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第二話 レッドピンチ 驚異の女幹部レディスコルピオン

ヴァレリーの苛立ちと増援

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「畜生! ギアレッドめ!」

 退却したヴァレリーは拠点に戻ると地団駄踏んで悔しがった。

「ドクター討伐どころか、実験体、戦闘員の補充もままならないじゃない」

 戦闘員の補充も洗脳改造の対象となる人間を捕まえる事が出来なければ不可能。
 度重なる敗北で減っている戦闘員を増やすことが出来ない。

「なんで、あんなちんちくりんに、この私がここまでコケにされなくちゃいけないの」

 自分より小柄で小さいレッドに負け続けることに対してバレリーは憤りを感じていた。
 だがヴァレリーの焦りはそれだけではなかった。
 突如通信機から流れるコール音にヴァレリーは凍り付き、背筋に滝のような冷汗が流れた。

「……」

 出たくはない。
 だが出なければ、それこそ粛清されてしまう。

「……くっ!」

 決死の覚悟を決めて、ヴァレリーは通信機に応答した。

「首領様、ヴァンガード様、ヴァレリーにございます」

 ヴァンガード。
 秘密結社アセンデッドの首領であり、絶対独裁者だ。
 ヴァレリーの生殺与奪も握られており服従するしかない。
 しかもヴァンガードは失敗に対しては厳しい。
 今回の失敗も含め、ヴァレリーのこれまでの失敗は全て報告されており、ごまかすことはできない。
 ヴァレリーは、ひたすら謝るしかなかった。

『良い。まさか、ドクターにレッドが強化されているとは予想外だったからな』

「あ、ありがとうございます」

 予想外に理解を示した首領にヴァレリーは戸惑いつつも感謝する。
 しかし、安堵できたのは、そこまでだった

『ヴァレリーだけに任せるのは酷だな 援軍を出そう』

「援軍ですか」

 秘密結社アセンデッドは首領の下に複数の幹部がいる。
 一応、序列はある。
 だが同時にライバル同士であり、序列を上げようと、あるいは上位を蹴落とそうとしている。
 援軍を送るとなれば、そんな幹部、ライバルの中から選ばれる。
 つまり、ライバルがやってきて自分の失態を挽回し、手柄をさらっていくのだ。
 そんなことは勘弁願いたい。
 しかし、ヴァレリーがレッドに勝てていないのも事実だ。

『私の判断に異議を唱えるのか』

「いえ、そのようなことはありません」

 しかも首領ヴァンガードからの命令である。
 断ることはできない。
 なのでヴァレリーは受け入れざるを得なかった。

「それで誰を援軍に出してくださるのでしょうか?」

『レディスコルピオンだ。報告書を読む限り奴ならレッドにも対抗できるだろう』

「レ、レディスコルピオンですか」

 ヴァレリーは驚いた。

「確かに勝てるでしょうが……」
『不満か』

「いえ! そのようなことは」

『では直ちにレディスコルピオンと合流せよ。そしてレッドを倒せ』

「分かりました。必ずやレディスコルピオンと共にレッドを倒して見せます』

『期待しているぞ』

 そこで通信は切れた。

「はあ」

 ヴァレリーは、ため息をつく。

「レディスコルピオンか」

 確かに 能力的にはレッドにも対抗できるだろう。
 だがライバルである上に傲慢な性格でヴァレリーとは特にソリが合わない。
 そんなやつに助けられるのは腹が立つ。

「でも勝てるとは限らないのよね」

 確かに現状、レディスコルピオンとレッドが戦えばレディスコルピオンが有利だろう。
 しかし、レッドにはドクターがいる。
 何らかの支援を受けてレディスコルピオンを上回る事が出来るかもしれない。
 もし、レディスコルピオンがレッドを追い詰め相打ちに、あるいは深手を負って倒されたなら。
 レディスコルピオンの跡を自分が占めることができる。

「まあ、お手並み拝見ね」

 そう言うとヴァレリーは早速 レディースコルピオンと合流することにした。
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