パーティーから追放された中年狙撃手の物語

武田コウ

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遺跡の守護者

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 俗に ”北の遺跡” と呼ばれるこの地、極寒のグラキエース大陸における謎多き秘境 ”スフェール遺跡”。




 いつからかそこにあり、長い歴史上その遺跡を攻略した者の話はまるで無い。わずかに生きて逃げ帰ってきた冒険者の話をまとめると、その遺跡には推定でSランクを超える強さのガーディアンが多数闊歩しており、また殺傷力の高い罠に魔王を思わせる守護獣が数匹、決して人の身で攻略できる場所では無いという。




 初めは好奇心に身を任せた若い冒険者が幾たびもその遺跡に足を運んだそうだが、誰一人として戻る者はいなかった。




 いつしかその遺跡は恐れられ、挑む者は誰もいなくなった。




 誰がどういう経緯で作った遺跡かもしれぬまま、北の遺跡は難攻不落の城塞として今も存在し続けている。
























「クソッ! 何で落とし穴が塞がってるんだよ!!」




 女騎士アンネは、塞がった落とし穴の上で悔しそうに床を叩いた。




 ストーンゴーレムを踏破して、ショウとシャルロッテを助けようと落とし穴の場所まで駆け寄ると、いつの間にかその穴は石タイルで塞がれていたのだ。




「いっそ床を破壊して・・・」




 腰の剣に伸ばしかけた手、を側にいたカテリーナが止めた。




「アンネさん、焦るのはわかりますがそれは愚策です。この場所では何が罠のトリガーになるかわかりませんから」




「・・・その通りだ、すまないカテリーナ」




 肩を落とすアンネに、タケルが慰めるように明るい口調で言った。




「なに、二人とも魔王と戦った猛者だからな。そう簡単には死なないだろうさ。だからオイラ達はオイラ達で遺跡の探索を進めとこうぜ」




 そして三人は遺跡の探索を進める。




 先ほどのストーンゴーレムの例もある。斥候役のタケルは罠と敵、両方に注意しながら進んだ。




 それが功を奏したのか、一同は特段罠にかかる事も敵に遭遇する事も無くスムーズに進み、やがて荘厳な装飾が施された金色の扉のある場所にたどり着く。




「・・・この奥に、勇者様のおっしゃっていた宝があるのでしょうか?」




「どうだろうな。普通に考えればこんな豪華な扉なんだ、奥には何かしらあるだろうけど・・・この遺跡の意地の悪い罠を考えると、この扉を開けた先に凶悪な罠があってもオイラは驚かないね」




 カテリーナの言葉に、タケルが眉をひそめて扉を見つめた。




「しかし罠だとしても入らない訳にはいかないだろう? 何せ我々は世界を救うためにこの遺跡に眠る秘宝が必要なのだから」




 アンネの言葉に他の二人も無言で頷く。




 三人を代表してタケルが金色の扉を押すと、荘厳な見た目に似合わず特に抵抗もなく扉はスッと開いた。




 扉の先へ入る。




 真っ暗な室内。




 三人全員が入るとその背後で自動的に扉が閉まった。




「やはり罠か?」




 タケルが周囲を見回すが真っ暗で何も見えない。ごそごそと暗闇の中ポーチをあさり、手探りでマジックアイテムの光源を探していると、突然まばゆい光りが真っ暗な室内を明るく照らし出した。




 どうやらこの部屋の壁には一定の間隔で照明となるような光る石(おそらくはマジックアイテムの類いだろう)がはめ込まれているようで、それが一斉に発光したのだ。




 昼間のような明かりに照らされた室内の中央に、それは静かに鎮座していた。




 石で作られた寝姿のドラゴンの彫刻。そう言った方がわかりやすいだろうか。




 雪原で戦ったスノードラゴンとうり二つなその姿。しかしその身体は先ほどのストーンゴーレムと同質の素材で作られており、一見普通の彫刻のようにも見える。




 しかし石のドラゴンは閉じていた瞳をゆっくりと開くと、その視界に三人を捕らえた。侵入者を撃退せんと立ち上がり、石で出来た肢体をぶるりと振るわせる。




 咆哮




 金属同士をこすり合わせたような耳障りなソレは、生物の出せる声では無く、しかしたしかにドラゴンの咆哮であった。




「来るぞ!?」




 タケルの警告。




 ドラゴンはカッとその巨大なアギトを開いて、恐るべきスピードで三人に向かって突っ込んできた。














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