56 / 255
高校生編side晴人 事件の始まり…なのにキスとかそれ以上とか⁉︎
40.温もり
しおりを挟む
「はぁ~」
ベンチに腰掛けて思わず溜息を吐いた。
俺の決意も虚しく、蓮を見つけられないまま30分が経つ。
人混みを移動するだけで物凄く体力を消耗した。
なんやかんやあって昼ご飯を食べ損ねてるから、余計に力が出ないのかも。
なんかフラフラするし。
一先ず休憩しようと、在校生にもほとんど存在を知られていないベンチに座って今に至る。
ここ、入学したばっかりの時に蓮と見つけたんだよなぁ。
LAINで蓮に居場所を聞くことだってできるのにそうしないのは、まだ俺が迷ってるからなのかもしれない。
蓮の態度からして、もしかして嫌われてる訳ではないのかもって思う反面、それがやっぱり俺の勘違いだったらと思うと…知るのが凄く怖い。
あぁ、良くないな!
空腹って余計にネガティブになるよね。
しかもさ、めちゃくちゃ寒くなってきたよ…。
11月中旬の外気とプールで冷えた身体は相性最悪だった。当たり前か。
何か爪の色が紫っぽくなってる。
じゃあ動けよって話しなんだけどね、何か力が入んないのよ。
物凄い眠くなってきたし…。
あれ、これちょっとヤバイんじゃないの?
ここには助けてくれる人なんて…
「晴?」
うーん、幻聴まで聞こえてきたっぽい。
こんな所に蓮がいるはず無いから。
「晴⁉︎おい、こっち見ろ!」
頬をペチペチ叩かれる。
「寒い…眠い…」
「バカ!何でこんな所にいんだよ!」
薄ら開けた目に映るのは、かなり焦った様子の蓮の姿。
夢でも見てるのかなぁ。
「手ェ震える…。」
「お前、飯は?」
「朝から何も…」
「マジかよ。低血糖だな。」
そう言って何かをゴソゴソ探ると、俺の唇に押し付けてきた。
「ほら、口開けろ。」
「んー?甘い…」
「指まで食うな!舐めんな!」
口に入ってきたのはラムネだった。
「お前、そのポヤッてる時の無自覚煽り本当やめろ!ってか俺以外の前でその状態なるなよ?」
「はーい」
「……くそ、絶対分かってねぇ。。」
何か蓮の幻覚?が騒いでるなぁ。
「それだけじゃダメだな。運ぶからじっとしてろよ?」
身体が浮く感覚。
俺、これ知ってる。
今日初体験したお姫様抱っこのそれだ。
脱力して身体を預けていると、少ししてドアを開ける音がした。
その後に数人の女子の声。
「きゃあっ!…えっ⁉︎切藤くん⁉︎」
「あー、わり。美術室に人いると思わんかったわ。」
「ぜ、全然、だ、大丈夫!です!」
「ちょっとヒーター貸してくんね?俺ら隅っこにいるから気にせず続けて。」
「その人、具合悪いの?」
「わ、私、先生呼んで来ようか?」
「先生は大丈夫。頼んでいいなら飲み物買って来て欲しい。ホットで甘味強いやつ。」
「「「すぐ行ってきます!!」」」
3人分の女子の声が揃って、部屋から人の気配が消えた。
廊下からは「本当イケメンすぎる!」
「一軍トップと喋っちゃった!」
「学校生活一番の思い出!」
なんて声が聞こえる。
蓮はそんなの一切お構い無しで、俺を椅子に座らせた。
ピッと言う音がして、身体に暖かい風が当たる。
「美術室近くて良かったわ。ここヒーターだから。」
そうか、エアコンじゃない教室珍しいよね。
バタバタと足音がして、ノックが聞こえた。
「あの、ミルクティーで大丈夫ですか?」
「百点だわ、マジで感謝。金払…」
「「「」いえ!大丈夫です!思い出をありがとうございます!」」」
綺麗に揃った声で言うと、もう教室帰るのでごゆっくりと告げて女子達は去って行った。
「晴、糖分摂取しろ。」
蓮が温かいペットボトルを俺の手に握らせるけど眠い方が勝つ。
「そのまま寝たら危ねぇから。ほら。」
そう言って、自分の膝の上に俺を横座りさせる。
これも今日知った感覚だなぁ。
肩に蓮のカーディガンをかけられて、すっぽりと包み込まれた。
蓮の体温の残るそれに酷く安心する。
「ん、ゆっくりな。」
口許にペットボトルを充てがわれるけど上手く飲めない。
「晴、口開けて?」
言われるままに口を少し開くと、ペットボトルが離れて行って…代わりに、柔らかくて暖かいものが唇に触れた。
ゆっくりと、口の中に甘い液体が流れ込んでくる。
コクリと嚥下するとまた注がれる。
それを何度か繰り返すと、身体が温まってくるのが分かった。
手の震えるも止まってる。
「……いい匂い。」
「またそれかよ。」
蓮が笑う気配がして、髪の毛に優しく何かが触れた。
チュッと小さなリップ音がして、額にも同じそれが施される。
泣きたくなるような優しさに、俺の心は締め付けられた。
「…蓮、ごめんね?」
この蓮が俺が見てる幻想じゃなくて現実の蓮だったとしたら…。
いくら鈍い俺でも分かる。
蓮は、俺の事を大切に思ってくれてるんだーー。
どうか、目が覚めて夢でしたって事にならないで欲しい。
願いながら、俺の意識は眠りに引き込まれていく。
「おやすみ、晴。もう暫く、暖めさせて?」
耳元で囁く蓮の甘い声と、優しく髪を梳く指の感触を最後に、俺は完全に意識を無くしたーー。
