27 / 227
高校生編side晴人 好きって自覚したら失恋したよ
11.願い
しおりを挟む
「ーーー晴。」
低くて優しい声に顔を上げると翔君がいた。
蹲る俺を抱きしめてくれる。
「蓮がごめんな。」
よしよしと背中をさすられて、その温もりにホッとする。
「蓮が悪いんじゃないから…。」
そう言ったら翔君はめちゃめちゃ複雑な顔をしたけど、本当に蓮は悪くない。
子供の頃から、俺の両親には「晴をよろしくね」
と言われ、自分の両親にも「晴ちゃんのこと見てあげてね」と言われて…。
嫌だなんて言える訳もなく、俺なんかのためにずっと傍にいてくれたんだ。
高校生になって、いい加減離れたいと思うのは当然で…。
「晴、帰ろ。」
それきり黙ってしまった俺に、翔くんが優しく言った。
俺の手足を見て怪我が無いことを確認すると、鼻緒の切れた下駄を片手に持って俺に背中を向ける。
「はい、どーぞ。」
…乗れってこと?
「普段は100万取ってるけど、晴だから特別無料にしてやるよ。」
冗談を言う翔君に、少し笑ってしまう。
本当に100万の価値ありそうだし。
軽ッ!と言いながら俺を背負って歩き出した翔君の肩に顔を埋めた。
大きくて暖かい背中。
いつでも安心させてくれる、心強い存在。
でも、俺は知ってしまった。
「ずっと」とか「当たり前」とか、そんなものは存在しないんだ。
「翔君?」
「んー?」
「俺の事迷惑なら、言ってね。」
俺は馬鹿だから気付けないんだ。
だからさ、ちゃんと教えて欲しい。
そうじゃないと、またーーー
「晴、怒るぞ?」
声が背中越しに伝わって響く。
いつも俺に向ける明るいそれじゃない。
「お前は俺の大事な弟だ。晴と蓮がどんな関係になってもそれは変わらない。」
そして、首を回して俺を振り返る。
「こんな可愛い弟、迷惑だなんて思う訳ないだろ。
」
翔君の笑顔に、また涙が止まらない。
「ごめん…。俺…。」
「うん。不安になったんだよな。」
分かってる、と翔君は言ってくれた。
「そう言う晴はさ、もしかして俺の嫌い?」
「そんな訳ないじゃん!!」
思わず大きな声が出てしまった。
「そうだよな。でもさ、自分が大切に思ってる人にその気持ち信じてもらえないのって悲しくない?」
うん。
今、凄い悲しかったよ。
「だからさ、晴が大切だと思う人の事は、信じなきゃな。
それがたまに上手くいかないことだってあるよ。
人間同士だから必ず相思相愛になれる訳じゃない。
傷付く事もあるけど、でも、それを恐れて晴を大切に思ってる人を悲しませちゃダメだ。」
「………はい。」
そうだ。俺は周りにいる人の気持ちを疑う所だった。
翔君も、啓太も、遥も父さん母さんも…。
俺は皆んなの事が大好きだから、今まで通り大切にすればいいんだよな。
「晴の素直な所が俺は大好きだよ。」
鼻をすすりながら反省する俺に、翔君は優しく言った。
俺も翔君の事大好きだよ。
ずっと、俺のお兄ちゃんでいてね。
●●●
素早いアフターケアで晴人の人間不信を阻止。
できる男、翔。
低くて優しい声に顔を上げると翔君がいた。
蹲る俺を抱きしめてくれる。
「蓮がごめんな。」
よしよしと背中をさすられて、その温もりにホッとする。
「蓮が悪いんじゃないから…。」
そう言ったら翔君はめちゃめちゃ複雑な顔をしたけど、本当に蓮は悪くない。
子供の頃から、俺の両親には「晴をよろしくね」
と言われ、自分の両親にも「晴ちゃんのこと見てあげてね」と言われて…。
嫌だなんて言える訳もなく、俺なんかのためにずっと傍にいてくれたんだ。
高校生になって、いい加減離れたいと思うのは当然で…。
「晴、帰ろ。」
それきり黙ってしまった俺に、翔くんが優しく言った。
俺の手足を見て怪我が無いことを確認すると、鼻緒の切れた下駄を片手に持って俺に背中を向ける。
「はい、どーぞ。」
…乗れってこと?
「普段は100万取ってるけど、晴だから特別無料にしてやるよ。」
冗談を言う翔君に、少し笑ってしまう。
本当に100万の価値ありそうだし。
軽ッ!と言いながら俺を背負って歩き出した翔君の肩に顔を埋めた。
大きくて暖かい背中。
いつでも安心させてくれる、心強い存在。
でも、俺は知ってしまった。
「ずっと」とか「当たり前」とか、そんなものは存在しないんだ。
「翔君?」
「んー?」
「俺の事迷惑なら、言ってね。」
俺は馬鹿だから気付けないんだ。
だからさ、ちゃんと教えて欲しい。
そうじゃないと、またーーー
「晴、怒るぞ?」
声が背中越しに伝わって響く。
いつも俺に向ける明るいそれじゃない。
「お前は俺の大事な弟だ。晴と蓮がどんな関係になってもそれは変わらない。」
そして、首を回して俺を振り返る。
「こんな可愛い弟、迷惑だなんて思う訳ないだろ。
」
翔君の笑顔に、また涙が止まらない。
「ごめん…。俺…。」
「うん。不安になったんだよな。」
分かってる、と翔君は言ってくれた。
「そう言う晴はさ、もしかして俺の嫌い?」
「そんな訳ないじゃん!!」
思わず大きな声が出てしまった。
「そうだよな。でもさ、自分が大切に思ってる人にその気持ち信じてもらえないのって悲しくない?」
うん。
今、凄い悲しかったよ。
「だからさ、晴が大切だと思う人の事は、信じなきゃな。
それがたまに上手くいかないことだってあるよ。
人間同士だから必ず相思相愛になれる訳じゃない。
傷付く事もあるけど、でも、それを恐れて晴を大切に思ってる人を悲しませちゃダメだ。」
「………はい。」
そうだ。俺は周りにいる人の気持ちを疑う所だった。
翔君も、啓太も、遥も父さん母さんも…。
俺は皆んなの事が大好きだから、今まで通り大切にすればいいんだよな。
「晴の素直な所が俺は大好きだよ。」
鼻をすすりながら反省する俺に、翔君は優しく言った。
俺も翔君の事大好きだよ。
ずっと、俺のお兄ちゃんでいてね。
●●●
素早いアフターケアで晴人の人間不信を阻止。
できる男、翔。
応援ありがとうございます!
21
お気に入りに追加
916
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる