赤箱

夢幻成人

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箱隠しの章

平穏

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 四人で掃除をするには、化学室と化学準備室は広すぎる。

だけど、午後の授業が、まるまるなくなるから、

けっきょく、四人でちょうどいい感じになる。

笹川たちと、化学室に一緒に向かう最中に、

どこから掃除をするかを話していた。

最初は、化学室からの掃除をすることになった。

できれば、掃除などせずに笹川と、もっと距離を縮めたかったが、

笹川は、鈴木と楽しそうに会話をしている。

こっちの男子は、藤宮だから、盛り上がる話をするとしたら、

どうしても、オカルトの話になってしまう。

「はぁ…」

良太は、小さくため息をついて、化学室に向かった。

 
 
 鈴木がいると、とにかくうるさかった。

うるさいというか、よくしゃべるやつだな。と、

良太は、なかば感心していた。

話す内容は、恋話が中心だが、自分の事ではなく、

周りの女子たちの話ばかりだ。

良太は黙々と窓を拭いてると、鈴木が笹川に聞いている。

「心ちゃんは、彼氏いるの?」

聞く気はなかったが、聞き耳を立てずには、いられない内容だ。

ゴクッ!!

一瞬、緊張してしまい唾を飲み込んでしまった。

「私、彼氏いないよぉ」

「えぇーー。何で?心ちゃん、絶対もてるのに」

「じゃぁ、じゃぁ、好きな人は?」

鈴木は立て続けに、笹川を質問攻めにする。

「好きな人かは、わからないけど?」

「うん、うん」

「でも、ここじゃ言えない」

「えぇー!!どうして?どうして?」

「だって、杉山君と藤宮君がいるじゃん」

笹川は小声で鈴木に伝えるが、

化学室には俺を含めて、四人しかいない。

話してるのは、笹川たちだけだから、

集中してれば、小声でも聞こえてくる。

次の窓に移ろうと気づかないふりをして、振り向いてみた。

笹川と、目が合ってしまった。

目が見開いて、顔が赤くなっている笹川。

まさか、本当に笹川は、俺の事を好きになっているのか?

「杉山君、今の話、聞こえてたりした?」

「何か、しゃべってたの?」

「ううん、聞こえなかったら、良いんだ」

教室にいる時は普通なのに、ここでは、

かなり、挙動不審になっている。

「心ちゃん、そこ、掃除したところだよ?!」

「えっ?えっ?そうだっけ?」

「そうだよ、心ちゃんって、結構ドジだね!」

悪気もなく、鈴木は笹川をいじるが、

(鈴木…その原因は、きっと、おまえだぞ)

良太は、そんな事を思いながら、窓を拭き続ける。

「ところで、新奈ちゃんは好きな人いないの?」

「いるよ!!」

鈴木は即答する。

(マジか…)

鈴木の即答に、良太は耳を疑った。

さらに集中する良太。

「私ね、関君の事が好きなの」

「ちょっと、新奈ちゃん、声が大きいよ」

「えっ?そおぉ?」

鈴木は、自分では小声で話してるつもりだろうけど、

はっきりと聞こえた。

(うそだろ…聞き間違えではないよな…)

一瞬、耳を疑った。

 
 
 良太の頭では目まぐるしいほど、体育倉庫での出来事が思い出された。

俺は、関の赤い箱を体育倉庫で見つけた。

その箱には鈴木の名前が書いてあり、俺は自分の保身のために、

ビリビリに破いて、家のごみ箱に捨てた

なのに、鈴木は関の事が好き?

赤い箱は、中身を見られると効果がなくなるのでは?

良太は必死に頭で整理しようとするが、どうしていいのか、

いっこうに整理がつかない。

いつから、好きなんだ?

言葉が頭をさえぎった。

そこが重要だ…

つい最近なのか…

そうだとしたら、赤い箱の効果と因果関係が、

わかるかもしれない。

「…山君、ねぇ、杉山君ってば」

はっ、として声の方に振り返った。

笹川が、困惑した顔で、自分のことを呼んでいた。

「何か考え事でもしてたの?」

「いや、別にたいしたことじゃないよ」

「そうなんだ?!」

「それより、何か用事あったんじゃないの?」

「あっ、そうそう、化学室も後少しだから、準備室の方掃除しない」

「鈴木とじゃないのか?」

「新奈ちゃんは、かび臭いから入りたくないって」

鈴木の方を見ると、鈴木は楽しそうにホウキで床を掃いていた。

「鈴木さん、もう少し真面目にやってくださいよ」

藤宮が鈴木にたいして、憤慨しているが、

鈴木は知らん顔で、掃き続けている。

「大丈夫かな…あの二人に後を任せて…」

「きっと、大丈夫だよ」

笹川は、鈴木と藤宮のやりとりを見ても、心配してなさそうな顔だ。

俺は笹川と準備室を掃除する事に決めて、二人で化学室をあとにした。

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