1 / 2
クッキーの味見
しおりを挟む
天宮神社の社務所の裏にある一刀達の家。その台所の一角に玉兎は立っていた。
いつものバニーガール姿ではなく室内着にエプロンというラフな格好だ。
一刀と雅も同じように室内着にエプロンという姿で玉兎の前に立ち、その時を待つ。
「出来たのじゃ!」
電子レンジがチンと鳴って玉兎は歓声の声を上げると共に扉を開く。
中からは熱気と共に甘い香りが漂ってくる。
「慌てるなよ。火傷するぞ」
玉兎が興奮のあまり手で触れないように一刀は間に入って、器具を使ってクッキーの載った鉄板を取り出す。
鉄板の上には一刀、雅そして玉兎が作ったクッキーが焼き上がっていた。
「美味しそうじゃ」
「まあ、クッキーは簡単にできるからな。しかし、一から作り出すなんて」
「したかったのじゃよ。学校では自分で作った生地を使えなかったのじゃ」
学校の調理実習だと生地を寝かせている間授業が中断してしまうし時間が無い。そのため前の時間に別のクラスが作った生地を利用して行う。
そのことが心残りだった玉兎は最初から自分で作ったクッキーを作りたいと言って来て家で作ることになった。
「ふふ、玉兎も案外子供なのね」
一緒に作っていた雅が微笑ましく笑う。
「うむ、其方と雅と一緒に暮らし始めてからまだ間もない。三人での思い出が少ないので少しでも多くのイベントを作りたいのじゃ」
玉兎の屈託のない言葉に一刀と雅は頬を赤くする。
いつも傲岸不敵な笑みを浮かべ見下すような態度なのに、ここ最近は二人に対して甘えるような仕草をする。
二人と一緒に生活するのが好きなようだ。
「ほれ、其方よ、食べてみよ」
少し冷めて手で持てるようになったクッキーを玉兎は摘まむと一刀に向けて差し出した。
「いや、自分で食べるよ」
「ほれっ」
遠慮して自分で取ろうとした一刀に対して玉兎はクッキーを突きつけるように差し出す。有無を言わず食べよという意志が、玉兎の瞳に強く輝く。
段々と眉間の眉の間隔が狭まりつつある。
その迫力に一刀は抵抗出来ず、口を開けてクッキーを半分ほど囓って食べた。
「うん、美味しい」
焼きたての香ばしい香りと甘さが口の中に広がり、一刀は顔をほころばせた。
料理をするのは良いものだ。
「残りも食べるのじゃ」
玉兎は手に残った部分を差し出して食べるように促した。
しかしクッキーの部分は少なくこのままでは玉兎の指まで食べてしまいそうだった。
だから一刀はクッキーの箸を摘まむように噛んで引っ張り出そうと口を開きクッキーに近づける。
その瞬間、玉兎は手を前に動かして指ごとクッキーを一刀の口の中に入れた。
そして指を動かしてクッキーを一刀の歯に押し付けて砕き、食べさせた。
そこまでにする予定だったが、口の中の感触が蠱惑的で玉兎は指を動かして上顎を撫でたり舌を絡ませたり、挟んだりして、一刀の中を堪能する。
指をぬくとき丹念にクッキーの欠片を舐め取る一刀の舌が玉兎には名残惜しかった。
「うむ」
涎で光る自分の指を自分の唇に当ててその感触を玉兎は楽しんだ。
その仕草に一刀はドキリとする。
雅と一刀が昔からの幼馴染みで、まだ家に馴染まない一刀に雅が料理を箸で摘まんで差し出した、いわゆる<あーん>をして一刀と心を通わせた、と。
その話しを聞いた玉兎は羨ましくなり自分でもして見たかった。
今日、クッキーを作りたいと言ったのは玉兎自らの手で一刀に食べさせるためだった。
その時玉兎は悪戯心で一刀の口の中に指を入れる事を思いつき、実行したが中々良かった。
色々と試してみるものだ、と玉兎は思った。
「むーう」
だが雅にはそれが面白くなかった。
確かに玉兎から料理の相談を持ちかけられていて、お膳立てはした。しかし指まで入れるのは聞いていない。この時思いついて試しにやってみただけだったのだが、普段の言動から雅は玉兎が最初から企んでいたと思い込んでしまった。
玉兎は大切な存在だが、一刀を譲るつもりは無かった。
二人で愛する事は決めているが、独占させるつもりはない。
