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ガン・マスター

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ルーカスは宙に手をかざして能力を発動する。




 次の瞬間、ルーカスの右手が何も無い空間から一丁の重機関銃と区分される大型のマシンガンを取り出した。




「何だ・・・そりゃ?」




 相対したクラウスが呆気にとられたような声をあげる。




 無理も無いことだ。




 いくら超能力が跋扈する時代だとはいえ、あまりにも非現実的すぎる光景である。







”孤独の部隊”(ロンリネスフォース)







 ルーカスの能力は総重量100キロまでの銃器を収納できる異空間を作り出すというものだ。




 モノを収納できる空間とは一見万能な能力に思えるが、この空間に収納できるのは銃器と銃弾のみである。故にこの能力は敵を殲滅するというヒーローにあるまじき物騒な用途に特化している。




「そんな大層な鎧を身に付けてんだ・・・思い切り行くが、死んでくれるなよ?」




 次の瞬間、マシンガンが火を噴いた。




 連続して放たれる大型の銃弾とカンカンと甲高い音を立てて地面に落ちていく空薬莢の音。鼻をつく硝煙の臭いが周囲に充満した。




「お・・・オォオオオ!?」




 分厚い石の鎧は一発や二発の弾丸で壊れるような代物では無い。しかしそれが50発ならどうだろう?




 100発なら?




 連続で放たれるマシンガンの弾が少しずつクラウスの鎧を削っていく。その衝撃が強すぎて身動きを取ることができない。




 クラウスはただ撃たれるがままにマシンガンの弾が尽きるまでその銃弾の雨を受け続ける事しか出来なかった。




 どれだけの銃弾が放たれたのだろうか?




 やがて全ての弾が尽きてやっと銃撃の雨が止まった。舞い上がる土煙が晴れてくると鎧の大部分が破損したクラウスが片膝をついているのが見える。




「おう生きてたか喧嘩自慢。流石に頑丈だな」




 ルーカスの言葉にしかしクラウスはダメージを受けすぎて皮肉すら返す余裕が無かった。ぜいぜいと肩で息をするクラウスにルーカスはゆっくりと歩み寄った。




「嬢ちゃん、警察に連絡は?」




「先ほど済ませましたのですぐに来ると思います」




「おう。来たらコイツを引き渡さないとな」




 そんな余裕の会話をしながら近づいてくる二人を、クラウスはキッと眼を見開いて睨み付けた。




「勝ち誇ってんじゃねえよヒーロー・・・まだ喧嘩は終わってねえだろうが!」




 そう言ってフラフラと立ち上がるクラウス。しかし彼の身を覆っていた壊れかけの鎧は力なくバラバラと崩壊して地に落ちた。




「無理すんなよ喧嘩屋。軽いダメージじゃ無いはずだ・・・お前だって喧嘩で死にたくは無いだろう?」




 ルーカスの言葉にクラウスは口の端を皮肉げにつり上げて笑う。




「わかってねえなヒーロー様はよ。どうせ死ぬなら喧嘩で華々しくってのが漢のロマンだろうがよ!」




 銃弾は全て石の鎧で防いでいるが、それでも衝撃を完全に殺せるわけでは無い。クラウスが負ったダメージは見た目よりも大きく、それ故に能力も発動できない状況だ。




 しかしそれがどうだというのだろうか?




 そもそも喧嘩なんてその身一つで行うモノだ。




 己の拳さえ握れるのなら喧嘩はできるのだから。




「行くぜオラァ!」




 クラウスはボロボロの拳を振り上げてルーカスに詰めよった。流石にこの状態の男に銃器を使う気にもなれずに素手で迎撃をしようと構えるルーカス。しかしその隣から翼を広げたエマが猛スピードで通り過ぎていった。




 翼を羽ばたかせた推進力を利用して一気にクラウスとの距離を詰めたエマ。腰元からスタンバトンを取り出すと手元のスイッチをオンにしてバトンをクラウスの体に叩きつける。




 鎧も身にまとえぬクラウスにその攻撃を防ぐ術は無く、その一撃で体はしびれて動けなくなった。




 一瞬で手負いのクラウスを無力化したエマはくるりと振り返ると笑顔でルーカスに向き直る。




「凄いですねこの武器、こんなに簡単に制圧できるとは思いませんでした」











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