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ルーカスとバディを組んだ任務の初日。エマが彼に連れられて来たのはヒーローが拠点としている基地から少し離れた場所にある軍の施設であった。
もちろん始めてはいる場所だ。ルーカスにこれから何をするのか聞かされていないエマは施設のゲートをくぐった後、キョロキョロと周囲を見回した。
どうやら此処は軍の射撃訓練場らしく、目の前には人型の的を目がけて銃を構えている軍人が数人、壁にはあらゆる種類の銃が収納された棚が所狭しと並んでいる。
「こっちだ、ついてきな」
ルーカスに連れられてエマは奥の部屋に入る。その部屋はこの施設の他の場所とは少し赴きが違うようで、警棒やスタンガンなど所謂非殺傷武器と呼ばれる武器が並んでいた。
「今回は嬢ちゃんの装備を整えに来たんだ」
「私の装備・・・ですか?」
エマの質問にルーカスは棚から武器を物色しながら答える。
「ああ、勝手に前の任務での戦闘シーンを銀行の監視カメラの映像で確認したんだが・・・どうも嬢ちゃんの戦闘スタイルの弱点は火力不足にあると思ったんでね。リーダーのように地道に身体を鍛えて火力を上げるのも悪くは無いが時間がかかりすぎる。あれだけ機動力があるんだ、装備を整えれば一気に化けると思うぜ」
「・・・なるほど確かにその通りですね。今までマーシャルアーツは習っていたのですが軍に所属していた訳ではありませんので武器を持つという発想がありませんでした」
「普通はそうだろうよ。ケイゴが特殊なだけだ。アイツ初めから木刀なんて持ってきたからな? まあそういう特殊な事例は置いといて、嬢ちゃんみたいに武器の素人に銃器なんて持たせたら危ない。民間人に被害がでかねないだけじゃなくて犯人に危害を加えすぎる危険もあるんだ・・・だからこその非殺傷武器なのさ」
そう説明しながら物色を続けていたルーカスだが、何かお眼鏡にかなうものがあったのか手を止めてしばらく考えてからエマに声をかけた。
「嬢ちゃん、これなんてどうだい?」
渡されたのは一見普通の警棒に見えた。しげしげと眺めると手元にスイッチがついているのがわかる。
「ソイツが所謂スタンバトンって奴だ、まあスタンガンを内蔵した警棒だな。ノーマルの警棒と違って訓練をしていなくてもそこそこの戦果が期待できる。押しつければいいだけだし力もいらないから女性用の護身グッズとしても使われてるな。嬢ちゃんの機動力と合わせれば面白い事になるんじゃないか?」
確かにルーカスの言う通りだった。
エマはそっとスタンバトンのスイッチをオンにする。バチバチと薄くスパークがかかった刀身部分がやけに頼もしく見えた。
「ありがとうございますルーカスさん」
「良いって事よ。それじゃ行こうか」
「どこへ行くのですか?」
どうやらルーカスという男はこちらから聞かないと行き先を語らない男らしい。エマの質問にルーカスは口を開いた。
「パトロールさ、ヒーローのお仕事って奴だよ」
もちろん始めてはいる場所だ。ルーカスにこれから何をするのか聞かされていないエマは施設のゲートをくぐった後、キョロキョロと周囲を見回した。
どうやら此処は軍の射撃訓練場らしく、目の前には人型の的を目がけて銃を構えている軍人が数人、壁にはあらゆる種類の銃が収納された棚が所狭しと並んでいる。
「こっちだ、ついてきな」
ルーカスに連れられてエマは奥の部屋に入る。その部屋はこの施設の他の場所とは少し赴きが違うようで、警棒やスタンガンなど所謂非殺傷武器と呼ばれる武器が並んでいた。
「今回は嬢ちゃんの装備を整えに来たんだ」
「私の装備・・・ですか?」
エマの質問にルーカスは棚から武器を物色しながら答える。
「ああ、勝手に前の任務での戦闘シーンを銀行の監視カメラの映像で確認したんだが・・・どうも嬢ちゃんの戦闘スタイルの弱点は火力不足にあると思ったんでね。リーダーのように地道に身体を鍛えて火力を上げるのも悪くは無いが時間がかかりすぎる。あれだけ機動力があるんだ、装備を整えれば一気に化けると思うぜ」
「・・・なるほど確かにその通りですね。今までマーシャルアーツは習っていたのですが軍に所属していた訳ではありませんので武器を持つという発想がありませんでした」
「普通はそうだろうよ。ケイゴが特殊なだけだ。アイツ初めから木刀なんて持ってきたからな? まあそういう特殊な事例は置いといて、嬢ちゃんみたいに武器の素人に銃器なんて持たせたら危ない。民間人に被害がでかねないだけじゃなくて犯人に危害を加えすぎる危険もあるんだ・・・だからこその非殺傷武器なのさ」
そう説明しながら物色を続けていたルーカスだが、何かお眼鏡にかなうものがあったのか手を止めてしばらく考えてからエマに声をかけた。
「嬢ちゃん、これなんてどうだい?」
渡されたのは一見普通の警棒に見えた。しげしげと眺めると手元にスイッチがついているのがわかる。
「ソイツが所謂スタンバトンって奴だ、まあスタンガンを内蔵した警棒だな。ノーマルの警棒と違って訓練をしていなくてもそこそこの戦果が期待できる。押しつければいいだけだし力もいらないから女性用の護身グッズとしても使われてるな。嬢ちゃんの機動力と合わせれば面白い事になるんじゃないか?」
確かにルーカスの言う通りだった。
エマはそっとスタンバトンのスイッチをオンにする。バチバチと薄くスパークがかかった刀身部分がやけに頼もしく見えた。
「ありがとうございますルーカスさん」
「良いって事よ。それじゃ行こうか」
「どこへ行くのですか?」
どうやらルーカスという男はこちらから聞かないと行き先を語らない男らしい。エマの質問にルーカスは口を開いた。
「パトロールさ、ヒーローのお仕事って奴だよ」
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