パーティーから追放された中年狙撃手の物語

武田コウ

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「・・・シャルか? 何でお前こんな所に」




 速見は戸惑ったような顔をしてシャルロッテに問いかける。




 あのクレアが速見を使いに出すような高難度の遺跡と、速見と別れた頃の駆け出し魔法使いだったシャルロッテがどうしても結びつかなかったのだ。




 そんな中、隣で暗黒騎士のフェアラートが静かにランスを構えるのがわかった。その切っ先は座り込んでいるシャルロッテに向けられている。




(!? コイツまさか・・・)




 考えるよりも先に身体が動いていた。




 速見はできうる限り最速の動きで背負っていた ”無銘” を引き抜いて、その銃口をフェアラートのこめかみに突きつける。その瞳にはかつて無いほどの覇気がこもっていた。




「・・・テメエ、一体何のつもりだフェアラート」




 速見の問いに、しかしフェアラートは銃口を向けられた事を全く気にしている様子も見せずに淡々と答える。




「何、任務の邪魔になりそうな人間がいたので、処分しようと思ったまでの事」




「・・・フェアラート。お前は同じ主人に仕える同士だし、可愛い後輩だ。だがな・・・」




 一拍おいて眼を見開く速見。放たれた言葉には、並々ならぬ殺意が込められていた。




「いいか、一度しか言わないからよく聞け。俺の家族に手ぇ出したらその頭ぶち抜くぞ?」




 その言葉にしばらく考え込むような仕草をみせたフェアラートは、やがて何かを決めたように頷くと構えていた武器を下ろした。




「・・・今回の任務はこの遺跡を攻略せよとのモノ、人間を殺せとは仰せつかっていない。ならばこそ今回は先輩であるアナタの言葉に従おう・・・だがこの事実は後ほど魔神様に報告させて貰うぞ」




 フェアラートの言葉に、速見は獰猛な笑みを見せる。




「ああ、好きにしな」




 そして無銘の銃口を下げると、ゆっくりとシャルロッテのいる場所へと歩み寄るのだった。






























「クソッ! 早く二人を助けに行かねばならないのに・・・」




 アンネはギリリと歯ぎしりをして、目の前のストーンゴーレムを睨み付けた。




 別々の落とし穴に落ちていったショウとシャルロッテ。




 一刻も早く二人を助けに行かなければならないというのに、目の前の敵がそれをさせてくれない。




 修行を積んだショウを不意打ちとはいえ、一方的に追い込んだ相手だ。慎重に戦わねば倒せないのはわかっている。




 しかし仲間を早く助けなければという焦りが、彼女の剣を鈍らせていた。




「落ち着けよ騎士さん。焦ってもコイツは倒せねえ、まずは目の前の敵に集中しろ。それが一番手っ取り早い」




 タケルが苛立つアンネをなだめる。




 シャルロッテとショウが抜けて残りはタケル、アンネ、カテリーナの三人。前衛はアンネとタケルの二人なので二対一の状況だが、遺跡の狭い通路が多対一の利点を奪っていた。




 この狭い通路では二人並んで戦う事は出来ない。必然的に一対一の状況に持ち込まれるのだ。




「騎士さん、オイラなら多少後衛で魔法使いの真似事もできる・・・前衛であの化け物を頼めるかい?」




「お安いご用だ!」




 剣を構えて駆け出すアンネ。その後方でタケルは術を展開する。




「”破魔の法其の二 魔封じの楔”」




 ストーンゴーレムの頭上に三本の紫色に発光する長い杭が出現。一斉にゴーレムの身体を貫いて通路の壁にその巨体を拘束する。




 身動きが取れなくなったゴーレムに駆け寄るアンネ。




 剣を大きく振り上げ、渾身の一撃を叩き込んだ。




「これで、終わりだ!」












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