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家族

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「・・・何だ、久しぶりだなシャル」




 しばらく会っていなかった気恥ずかしさからか、もしくはこんな危険な場所でかつての仲間と再会するという数奇な運命を思っているのか。微妙なやりずらさを表情に出して、シャルロッテとの距離感を計りかねている速見の困り顔を見て、シャルロッテは思わず小さく笑ってしまった。




 暖かい感情が胸に溢れてくる。




 懐かしいその顔。しばらくの年月を経て、少し印象は変わってしまったようだがその深くシワが刻みつけられた強面は変わらない。




 シャルロッテは親のように慕っていた中年男に優しく声をかける。




「ええ、久しぶり。会えて嬉しいわハヤミ」




 彼女の心からの言葉に速見はその強面を緩めて微笑んだ。




 夢の為とはいえ、速見には酷い事をした。それは決して許される事では無いだろう。だけどこんな顔で笑ってくれるのなら、またマルクと速見と三人で笑い合える日が来るのかもしれない。




 シャルロッテはそう感じたのだった。




「しっかしシャル、何でこんな危ない所にいるんだ? 見たところ怪我してるみたいだし・・・マルクも一緒なのか?」




 そう心配そうに問いかけながらスッと回復のポーションを手渡してくれる速見。シャルロッテは速見の口から出た、マルクという名前に少し心が痛むのを感じながらポーションを受け取って一気に飲み干した。




「・・・ハヤミ、実はね」






















「・・・なるほどな。そんな事があったのか」




 速見は自分と二人が別れてからの話を聞いて静かに頷いた。




 シャルロッテは今、あの勇者のパーティに在籍しているという。勇者パーティというのなら、それは冒険者の中でも最高峰Sランクのパーティだ。




 そういう意味ではシャルロッテは自分の夢を叶えたとも言える。祝うべき事だ・・・例えそれがマルクと供に歩めなかったとしても。




 マルクを置いて、自分だけが勇者パーティに入った事に対して負い目があるのだろうか。その事を話すときのシャルロッテはえらく辛そうに見えた。




 全ての話を聞き終えた速見は、シャルロッテの細い肩に手を置いて優しくニコリと微笑む。




「頑張ったんだなシャル・・・マルクと別れて今は辛いだろうがな、人生ってのは長いもんだ。今生の別れってわけでも無いし、また会いに行けばいいさ・・・それにほら、俺ともこうして会えただろう?」




「・・・でもハヤミ、私はアナタにもマルクにもとても酷い事をしてしまったわ」




「俺は気にしてないが・・・まあマルクに謝りたいんならこの遺跡から帰ったらしばらく休みを貰ってマルクに会いに行くといい。・・・俺も一緒に行ってやるからさ」




「・・・本当に? ハヤミも一緒に行ってくれるの?」




 シャルロッテの言葉に深く頷く速見。




「ああ、俺の主様もそれくらいは許してくれるだろうしな・・・まあ、その為にはまずこの遺跡から生きて帰らないといけないわけだが」




 鋭い視線で周囲を見回す速見。




「一人じゃ危険だし、しばらくは俺たちと一緒に行動しようかシャル」




「ええ、お願いするわ。・・・それで、その人は?」




 先ほど自分に向けて矛を向けた、漆黒の鎧を纏った騎士を恐る恐る見るシャルロッテ。




「・・・ああ、コイツは俺の今の職場の後輩ってとこか・・・名前はフェアラートってんだ。お前に危害は加えさせないから安心しろ」




 今の職場・・・。




 そう語る速見には、これ以上聞いて欲しくないという雰囲気があった。




 シャルロッテは速見の服の袖をそっとつかむ。




「・・・ハヤミ、ここから無事に帰ってマルクと会えたなら、その時はアナタの事も聞かせてね?」





















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