●●●
糖度のある回になりましたでしょうか?笑
美術室にいた女子達は、学校行事が苦手で絵を描いて遊んでた三年生です。
蓮と話せたのが学校生活一の思い出との事。
蓮、良くやった。笑
ベンチに腰掛けて思わず溜息を吐いた。
俺の決意も虚しく、蓮を見つけられないまま30分が経つ。
人混みを移動するだけで物凄く体力を消耗した。
なんやかんやあって昼ご飯を食べ損ねてるから、余計に力が出ないのかも。
なんかフラフラするし。
一先ず休憩しようと、在校生にもほとんど存在を知られていないベンチに座って今に至る。
ここ、入学したばっかりの時に蓮と見つけたんだよなぁ。
LAINで蓮に居場所を聞くことだってできるのにそうしないのは、まだ俺が迷ってるからなのかもしれない。
蓮の態度からして、もしかして嫌われてる訳ではないのかもって思う反面、それがやっぱり俺の勘違いだったらと思うと…知るのが凄く怖い。
あぁ、良くないな!
空腹って余計にネガティブになるよね。
しかもさ、めちゃくちゃ寒くなってきたよ…。
11月中旬の外気とプールで冷えた身体は相性最悪だった。当たり前か。
何か爪の色が紫っぽくなってる。
じゃあ動けよって話しなんだけどね、何か力が入んないのよ。
物凄い眠くなってきたし…。
あれ、これちょっとヤバイんじゃないの?
ここには助けてくれる人なんて…
「晴?」
うーん、幻聴まで聞こえてきたっぽい。
こんな所に蓮がいるはず無いから。
「晴⁉︎おい、こっち見ろ!」
頬をペチペチ叩かれる。
「寒い…眠い…」
「バカ!何でこんな所にいんだよ!」
薄ら開けた目に映るのは、かなり焦った様子の蓮の姿。
夢でも見てるのかなぁ。
「手ェ震える…。」
「お前、飯は?」
「朝から何も…」
「マジかよ。低血糖だな。」
そう言って何かをゴソゴソ探ると、俺の唇に押し付けてきた。
「ほら、口開けろ。」
「んー?甘い…」
「指まで食うな!舐めんな!」
口に入ってきたのはラムネだった。
「お前、そのポヤッてる時の無自覚煽り本当やめろ!ってか俺以外の前でその状態なるなよ?」
「はーい」
「……くそ、絶対分かってねぇ。。」
何か蓮の幻覚?が騒いでるなぁ。
「それだけじゃダメだな。運ぶからじっとしてろよ?」
身体が浮く感覚。
俺、これ知ってる。
今日初体験したお姫様抱っこのそれだ。
脱力して身体を預けていると、少ししてドアを開ける音がした。
その後に数人の女子の声。
「きゃあっ!…えっ⁉︎切藤くん⁉︎」
「あー、わり。美術室に人いると思わんかったわ。」
「ぜ、全然、だ、大丈夫!です!」
「ちょっとヒーター貸してくんね?俺ら隅っこにいるから気にせず続けて。」
「その人、具合悪いの?」
「わ、私、先生呼んで来ようか?」
「先生は大丈夫。頼んでいいなら飲み物買って来て欲しい。ホットで甘味強いやつ。」
「「「すぐ行ってきます!!」」」
3人分の女子の声が揃って、部屋から人の気配が消えた。
廊下からは「本当イケメンすぎる!」
「一軍トップと喋っちゃった!」
「学校生活一番の思い出!」
なんて声が聞こえる。
蓮はそんなの一切お構い無しで、俺を椅子に座らせた。
ピッと言う音がして、身体に暖かい風が当たる。
「美術室近くて良かったわ。ここヒーターだから。」
そうか、エアコンじゃない教室珍しいよね。
バタバタと足音がして、ノックが聞こえた。
「あの、ミルクティーで大丈夫ですか?」
「百点だわ、マジで感謝。金払…」
「「「」いえ!大丈夫です!思い出をありがとうございます!」」」
綺麗に揃った声で言うと、もう教室帰るのでごゆっくりと告げて女子達は去って行った。
「晴、糖分摂取しろ。」
蓮が温かいペットボトルを俺の手に握らせるけど眠い方が勝つ。
「そのまま寝たら危ねぇから。ほら。」
そう言って、自分の膝の上に俺を横座りさせる。
これも今日知った感覚だなぁ。
肩に蓮のカーディガンをかけられて、すっぽりと包み込まれた。
蓮の体温の残るそれに酷く安心する。
「ん、ゆっくりな。」
口許にペットボトルを充てがわれるけど上手く飲めない。
「晴、口開けて?」
言われるままに口を少し開くと、ペットボトルが離れて行って…代わりに、柔らかくて暖かいものが唇に触れた。
ゆっくりと、口の中に甘い液体が流れ込んでくる。
コクリと嚥下するとまた注がれる。
それを何度か繰り返すと、身体が温まってくるのが分かった。
手の震えるも止まってる。
「……いい匂い。」
「またそれかよ。」
蓮が笑う気配がして、髪の毛に優しく何かが触れた。
チュッと小さなリップ音がして、額にも同じそれが施される。
泣きたくなるような優しさに、俺の心は締め付けられた。
「…蓮、ごめんね?」
この蓮が俺が見てる幻想じゃなくて現実の蓮だったとしたら…。
いくら鈍い俺でも分かる。
蓮は、俺の事を大切に思ってくれてるんだーー。
どうか、目が覚めて夢でしたって事にならないで欲しい。
願いながら、俺の意識は眠りに引き込まれていく。
「おやすみ、晴。もう暫く、暖めさせて?」
