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高校生編side晴人 事件の始まり…なのにキスとかそれ以上とか⁉︎
36.契約 (side啓太)
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スマホが着信を告げたのは、俺を捕まえた参加者の用紙にスタンプを押した時だった。
うちのクラスの催し物は大盛況で、予想よりずっと参加者が多い。
「わぁ!もう3人も捕まえた!」
「このペースなら案外いけるかもな!」
俺はスタンプを押しながら、参加者カップルの用紙を見る。
捕まえたのはスーパーマン、侍、ダースベーダー(俺)
よしよし、目眩し役ばっかりだな。
お二人さん、難しいのはこっからなんだぜ。
特にラスボス、「チャイナ娘」の晴人はひたすら目立たない所にいる。
せっかくの文化祭なのに損な役回りで申し訳ないが、この企画を詰めてくれたアドバイザーとの約束だからしょうがない。
交代したら何か奢ってやるからな、晴人。
そんなことを思っていた矢先の着信は…
「はい!アドバイザー様、何か?こちらは順調そのものです!」
『てめーと仲良くオシャベリしてる場合じゃねーんだよ。要件言うからさっさと聞けや。』
返ってきた冷たい声に俺は肩を竦める。
「悪い悪い。どうした、切藤。」
そう、実はアドバイザーとは切藤のことなのだ。
何故、特進クラスの魔王様がうちのクラスに手を貸してくれたのか。
それは、文化祭の企画決めの日に遡るーー。
「じゃあうちのクラスはこれに決まりね!」
一致団結が売りの我が1年C組がやる事になったのは、
鬼ごっことスタンプラリーのミックスみたいな催しだ。
でも、文化祭を楽しみに来てる人が、景品(お菓子)のために鬼ごっこに時間を割くのか?なんて思ったりもする。
盛り上がる周りに水を差すのも悪いと思って、何も言わなかったけど。
コスプレ要員のジャンケン大会で晴人が盛大に負けてチャイナドレスになったのには笑った。
どう考えても似合いすぎる。
「よぉ!」
俺が特進クラスを訪ねると、切藤はすぐに反応した。
「何かあったのか?」
誤解のないように言っておくと、切藤の「何かあったのか?」の主語は「晴人に」だ。
決して俺を心配してる訳ではない。
「いやぁ、まぁ関係あるっちゃあるんだけど。
文化祭の企画でちょっと知恵貸してくれないか?」
俺はうちのクラスの企画を説明する。
「ーーって訳なんだけど、これって上手く行くと思うか?」
「知るかよ。」
「頼むよー!皆んな楽しみにしてるのに当日大失敗とか嫌じゃん?」
「頭足りねぇ奴等には当然の結果だろ。」
あ、やっぱり失敗するって事?
「助けてくれよー。友達だろー。」
「記憶捏造されてんじゃね。」
体育祭の後、二人で語り合ったのに冷たい奴だ。
「はぁー。分かったよ。お邪魔しました。」
俺は教室を出ようとして…振り返って付け足した。
「あ、晴人、チャイナドレスに決まったから。」
「……は?」
よし、食い付いた!
「今の企画が難しそうなら、一緒に写真撮れる撮影会に切り替えるって案も出てるんだよなぁ。
チャイナ晴人、指名多いだろうなぁ。」
「……。」
あと一押しか?
「まぁ安心しろ!晴人がいかがわしい事されないように、俺がピッタリ張り付いとくから!」
「俺らの友情もここまでだな。本気で潰すわ。」
「あ、やっぱ友達でしたよね?」
「新しい関係築いてこうぜ。主人と奴隷で。」
「そんな事しても、晴人のチャイナは止まらない!何故ならジャンケンで負けたからな!」
切藤は溜息を吐くと、それ身体の半分ありますよねってくらい長い脚を組んだ。
男前はこれだけで絵になる。
てかさ、気になってたんだけど、向かいの一般クラスの棟からオペラグラスでこっち覗いてる女子いるよな?
