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生きる
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死の足音が聞こえる。
ドクドクと流れゆく血の量が、生命の維持を困難にするほどの大怪我だとショウに悟らせていた。
矢に打たれた右腕の感覚が無い。
どうやら鏃にはたっぷりと毒がぬってあったようで、引き抜いた矢からは自身の血の他に緑色の液体がべったり付着していた。
思考が上手く出来ない。
それが出血多量による貧血なのか、それとも矢に塗られた未知の毒物によるものなのか・・・どちらにせよこのままでは死んでしまうという点では同じなのだろう。
ショウはズキズキと痛むが、ギリギリ動く左手を使ってポーチを探り、回復と解毒のポーション瓶を取り出す。
「・・・・・・クソッ」
先ほどの落下の衝撃で割れたのか、ポーチの中は瓶の破片でとんでもない事になっていた。
ショウはポーチに手をつっこんだ時に付着した、色々なポーションが混ざり合った液体をペロリとなめて(プラシーボ効果だろうが少し痛みが薄くなった気がする)フラフラと立ち上がる。
仲間と合流して、カテリーナに治療をしてもらう。
それが今の満身創痍の自分にできる最善の手だろう。ふと頭上の自分の落ちてきた穴を見上げる。
どうやらかなりの高さを落下したらしく、仲間と合流するには別の道を探さなくてはならないようだ。
音が、聞こえた。
サッと視線を音のした方向へ向ける。
落ちてきた獲物を確実に仕留める為なのか、先ほど戦った遺跡のガーディアンであるストーンゴーレムがゆっくりとこちらに近づいてくるのが見えた。
「・・・・・・ハハ」
力ない笑い声をあげるショウ。
不意を突かれたとはいえ、万全の状態でボコボコにされた相手だ。その戦闘力の高さは並じゃ無い。
そんな相手に今の自分は利き腕が動かず、大量の出血と毒によって身体が自由に動かない。ちらりと足下を見ると聖剣が無造作に転がっていた。泥にまみれたその姿に聖剣と呼ばれる神々しさ何て感じられない。
(まるで今の俺みたいだな)
何故か急におかしくなって、小さく笑い声をあげる。
絶望的だ。
この状況から無事に生還できるイメージが全くと言って良いほどわかない。そう、かつて二人の魔王と対峙した時と同じ感覚・・・。
(・・・結局、俺は強くなんてなってないんだな)
魔神を倒すために死にものぐるいで修行した結果がこの様だ。何も変わっていない・・・結局、世界を救うなんて個人には大きする問題なのかもしれない。
ショウは利き腕では無い左手で聖剣を拾い上げた。不格好な動きで剣の切っ先をストーンゴーレムに向ける。
世界なんて救えないのかもしれない。
当たり前だ。
彼は勇者などと呼ばれているが、別に特別な人間なんかじゃない。たまたま神に選ばれただけのごく普通の高校生なのだから。
だからといって此処で死ぬ訳にはいかないのだ。
眼は霞み、利き腕は死に、身体は今にも倒れそうだ。こんな死にかけの凡人に世界なんて救える筈が無くて・・・。
(でも俺には仲間がいる)
世界を救うなんて妄言を吐いた凡人を、ひたすら信じてここまで着いてきてくれた仲間がいるのだ。こんな愚かな男を慕ってくれた優しい奴らが・・・。
「俺は・・・生きる!」
獣のような咆哮をあげる。
身体の底から溢れてくるアドレナリンで痛みは消し飛んだ。ユラユラと左右に不安定に揺れながら左手で聖剣を振り上げて・・・・・・
「・・・はぁ・・・はぁ」
肩で息を切らしながらショウは聖剣を地面に突き立て、ソレを杖代わりにしてかろうじて立っていた。
足下には大破したストーンゴーレムの残骸が散らばっている。
まさに死闘。
命をかけた戦いの勝者と成った勇者は、そっと膝をついた。
気が抜けたのか忘れていた痛みが体中を襲う。凄まじい痛みに顔をしかめながら呼吸を整え・・・何かが近づいてくるような足音が聞こえる。
顔を上げると、正面の通路からこちらに近づいてくる新たなストーンゴーレム。そして右方向と左方向の通路からも別の個体がこちらに近づいてきた。
新たな敵が合計三体。ショウはその顔に薄い笑みを浮かべて立ち上がり、大きく息を吸い込んで大気を振るわすような大声を出した。
「煌めけ・・・・・・”暁の剣”!!!」
刀身が深紅に染まる。
どんな絶望的な状況でも、かならず生きぬいてみせる。
