清色恋慕 〜溺れた先は異世界でした〜

月峰

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第四章

46 〜何も聞いてないよ!!

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出かける前に?

──────────────

 


 すぐに【アイの泉】へ向かおうと、ミエルが話を進めようとすると、さっきまでそっぽを向いていた愛子が声を上げた。

「愛、着替えたい!!」

 その言葉に、周りの者は皆動きが止まる。

「だって、おばさんそんな綺麗な格好してるし、青龍に呼ばれたんなら、会うかも知れないんでしょ?」

 愛子の言葉に、皆が愛子の服装を見る。
 確かにいつもの普段着で、例のごとくスカート丈をたくし上げて膝上にしている。
 多分、愛子はスカート丈がどうのと言うより、智美より劣る格好をしている事が着替えたい理由の様だが、ミエルは愛子の言葉に改めて愛子の格好は青龍様の前に出すには、はしたな過ぎると思いミシェルに声を掛けた。

『分かりました、ミシェル着替えをお願いします』
『分かりました』
「えっ!」

 愛子は苦手な侍女頭のミシェルを呼ばれて、少し嫌そうな顔をした。
 ミエルはそんな様子の愛子に白けた目を向ける。
 愛子はメリルに用意させようと思ったのだろうが、メリルでは愛子に言い負かされてしまい、着替えても、はしたない格好のまま華美にするだけだろうと思い、言い負かされないミシェルに頼んだのだ。

 ミエルは呆れ、ため息が出る。
 愛子の先程の態度も皆が揃う前に、カイが結界を張って立て篭もった件でうやむやになっていた、愛子が智美を青神泉に突き飛ばした件を叱っていたのだが、最初は反抗的でどうしようもなく、呆れる程だった。
 そこに、話を聞いたジーサが少し愛子に魔法医局長として、龍泉の危険性の小言を言ったので、すっかりヘソを曲げてしまっていたのだ。

 ミエルは愛子から抗議の言葉が出る前に、話を終わりにする。

『それでは、アイコ様の支度ができ次第、私が【アイの泉】の建物前までご案内致しますので、これにてこの場はひとまず、皆様は解散とさせていただきますが、サトミ様は如何されますが?』
「それではカイ皇子に確認したい事がありますので、ここで少し話させていただければと思うのですが」

 智美はここに来て、やっと色々考えられる余裕が出て来た。
 怒涛の如く物事が進み、自分の気持ちに整理がついていない。この状態のまま【アイの泉】に行きたくはなかった。

『分かりました。
 では私達は、ご遠慮いたしましょう。』

 ミエルはそう言うと、他のものを促して部屋から出て行った。


 二人きりになり、何故か側で立っているカイ皇子を座るように智美が促すと、智美が座る長椅子の先ほどまで愛子が座っていた位置に、智美寄り添うように座った。
 近さに智美は内心焦るが、カイの様子が前と違うので、どうして良いか途惑っている。
 確かに以前からパーソナルスペースが狭いとは思っていたが、それにまして何か甘い雰囲気が醸し出されているのだ。

「あ、あの…私がカイ皇子の泉侶っていうのは、本当なの?」
『ああ、そうだ』
「本当に、本当にそうなの?」
『間違いない、サトミは俺の泉侶だ』

 智美は言われてすぐに、何も考えられない状態にあったので、その時は素直にその言葉を受け取ったが、考えられるようになってくると、だんだん疑問が増え出し猜疑心にかかりだしていた。

 あの時カイは、智美の魔力を引き受けて過ぎて、魔力酔を起こしてしまって、何か勘違いをしてしまったのかと思いだしてしまっていた。

「じゃあ何で、教えてくれなかったの?」
『…言ってなかたか?』
「!何も聞いてないよ!!」

 カイの答えに、普段の落ち着いた様子もかなぐり捨てて、智美は叫んだ。


『そうだったか?
 だがそのピアスを贈ったのだから、わかっているものだと…』
「え、これって、貸してくれただけでしょ?」
『それなら、あの挨拶はしない』

 カイの言葉に智美は疑問符だらけの顔をした。
 そんな様子の智美に、カイはそっと智美の耳にある青魔晶のピアスに触れ、耳朶もそっと擦った。
 軽く触れられて智美はビクッとすると、カイはうっとりとしたように微笑んだ。
 智美は耳に触れられて思い出す、就寝前に部屋に戻る時にされるカイの挨拶を。

(あれって、誰にでもするもんじゃないの?)

 確かに親密な行為では有るとは思っていたが、基準がわからなかった智美は、あれは皆にするものだと思っていた。


『婚約者にしか、しない』

 カイは智美の気持ちを読んだように、言葉を繋げた。

「え、婚約者?」
『あれは離れていても、ピアスを贈った者の夢を見て欲しいという事だ、夫婦なら一緒に寝るからな』

 智美は、カイの説明に唖然とする。

(あれって初日からしてたよね、最初からって事!?)

「だって、貸し出しなんだと思ってたし…」
『そんな事、言った覚えは無いが』

 そう言われて智美は思い出す、愛子の持っている水晶が貸し出しだったから、これもそうだと思ったんだった。

「…私が、泉侶だなんて、言われなきゃわから無いよ…」

 智美は呆然と、呟くように言った。
 その言葉にカイは耳に置いていた手で、智美の頬を触る。

『分からない?』
「分からないよ!
 が、こんなデブの歳上の女なわけないじゃ無い」
『?俺は抱き心地が良いが』

 カイの言葉に、智美はキッと睨む。
 その瞳すら愛おしそうにカイは見て、言ったセリフに智美は素っ頓狂な叫び声を上げることになる。

『それに俺は48だ、サトミは年上じゃ無い』






──────────────
後書き

ただ今、伏線回収中

あ、わざと皇子を王子で表記しています。
んー【白馬に乗った王子様】というテンプレ
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