【完結まで残り1話】桜の記憶 幼馴染は俺の事が好きらしい。…2番目に。

あさひてまり

文字の大きさ
上 下
43 / 252
高校生編side晴人 事件の始まり…なのにキスとかそれ以上とか⁉︎

27.どうしたらいいの(side木村桃)

しおりを挟む
目の前の男の子、萱島晴人君はその儚げな風貌とは裏腹に、明るくフレンドリーに話しかけてくれた。
チャイナドレスなのはクラスの仕事中だからだそうだ。

控えめに言って、凄く似合ってる。

彼に陽菜ちゃんと友達なのか聞かれて、その柔らかい雰囲気につい、本音を漏らしてしまった。

あ、ヤバイ。引かれる…。

そう思って慌てる私の耳に飛び込んでるきたのは、「超分かる!!!」と言う全肯定の言葉だった。

「え?」

「俺の…も、何でも完璧な人で。
俺みたいな奴が隣にいちゃダメって言われてさ。」

それは「蓮」って人の事だろうか。
昨日、陽菜ちゃんから念押しの電話でその名前を聞かされた。

「萱島君ならそんな事思う必要ないと思うけど…。」

だってこんなに可憐な男の子を見たのは初めてだ。

「それは木村さんにそっくりそのまま返すよ。」

お世辞だとは分かってるけど、心が温まる。

「何か、褒め合う俺ら変だね?」

そう言って笑う萱島くんに釣られて、私も笑った。


「周りに言われたせいにしちゃダメだよね。
そう言われて、俺が自分でそうかもって納得しちゃったせいだから。
その人といても、俺じゃ足引っ張るだけだよなって。それで、離れる事を選んだんだ。」

それが結果的に相手のために一番いいとか笑っちゃうよね、と言う萱島君に、私は思わず聞いてしまった。

「…萱島君は、今でも一緒にいたい?」

彼はそれには答えず苦笑した。
その表情が全てを物語っている君がして、私は胸がギュッとなる。

「相手はずっと、しょうがなく俺と居てくれてたみたいでさ。これ以上迷惑かけて、嫌われたく無かったんだ。」

きっとその「蓮」って人は今も、萱島君にとって大切な人のままなんだろう。

「萱島君は凄いね。…私は、友達だと思われてないって分かってても陽菜ちゃんから離れる勇気がないの。」

「え?」

「中学の時ね、陽菜ちゃんが私の事、便利だって言ってて…。私なんか友達じゃなくて当たり前なんだけど…。」

積もった心の澱を、初対面の人に話すなんてどうかしてると思う。
だけど、萱島君にどうしても聞いて欲しかった。

「私に話しかけるのなんて、お願いがある時だけ。…それでも嬉しかった。
キラキラした陽菜ちゃんの役に立てば、自分がそこに存在してもいいって認められた気がしたの。」

そう、だから何でもした。

「だけど、段々苦しくなって…。高校生になって全然会わなくなって、正直ホッとしてた。
私なんかが、陽菜ちゃんに会いたくないなんて本当に失礼な話しなんだけど…。」

陽菜ちゃんの近くにいる事を望んでる人は溢れる程いる。
こんな私が陽菜ちゃんを拒否するなんて許されない事なのに…。

だから今日もこうしてやって来てしまった。
そして、私は多分これから、今目の前で話しを聞いてくれている彼を傷付ける。

私の言葉を否定せず、「大変だったね。」「ずっと悩んできたんだね。」そう言って私を慮ってくれる優しいこの人を…。

自分が情けない。

「こんな私、だれにも好かれなくて当然だよ…」

「ううん、それは違うよ。」

思わずポツリと漏れた心の声に、萱島君が反応する。
ずっと肯定してくれた彼の、初めての反応に私は驚いた。

「…もし木村さんの友達が同じように思ってたらどう?」

「え…?」

わたしは高校で初めてできた友達ーーナナとマユを思い浮かべる。
「誰にも」には私も入っている訳で…。

「そんなの、寂しい…。」

だって私は大好きなのに。

私の答えに、萱島君は笑った。

「だよね!俺もさ、今の木村さんみたいに思っちゃった事があったんだけど…その時言われたんだ。
自分が大切に思う人の事は信じなきゃって。
だって逆の立場だったら悲しいじゃん?」

