清色恋慕 〜溺れた先は異世界でした〜

月峰

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第四章

47 〜手をお離し下さい

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説明回?

──────────────

 


 智美の素っ頓狂な声に、外で待機していたのだろうタンザが部屋に入って来た。

『如何なさいました?!』

 慌てて入ってきたが、二人の様子はさほど切迫した様子では無かったので、タンザは密かに安堵する。

 智美は、思わず叫んでしまった事を恥じたが、驚いて誰かが入って来るにしても、何故タンザがなのかが分からず智美は途惑いの表情をした。
 察しのいいタンザはその様子に、にっこりと微笑んで返した。

『アル皇子より、待機するように命ぜられまして、私がおりました。それで、いったい何があったのですか?』


 そこで、智美はカイの歳を聞いて驚いて叫んでしまったと話した。

『そういえば、別盤者には魔力が無いので、歳の事は当たり前ではありませんでしたね』

 と言って、タンザは改めて説明してくれた。

 この盤園では、魔力が多いほど寿命が長く、外見の変化も10代後半から30代40位まで、殆ど変化無くゆっくりと歳を経て行くので、魔力が多い者、大概青龍の血を引く貴族だそうだが、150歳くらいが寿命で、魔力が少ない庶民でも100いくかいかないか位の寿命だそうだ。
 皇族は他の貴族よりも魔力が多いので、200歳はざらに居ると言う。

『アル皇子は歴代の皇族方の中でも魔力量が多い方なので、あの外見ですが、52歳であられます。』
『多分300位生きるんじゃ無いかって、言われてるな』

 タンザとカイの言葉に、智美は唖然と話しを聞くしか無い。
 そこでふと思ったのは、夫婦で魔力量が違いすぎたら、悲惨な事じゃ無いかと思い、口に出すとすんなり答えが帰ってきた。

『それは、婚姻の儀式をすれば大丈夫です。』
「…結婚式をすればいいと言う事ですか?」

 タンザの返答に、智美は思った事をそのまま口にするが、タンザから訂正の言葉が紡がれる。

『結婚式では無く、婚姻の儀式です。
 結婚式は対外的な公表に過ぎません。
 婚姻の儀式とは、いわゆる契約なのです。』

 タンザの説明では、婚姻と言う契約で、双方間の魔力を共有し合うと言う事で、魔力量が少ない方の寿命も引き上げる事になるらしい。だからと言って、魔力が多い方の寿命が減ると言うわけでも無いらしい。

(さすが魔法がある異世界、そこはどうにかするよね)

 タンザの説明で納得はしたが、智美は思わず遠い目になった。
 そこにカイが智美の手を取り、ボソリと言った。

『150年くらい一緒にいれるな』

 そう言って嬉しそうに手を握って来るカイに、ときめくと共に、苛立ちが募った。

 よく考えると、何も言われていないのだ、それこそ、結婚してくれも、…気持ちのことも、泉侶なのかと聞いてそうだと、俺の泉侶だと答えられただけだ。

 泉侶と言うだと思えばその時は嬉しかったが、智美からすると泉侶と言うものは、別の者に口だけでそう言うものだと説明されていただけで、泉侶なるものが、自分であると言うのがピンと来ない。
 そのためか後々考える中で、カイの俺の泉侶という言葉だけだと、だからなんだと言いたくなった。

 なし崩しに、昨日の様な事があったが、別に好きだとも言われてないし、好きだとも言ってない。
 大人なんだから態度で分かれと言う事なのか、だが、先日やっと自分は女としてみられていると、理解したところなのだ、昨日の事以前は、確かにカイの距離感はおかしいとは思っていたが、自分が運命の相手と言う雰囲気は感じられなかった。

 なのに昨日から急に、甘い雰囲気を醸し出すカイに、驚くと共に何だかいたたまれないのだ。

 自分でも矛盾しているとは思うのだが、心が納得出来てない。

 確かにカイの事が好きだし、態度に出たのかもしれない、自分から言えば良いのだと思う気もするが、カイの言葉足らずのせいで、要らぬ心配で頭を悩ましていた分、言葉にされない事は何か違うと思えてならなかった。

「カイ皇子、手をお離し下さい」

 苛立ち紛れに、智美は言葉を発した。
 その様子に、カイは怪訝な顔をしながらも、手は離さなかった。
 智美はそっと、手を引いて自分から手を離すと、身体も少し離して座り直した。

『サトミ?』

 その行動にカイは途惑いながら名を呼んでくる。

「私が貴方の泉侶と言うものなのかもしれませんが、そんな事私には…知った事ではありません」
『だが、昨日は──』
「それは!…龍泉で前後不覚になっていたので、知りません!」

 それを持ち出すか!!と心で罵りながら、智美はカイの言葉にかぶせ気味に話し出す。
 龍泉の副作用は、こちらにきた当初にジーサがあまりに心配するので、何故そんなに心配するのか問いただすと、副作用で催淫効果が出ると聞いていたので、何故ああなったのかはわかっている。
 判断力が落ちていたので、確かに好きな相手であったから抵抗はしていない。
 ただ、同意したかと言われると、流されたとしか言いようがない。

『くっ、ふぅくくく』

 そこに、声を抑えて笑う声が聞こえてきた。
 声のした方を智美が見ると、タンザが肩を震わせて笑っていた。

『す、すみませっん、
 んっくう…、はあ、おかしい』
『タンザ!』

 押し殺してはいるが、中々笑いが止まらないタンザに、カイが苛立って声を上げる。

『自業自得ですねカイ皇子、
 いくら苦手だからと言って、泉侶に言葉を惜しむから邪険にされるのです』

 タンザの言葉に、グッと怯みやはり言葉が出ないカイに、困った奴だなと言うような表情をして、タンザは言葉を繋いだ。

『カイ皇子、知識としては知っているのでしょうが、わかってませんね、泉侶の想いは男性だけなのですよ、だから伝・え・な・く・て・は・、想いは女性には分からない。
 ましてや、この盤園の事が分からない別盤者のサトミ様に、泉侶だから分かれと言うのは、無理なのですよ』





──────────
後書き

女心は複雑です。


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