しかも何十人って単位で。
「アイツ、ここぞって時に必ず負けんだよな、ジャンケン。」
切藤の整った冷たい顔がフワリと緩む。
その瞬間、開けた窓から風に乗って届く黄色い歓声とシャッター音。
「……部外者の攻略はまずねぇから、学校の生徒に警戒しろ。」
「え?」
「逃げる方はワザと目立つ奴を3人作れ。
見て回るついでに結構捕まえられそうだと思わせれば参加者が増える。」
「ちょっと待って!メモるから!」
それからもどんどん出てくる改善策に俺は唸った。
少し話しを聞いただけでこれだ。
やっぱり特進に入れるような奴は頭の回転がレベル違いだよなぁ。
「…晴を目立たせんな。できるだけ人目に触れないようにするのが協力の条件だ。」
「了解!お礼にチャイナ晴人の写真送るわ。
LAIN教えて。」
嫌々教えてくれたLAINを登録しながら俺は考える。
切藤の行動基準は常に晴人なんだよなぁ。
毎日何十人もの女子から熱い視線を送られてるのに、その心に引っかかるのは晴人ただ一人。
晴人と近い俺の事が気に食わないけど、本気で潰しに来ないのは晴人の親友だからだろう。
「なぁ、もし俺が晴人の事裏切ったらどうする?」
そんな事絶対ないが、純粋な興味から聞いてみる。
「あ?物理的に潰す。学校も退学に追い込む。」
怖ッ!!
しかもそれができるって確信してる所がヤバイ。
「それと、これだな。」
そう言って切藤が見せて来たのはLAINの友達画面。
そこには見慣れたアイコンと…
『中野絢美』の文字。
はっ⁉︎⁉︎⁉︎⁉︎
「な!!何で姉ちゃんのLAIN知ってんだよ⁉︎⁉︎」
「さぁな。」
慄く俺に切藤はニヤリと笑う。
「まぁ、言動には十分気を付けてくれたまえ。
オトモダチの中野君。」
この世には、姉ちゃん以外にも死んでも逆らわない方がいい相手がいる。
俺はそれを強く思い知ったのだった。
●●●
「文化祭」で啓太が濁したアドバイザーは蓮でした。
うちのクラスの催し物は大盛況で、予想よりずっと参加者が多い。
「わぁ!もう3人も捕まえた!」
「このペースなら案外いけるかもな!」
俺はスタンプを押しながら、参加者カップルの用紙を見る。
捕まえたのはスーパーマン、侍、ダースベーダー(俺)
よしよし、目眩し役ばっかりだな。
お二人さん、難しいのはこっからなんだぜ。
特にラスボス、「チャイナ娘」の晴人はひたすら目立たない所にいる。
せっかくの文化祭なのに損な役回りで申し訳ないが、この企画を詰めてくれたアドバイザーとの約束だからしょうがない。
交代したら何か奢ってやるからな、晴人。
そんなことを思っていた矢先の着信は…
「はい!アドバイザー様、何か?こちらは順調そのものです!」
『てめーと仲良くオシャベリしてる場合じゃねーんだよ。要件言うからさっさと聞けや。』
返ってきた冷たい声に俺は肩を竦める。
「悪い悪い。どうした、切藤。」
そう、実はアドバイザーとは切藤のことなのだ。
何故、特進クラスの魔王様がうちのクラスに手を貸してくれたのか。
それは、文化祭の企画決めの日に遡るーー。
「じゃあうちのクラスはこれに決まりね!」
一致団結が売りの我が1年C組がやる事になったのは、
鬼ごっことスタンプラリーのミックスみたいな催しだ。
でも、文化祭を楽しみに来てる人が、景品(お菓子)のために鬼ごっこに時間を割くのか?なんて思ったりもする。
盛り上がる周りに水を差すのも悪いと思って、何も言わなかったけど。
コスプレ要員のジャンケン大会で晴人が盛大に負けてチャイナドレスになったのには笑った。
どう考えても似合いすぎる。
「よぉ!」
俺が特進クラスを訪ねると、切藤はすぐに反応した。
「何かあったのか?」
誤解のないように言っておくと、切藤の「何かあったのか?」の主語は「晴人に」だ。
決して俺を心配してる訳ではない。
「いやぁ、まぁ関係あるっちゃあるんだけど。
文化祭の企画でちょっと知恵貸してくれないか?」
俺はうちのクラスの企画を説明する。
「ーーって訳なんだけど、これって上手く行くと思うか?」
「知るかよ。」
「頼むよー!皆んな楽しみにしてるのに当日大失敗とか嫌じゃん?」
「頭足りねぇ奴等には当然の結果だろ。」
あ、やっぱり失敗するって事?