耳元で囁く蓮の甘い声と、優しく髪を梳く指の感触を最後に、俺は完全に意識を無くしたーー。
●●●
糖度のある回になりましたでしょうか?笑
美術室にいた女子達は、学校行事が苦手で絵を描いて遊んでた三年生です。
蓮と話せたのが学校生活一の思い出との事。
蓮、良くやった。笑
82
お気に入りに追加
1,067
あなたにおすすめの小説
君への気持ちが冷めたと夫から言われたので家出をしたら、知らぬ間に懸賞金が掛けられていました
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【え? これってまさか私のこと?】
ソフィア・ヴァイロンは貧しい子爵家の令嬢だった。町の小さな雑貨店で働き、常連の男性客に密かに恋心を抱いていたある日のこと。父親から借金返済の為に結婚話を持ち掛けられる。断ることが出来ず、諦めて見合いをしようとした矢先、別の相手から結婚を申し込まれた。その相手こそ彼女が密かに思いを寄せていた青年だった。そこでソフィアは喜んで受け入れたのだが、望んでいたような結婚生活では無かった。そんなある日、「君への気持ちが冷めたと」と夫から告げられる。ショックを受けたソフィアは家出をして行方をくらませたのだが、夫から懸賞金を掛けられていたことを知る――
※他サイトでも投稿中
悪役令息の伴侶(予定)に転生しました
*
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、自らを反省しました。BLゲームの世界で推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)

もう人気者とは付き合っていられません
花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。
モテるのは当然だ。でも――。
『たまには二人だけで過ごしたい』
そう願うのは、贅沢なのだろうか。
いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。
「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。
ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。
生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。
※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中

それ以上近づかないでください。
ぽぽ
BL
「誰がお前のことなんか好きになると思うの?」
地味で冴えない小鳥遊凪は、ある日、憧れの人である蓮見馨に不意に告白をしてしまい、2人は付き合うことになった。
まるで夢のような時間――しかし、その恋はある出来事をきっかけに儚くも終わりを迎える。
転校を機に、馨のことを全てを忘れようと決意した凪。もう二度と彼と会うことはないはずだった。
ところが、あることがきっかけで馨と再会することになる。
「本当に可愛い。」
「凪、俺以外のやつと話していいんだっけ?」
かつてとはまるで別人のような馨の様子に戸惑う凪。
「お願いだから、僕にもう近づかないで」
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】
今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。
「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」
そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。
そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。
けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。
その真意を知った時、私は―。
※暫く鬱展開が続きます
※他サイトでも投稿中
記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話
甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。
王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。
その時、王子の元に一通の手紙が届いた。
そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。
王子は絶望感に苛まれ後悔をする。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる