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箱隠しの章
失態
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「おっはよう!!」
ご機嫌なまでに教室に入ると見慣れたクラスメイトが
こちらを向いて
「おっす、杉山!!」
「良太、おはよう」
と返してくれる。
良太はクラスに自分が馴染めているのか疑問に思っていた。
だが、無難にすごすのが得策だと自分に言い聞かせて、
クラスでは出来るだけ明るく振舞うように努めている。
「うぃーす!!」
足取りが重く遅れて入ってきたのは慎也だった。
さっきのバスの件をまだ引きずってるのであろう
挨拶に全然覇気が無い。
クラスの皆もそれに気づいたのか
いち早く女子たちが心配そうに
「おはよう、上田君。どうしたの?体調悪いの?」
と心配そうに声をかけてきている。
最初は良太も
(おぃ、慎也・・・筋肉鍛えなくても、お前は十分モテてるじゃないか!!)
とは内心思ったが、
勝者の余裕として、今、一時の幸せを味わうと良い
と想像を膨らませていたら、途端に顔の筋肉が緩んで
今にも笑い出しそうなのを必死にこらえる事しか出来なかった。
そんな隙を突くが如く、
「おはよう、杉山君」
と声をかけられた。
「おっ・・・おは、おはよう」
慎也に群がる女子達に気を取られて、笹川の存在を一時、忘れていた。
しかも、不意に声をかけられた事で挙動不審な挨拶を
返してしまった自分がどれだけバツが悪かったか笹川は知る由もない。
「どうしたの?」
不思議そうに自分の顔見る笹川・・・
(やめろぉ、そんなに俺をまじまじと見ないでくれ!!)
良太の心臓は100メートル走を全力で走った時よりも
強く鼓動が鳴らし続けていた。
「いや、大丈夫だよ。急に声をかけられてびっくりしちゃった」
平常心を装い、なんとか返答する良太であったが・・・
手は既に汗ばんで、何を話していいのかわからなくなるほど
頭は混乱状態に陥っていた。
状況が一変したのは、関が教室に入って来た時の事であった。
「おはよう・・・あれっ?何で皆、慎也に群がってるんだ?」
「あっ、関君おはよう。上田君、体調悪いみたいなんだけど・・・」
「???」
一瞬、関は何を言ってるんだこの人達はと思うような顔した後に
「バスの中では普通に元気だったぞ・・・」
「あっ、バスの中で良太に負けたのが悔しくて元気ないんじゃないか?」
と関は慎也を取り囲んでる女子達に告げたのであった。
「えっ?何?何?それ何なの?」
と女子達の視線は一気に関の方に向いたのである。
その言葉を聞いて、良太はふと我に返り、
話を遮ろうとしたが既に時は遅く
「あぁ、いつもバスの停まるボタンを誰が早く押せるか勝負してるんだよ」
と自慢げに話し始めた関であった。
だが、関は予想していなかった。
「アハハハハハ!!」
「可笑しいそんな小学生じみた遊びで暗い顔してたの?」
「ちょっと、笑ったら可愛そうよ」
「えぇ、でも今笑うの必死にこらえてるでしょ?アハハハハ」
「ぷっぷっ、アハハハハ」
笑いを必死に堪えてた女子達も次々と笑い始めた。
慎也を囲んだ女子達から一斉に笑われ始め
関は照れくさそうに頭を掻いている。
しかし、被害を被ったのは慎也と良太であった。
関の何気ない一言で、今この瞬間、
神鳴高校三馬鹿トリオが爆誕したのである。
(おぃ、関ぃ・・・・お前なんて事をしてくれたんだ!!
お前が空気読むのが上手くても、今のは無しだろ!!
慎也までならいざ知らず、そこで俺の名前をだすか普通?!
しかも、よりにもよって笹川の目の前で・・・・)
「はぁ、そうそう、その小学生程度の
遊びで良太に今日で3連敗中なのよ」
「だから俺は絶賛、超絶凹みモードよ」
と慎也が元気の無い言葉を吐きだした。
それを聞いた女子達は
「上田君、笑いすぎてごめんね。」
と、慎也に対して次々と謝りだす。
関は自分が悪いことをしたのだと自覚が持てた様で
(すまん!!)
とばかりに良太と慎也に拝み手をしている。
(関の奴、覚えとけよ
いつか同じ様な目に遭わせてやる)
と良太は心の中で思ったのも束の間、
女子達からの追撃があるのではないかと、無性に心配し始めたが
その時には、慎也の言葉で場の空気が変わり、いつものクラスへと戻っていた。
しかし、笹川に対しては状況は何も変わっていない。
今、振り返るのが怖くて出来ない自分がいる。
顔のぞかれた時より鼓動は早く、
気を抜けば気絶するんじゃないかとさえ思えた。
「杉山君?」
「うん。」
一体、何を言われるのか想像すら出来ない。
(神様がいるなら今日のバスの勝ちは譲りますから、時間を戻してください)
と頭が勝手に拝み始める。
「朝から遊べる友達がいて羨ましいね」
予想しない言葉が出てきた。
「えっ?それっ・・・・」
キーンーコーンカーンコーン・・・・
「あっ、朝会始まるね。席に戻らないと」
聞き返そうとした時に朝のチャイムが鳴り、
笹川は急いで席へと戻っていた。
今まで以上に笹川に興味を持ち、
もっと知りたいと思う気持ちを押し殺して
良太も席へと向かっていった。
ご機嫌なまでに教室に入ると見慣れたクラスメイトが
こちらを向いて
「おっす、杉山!!」
「良太、おはよう」
と返してくれる。
良太はクラスに自分が馴染めているのか疑問に思っていた。
だが、無難にすごすのが得策だと自分に言い聞かせて、
クラスでは出来るだけ明るく振舞うように努めている。
「うぃーす!!」
足取りが重く遅れて入ってきたのは慎也だった。
さっきのバスの件をまだ引きずってるのであろう
挨拶に全然覇気が無い。
クラスの皆もそれに気づいたのか
いち早く女子たちが心配そうに
「おはよう、上田君。どうしたの?体調悪いの?」
と心配そうに声をかけてきている。
最初は良太も
(おぃ、慎也・・・筋肉鍛えなくても、お前は十分モテてるじゃないか!!)