「助けてくれよー。友達だろー。」
「記憶捏造されてんじゃね。」
体育祭の後、二人で語り合ったのに冷たい奴だ。
「はぁー。分かったよ。お邪魔しました。」
俺は教室を出ようとして…振り返って付け足した。
「あ、晴人、チャイナドレスに決まったから。」
「……は?」
よし、食い付いた!
「今の企画が難しそうなら、一緒に写真撮れる撮影会に切り替えるって案も出てるんだよなぁ。
チャイナ晴人、指名多いだろうなぁ。」
「……。」
あと一押しか?
「まぁ安心しろ!晴人がいかがわしい事されないように、俺がピッタリ張り付いとくから!」
「俺らの友情もここまでだな。本気で潰すわ。」
「あ、やっぱ友達でしたよね?」
「新しい関係築いてこうぜ。主人と奴隷で。」
「そんな事しても、晴人のチャイナは止まらない!何故ならジャンケンで負けたからな!」
切藤は溜息を吐くと、それ身体の半分ありますよねってくらい長い脚を組んだ。
男前はこれだけで絵になる。
てかさ、気になってたんだけど、向かいの一般クラスの棟からオペラグラスでこっち覗いてる女子いるよな?
しかも何十人って単位で。
「アイツ、ここぞって時に必ず負けんだよな、ジャンケン。」
切藤の整った冷たい顔がフワリと緩む。
その瞬間、開けた窓から風に乗って届く黄色い歓声とシャッター音。
「……部外者の攻略はまずねぇから、学校の生徒に警戒しろ。」
「え?」
「逃げる方はワザと目立つ奴を3人作れ。
見て回るついでに結構捕まえられそうだと思わせれば参加者が増える。」
「ちょっと待って!メモるから!」
それからもどんどん出てくる改善策に俺は唸った。
少し話しを聞いただけでこれだ。
やっぱり特進に入れるような奴は頭の回転がレベル違いだよなぁ。
「…晴を目立たせんな。できるだけ人目に触れないようにするのが協力の条件だ。」
「了解!お礼にチャイナ晴人の写真送るわ。
LAIN教えて。」
嫌々教えてくれたLAINを登録しながら俺は考える。
切藤の行動基準は常に晴人なんだよなぁ。
毎日何十人もの女子から熱い視線を送られてるのに、その心に引っかかるのは晴人ただ一人。
晴人と近い俺の事が気に食わないけど、本気で潰しに来ないのは晴人の親友だからだろう。
「なぁ、もし俺が晴人の事裏切ったらどうする?」
そんな事絶対ないが、純粋な興味から聞いてみる。
「あ?物理的に潰す。学校も退学に追い込む。」
怖ッ!!
しかもそれができるって確信してる所がヤバイ。
「それと、これだな。」
そう言って切藤が見せて来たのはLAINの友達画面。
そこには見慣れたアイコンと…
『中野絢美』の文字。
はっ⁉︎⁉︎⁉︎⁉︎
「な!!何で姉ちゃんのLAIN知ってんだよ⁉︎⁉︎」
「さぁな。」
慄く俺に切藤はニヤリと笑う。
「まぁ、言動には十分気を付けてくれたまえ。
オトモダチの中野君。」
この世には、姉ちゃん以外にも死んでも逆らわない方がいい相手がいる。
俺はそれを強く思い知ったのだった。
●●●
「文化祭」で啓太が濁したアドバイザーは蓮でした。
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