【完結まで残り1話】桜の記憶 幼馴染は俺の事が好きらしい。…2番目に。

あさひてまり

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高校生編side晴人 事件の始まり…なのにキスとかそれ以上とか⁉︎

39.話したい

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俺が更衣室を出ると、啓太と伊藤が待っててくれた。
蓮は…もう行っちゃったみたいだ。

その事にちょっとショックを受ける自分に頭を振る。

メンテナンス時間が終わったのか、プールサイドには一般のお客さんも入っていた。

「伊藤、タオルありがとな!
チャイナドレスも洗って返すわ。」

「んー?別にこのままでいいよ?」

「いやいや、体拭いたタオルそのまま女子に返すとかヤバイじゃん!俺を変態にしないで!」

「そお?じゃあお願いしようかなぁ。」

晴ちゃんは弟だから気にならないのに…とか言いながら、伊藤はスーパーの袋をくれた。
何て用意がいいんだ!凄い!

「ドレスは一旦干した方が良くね?
部室持ってこーぜ!」

啓太の言葉に俺は頷いた。

剣道部の部室のベランダには物干しスペースが有る。
これは、防具とかが臭くならないように定期的に風を通すための物。
一階だから日当たりはそこまで良くないけど、あるのと無いのじゃ大違いだ。

「確かに、このままじゃ水々しい(?)もんな。」

俺達は笑いながらプールを出る。
伊藤はクラスに報告してくれるらしく途中で教室に戻って行った。


「なぁ、切藤と二人で本当に大丈夫だったのか?」

部室に着いてチャイナドレスを干してると、ふいに啓太が聞いてきた。

「……⁉︎」

全然大丈夫じゃなかった。
だって…だってさぁ!!

啓太に背を向けて作業してて良かった。
絶対今、顔が赤くなってる。

俺が上手く返事できないでいると、啓太がやや気まずそうな声で続けた。

「あーっと、ほら。お前ら最近あんまり上手く行ってなさそうだったじゃん?大丈夫だったかなと思って。」

あ、あぁ!そう言う事ね⁉︎

キスとか、その…手でゴニョゴニョされた事とかを思い出してた俺は急いでそれを振り払う。

そう言う事ね⁉︎(2回目)
精神的なやつね!!

「あ、うん。大丈夫…。何か苗字で呼ばれるのイヤだったらしくて怒られたけど…。」

かなり湾曲した言い方になっちゃったけど、蓮がこれに対して凄い嫌がってたのは事実だもんな。

それこそ、俺にあんな事するくらい…って、だから思い出しちゃダメだってば!!

「あー、それは聞こえてた。」

は⁉︎

「えっと…電話どこまで繋がってたの?」

俺はバクバクする心臓を必死に宥めながら聞く。

「や、そこまでで切れたんだよ。だから心配でさ。」

よ、良かった~!!
俺は安堵の息を吐く。

啓太は親友だけど、流石に何があったかは知られたく無い。

って言うか、引かれるかもしれないから言えない。
蓮とそう言う事をしたって内容に対してよりも…

俺が全然嫌じゃなくて、むしろ幸せすら感じてしまったって事に。
もっと言うと、俺が蓮を好きだって事にーーー。

キスも手のそれも気持ち良すぎて、でもそれは相手が蓮だからで。
蓮にとっては俺の口を割らせるためにやった事なんだろうけど…。

叶わない、身の程を知らない恋心を知られるのは恥ずかしい。

「えっと…何が気に入らなかったのか分かんないけど、呼び方は蓮に戻す事にしたよ。
あの後のやり取りはそんな感じ…。」

啓太の目が見れなくて背を向けたまま話す。

「…そうか!なら良かったよ。」

ごめん、啓太。

「じゃあ、そろそろ俺達も戻るか!」

部室を出て少し歩いた所で、啓太が再び口を開く。

「そう言えばさ、晴人が着替えた後、切藤いなくなってただろ?」

うん。ちょっとショックだったけどそりゃそうだよね。プールに落ちた事は心配してくれたけど、いつまでも俺の傍にいてくれる訳じゃない。

「何かさ、って言ってたんだよな。」

…それってもしかして木村さんの事?
彼女に「後で話し聞く」って言ってたような。

「それと、晴を頼むってのも言われた。
何かあったらすぐ連絡して欲しいって。」

ハッとして啓太を見る。

「切藤、晴人の事本当に心配してたよ。
?」

その顔がどこか楽しそうなのは気のせい、だよな?

心臓がトクトク鳴る。
勘違いしちゃダメなのに、嬉しい。

蓮と、話したいーーー。

今日の事も、今までの事もーーー。

「啓太、俺…行って来る…」

「おう!クラスの事は気にすんな!」

俺の考えなんかお見通しっぽい啓太の笑顔に見送られて、廊下を走った。




●●●
啓太は親友の鑑。





















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