【完結まで残り1話】桜の記憶 幼馴染は俺の事が好きらしい。…2番目に。

あさひてまり

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高校生編side晴人 事件の始まり…なのにキスとかそれ以上とか⁉︎

21.天敵

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「萱島くーんっ♪ちょっといいかな?」

可愛いけど恐ろしい、俺の苦手な声に振り返ると、そこにはやっぱり相川さんがいた。

先生に資料運びを頼まれた俺は、一人で資料室前にいる。
校舎の奥まった所にある資料室は、用事が無ければ通りかかるなんて事は無い。
どうして俺が一人でここに来るの分かったんだろう…。

「えっと、何?」

俺は最大限の警戒をしながら尋ねた。
体育祭から約2ヶ月。
俺は蓮と一切接触してないから、何か言われる覚えは無いんだけど。

「やだぁ!そんなに緊張しないで!
あのね、萱島君にお礼が言いたいの。」

お礼?

「蓮の事、分かってくれてありがとう♡
蓮ね、毎日楽しそうなんだ!
萱島くんが離れてくれたおかげだよ!」

それ、お礼なのか??

「それでね。私、蓮と付き合う事になりそうなの。」

一瞬、息が止まった。

「……そうなんだ。」

動揺を押し殺して何とか答えると、相川さんはそんな俺に笑みを浮かべて続ける。

「だけどね、蓮がまだ迷ってるみたいで…。
その原因がね、噂のせいなの。
ほら、萱島君が私に告白したって噂があったでしょ?」

夏休み前後にちょっと流れたあの噂だろうか。

「蓮もその事知ってて、私が断ったと思ってる。
私と蓮が付き合ったら、あまりにも萱島くんが可哀想だって言ってるんだ…。
萱島君に対する負い目があるし、幼馴染としての情だけはあるからって。」

蓮って本当に優しいよね。
そう言う相川さんの言葉に俺は頷けない。

「だからね、萱島君に他に好きな子…ううん、彼女がいるって知れば蓮の決心がつくと思うの。」

……はい?

「私の友達と、付き合ってみない?」

……はい??

「実はね、萱島君のことカッコいいって言ってる他校の友達がいるんだ!
剣道の試合会場で見かけたんだって。
凄くいい子だし、萱島君とお似合いだと思うよ!」

「ま、待って、相川さん。
俺、そんな理由で誰かと付き合うつもりないよ。」

すると、相川さんは何言ってんのって顔をする。

「付き合うきっかけなんて色々だよ?
別に蓮との事が無くても、その子の事は紹介するつもりだったし。
ほら、来週文化祭でしょ?
その時に会うだけでもいいからってお願いされたんだ。」

「いや、でもその気も無いのに会ったら相川さんの友達に失礼だよ。」

「逆に、会えるチャンスがあるのに会ってもらえない方が辛いよ。
面と向かって断られた方が諦めもつくし。」

それに、と相川さんは俺の顔を窺う。

「なんで断る前提なの?凄く気が合うかもしれないよ?」

もしかして、と彼女は続けた。

「萱島君、好きな人いるの?」

心臓がドクッと音を立てる。

「い、いない…よ…。」

思わず口籠もった俺に、相川さんが近付いて来た。
小柄な彼女が背伸びして、俺の耳元で囁く。

「ふーん?じゃあ、と私付き合うのが嫌だから協力したくないとか?それって、何で?」

ハッとして急いで後ずさる。
背中が資料室のドアに当たって音を立てた。
相川さんはそんな俺の反応にクスクス笑っている。
だけど、その目は冷ややかだ。


「蓮が」を強調した言い方に違和感を感じる。


バレてるんだろうか。
俺が蓮を好きだって事がーーー。

絶対に隠し通さなきゃいけない想い。

もし、蓮に知られてしまったらーー

指先が冷えていくのが分かる。


「私はただ、友達の願いをかなえてあげたいだけだよ。会うだけでいいって言ってるから大丈夫!
萱島君なら、分かってくれるよね?


にっこり笑う相川さんの言葉に、俺は頷くしかなかった。

「ありがとう♡じゃあ、文化祭の日、予定開けておいてね!」

そう言って去っていく彼女の背中に、俺は問いかけた。

「遥の事は、知ってるのーーー?」

それは俺のせめてもの抵抗だったのかもしれない。

相川さんはこっちを振り返ると、少し驚いたような顔をした。
でもすぐに、勝ち誇ったような笑みをうかべる。

「とっくに解決してるから大丈夫。
ご心配どーも♡」

ヒラヒラと手を振るその背中を、俺はただ見送るしかなかった。



●●●
次回はside相川です。







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