パーティーから追放された中年狙撃手の物語

武田コウ

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 フェアラートは左手に持った大盾をガッチリと前方に突き出し、右手のランスと脇に構えてストーンドラゴンの前に立ちはだかる。




 漆黒の鎧の堂々たる威圧感もあって、その立ち姿はちょっとした要塞のようにも感じられた。




 ストーンドラゴンは立ち上がり、目の前にいるフェアラートにめがけてその前足を叩きつける。




 数トンもの重量のかかったその一撃を、フェアラートは真正面から大盾で受け止めた。衝撃がフェアラートの全身に伝わり筋肉がビキビキと悲鳴を上げる。




「ふんっ!!」




 盾でドラゴンの巨腕を跳ね返すと、大きく踏み込んでその懐に潜り込み、下からドラゴンの腹部目がけてランスを突き上げた。




 生物なら致命傷になりえるその一撃、しかしゴーレムであるストーンドラゴンにはあまり効果が無かったらしい。ぶるりと身を震わせたドラゴンは口を大きく広げて自身の足下にサンダーボルトの魔法を放った。




 フェアラートは咄嗟の判断でパッとランスから手を離すと、ゴロゴロと地面を転げて戦線を離脱。サンダーボルトの効果範囲からギリギリ逃れる事に成功する。




「・・・ふん、おもしろい」






















 フェアラートがドラゴンと戦っている間に、シャルロッテは小走りでアンネの治療を続けるカテリーナの元へ合流。速見もシャルロッテの後を歩いて付いていくのであった。




「遅くなりましたカテリーナさん!」




「いえ、助かったわシャルロッテさん・・・こちらこそすぐ助けに行けなくてごめんなさいね。・・・それで、そちらのお方は?」




 カテリーナが少し遠慮がちに速見の方を見ながら尋ねると、速見は面倒くさそうにボリボリと頭を掻きながら適当に会釈した。




「あーどうも。シャルがお世話になってるみたいですね。俺は・・・まあシャルとマルクの保護者みたいなもんですわ」




「保護者・・・いえ、そうですか。こちらこそ、シャルロッテさんにはいつも助けられています」




 シャルロッテから自身が孤児であった話は聞いていたので、保護者という言葉に引っかかりを覚えたカテリーナだが、シャルロッテ本人が何も言わないので細かい事は聞かないと決めたのだろう。大人の対応でペコリと頭を下げた。




「まあ、挨拶はそれくらいにしてだな・・・しっかしあのドラゴンは強いな。フェアラート一人で十分かと思ってたけど、手助けする必要があるかもだ。・・・シャル、魔法使い的な視点から見てゴーレムとはどう戦うべきだと思う?」




 速見がストーンドラゴンとフェアラートの戦闘を見ながら問いかけると、シャルロッテは少し難しい顔をして答えた。




「うーん。私はゴーレムについて専門に勉強した事が無いから何とも言えないんだけど・・・基本的にはゴーレムにはコアとなるモノが身体のどこかに埋め込まれているから、それを破壊すれば停止するよ。でもそれをピンポイントで探すのは手間だから基本的には手足とかを破壊して動きを止めるのがベストかな」




「まーそれしかねえか。こういう防御が硬い系の相手は苦手なんだがな」




 速見はそう言いながらも背負っていた ”無銘” を構える。




 狙うはストーンドラゴンの前足。




 戦闘中で動き回っているストーンドラゴンに狙いを定め、静かに深呼吸をして集中力を高める。




 一つ、二つ




 引き金を引き絞る。




 放たれた銃弾は的確にストーンドラゴンの右前足を打ち抜くが、ドラゴンは何も問題にせずに活動を続けていた。




「・・・あー、やっぱりか。この弾は貫通力ありすぎて何かを破壊するとか向いてないんだよな」




 そこでふと思い立つ速見。




 この無銘はもともと弓型の魔法武器だったモノ。それが変形してこのライフル銃になったのだ。




 思い出す。




 まだこの ”無銘” が弓だった頃。放った矢を変化させて敵軍を壊滅させた事を。




(もし放つ銃弾の性質すら変化させられるのなら・・・)




 速見はニヤリと笑って再び銃を構えた。

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