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高校生編side晴人 守ってくれるのは大切だからだって思いたい
52.母(side啓太)
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「コラ!こんな所で何やってんの?」
上から降って来た声に顔を上げると、そこには…
不二子だ!峰不二子!!
漫画から出てきたかのような、大迫力ボディの美女がこっちを見下ろしていた。
やや冷たい印象ながら完璧に整った顔立ちに、
赤い口紅が良く似合っている。
クルクルとカールした長い巻き毛がゴージャスだ。
黒いライダースを肩にかけて、その下は胸元の開いたブラウスみたいなやつを細いスカートの中に入れている。
とんでもなく目を惹く派手な存在なのに、上品で気品すら漂うその姿は女神みたいだ。
手も足も腰も細い。
なのにム……いや、ごめんなさい。
何でもないです。。
「蓮母…」
隣からの呟きに、俺は目を見張った。
切藤の…お母さん⁉︎
この美女が、母親⁉︎
声が出ない程驚きつつ、何処かで納得もしていた。
なるほど、この遺伝子なら息子がとんでもない男前なのも説明が付くわ。
「ほら、立ちなさい!」
美女…改め切藤母が俺たちに手を差し出す。
ツヤツヤした爪が綺麗で、白くて細い指に触れていいものかと悩む。
が、隣で何の迷いもなくその手を取った晴人に習って俺も失礼する事にした。
切藤母は、グッと思ったより強い力で手を握って俺達を立たせてくれる。
身体が近付いた時、今まで嗅いだことの無いようないい匂いが鼻腔をくすぐった。
「すっかり冷えちゃって。もうそろそろ12月になるのよ?こんな所にいちゃダメでしょ!」
「蓮母、ごめん。俺のせいで蓮が…」
「学校からの電話で何となく聞いたわ。
大山先生って方が丁寧に説明してくれてね。」
言いながら、震える晴人の肩を抱き寄せる。
「晴ちゃん、自分を責めちゃダメ。
蓮なら大丈夫だから。」
「でも…蓮を疑ってる先生がいて…退学とかになったらどうしよう…。」
その目から、ずっと堪えていたであろう涙が溢れる。
「そうさせない為に、私が来たのよ。」
「母」であることを感じさせない美女は自信満々に微笑んだ。
それはとてつもなく妖艶で、だけど誇り高く、傲慢で…。
壮絶に美しい笑み。
「相手が男であれば、私に叶う訳ないんだもの。」
そして顔にかかった髪をサッと後ろに払うと、ブワリと目に見えない圧が彼女から発せられる。
俺はこれに近い感覚を知っていた。
切藤がーー彼女の息子が時折放つオーラと酷似している。
これも遺伝なのか…。
芸能人がオーラ消したり出したりできるのって、こう言う事なんだろうな。
ドサッ
ふいに何かが落ちる音がしてそっちを見ると、帰ったはずの黒崎だった。
鞄を落としたまま拾うこともせずに、ジッと切藤母を見つめている。
「な…なんで女優の如月陽子がここに⁉︎⁉︎」
驚愕する黒崎に、切藤母がクスクス笑う。
「あら、君みたいな若い子が私を知ってるのね?」
「あ…いや…フランス映画好きなんで…それで…。産まれる前の作品とかも観たことがあって…。
その、綺麗すぎて記憶に残ってました…。」
赤面する黒崎!
珍しい物を見た。
極度に女慣れしてるコイツが照れてしどろもどろになっている。
「ありがとう。如月は旧姓で、今は切藤。
蓮の母親よ。」
「はっ⁉︎⁉︎⁉︎」
いや、そうなるよな。
大パニック中の黒崎には悪いけど、俺も聞きたい事がある。
「黒崎、帰ったんじゃなかったのか?」
「あ…いや。寒い中待ってるんだろうなと思って、スタバ買って来た。」
そう言って手に持っていた紙袋を見せて来る。
…コイツ、スゲェいい奴だな。
「素敵!気遣いのできる男って最高よね!」
ウフフと笑った切藤母は、そのまま俺と黒崎にウィンクする。
「素敵なchevalierのお二人に、我が家の大切なprincesseをお願いしても良いかしら?」
操られたように頷く俺と黒崎。
「蓮母、そのプランセスってやめてよね!」
彼女のテンションに幾分元気を取り戻したのか、晴人が唇を尖らせる。
シュヴァリエ?プランセス?フランス語かな。
「ごめんね?でも晴ちゃんが大切なの。」
そして晴人の頬に交互に二度、キスをする。
フランス式の挨拶だな…なんて思っていたら、何と俺の頬にもその熱が来た。
キスはフリだったけど、密着した頬が燃える様に熱い。
黒崎は呆けたように頬を押さえている。
「晴ちゃんが風邪引いたら蓮が荒ぶるから、お願いね。」
顔を離す瞬間に囁かれた言葉に、彼女が息子の思いを知って受け入れているんだと気付く。
「楽しかったわ!Àbientôt!」
ヒラリと手を振ると、切藤母は颯爽と学校に入って行った。
「あ、えーっと、二人とも大丈夫?」
慣れているであろう晴人の気遣う声に、魂を抜かれた俺と黒崎はただ首を横に振ったのだった。
●●●
蓮母の存在感!切藤家の息子達は、
翔→顔が父、性格が母(明るい)
蓮→顔が母、性格が父(クール)
に似ています。兄弟そっくりだと言われてますが、並べて見比べると翔が犬顔、蓮が猫顔です。
上から降って来た声に顔を上げると、そこには…
不二子だ!峰不二子!!
