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「サクセス銀行とクイックリー警備の本社で同時爆破テロが起こっている! さらにその近辺で実行犯であろう凶悪な能力者達が暴れているとの情報も入った。すぐに出動するぞ!」




 ヒーロー部隊のリーダーであるジェームズが険しい顔をして事務室に駆け込んできた。事務室で書類の整理をしていたルーカスはその様子を見て異常事態を察したのかすぐに立ち上がった。




「了解リーダー。で、俺はどこに向かえばいい?」




 現在エマはアイドル活動中でこの場にいない。一応連絡はしておくがこの二人で分断して爆破された二カ所の対処をするしかないだろう。




「ルーカスは銀行に向かってくれ。私はクイックリー警備の本社に向かう」




 その指示に無言で頷くルーカス。二人がすぐに出発しようとしたその時、ジェームズの背後から制止の声がかかった。




「お待ち下さいジェームズさん。一つ気がかりな情報が入りました」




「メグさん・・・しかし今は非常事態で急いでいるのですが」




「それは存じておりますので手短に説明致します。爆破テロが起きた10分後、国内最大規模の監獄であるハードシッププリズンの、警備システムの一部にエラーが生じたとの情報が入ってきております」




「何・・・それはつまり」




「ええ、この二つの爆破は囮の可能性がございます・・・おそらく本命はこの監獄に収容されている犯罪者達の開放かと」




 メグの言葉は推測の域を出ていない。しかしそれは十分にあり得る話しだった。




「む・・・しかし二つの爆破地で暴れている能力者達を野放しにもできないだろう」




 難しい顔をしたジェームズの言葉にメグは優しく微笑んだ。




「ジェームズさんは監獄の方へ向かって下さい・・・私はクイックリー警備の社員ですから断言できます。我が社は凶悪な能力を有する犯罪者への対応も慣れておりますので、優先度は低く見積もっていただいて構いません」




「・・・しかし」




「非常事態ですヒーロー”ミスターT”。何を優先すべきか、判断を誤りませんよう」




 わざわざヒーロー名を持ち出されたジェームズは考えた。今自分が何をすべきで何をしないべきなのか・・・。




「・・・わかりました。では私は監獄へ向かいましょう」




「ご英断です。すぐに移動を開始して下さい。事は一刻を争います。ここにいないエマさんやケイゴさんへの連絡や軍の上層部への報告は私がしておきますので心配なく」




「助かります。では・・・」




 そうして二人のヒーローは急いで現場へと向かった。事務所に残されたメグは誰もいなくなった室内をぐるりと見回して薄らと微笑む。




「さて、お仕事を始めましょうか」




 もちろん他のヒーローや軍の上層部に連絡などしない。メグ・・・否、悪の組織の幹部である ”インビジブル”は軍部の機密情報を盗むための準備を始めるのだった。








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