【完結まで残り1話】桜の記憶 幼馴染は俺の事が好きらしい。…2番目に。

あさひてまり

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中学生編 side晴人

1.幼馴染

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俺こと萱島晴人かやしまはると切藤蓮きりふじれん南野遥みなみのはるかは、今から19年前、同じ病院でオギャーと産声を上げた。
近所に評判のいい産婦人科があるこの町では、近辺に住む妊婦さんは皆んなそこにお世話になっていたからだ。
俺達の母親も例に漏れずである。
そして通院中に意気投合した彼女達は出産後、家族ぐるみで付き合うようになった。

生まれた順は蓮、遥、俺。
蓮が4月、遥が6月、俺が3月。
俺と蓮はほぼ一年違いだけどギリギリ同級生。
子供の頃の一年差って凄いよね。
成長の違いが如実に出るから。
俺が四足歩行ハイハイ移動の時、蓮はもうしっかり二足歩行タッチしてたらしい。
体格にもかなり差があった。
遥は女の子だから別として、蓮は骨格が太くズッシリしてたのに対し俺はふわふわヒョロヒョロだったそうな。

まぁ、これに関しては一年差だけの問題じゃなかったみたいだけど。
大学生になった今、蓮は180センチ越えの長身なのに、俺は167センチ。
蓮はソフトマッチョな体躯に韓国アイドルみたいに綺麗な顔。
俺は筋肉が付きにくい身体に地味なモブ顔。

あ、因みに遥は凄い美人だよ。
長身に黒のロングヘアーのクールビューティー。
俺と身長あんま変わらないんじゃないかな…。

まぁ、あれだ。
神は俺を創った時の何十倍も力を入れて蓮と遥を創りたもうた訳だ。
二人との顔面格差はエゲツなかったけど、それでも俺達は幼馴染としていつも一緒にいた。

周りの子供より成長の遅い俺は良く泣いていて、そんな時は蓮も遥も駆けつけてくれた。
特に、看護師の母さんが夜勤の時はいつも蓮にお世話になっていた。
母さん以外では、蓮と一緒じゃないと眠れなかったのだ。父さんにはごめんって感じだけど。

同じ布団に蓮がいると安心できた。
蓮はいつも手を繋いで寝てくれたから。
それは俺が小三になるまで続いたけど、ついに母さんが俺を自立させることにしたらしく、そこからは一人で寝るようになった。
寂しくて堪らなくて、俺はこの頃から蓮が自分にとって特別な存在なんだと思うようになった。
それはまだ、明確な名前を持たない感情ではあったけれどもーー。



俺達は中学も三人一緒だった。
蓮はグングンと背が伸びて、声も低く男らしくなり女子にモテるようになった。
端正な顔立ちで背も高く、運動も勉強もできる男がモテない方が不思議だもんな。
ただ、蓮はなかなか無愛想で口が悪く、オレ様っぽい所があるので遠巻きに見られてる感じ。

…だったんだけどさ。
そこが素敵ってなって、ある日一人の女子から告白された。
蓮は断ってたけど、それを皮切りに告白する女子がどんどん現れた。

「蓮、誰かと付き合うの?」

「付き合わねーよ。オレ好きな奴いるし。」

胸がモヤモヤして思い切って聞いた俺は、思わぬカウンターに胸がツキリと痛んだ。

蓮は好きな女の子がいるんだーー。

俺が見る限り親しくしてる女の子はいなかったように思ったけど、クラスが違うからいつも一緒にいる訳じゃない。
朝は俺を迎えに来てくれるから一緒に登校して、休み時間とか昼休みは一緒にいるけど授業と部活は別だ。
蓮はサッカー部で俺は剣道部。
部活動を決める時、サッカー部のマネージャーやればって蓮には誘われたんだけど、俺はマネージャーには興味なくて。
だから水泳部に入ろうと思ってたんどけど、先輩がめちゃめちゃ厳しいって蓮が教えてくれたから剣道部にした。

「まぁ剣道なら顔も隠れるか…。」

蓮がかなり失礼な事言ってたけど。
俺、地味顔だけど別に人様に不快感を与える程ではないからな!
蓮はチョイチョイ失礼な事を言ってくる。

例えば、俺がジャージを忘れた時だ。

「あ?お前、いつから中野になったん?」

「忘れたから借りたんだよ。」

サイズが大きい上に『中野』のネームが付いてる俺のジャージ姿を見て蓮が舌打ちした。

「デカすぎんだろ。自分のサイズ考えろや。」

「しょーがないだろ。俺は友達少ないんだよ。」

「ちょっと来い。」

そう言って蓮に連れて行かれたのは遥の所だった。

「遥、晴にジャージ貸して。」

「は?今着てるじゃん。…え、どちら様?」

「中野と申します。」

俺と遥がふざけ始めると、蓮がイライラしながら言った。

「ただでさえ鈍臭せぇ奴がそんなブカブカの着てたら事故るだろ。」

「俺は鈍臭くない!」

「はぁぁ。分かったわよ。晴、いいから大人しくこれ着な。」

遥が自分のジャージを俺に差し出す。
俺はブーブー言いながらもジャージの上を脱いだ。
まぁね、サイズは遥のでピッタリだと思うけど。
でも女子のジャージ借りてますサイズいい感じですなんて男としてはツライ。

「はぁ⁉︎」

急に蓮が声を出したのでビックリした。
何事かと見ると、その視線は俺のジャージの中…半袖の名前部分に注がれている。

「中もソイツの着てんのかよ!」

「いや、だから忘れたって言ってるじゃん!」

朝、丸ごとゴソッと玄関に置いて来たんだよ。
ってゆーか何なん?

「それ脱げ。中はオレが貸してやる。」

「何でそんな二度手間⁉︎
ってかチャイム鳴ってんじゃん!!
ごめん遥、これ借りるね!ありがと!」

「ーーねぇ、私のならいい訳?」

ダッシュする俺の背中に、遥の声が聞こえた気がした。















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