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復帰
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「お帰りパワー。君をずっと待っていたよ」
薄暗い室内にPC画面の明かりだけがほのかな光源となって周囲を照らしている。安っぽいハロウィンマスクを被ったジョセフは、柔らかな声音で入室してきたパワーにそう言った。
「ただいまボス・・・しっかし全員勢揃いって感じね。今回はまた、何かドデカい事でもやらかすのかしらん?」
パワーはそう言いながらぐるりと室内を見回す。
薄暗い室内の中には数名の人影が思い思いの場所で佇んでいた。それらは皆、この組織の幹部を任せられている人物達だ。
「ああその通りさ。君が回復するのを待っていたんだパワー・・・始めよう、デカい祭りをね」
ジョセフがその言葉を放った瞬間場の空気が変わった。肉食獣が獲物を前にして舌なめずりをしている・・・とでも言えば良いだろうか。その場に集まった幹部達は己の内に秘めている歓喜の感情を隠しきれないようだった。
「デカい祭り・・・滾るわね」
パワーとて例外では無かった。あのジョセフが ”デカい” と表現するほどの事を起こすのだ。一端の悪党であるパワーも滾らない訳にはいかなかった。興奮のあまり唇をペロリと舐めるその姿はまさに獰猛な獣そのものである。
「ここからは俺が説明をする」
そう言って一歩前に出てきたのは、黒色のパーカーを身につけた顔色の悪い男、ソード。彼は他の面々とは違ってあくまでも淡々と事務的にその祭りについての説明を始めた。
「まず手始めに祭りを始める合図としてデカい花火を上げる。場所は都心部の銀行と・・・このビル、クイックリー警備の本社だ」
「あら? わざわざ自分たちの拠点を爆破するの?」
不思議そうに質問するパワーにソードは頷く。
「ああ、ここなら爆弾を設置する手間がかからないし、前の襲撃事件もあるから警察側やヒーローもすぐに飛んでくるだろう。同時に銀行も爆破するのは敵の戦力を分散させるのが狙いだ」
「なるほどね・・・でもそれで終わりじゃないんでしょ?」
「もちろんだ。この二つの爆破で警察の人員はかなり裂かれると思っていい・・・その警備が手薄になった瞬間を狙って監獄から犯罪者たちを解放する」
ヒュウと誰かが口笛を吹いた。
「それでぇ? オレたちは何をすればいいんだい?」
ねばついた耳に残るような独特の声で話すのは、だらりと脱力して壁にもたれかかっていたソフトモヒカンの男。顔には大きな傷跡が刻まれている。
「ハンマー、お前はクイックと組んで銀行の前で暴れてくれ。すぐにヒーローが来る筈だからその足止めを頼む」
「はいよぉ。一緒に頑張ろうぜぃクイック」
顔に傷のある男・・・ハンマーは陽気な様子で隣に立っていた男の肩を叩いた。派手な金色のスーツに紫色の髪、目には炎を象ったタトゥー。クイックこと麻薬王セルジオ・バレンタインは、面白くなさそうな顔をしてフンと鼻で笑う。
「パワーはこのビルを担当してくれ。部下を何人かつけよう。そして俺はその隙に監獄へと向かう」
「了解よ。任せて」
皆が自分の役割を把握した後、椅子にかけていたジョセフが立ち上がった。
「さて、今回の祭りだが・・・成功の鍵を握るキーパーソンは君だよインビジブル。うまく事を運んでくれ給え」
ジョセフにインビジブルと呼ばれたのは、ソードの側に控えていた一人の女性だった。
その豊満な肉体をタイトなビジネススーツに包み、知的なノーフレームの眼鏡がキラリと光っている。
インビジブル・・・メグ・アストゥートはニコリと妖艶な笑みを浮かべた。
「お任せ下さいボス。必ずや成功させて見せますわ」
◇
薄暗い室内にPC画面の明かりだけがほのかな光源となって周囲を照らしている。安っぽいハロウィンマスクを被ったジョセフは、柔らかな声音で入室してきたパワーにそう言った。
「ただいまボス・・・しっかし全員勢揃いって感じね。今回はまた、何かドデカい事でもやらかすのかしらん?」
パワーはそう言いながらぐるりと室内を見回す。
薄暗い室内の中には数名の人影が思い思いの場所で佇んでいた。それらは皆、この組織の幹部を任せられている人物達だ。
「ああその通りさ。君が回復するのを待っていたんだパワー・・・始めよう、デカい祭りをね」
ジョセフがその言葉を放った瞬間場の空気が変わった。肉食獣が獲物を前にして舌なめずりをしている・・・とでも言えば良いだろうか。その場に集まった幹部達は己の内に秘めている歓喜の感情を隠しきれないようだった。
「デカい祭り・・・滾るわね」
パワーとて例外では無かった。あのジョセフが ”デカい” と表現するほどの事を起こすのだ。一端の悪党であるパワーも滾らない訳にはいかなかった。興奮のあまり唇をペロリと舐めるその姿はまさに獰猛な獣そのものである。
「ここからは俺が説明をする」
そう言って一歩前に出てきたのは、黒色のパーカーを身につけた顔色の悪い男、ソード。彼は他の面々とは違ってあくまでも淡々と事務的にその祭りについての説明を始めた。
「まず手始めに祭りを始める合図としてデカい花火を上げる。場所は都心部の銀行と・・・このビル、クイックリー警備の本社だ」
「あら? わざわざ自分たちの拠点を爆破するの?」
不思議そうに質問するパワーにソードは頷く。
「ああ、ここなら爆弾を設置する手間がかからないし、前の襲撃事件もあるから警察側やヒーローもすぐに飛んでくるだろう。同時に銀行も爆破するのは敵の戦力を分散させるのが狙いだ」
「なるほどね・・・でもそれで終わりじゃないんでしょ?」
「もちろんだ。この二つの爆破で警察の人員はかなり裂かれると思っていい・・・その警備が手薄になった瞬間を狙って監獄から犯罪者たちを解放する」
ヒュウと誰かが口笛を吹いた。
「それでぇ? オレたちは何をすればいいんだい?」
ねばついた耳に残るような独特の声で話すのは、だらりと脱力して壁にもたれかかっていたソフトモヒカンの男。顔には大きな傷跡が刻まれている。
「ハンマー、お前はクイックと組んで銀行の前で暴れてくれ。すぐにヒーローが来る筈だからその足止めを頼む」
「はいよぉ。一緒に頑張ろうぜぃクイック」
顔に傷のある男・・・ハンマーは陽気な様子で隣に立っていた男の肩を叩いた。派手な金色のスーツに紫色の髪、目には炎を象ったタトゥー。クイックこと麻薬王セルジオ・バレンタインは、面白くなさそうな顔をしてフンと鼻で笑う。
「パワーはこのビルを担当してくれ。部下を何人かつけよう。そして俺はその隙に監獄へと向かう」
「了解よ。任せて」
皆が自分の役割を把握した後、椅子にかけていたジョセフが立ち上がった。
「さて、今回の祭りだが・・・成功の鍵を握るキーパーソンは君だよインビジブル。うまく事を運んでくれ給え」
ジョセフにインビジブルと呼ばれたのは、ソードの側に控えていた一人の女性だった。
その豊満な肉体をタイトなビジネススーツに包み、知的なノーフレームの眼鏡がキラリと光っている。
インビジブル・・・メグ・アストゥートはニコリと妖艶な笑みを浮かべた。
「お任せ下さいボス。必ずや成功させて見せますわ」
◇
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