漫画から出てきたかのような、大迫力ボディの美女がこっちを見下ろしていた。
やや冷たい印象ながら完璧に整った顔立ちに、
赤い口紅が良く似合っている。
クルクルとカールした長い巻き毛がゴージャスだ。
黒いライダースを肩にかけて、その下は胸元の開いたブラウスみたいなやつを細いスカートの中に入れている。
とんでもなく目を惹く派手な存在なのに、上品で気品すら漂うその姿は女神みたいだ。
手も足も腰も細い。
なのにム……いや、ごめんなさい。
何でもないです。。
「蓮母…」
隣からの呟きに、俺は目を見張った。
切藤の…お母さん⁉︎
この美女が、母親⁉︎
声が出ない程驚きつつ、何処かで納得もしていた。
なるほど、この遺伝子なら息子がとんでもない男前なのも説明が付くわ。
「ほら、立ちなさい!」
美女…改め切藤母が俺たちに手を差し出す。
ツヤツヤした爪が綺麗で、白くて細い指に触れていいものかと悩む。
が、隣で何の迷いもなくその手を取った晴人に習って俺も失礼する事にした。
切藤母は、グッと思ったより強い力で手を握って俺達を立たせてくれる。
身体が近付いた時、今まで嗅いだことの無いようないい匂いが鼻腔をくすぐった。
「すっかり冷えちゃって。もうそろそろ12月になるのよ?こんな所にいちゃダメでしょ!」
「蓮母、ごめん。俺のせいで蓮が…」
「学校からの電話で何となく聞いたわ。
大山先生って方が丁寧に説明してくれてね。」
言いながら、震える晴人の肩を抱き寄せる。
「晴ちゃん、自分を責めちゃダメ。
蓮なら大丈夫だから。」
「でも…蓮を疑ってる先生がいて…退学とかになったらどうしよう…。」
その目から、ずっと堪えていたであろう涙が溢れる。
「そうさせない為に、私が来たのよ。」
「母」であることを感じさせない美女は自信満々に微笑んだ。
それはとてつもなく妖艶で、だけど誇り高く、傲慢で…。
壮絶に美しい笑み。
「相手が男であれば、私に叶う訳ないんだもの。」
そして顔にかかった髪をサッと後ろに払うと、ブワリと目に見えない圧が彼女から発せられる。
俺はこれに近い感覚を知っていた。
切藤がーー彼女の息子が時折放つオーラと酷似している。
これも遺伝なのか…。
芸能人がオーラ消したり出したりできるのって、こう言う事なんだろうな。
ドサッ
ふいに何かが落ちる音がしてそっちを見ると、帰ったはずの黒崎だった。
鞄を落としたまま拾うこともせずに、ジッと切藤母を見つめている。
「な…なんで女優の如月陽子がここに⁉︎⁉︎」
驚愕する黒崎に、切藤母がクスクス笑う。
「あら、君みたいな若い子が私を知ってるのね?」
「あ…いや…フランス映画好きなんで…それで…。産まれる前の作品とかも観たことがあって…。
その、綺麗すぎて記憶に残ってました…。」
赤面する黒崎!
珍しい物を見た。
極度に女慣れしてるコイツが照れてしどろもどろになっている。
「ありがとう。如月は旧姓で、今は切藤。
蓮の母親よ。」
「はっ⁉︎⁉︎⁉︎」
いや、そうなるよな。
大パニック中の黒崎には悪いけど、俺も聞きたい事がある。
「黒崎、帰ったんじゃなかったのか?」
「あ…いや。寒い中待ってるんだろうなと思って、スタバ買って来た。」
そう言って手に持っていた紙袋を見せて来る。
…コイツ、スゲェいい奴だな。
「素敵!気遣いのできる男って最高よね!」
ウフフと笑った切藤母は、そのまま俺と黒崎にウィンクする。
「素敵なchevalierのお二人に、我が家の大切なprincesseをお願いしても良いかしら?」
操られたように頷く俺と黒崎。
「蓮母、そのプランセスってやめてよね!」
彼女のテンションに幾分元気を取り戻したのか、晴人が唇を尖らせる。
シュヴァリエ?プランセス?フランス語かな。
「ごめんね?でも晴ちゃんが大切なの。」
そして晴人の頬に交互に二度、キスをする。
フランス式の挨拶だな…なんて思っていたら、何と俺の頬にもその熱が来た。
キスはフリだったけど、密着した頬が燃える様に熱い。
黒崎は呆けたように頬を押さえている。
「晴ちゃんが風邪引いたら蓮が荒ぶるから、お願いね。」
顔を離す瞬間に囁かれた言葉に、彼女が息子の思いを知って受け入れているんだと気付く。
「楽しかったわ!Àbientôt!」
ヒラリと手を振ると、切藤母は颯爽と学校に入って行った。
「あ、えーっと、二人とも大丈夫?」
慣れているであろう晴人の気遣う声に、魂を抜かれた俺と黒崎はただ首を横に振ったのだった。
●●●
蓮母の存在感!切藤家の息子達は、
翔→顔が父、性格が母(明るい)
蓮→顔が母、性格が父(クール)
に似ています。兄弟そっくりだと言われてますが、並べて見比べると翔が犬顔、蓮が猫顔です。
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