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第一章
10 〜ええと、質問してもいいですか?
しおりを挟むまだまだ続く説明回
──────────
「ええと、質問してもいいですか?」
智美の言葉にミエルは目で促す。
「昨日の話しと今の話方からすると、青龍様は、実在して今なお生きていて、お話できると言うことですか?」
『ええ、青神泉へ入れれば、直接お会いして、お言葉をもらえますよ。
ただ、今のところ青龍様は女神様の御許へ参られておりますので、青神泉におられません。それからあの場所へは皇族と、許可が下りている青泉使セイセンシしか入れませんが』
「あ、その青泉使とは何なんです」
智美の問いにきょとんとしていたミエルは、ハッと気付いたように目を見張る。
『…青泉使とは青神泉に使える者の事です』
「青龍様に使えてるということですか?」
智美の問い返しに、ミエルは言いよどむ。
『そうとも言えますが、それだけでもないのです。
そうですね、サトミ様の盤園には魔法はないのですよね』
ミエルの困ったような顔で聞くので、智美は肯定の意を示す。
『青龍様の住まう青神泉は青龍様の力、魔力そのものです、地下深くから湧き出ているその水にはとても強い力が籠っております。
女神様の住まう白山より引き出されているのかはたまた、青龍様がおわすことにより力を得ているのか、それは青龍様にも分からないようです』
「女神に聞けばいいんじゃないの?」
愛子がこともなげに言う。
ミエルと智美で話していたので、智美はちゃんと聞いていたのかと思う。
『女神様とは直接お話しできませんし、その存在にかかわる事すらできません。
女神さまの御意思を受けるのは青龍様…泉神獣様だけです』
ミエルの言葉に、自分で言っておいて愛子は興味なさげだ。
『この盤園のものは、生まれたときに持って生まれた魔力があります。人に限らず生命のあるものには大小の差はあれど、魔力を宿しており、例外は宝石に魔力があることでしょうか、こちらは少し理が違っていて、色による魔力のようなのですが。
とにかく、青神泉の水は魔力そのものとして使うことも出来ますが、体内に取り入れたりすることにより、持って生まれた魔力をより活性化させ増やすことはできませんが、精錬させる事が出来ます』
(燃料としては、石油みたいなもの?かな)
智美はそう思いながらも、つい言葉にしてしまう。
「飲めば、滋養強壮の効果があるみたいなことなのかな」
智美のつぶやきにミエルは言葉を探す。
『そういった効果もありますが…。説明するのが難しいですね。
青龍様は女神さまの思し召しに答え、泉の力を、地下水脈などで青国全土に行き渡るようにしましたが、遠くなればなるほど、力が薄まってしまい、全土に均等にというわけにはいきませんでした。
その事に、愁いを感じた龍妃さまは、アイの泉より全土へ泉の力が届くよう、言祝ぎの魔法を施してくださいました。
その魔法は全土に47か所あり今機能しているところは45か所、それぞれに、青龍様と龍妃様のご血筋の方が受け継がれておりますが、龍の血が入っていてもそれでも人の子ですから、独占したりしないように、青泉使のみが、泉の水を直接扱えるようにしたのです』
(あ、ここにつながるのか、青泉使って)
智美はメモに端的に言葉を記入する。後でまとめて書くしかないなあと思いつつ、ふと疑問に思う。
「なぜ、青神泉から直接じゃなくて、アイの泉からなんですか?っていうか、アイの泉って何?」
『アイの泉は青龍様が龍妃様のために作られた泉なので、青龍様は仕方なしにお許しになられたようです。
アイの泉は青神泉と地下でつながっているようなのですが、地下水脈ともつながっているようで、青神泉の龍泉ほどの魔力は有りませんが、それでも強い力を有しております』
一度にいろいろ聞いたので、智美は頭の中がいっぱいいっぱいになっているのを感じた。
謎が多すぎて、いろいろ聞きたいが、頭が情報を覚えることを拒否しつつあるし混乱している。
「へえ、奥さんのために作ったんだ!じゃやっぱ愛の泉だよね!それって、どこにあるの見てみたーい」
どうやら愛子は、自分の興味のあるところしか聞いていないようだ、そんなのんきな言葉に、智美も見てみたいと思う。
『アイの泉は城の頂にありますが、あそこの建物は女性皇族か、女性の青泉使しか入れないので、私ではご案内できないのですが、…【清き乙女】ならば入ることが出来るとは思いわれますが──』
ミエルが何か考えるように言葉をつなぐ。
城の頂きって変な言い方だなあと思いながら、智美は瑣末な事まで気にしているとキリがないので、そこは流すことにする。
「自分に関係のある場所なら見てみたいですね、それと、私たちは青神泉から来たと言われましたが、私は気絶していたので、一度見てみたいのですが。」
智美の申し出に、考え事をしていたミエルがはっとしたように答える。
『見てみたいのですか?青神泉から参られたのですから、入れるとは思うのですが、一応アイの泉の方ともども、アル皇子にお伺いを立ててみます』
そう言うと、ミエルは壁に掛けてある不思議なガラス細工の皿のようなものに目を向ける。後で教えてもらうのだが、どうやらそれは時計だった。
『もうそろそろ、お昼ですね、城内を案内がてら食堂へ行きましょう』
「え、食堂…食堂があるの?」
ミエルから思いもよらない言葉が出てきて、おもわっず智美は聞いてしまった。
『サトミ様はまだ行かれておりませんでしたか』
「えっと、昨日はカイ皇子と、大広間みたいなところで食べて、朝は与えられている自室で食べました」
智美は昨日の夕食の時を思い出す。あまりしゃべらないカイ皇子に、いたたまれない思いの智美は料理についてあれやこれや質問したが、返事はしてくれるが、そこから会話を弾ませる気はないのか、カイ皇子は黙々と食べている。
優雅な食べ方ではあったが、大量に消費されていく料理を唖然と見ていた。
「ふーん、愛子は夕飯はアル皇子と個室で食べたよ。朝は食べないし~」
愛子が対抗意識を持ったのか、そんなことを言ってくる。
その言葉に、呆れたようにミエルは言った。
『私と、タンザもいたしほかにも何名かいたでしょう。
個室と言っても、皇族と高官が使う部屋です。サトミ様の方はたぶん貴賓が来た時に使う食堂だと思います』
そうミエルは答えながら、カイ皇子の行動を仕方なく思う。
昨夜タンザから聞いた話では、サトミ様は疲れているから、自室で食べるとの事だった。カイ皇子も自室で食べると聞いていたので、カイ皇子が自室で?と少し疑問に思ったがさほど拘らなかった。
たぶん、二人っきりになりたかったんだろうなとは思うが、サトミ様に説明しないのはどうかっと思う。と言っても給仕が居たろうから、まるっきり二人っきりではないのだろうが。
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