清色恋慕 〜溺れた先は異世界でした〜

月峰

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第一章

9 〜何年ぶりだろうと思う

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説明回です。

──────────



『この盤園 バンゾノは、創造主たる女神により、盤の海に、陸を作り女神が住まう白山を中央に置き山の麓に東に青神泉セイシンセンのある国、南に赤神泉セキシンセンの国、西に黄神泉オウシンセンを作り、互いに行き来ができぬ様に、国との間には、氷山や樹海、砂漠や岩山の人が入り込めない地を作り、行きできない様にされました。三国の泉の色が違うことにこの盤園を彩三サイミ盤園と呼ばれています』


 ミエルの声が滔々と聞こえる。

 智美はこんな、授業の様な事をしたのは、何年ぶりだろうと思う。

 朝起きて、一人で朝食を食べている時に、ミエル様よりの言伝で、朝食が食べ終わったら、昨日の部屋へ来て欲しいと言われ、大量の朝食に困っていた智美は、残す事の断りを入れて、席を立った。

 智美はどちらかといえば食べる方なのだが、それでも入るか!!というほどの量を出され慄く、昨日も何故かカイ皇子と食べたが、その量に唖然とする。
男性と、女性の違いも有るのかもしれないが、後で確認をしようと思う。



『神の力を泉により、国土へ与へその地に住まう者達を繁栄させ、彩色の力を与へ管理させるために、三つの泉にそれぞれに神獣を住まわせられました。

 我が国、青神泉には青龍様、赤神泉には朱雀様、西神泉に白眉虎ハクビコ様。』

「白眉虎?」

 聞きなれない神獣に、智美はおもわず声に出してしまった。

『何か疑問でも?』

 その声にミエルが反応して問い返す。

「青龍…様、朱雀様はわかるけど、白眉虎様は何のことかわかりません。白虎なら、分かりますけど」

 智美は元の世界の四神獣を思い浮かべる。

『白虎とは、白い虎ということでしょうか?』

「ええまあ、白い虎ですかね?私の世界では、西の方位を護る神獣として描かれてました」

『白眉虎様は、確かに西に位置する国の神獣ですが、金色の毛並みに、白い縞柄で、虹色の一本角をお持ちだそうです。
私はお会いした事はありませんが、青龍様よりそうお聞きしております』

 ミエルの言葉を、気になる文だけ、手元の紙に書き留める。

 この部屋へ通されて、こちらの世界の事を話してくれると言われ、ミエルが、いきなり話だそうとしたので、覚えていられないだろうと思った智美は、何か書き留める物と、書くものをもらえないかと言うと、ひとまず机にあった紙と、ミエルが携帯していた万年筆を渡された。万年筆があるんだと驚いた。

 一緒にいた愛子はと言うと、聞いただけで覚えて居られるのか、はたまた覚えている気がないのか、特に何もいらないと、横でただ座って聞いている。

『先ほども言いましたが、女神の思し召しで、他国との交流はほぼありません。ここ、100年程前から航海での流通で、赤国との交流が始まりましたが、其れもまだ頻繁では無く、黄国とは未だやり取りも有りません。
女神の身元に参られる、泉獣様方はお会い出来る様なので、この国での他国の話はほとんど青龍様よりの聞き伝えになります。
それより、この国、青国の話をいたしましょう』

 ミエルはついうっかり、話が横道に逸れた事を気にして、慌てて本来の話したかった筋に戻す。

『この、青国は青龍様の住まう青神泉を敬い奉っております。そしてその青龍様と青龍様の唯一無二の存在であられた別盤から来られたお妃様は、始りの妃とも龍妃様と呼ばれ今はお亡くなりになっております。青龍様と龍妃様の直系の血筋を受け継ぐ方々が、青国皇族であられます。

 現皇様はサシュベナジュール・セイ・ソルデ・セイコク様

 皇妃様はメリベミナシュア・セイ・ラソルデ・セイコク様

 そのお子様たちは3人で、

 第一皇子のアルべシャール・セイ・ラソルデ・セイコク様

 第二皇子 カイゼジャール・セイ・ラソルデ・セイコク様

 第一皇女ミナシュアジゼル・ミ・ラソルデ・セイリュベラ様

 第一皇子のアル皇子には──』

「わー、ちょっと待ってください、早くて書ききれない」

 すらすらと、人の名前を言っていくミエルに、カタカナの名前が覚えられない、智美は待ったをかけた。

「えー、アル王子には何なの?」

 先ほどまで、興味を示してなかった愛子が、皇族の話になったとたんに興味を示して先を乞う。

 智美はひとまず名前だけを書き終わり、ミエルに目を向けると、ミエルは続きを話し出した。

『アル皇子には、泉侶のカシナリュベス・セイ・ラソルデ・セイコク様がおり、お子にアルメリセス姫様がおられます』

「えー!、妻子持ちだったの!!アル王子。見えなーい。
ねえ、王様とか王子様は側室とかいないの?」

 ミエルの言葉に、愛子が即座に反応して話し出す。

 泉侶って何だろうと思った智美だが、愛子の勢いに口が挿めなかった。

『この国では一夫一婦制です。富裕層の方々は妾を囲ってらっしゃる方もいるみたいですが、泉侶もちともなれば、妾、側室など考えもしませんでしょうね』

「えー、つまんなーい」

 愛子の物言いに、ミエルは不快な思いを示すが、そんなことはお構いなく話を続ける。

『第二皇子カイ皇子は、…独身ですが、泉侶となられる方がおります』

 第二皇子は独身、泉侶?伴侶かな、婚約者有りとメモしていて下を向いていた智美は、ミエルが続きを話さないので顔を上げると、何か言いたそうにしていたが、智美から目を反らして、話し出した。

『第一皇女ミナシュア様は、ミ・ソルデ公に嫁がれましたので、今は、南方のカジュベナーサにおられます』



──────────

後書き

ミエルが、何か言いたそうなのは、智美がカイ皇子の泉侶と言うことを聞いて無いのだろうか?と疑問に思っているから、ミエルから言わないのは、泉侶の事は他人が話すのはタブーだからです。


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