とは内心思ったが、
勝者の余裕として、今、一時の幸せを味わうと良い
と想像を膨らませていたら、途端に顔の筋肉が緩んで
今にも笑い出しそうなのを必死にこらえる事しか出来なかった。
そんな隙を突くが如く、
「おはよう、杉山君」
と声をかけられた。
「おっ・・・おは、おはよう」
慎也に群がる女子達に気を取られて、笹川の存在を一時、忘れていた。
しかも、不意に声をかけられた事で挙動不審な挨拶を
返してしまった自分がどれだけバツが悪かったか笹川は知る由もない。
「どうしたの?」
不思議そうに自分の顔見る笹川・・・
(やめろぉ、そんなに俺をまじまじと見ないでくれ!!)
良太の心臓は100メートル走を全力で走った時よりも
強く鼓動が鳴らし続けていた。
「いや、大丈夫だよ。急に声をかけられてびっくりしちゃった」
平常心を装い、なんとか返答する良太であったが・・・
手は既に汗ばんで、何を話していいのかわからなくなるほど
頭は混乱状態に陥っていた。
状況が一変したのは、関が教室に入って来た時の事であった。
「おはよう・・・あれっ?何で皆、慎也に群がってるんだ?」
「あっ、関君おはよう。上田君、体調悪いみたいなんだけど・・・」
「???」
一瞬、関は何を言ってるんだこの人達はと思うような顔した後に
「バスの中では普通に元気だったぞ・・・」
「あっ、バスの中で良太に負けたのが悔しくて元気ないんじゃないか?」
と関は慎也を取り囲んでる女子達に告げたのであった。
「えっ?何?何?それ何なの?」
と女子達の視線は一気に関の方に向いたのである。
その言葉を聞いて、良太はふと我に返り、
話を遮ろうとしたが既に時は遅く
「あぁ、いつもバスの停まるボタンを誰が早く押せるか勝負してるんだよ」
と自慢げに話し始めた関であった。
だが、関は予想していなかった。
「アハハハハハ!!」
「可笑しいそんな小学生じみた遊びで暗い顔してたの?」
「ちょっと、笑ったら可愛そうよ」
「えぇ、でも今笑うの必死にこらえてるでしょ?アハハハハ」
「ぷっぷっ、アハハハハ」
笑いを必死に堪えてた女子達も次々と笑い始めた。
慎也を囲んだ女子達から一斉に笑われ始め
関は照れくさそうに頭を掻いている。
しかし、被害を被ったのは慎也と良太であった。
関の何気ない一言で、今この瞬間、
神鳴高校三馬鹿トリオが爆誕したのである。
(おぃ、関ぃ・・・・お前なんて事をしてくれたんだ!!
お前が空気読むのが上手くても、今のは無しだろ!!
慎也までならいざ知らず、そこで俺の名前をだすか普通?!
しかも、よりにもよって笹川の目の前で・・・・)
「はぁ、そうそう、その小学生程度の
遊びで良太に今日で3連敗中なのよ」
「だから俺は絶賛、超絶凹みモードよ」
と慎也が元気の無い言葉を吐きだした。
それを聞いた女子達は
「上田君、笑いすぎてごめんね。」
と、慎也に対して次々と謝りだす。
関は自分が悪いことをしたのだと自覚が持てた様で
(すまん!!)
とばかりに良太と慎也に拝み手をしている。
(関の奴、覚えとけよ
いつか同じ様な目に遭わせてやる)
と良太は心の中で思ったのも束の間、
女子達からの追撃があるのではないかと、無性に心配し始めたが
その時には、慎也の言葉で場の空気が変わり、いつものクラスへと戻っていた。
しかし、笹川に対しては状況は何も変わっていない。
今、振り返るのが怖くて出来ない自分がいる。
顔のぞかれた時より鼓動は早く、
気を抜けば気絶するんじゃないかとさえ思えた。
「杉山君?」
「うん。」
一体、何を言われるのか想像すら出来ない。
(神様がいるなら今日のバスの勝ちは譲りますから、時間を戻してください)
と頭が勝手に拝み始める。
「朝から遊べる友達がいて羨ましいね」
予想しない言葉が出てきた。
「えっ?それっ・・・・」
キーンーコーンカーンコーン・・・・
「あっ、朝会始まるね。席に戻らないと」
聞き返そうとした時に朝のチャイムが鳴り、
笹川は急いで席へと戻っていた。
今まで以上に笹川に興味を持ち、
もっと知りたいと思う気持ちを押し殺して
良太も席へと向かっていった。
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