確かめようとしなかった。
だけど、こんな俺でも分かる事がある。
俺はもう、蓮を傷付けたくない。
蓮が傷付けられてるのも見たくない。
それが、俺を守るためにやってくれた事だとしても。
今回の事件に関して、蓮は俺の事を話さないだろう。
このまま免罪で処罰が下るかもしれない。
だけど、俺が先生に説明しようとした所で無駄だった。
それなら、今俺ができる事は一つだ。
俺が、犯人を捕まえるーーー。
●●●
最後の文だけ探偵物みたい笑
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