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第一章
4 〜この私が、異世界トリップとは…
しおりを挟む(この私が、異世界トリップとは…)
何だかよくわからないまま、前に座る人物の話を聞く限り、ここは異世界らしい。
いきなり言われたらまず信じなかっただろうが、先ほど見たイリュージョンやピアスを付けた途端に、会話ができる様になった事などを感じる限りいわゆる不思議な力…魔法と言われる物が存在するファンタジーな世界なのだと信じるしかなかった。
だって、会話が出来る様になったと言っても、相手が日本語を話し出したのではない。初め相手の言っている事が全く聞き取れなかったし、もちろん意味も分からなかったが、今は聞き取れないのにもかかわらず、何を言っているのかがわかるのだ。
ただ、よくわからない単語が出てくるので、聞き返したいのを我慢して話を聞く、じゃないと話が進まないからだ。両方側の自己紹介をした後、最初に『君たちは別盤ベツバンからここ彩三盤園の青国、女神の思し召しで来たと思われる。』と言われ”ベツバン”と言われ頭に”別盤”と浮かんだ。聞いたことの無い単語でも、漢字が分かれば何と無く意味がわかる。そのあと、いくつか基本的な質問をされて答えたけど、頭に入って来ない。
(ネット小説読みすぎかな…それとも、私が知らないだけで、乙女ゲームの中なのかな…)
智美が何故そう思ったかというと目の前にいる人物たちが、揃いも揃って美形だったからだろう。
目の前に居る男性が、金髪碧眼20歳半ばに見える青国第一皇子アル皇子、いかにも好青年と言った整った顔立ち、その右隣に座るのは先ほど智美にピアスを付けた彼で、青味がかったチャコールグレーの髪に碧眼な、第二皇子のカイ皇子、兄弟というだけあって似ているが、こちらは気持ちつり目で、少し冷たい印象が混じる。弟と言うが見た目はカイ皇子のが数歳年上の20代後半に見える。
皇子たちの椅子の後ろに控えるのは、第一皇子の補佐官のタンザ、ダークグリーンの髪に焦げ茶色の瞳、年は30代半ばくらい。
挟みあって座っているテーブルの、いわゆるお誕生日席に座るのが、青泉使総代のミエル、プラチナブロンドのロングヘアーに紫色の瞳で女顔はいかにもゲームキャラでいそうだ。額に青い鱗の様な石の様な物を付けている。年は全く分からない、顔だけ見れば若そうなのだが、話し方や物腰は落ち着いていて、智美には年が読めない。
最後にタンザの横に立つ、魔法医局長のジーサ、ペールブルーの髪に琥珀色の瞳は、顔は野生的な美青年だが、何と無く少年ぽさが残っていて 10代に見える。
みな総じて背が高く高い者は2メートル以上はあるだろうか、ちなみに髪の長さは青泉使総代のミエル以外はみな短髪だ。本当はみんなもっと長い名前なのだが、カタカナの名前がおぼられない智美は、みな愛称で呼んでいるのでそれどまりだ。
この場にいる、もう一人の人物は、智美が名前を答えるのに被せる様にして自己紹介をして来た、智美を巻きぞえに落ちた女性は、
「はいはーい!愛は手塚愛子てづか あいこ、JKの17 歳!!愛ちゃんってよんでね。」
と全員の注目を得ようと、余計な年齢まで言って来た。
「…私は、門野智美、会社員で…31歳です。」
(JKが分かるかなOLじゃ通じないよね?しかし、さっきから何なんだこいつ、ケンカ売ってるのか?)
智美は思った事を顔に出さず31で大人であると主張してみる。
(人の名前はカタカナで聞こえるので、どうやら日本語の発音に一番近い音で聞こえるみたいだ。)
ここまで外見の観察ができたのは、話し出す前に、どこに座るかで愛子が補佐官ともめたからだ。第一皇子の空いている隣の椅子に座ろうとして、たしなめられ、空気を読まずにごねるが、今は皇子のローテーブルを挟んだ向い側の長椅子に智美と一緒に座っている。
(礼儀がなってないな、若そうとおもったら案の定高校生ですか、そうですか、ゲームだったらこいつがヒロインだろうな…それにしては面子が少し年上すぎるか…そう見えるだけで、若かったりしてなあ…ダメだ!現実逃避してるよお!!ねえ、本当に夢じゃないんですか?)
夢じゃないのはわかってる、さっきピアスをつけるとき、痛いって感覚があったし、目が覚めたっと思った後からの状況に、夢特有の支離滅裂さがないからだ。
遠い目をしていたからだろうか、第二皇子が先ほどの微笑みを全く感じさせない真顔で智美を見ていた。
智美は目をそらす様に動揺を隠して、第一皇子に話しだす。
「えーと、海に落ちたのに、こちら側では青神泉セイシンセン青神泉という女神の山の麓にある青龍様が守る泉で溺れていたのを引き上げられて、私たちのどちらかが、その、あいの泉の言の葉の御加護を、かけ治せる別盤別盤から来る【清き乙女】で、こちらの世界、えーと彩三盤園の神?女神?が呼び寄せたという事?」
何かの間違いなんじゃあと思いながら、そうまとめて話すと、それまで黙っていた愛子がうっとりとした目で話し出した。
「あいの泉って、愛のって事じゃない。じゃあ、愛が乙女なんじゃない。…清き乙女なんて事はねえ。」
最後は智美をチラリと見て、31のおばさんが乙女と言うのはおかしいという風で言った。
(お前の名前は、愛子だろう。子はどうした子は)
智美は心の中で、そうつっこんだ。
若さ特有の傲慢さなのか、愛子身の性格なのか、自分本位な持論を語る愛子を、周りの男性方は微妙な顔で聞いていた。
智美は、なんかめんどくさいのと気恥ずかしいのとで、余計な事は言わないが、甲板で痴話喧嘩してた愛子より、智美は自分のが清き乙女だろうと思う。
31のおばさんだが、彼氏いない歴=年齢の処女だからである。
(痴話喧嘩のせいで、そうは見えないけど、こいつが清くないとは言い切れないし、17歳と31歳じゃどうしたって、17歳の方だろう乙女って…31歳で処女ってイタイいイタすぎる言いたくない。だいたい、清きって何にかかるんだよ、処女のこととは限らないし。)
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