大切な人に「大好き」を信じてもらえないのは寂しい。だから、自分も相手にそう言う思いをさせてはいけない。
そんな風に考えた事は無かった。

「それが上手くいかなくて、一方通行の時もあるけど…って言うか、それ俺だけど。」

萱島君は苦笑して、でもしっかりと言った。

「でも、俺にとっては今でも大切だからさ。
その人には近づかないって決めたけど、何かあったら俺が何とかしたいと思ってる。
細心の注意を払ってコッソリね。」

悪戯っぽく笑う萱島君はとても強くてしなやかで。

凄く、綺麗だなと思った。

私もこんな風に大切な人を想えるようになりたい。


だって、私はーーーー



ブブブッ


その時、ポケットの中のスマホが震えた。
陽菜ちゃんからの合図だ。

きっと「蓮」と一緒にここに着いたんだろう。

『合図したら、萱島に抱きつくとかキスするとかしてイチャイチャしてる感じだしてね♪
蓮にそれ目撃させるから、絶対失敗しないでよ?』

昨日の電話の声を思い出す。

どうしよう、どうしようーー!!

頭が真っ白になってパニックになる。

「木村さん?」

気遣わしげな萱島君の声。ドアの外からはもう陽菜ちゃんの声が聞こえる。

「萱島君。…ごめんね…。」


どうしようもない私を、恨んでーーー。




私は萱島君の身体をグイッと引き寄せた。





●●●
体育祭の一件で、晴人は「遠くから蓮の幸せを見守ること」が自分にできる唯一だと思うようになりました。

翔が危惧していた「献身的なだけの愛」に傾いてしまったのは蓮じゃなくて晴人の方。























しおりを挟む
感想 86

あなたにおすすめの小説

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた

翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」 そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。 チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

言い逃げしたら5年後捕まった件について。

なるせ
BL
 「ずっと、好きだよ。」 …長年ずっと一緒にいた幼馴染に告白をした。 もちろん、アイツがオレをそういう目で見てないのは百も承知だし、返事なんて求めてない。 ただ、これからはもう一緒にいないから…想いを伝えるぐらい、許してくれ。  そう思って告白したのが高校三年生の最後の登校日。……あれから5年経ったんだけど…  なんでアイツに馬乗りにされてるわけ!? ーーーーー 美形×平凡っていいですよね、、、、

【幼馴染DK】至って、普通。

りつ
BL
天才型×平凡くん。「別れよっか、僕達」――才能溢れる幼馴染みに、平凡な自分では釣り合わない。そう思って別れを切り出したのだけれど……?ハッピーバカップルラブコメ短編です。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?

名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。 そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________ ※ ・非王道気味 ・固定カプ予定は無い ・悲しい過去🐜 ・話の流れが遅い ・作者が話の進行悩み過ぎてる

俺にとってはあなたが運命でした

ハル
BL
第2次性が浸透し、αを引き付ける発情期があるΩへの差別が医療の発達により緩和され始めた社会 βの少し人付き合いが苦手で友人がいないだけの平凡な大学生、浅野瑞穂 彼は一人暮らしをしていたが、コンビニ生活を母に知られ実家に戻される。 その隣に引っ越してきたαΩ夫夫、嵯峨彰彦と菜桜、αの子供、理人と香菜と出会い、彼らと交流を深める。 それと同時に、彼ら家族が頼りにする彰彦の幼馴染で同僚である遠月晴哉とも親睦を深め、やがて2人は惹かれ合う。

処理中です...