清色恋慕 〜溺れた先は異世界でした〜

月峰

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第一章

13 〜一体何なの恥ずかしすぎるでしょう!

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 そうこうするうちに、料理が運ばれてきた。
料理を置く前に、カテトラリーを並べられる、なんとこの国では、フォークの代わりに箸が使われているというか、箸使いのほかに、ナイフとスプーンがあるようなものか、最初にナイフを使って、食べやすい様に切り分けてから、箸を使いスープ類の時に左手でスプーンを使う。

 先ほど見た向かいの部屋の食堂では、木製のワンプレート皿みたいなのを使っていたのだが 、こちらではきちんとしたガラス製の食器で出された。
次つぎに置かれていく皿の大きさにめまいがしそうだ。

 男性陣には全長40センチはあるかと思う魚丸ごと一匹に餡がかけられ、根野菜のあえ物は、サラダボウルですかと言うでかい器に入り、スープはこれまた深鉢のラーメンどんぶりのようなものに、具がたくさん入った麦雑炊。
これらが、一人ひとりに提供されている。後で聞いたら雑炊ではなく、炊いた麦にスープをかけているものだった。

 女性用と言って注文された智美の皿は、魚は半身(30センチぐらい)で、男性用のお茶碗ぐらいの器のあえ物に、丼ぶり鉢のような大きさのスープにはゴロゴロとでかい肉が入っている。それとは別に、直径30センチくらいの丸パンが1、5センチくらいの厚みにスライスされて出てきた。もちろん一人につきパンも一個だ。

「うわ!愛こんなに食べないよ!」

 愛子も、量の多さにそう叫ぶ。

 智美は魚の皿を持ってジーサに話しかけた。

「あの、ジーサさんこれ良かったら食べていただけませんか」

 手を着けず、丸ごと差し出された皿を見てジーサは軽く言った。

『魚嫌いなの?ふっくらやわらかくて、おいしいよ』

「いえ、おいしそうですが、手を付けた物を人に差し上げるのはちょっと。」

『構わないのに、一口あじみさせてあげるよ』

 そう言いながら、ジーサが皿を受け取ろうとすると、横からさっと取り上げられた。

 え、っと思って、取り上げられた方を見ると、カイ皇子がジーサをにらむように見ていた。

『俺が食べる』

「え、あ、どうぞ」

 さっそく箸をつけるカイ皇子を智美は呆然と見ていると、一口摘んで顔の前に差し出された。何事かと目を瞬かせて箸先を見詰める。その後ろではジーサが肩を震わして声を殺して笑っていた。

『味見』

(なんですと!人前であーんをしろと!!)

 戸惑う智美をじっと見ながらカイ皇子は智美の口元に差し出したままでいる。

「いえ、あの、それはちょっと…」

 と言いながら後ずさりをする様に体を引くが、さらに差し出されて、智美は仕方がなくまわりの視線を痛いと思いながら差し出された魚を口にした。

 いくら智美が顔色に出ないとはいえ、恥ずかしいことには変わりわない、目を伏せ目がちにして味わって、「おいしいです。」と智美がつぶやくと、カイ皇子はその様子に満足そうな顔をして、残りの魚を自分で食べ始めた。

(一体何なの恥ずかしすぎるでしょう!)

 頭のなかでそう文句を言いながら、和え物の野菜を、パクパクとくちにほうりこんで食べる。半分ぐらいたべたあと、はっとパンがあったことを思い出す。

 端の一切れを取ってみると、それはとても固いパンで手でちぎれそうもない。齧って食べていいものなのかどうなのか、と周りを見るがパンを頼んだ愛子は手も付けていないので、参考にならず手にとってしまったからにはどうしたら、もしかして素手で取るのもどうなんだろうと焦り始めた。

『スープに浸して食べるんだ』

 カイ皇子がそう言って、パンの中ほどのにスライスされてる物を手にとり、ある程度千切って智美のスープの中に入れる。

『端のパンは固くてちぎれない。そのまま浸して具をすくいながら食べてもいい』

 手にしているパンを見て、カイ皇子はそう言うともう片方のパンの端を取って、自分のスープ雑炊に入れて、肉をすくい上げた。
そして、肉と一緒にパンに噛り付いて見せる。

 その様子を見て、智美は昨夜の夕飯の様子を思い出す。

 智美が食べ方が分からなくて、皇子の食べ方を見てから食べてるのに皇子が気付いた時、皇子はわざと見える様に食べてくれたし、智美が食べ始めるまでは、新しい料理には手をつけないでくれた。
昨日は取り立ててこまる料理は無かったけど、パンは無かったので戸惑ったのだ。
よく考えてみれば聞けばいいことだ、けれど誰もが知っている一般的常識を改めて聞くという事は、かなりの精神的ダメージを受ける。

 聞かなければ知らない事を聞く事は智美は何ら抵抗は無い、だから、この国の事を教えてもらっている時は、分からなければ聞くし質問する。
聞かれること自体が不思議な常識的事だと、相手は改まって教えては来ない。教えなければいけないと言う意識が無いからだ。

 もお、31ともなれば一般常識を聞く事などさらさら無い。知ってて当たり前の年だ。
 いろいろ聞く事に抵抗が無いと智美は思ってただけに、改めていわゆる躾と言われるところは聞くのが恥ずかしいという事に、気付かされて実は密かにダメージを受けていた。



──────────
後書き

智美は食事の作法はきっちりしつけられたので、真面目なのも相まって、うざいくらいに細かいです。(人には強要しませんが)
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