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罠
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国内最大規模の監獄であるハードシッププリズンにたどり着いたジェームズは、メグの予想が正しかった事を悟る。
無残に破壊された監獄には炎が放たれて、大量の炎と供に煙がモウモウと舞い上がっている。周囲には大量の瓦礫と倒れている職員達の姿。
「・・・なんという事だ」
すぐに倒れている職員の元へかけよって状態を確認するが、既にその職員は息絶えており、体はひどく冷たかった。
ジェームズが静かな怒りに身を振るわせる中、背後から野太い怒鳴り声が鳴り響いた。
「待ってたぜぃヒーロー!」
振り返るとそこに立っていたのは、大量の鉄くずを鎧のようにその身に纏った大柄な男の姿。体に張り付いた鉄くずのせいでその容姿は判別できないが、ジェームズはその男の正体に心当たりがあった。
「お前はまさか、喧嘩屋のクラウス・アーロンか?」
前に同僚のルーカスが逮捕した能力者。
”喧嘩屋” クラウス・アーロン。
周囲にある鉱物をその身に纏い、鎧のようにすることのできる強力な能力を持っているやっかいな犯罪者だ。
「その通り! 喧嘩しようぜヒーロー! 前にガンマスターには負けちまったが・・・今回の俺は前とは一味違う、見ろよこの鎧を!」
そう叫んでバッと両手を大きく広げるクラウス。その体には恐らく元は車の部品であったと予想できる金属片が、鎧を形作っていた。
「今回はコンクリートなんてチンケな鎧じゃねえ! 鋼鉄の鎧だ! これならあのクソッタレなマシンガンも通さねえぜ!」
自信満々な様子でそう叫ぶクラウスに、ジェームズはそっと抱いていた職員の死体を地面に下ろして冷静な瞳で彼を見据えた。
「大層な自身だが・・・今の私は少々気が立っている。大人しく投降するなら危害は加えないが・・・抵抗するなら何時もより手荒になってしまうぞ?」
「舐めんなよヒーロー! この最強の鎧に歯が立つならやってみろ!」
そしてクラウスはジェームズに向かって走り出した。
重い金属を身に纏っている割にその動きは軽やかで、彼の身体能力の高さがうかがえる。
「・・・よろしい。ならばこちらも手加減はすまい」
ジェームズは向かってくるクラウスをひたと見据え、右足をグッと引いて体を半身にして構える。
”爪先の異端者”
能力を発動したジェームズの爪先が硬化される。
周囲の鉱石をその身に纏うクラウスの能力は強力なモノだ。上手く使えば武装した複数の警察を相手にしても勝利できるだけの凶悪さがあるだろう。
・・・しかし何事にも相性というものがあるのだ。
「・・・ぐふぅ!?」
クラウスが苦悶の声を上げる。その腹部にはジェームズのトゥーキックが深々と突きささっていた。
”爪先の異端者”
能力を発動した彼の爪先は ”この世のどんな物質よりも硬くなる”。
あまりのダメージに気を失って倒れるクラウス。能力が強制的に解除され、その姿が顕わになった。
地に伏した喧嘩屋の姿を見下ろしてジェームズは静かに呟く。
「相手が悪かったな喧嘩屋。これはお前が弱かった訳じゃ無い、単なる相性の問題だよ」
無残に破壊された監獄には炎が放たれて、大量の炎と供に煙がモウモウと舞い上がっている。周囲には大量の瓦礫と倒れている職員達の姿。
「・・・なんという事だ」
すぐに倒れている職員の元へかけよって状態を確認するが、既にその職員は息絶えており、体はひどく冷たかった。
ジェームズが静かな怒りに身を振るわせる中、背後から野太い怒鳴り声が鳴り響いた。
「待ってたぜぃヒーロー!」
振り返るとそこに立っていたのは、大量の鉄くずを鎧のようにその身に纏った大柄な男の姿。体に張り付いた鉄くずのせいでその容姿は判別できないが、ジェームズはその男の正体に心当たりがあった。
「お前はまさか、喧嘩屋のクラウス・アーロンか?」
前に同僚のルーカスが逮捕した能力者。
”喧嘩屋” クラウス・アーロン。
周囲にある鉱物をその身に纏い、鎧のようにすることのできる強力な能力を持っているやっかいな犯罪者だ。
「その通り! 喧嘩しようぜヒーロー! 前にガンマスターには負けちまったが・・・今回の俺は前とは一味違う、見ろよこの鎧を!」
そう叫んでバッと両手を大きく広げるクラウス。その体には恐らく元は車の部品であったと予想できる金属片が、鎧を形作っていた。
「今回はコンクリートなんてチンケな鎧じゃねえ! 鋼鉄の鎧だ! これならあのクソッタレなマシンガンも通さねえぜ!」
自信満々な様子でそう叫ぶクラウスに、ジェームズはそっと抱いていた職員の死体を地面に下ろして冷静な瞳で彼を見据えた。
「大層な自身だが・・・今の私は少々気が立っている。大人しく投降するなら危害は加えないが・・・抵抗するなら何時もより手荒になってしまうぞ?」
「舐めんなよヒーロー! この最強の鎧に歯が立つならやってみろ!」
そしてクラウスはジェームズに向かって走り出した。
重い金属を身に纏っている割にその動きは軽やかで、彼の身体能力の高さがうかがえる。
「・・・よろしい。ならばこちらも手加減はすまい」
ジェームズは向かってくるクラウスをひたと見据え、右足をグッと引いて体を半身にして構える。
”爪先の異端者”
能力を発動したジェームズの爪先が硬化される。
周囲の鉱石をその身に纏うクラウスの能力は強力なモノだ。上手く使えば武装した複数の警察を相手にしても勝利できるだけの凶悪さがあるだろう。
・・・しかし何事にも相性というものがあるのだ。
「・・・ぐふぅ!?」
クラウスが苦悶の声を上げる。その腹部にはジェームズのトゥーキックが深々と突きささっていた。
”爪先の異端者”
能力を発動した彼の爪先は ”この世のどんな物質よりも硬くなる”。
あまりのダメージに気を失って倒れるクラウス。能力が強制的に解除され、その姿が顕わになった。
地に伏した喧嘩屋の姿を見下ろしてジェームズは静かに呟く。
「相手が悪かったな喧嘩屋。これはお前が弱かった訳じゃ無い、単なる相性の問題だよ」
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