【完結まで残り1話】桜の記憶 幼馴染は俺の事が好きらしい。…2番目に。

あさひてまり

文字の大きさ
上 下
30 / 252
高校生編side晴人 望み通り離れたのに、何でその反応?

14.Tシャツ

しおりを挟む
その後すぐ先生が来て、何事も無かったかのように練習が始まった。

だけど俺は、蓮の表情と態度にまた落ち込む。
もしかして、俺が蓮の友達に絡んでたのが気に入らなかったんだろうか。
俺から開放されて、晴れて友達と楽しく過ごしてたんだもんな…。



ーーってかさっきから濡れたTシャツ気持ち悪ッ!

「啓太、俺これ絞ってくるわ!」

せめて水分量を減らしたくて啓太に言う。

「おけ。水垂れてるもんな。
こんだけ人数いれば気付かれないだろ。」

そそくさと列を抜け出して校舎の近くに寄ったけど
先生に気付かれることはなかった。

ホッとしながらTシャツを脱いで絞ると、ビシャっと水が落ちた。
9月でまだ暑いとは言え、流石にこの量の水吸ってたら自然乾燥は時間かかるよな。

そんなことを思ってたら人の気配を感じた。

あ…。

制服に着替えた蓮が帰る所と鉢合わせしてしまったらしい。
制服姿も爆イケな蓮。
上半身裸で立ち尽くす俺。

さっき蓮の腹筋を見たせいか、白くてヒョロイ自分の身体が恥ずかしくて居た堪れない。

しかも、蓮は俺が肌を出してる事に厳しい。
前、蓮の前でシャツを開けてお守りを見せようとしたら怒られたし。
それ以外にも色々あったな。

見苦しいのか、俺の肌が焼けやすいから心配してくれてるのか。
後者であると信じたい…。

俯いていると、パシッと何かが頭に当たった。

…あ、何か投げつけられた。
これは見苦しい方で決定ですかね。

ショックを受けながら蓮の方をみると、全く感情の読めない顔でこっちを見ている。
蓮が立ってる所まで少し距離があるけど、身長差が決定的に分かるようになっちゃったな。
もう180cm近くあるんだろう。

ピアス、空けたんだな。
髪の色も変わってる。

夏休みのほんの数ヶ月会わなかっただけなのに、蓮が知らない人になったみたいだ…。

寂しいと思ってしまいそうで、慌てて思い直す。

これで、いいんだって。
これが俺達のあるべき姿なんだから。


蓮は一瞬何とも言えない表情をして…。

「やる。」

「へ?」

何をと思って見回すと、俺の肩に何か乗ってる。
広げてみると乾いた黒いTシャツだった。
さっき投げられたのはこれだったらしい。

つまり…着替えろってことだよな?
えっ、でも何で俺に?
たまたま手に待ってたとか?
いやでもそんな状況ってある?

Tシャツを手に固まっていると、ふいに俺の名前を呼ぶ声が聞こえた。

「萱島はまだトイレから戻ってないのかー⁉︎」

ヤベ!!先生だ!!
啓太がトイレって誤魔化してくれてたらしい。

「はい!はーい!先生!萱島いまーす!!」

俺は慌てて大声を出す。
そのやり取りの間に蓮は俺の脇を通り過ぎて歩き出してしまった。

あぁ、待って!

「あの…蓮…。」

名前を呼ぶと蓮がピタッと止まった。

「えっと、ありがとう…。」

その背中に向かってお礼を言う。
蓮はこっちを向くことなく「ん。」とだけ。
それでも、反応を返してくれた。

今度こそ帰って行く蓮と逆方向に俺は走り出した。


少し…いや結構大きい黒いTシャツから、蓮の香水がほのかに匂う。
鼓動が早くて顔が熱い。

蓮は優しいから俺の事を見捨てられないだけ。
甘えちゃダメだ。
気にかけてくれたのが嬉しいなんて間違ってる。


練習の間ずっと、そう自分に言い聞かせ続けた。

そうしないと、決意が揺らいでしまいそうだったから。






●●●
蓮はちょっとだけ忍耐を覚えた…のか?笑
その理由は次回判明します。

☆本編にはどうでもいい設定☆
晴人達の学校、夏の体育は好きなTシャツ着ていいことになってます。(特進はいつでも上下自由。)
体育祭本番はクラT着ます。青春。






しおりを挟む
感想 86

あなたにおすすめの小説

【幼馴染DK】至って、普通。

りつ
BL
天才型×平凡くん。「別れよっか、僕達」――才能溢れる幼馴染みに、平凡な自分では釣り合わない。そう思って別れを切り出したのだけれど……?ハッピーバカップルラブコメ短編です。

俺にとってはあなたが運命でした

ハル
BL
第2次性が浸透し、αを引き付ける発情期があるΩへの差別が医療の発達により緩和され始めた社会 βの少し人付き合いが苦手で友人がいないだけの平凡な大学生、浅野瑞穂 彼は一人暮らしをしていたが、コンビニ生活を母に知られ実家に戻される。 その隣に引っ越してきたαΩ夫夫、嵯峨彰彦と菜桜、αの子供、理人と香菜と出会い、彼らと交流を深める。 それと同時に、彼ら家族が頼りにする彰彦の幼馴染で同僚である遠月晴哉とも親睦を深め、やがて2人は惹かれ合う。

夫から「用済み」と言われ追い出されましたけれども

神々廻
恋愛
2人でいつも通り朝食をとっていたら、「お前はもう用済みだ。門の前に最低限の荷物をまとめさせた。朝食をとったら出ていけ」 と言われてしまいました。夫とは恋愛結婚だと思っていたのですが違ったようです。 大人しく出ていきますが、後悔しないで下さいね。 文字数が少ないのでサクッと読めます。お気に入り登録、コメントください!

幼馴染の御曹司と許嫁だった話

金曜日
BL
親同士の約束で勝手に許嫁にされて同居生活をスタートすることになった、商社勤務のエリートサラリーマン(樋口 爽)×国立大一年生(日下部 暁人)が本当の恋に落ちてゆっくり成長していくお話。糖度高めの甘々溺愛執着攻めによって、天然で無垢な美少年受けが徐々に恋と性に目覚めさせられていきます。ハッピーエンド至上主義。 スピンオフも掲載しています。 一見チャラ男だけど一途で苦労人なサラリーマン(和倉 恭介)×毒舌美人のデザイナー志望大学生(結城 要)のお話。恋愛を諦めた2人が、お互いの過去を知り傷を埋め合っていきます。 ※こちらの作品はpixivとムーンライトノベルズにも投稿しています。

僕の幸せは

春夏
BL
【完結しました】 恋人に捨てられた悠の心情。 話は別れから始まります。全編が悠の視点です。 1日2話ずつ投稿します。

もう人気者とは付き合っていられません

花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。 モテるのは当然だ。でも――。 『たまには二人だけで過ごしたい』 そう願うのは、贅沢なのだろうか。 いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。 「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。 ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。 生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。 ※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中

俺の彼氏は俺の親友の事が好きらしい

15
BL
「だから、もういいよ」 俺とお前の約束。

生徒会長の包囲

きの
BL
昔から自分に自信が持てず、ネガティブな考えばっかりしてしまう高校生、朔太。 何もかもだめだめで、どんくさい朔太を周りは遠巻きにするが、彼の幼なじみである生徒会長だけは、見放したりなんかしなくて______。 不定期更新です。

処理中です...