瞳に殺意を漲らせ、ショウは紅色の聖剣を振り上げた。
◇
ドクドクと流れゆく血の量が、生命の維持を困難にするほどの大怪我だとショウに悟らせていた。
矢に打たれた右腕の感覚が無い。
どうやら鏃にはたっぷりと毒がぬってあったようで、引き抜いた矢からは自身の血の他に緑色の液体がべったり付着していた。
思考が上手く出来ない。
それが出血多量による貧血なのか、それとも矢に塗られた未知の毒物によるものなのか・・・どちらにせよこのままでは死んでしまうという点では同じなのだろう。
ショウはズキズキと痛むが、ギリギリ動く左手を使ってポーチを探り、回復と解毒のポーション瓶を取り出す。
「・・・・・・クソッ」
先ほどの落下の衝撃で割れたのか、ポーチの中は瓶の破片でとんでもない事になっていた。
ショウはポーチに手をつっこんだ時に付着した、色々なポーションが混ざり合った液体をペロリとなめて(プラシーボ効果だろうが少し痛みが薄くなった気がする)フラフラと立ち上がる。
仲間と合流して、カテリーナに治療をしてもらう。
それが今の満身創痍の自分にできる最善の手だろう。ふと頭上の自分の落ちてきた穴を見上げる。
どうやらかなりの高さを落下したらしく、仲間と合流するには別の道を探さなくてはならないようだ。
音が、聞こえた。
サッと視線を音のした方向へ向ける。
落ちてきた獲物を確実に仕留める為なのか、先ほど戦った遺跡のガーディアンであるストーンゴーレムがゆっくりとこちらに近づいてくるのが見えた。
「・・・・・・ハハ」
力ない笑い声をあげるショウ。
不意を突かれたとはいえ、万全の状態でボコボコにされた相手だ。その戦闘力の高さは並じゃ無い。
そんな相手に今の自分は利き腕が動かず、大量の出血と毒によって身体が自由に動かない。ちらりと足下を見ると聖剣が無造作に転がっていた。泥にまみれたその姿に聖剣と呼ばれる神々しさ何て感じられない。
(まるで今の俺みたいだな)
何故か急におかしくなって、小さく笑い声をあげる。
絶望的だ。
この状況から無事に生還できるイメージが全くと言って良いほどわかない。そう、かつて二人の魔王と対峙した時と同じ感覚・・・。
(・・・結局、俺は強くなんてなってないんだな)
魔神を倒すために死にものぐるいで修行した結果がこの様だ。何も変わっていない・・・結局、世界を救うなんて個人には大きする問題なのかもしれない。
ショウは利き腕では無い左手で聖剣を拾い上げた。不格好な動きで剣の切っ先をストーンゴーレムに向ける。
世界なんて救えないのかもしれない。
当たり前だ。
彼は勇者などと呼ばれているが、別に特別な人間なんかじゃない。たまたま神に選ばれただけのごく普通の高校生なのだから。
だからといって此処で死ぬ訳にはいかないのだ。
眼は霞み、利き腕は死に、身体は今にも倒れそうだ。こんな死にかけの凡人に世界なんて救える筈が無くて・・・。
(でも俺には仲間がいる)
世界を救うなんて妄言を吐いた凡人を、ひたすら信じてここまで着いてきてくれた仲間がいるのだ。こんな愚かな男を慕ってくれた優しい奴らが・・・。
「俺は・・・生きる!」
獣のような咆哮をあげる。
身体の底から溢れてくるアドレナリンで痛みは消し飛んだ。ユラユラと左右に不安定に揺れながら左手で聖剣を振り上げて・・・・・・
「・・・はぁ・・・はぁ」
肩で息を切らしながらショウは聖剣を地面に突き立て、ソレを杖代わりにしてかろうじて立っていた。
足下には大破したストーンゴーレムの残骸が散らばっている。
まさに死闘。
命をかけた戦いの勝者と成った勇者は、そっと膝をついた。
気が抜けたのか忘れていた痛みが体中を襲う。凄まじい痛みに顔をしかめながら呼吸を整え・・・何かが近づいてくるような足音が聞こえる。
顔を上げると、正面の通路からこちらに近づいてくる新たなストーンゴーレム。そして右方向と左方向の通路からも別の個体がこちらに近づいてきた。
新たな敵が合計三体。ショウはその顔に薄い笑みを浮かべて立ち上がり、大きく息を吸い込んで大気を振るわすような大声を出した。
「煌めけ・・・・・・”暁の剣”!!!」
刀身が深紅に染まる。
どんな絶望的な状況でも、かならず生きぬいてみせる。
瞳に殺意を漲らせ、ショウは紅色の聖剣を振り上げた。
◇
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