【完結まで残り1話】桜の記憶 幼馴染は俺の事が好きらしい。…2番目に。

あさひてまり

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高校生編side晴人 守ってくれるのは大切だからだって思いたい

49.ミーティング

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「晴人、お疲れ!」

事情聴取が終わって、急遽借りた学校のミーティングルームに集まる剣道部の皆んなと合流する。

いきなり全校放送で呼び出され部員は、当たり前だけど最初は戸惑ったらしい。
啓太と副顧問から訳を聞いて驚愕したそうだ。

火事の事は先生と剣道部と、一部の生徒しか知らない。

火は消し止められてたから消防車はノーサイレンで来たし、裏門からだったから殆ど人目に付かなかったんだよね。


「萱島が早めに発見してくれて良かったよなぁ。
これ以上被害が出てたら…。」

部長の言葉に皆んなが頷く。

「それでも竹刀も防具も足りないですよね?」

「圧倒的にな。今から申請して次の大会に間に合うかどうか…。
事情が事情だから学校側が買ってくれるとは思うが…それなりに日数はかかるよな。」

啓太の言葉に部長が苦い顔をする。

そう。仮に本番に間に合ったとしても、練習ができないんだよ。

「俺たちの最後の試合なのに…」

悔しそうな二年生の先輩の声に項垂れる。

「大体、何でうちの部室が狙われたんだろう?」

「それな。何処でも良くて、たまたま人が来なくて丁度良かったとか?」

「愉快犯ならあり得るかもなぁ。」

「文化祭で人が多いから、内部犯なのか外部犯なのかも分かんないし。」

口々に言う部員に、俺も考える。

部室は一階だから、ベランダから侵入するのは簡単だ。
それこそ小学校高学年くらいの子供ならよじ登って入れちゃう感じ。

「窓ガラスに小さな丸い穴が空いてたそうです。
ガラスカッターとかで切られた感じの。
そこから火のついた煙草がねじ込まれたんじゃ無いかって言ってました。」

俺は事情聴取の時に得た新情報を提供する。
別に口止めはされなかったからいいよね。


そう。昨日最後に部室を訪れたのは多分俺と啓太。
ベランダにチャイナドレスを干した後、窓の施錠を二人で確認した。

つまり犯人は、鍵がかかった窓をわざわざ割ってまで行動を起こした事になる。

「まさか。じゃあ窓に何かしてるのを見られる危険を犯してまで犯行に及んだって事か?」

「マジか。愉快犯ってそんな感じなの?」

「さぁな。そんなサイコパスに出会った事ないからなぁ。」

「それな。そう言えば晴人、今日名探偵やってなかった?」

「それだ!ちょっと衣装借りてきてよ!
雰囲気出して行こうぜ!」

「いいね!眠りの小太郎呼ぼうぜ!」

…暗い雰囲気が続かないのが我が剣道部なのである。
(因みに小太郎ってのは大山先生の下の名前ね。)

勿論、各々がショックを受けてるはずだ。

それでも、仲間が落ち込まないように。
気遣いあって明るく振る舞えるこの仲間達が俺は大好きだ。


ーーだからこそ、犯人が本当に許せない。


「でもさ、犯人の奴も間抜けだよなぁ。窓割らなくてもドアから余裕で入れたのに。」

同学年の鈴木の言葉に、皆んな笑う。

「ドアに鍵かかってないなんて、思いもしなかったんだろうな。」

そうなんだよね。

実は部室のドア、建て付けが悪くて数年前から鍵が閉まらないんだよ。
鍵無しのドアは固いけど力を込めれば簡単に開く。

まぁ別に施錠しなくても大丈夫だよねってことで、ここ何年も鍵無しで問題無かったらしい。

これが、高額な楽器を持つ吹奏楽部とかだったら大問題なんだろうけど。
剣道部の部室ってそんな金目の物がある訳でもないし。


一応、鍵は一年生が交代で管理する事になってて、職員室に掲示してある鍵管理表にもその日の管理者の名前が記入してある。

ただ実際には、鍵は部室の中に置きっぱなしで表は完全にお飾りだ。


鍵の話しは警察にも確認された。
窓の周りの燃え方が酷かったから原因はそこだろうって話しだったけど、ドアからの侵入の可能性もゼロではないから念のためって。


鍵が置きっぱなしで機能してない現状を伝えると、それを他の部員にも確認した警察は納得したみたいだった。
(逆に知らなかった大山先生は超ビックリしてた。
ごめんね、先生。)


そういえば、鍵管理表的には今日の管理者、俺なんだよね。

いやぁ、よかった。
また変に疑われる所だったよ。


ーーーーん?



って事はさ、鍵が機能してた場合、俺が疑われる可能性があったって事?だよね?


何だか首の後ろがチリチリするような不安感に襲われる。


いや、偶然だよねーーーうん。






●●●
今後事件が動いていきますが、推理物では無いので細かい点には目を瞑って下さいませm(__)m
推理小説書ける人って天才だな。





























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