だから雅は鉄板の上のクッキーを一つつまみ上げると一刀に声を掛けた。
「一刀」
玉兎の好意に放心状態だった一刀を振り向かせると、目の前で持っていたクッキーを口に咥えて一刀に向かって突き出す。
「!」
雅の今まで行ったことのない行為に一刀は驚いた。
普段大人しい雅では考えられない。
だが、雅は元から情熱的で子供っぽい所がある。
学校で玉兎に意識を乗っ取られたとき、一刀にクッキーを口で咥えて差し出しキスをしたという話を聞いて雅は強い嫉妬心を抱いていた。
自分が行うのは勇気が無かったが、いま玉兎が一刀に行った行為を見て自分もと思い、実行に移した。
一刀は戸惑った。
だが思い詰めたような表情と、受け容れて欲しいと懇願する表情が混ざって、潤んだ瞳で雅に見つめられると拒むことは出来なかった。
一刀は差し出されたクッキーを口に入れてそのままキスをした。
かみ砕いたクッキーの甘い香りと共に雅の舌が入ってくる。
口の中に付いたクッキーの欠片を取り除くように雅の舌は一刀の口の中を丹念に舐め上げて行く。
雅の体液と混ざったクッキーはより甘くより香ばしくなり、一刀は少しずつ飲み込んでゆく。
「ぷはっ」
長いキスの後、ようやく二人の唇は離れた。
雅はようやく自分の望みを叶えた満足感と達成感の快感に酔ったが、直ぐに冷めて羞恥心が広がり、顔を真っ赤に染める。
「部屋に戻ってクッキーを食すとしよう」
玉兎がそう言っていなければ、二人は何時までも台所で立ち尽くしていただろう。
いつものバニーガール姿ではなく室内着にエプロンというラフな格好だ。
一刀と雅も同じように室内着にエプロンという姿で玉兎の前に立ち、その時を待つ。
「出来たのじゃ!」
電子レンジがチンと鳴って玉兎は歓声の声を上げると共に扉を開く。
中からは熱気と共に甘い香りが漂ってくる。
「慌てるなよ。火傷するぞ」
玉兎が興奮のあまり手で触れないように一刀は間に入って、器具を使ってクッキーの載った鉄板を取り出す。
鉄板の上には一刀、雅そして玉兎が作ったクッキーが焼き上がっていた。
「美味しそうじゃ」
「まあ、クッキーは簡単にできるからな。しかし、一から作り出すなんて」
「したかったのじゃよ。学校では自分で作った生地を使えなかったのじゃ」
学校の調理実習だと生地を寝かせている間授業が中断してしまうし時間が無い。そのため前の時間に別のクラスが作った生地を利用して行う。
そのことが心残りだった玉兎は最初から自分で作ったクッキーを作りたいと言って来て家で作ることになった。
「ふふ、玉兎も案外子供なのね」
一緒に作っていた雅が微笑ましく笑う。
「うむ、其方と雅と一緒に暮らし始めてからまだ間もない。三人での思い出が少ないので少しでも多くのイベントを作りたいのじゃ」
玉兎の屈託のない言葉に一刀と雅は頬を赤くする。
いつも傲岸不敵な笑みを浮かべ見下すような態度なのに、ここ最近は二人に対して甘えるような仕草をする。
二人と一緒に生活するのが好きなようだ。
「ほれ、其方よ、食べてみよ」
少し冷めて手で持てるようになったクッキーを玉兎は摘まむと一刀に向けて差し出した。
「いや、自分で食べるよ」
「ほれっ」
遠慮して自分で取ろうとした一刀に対して玉兎はクッキーを突きつけるように差し出す。有無を言わず食べよという意志が、玉兎の瞳に強く輝く。
段々と眉間の眉の間隔が狭まりつつある。
その迫力に一刀は抵抗出来ず、口を開けてクッキーを半分ほど囓って食べた。
「うん、美味しい」
焼きたての香ばしい香りと甘さが口の中に広がり、一刀は顔をほころばせた。
料理をするのは良いものだ。
「残りも食べるのじゃ」
玉兎は手に残った部分を差し出して食べるように促した。
しかしクッキーの部分は少なくこのままでは玉兎の指まで食べてしまいそうだった。
だから一刀はクッキーの箸を摘まむように噛んで引っ張り出そうと口を開きクッキーに近づける。
その瞬間、玉兎は手を前に動かして指ごとクッキーを一刀の口の中に入れた。
そして指を動かしてクッキーを一刀の歯に押し付けて砕き、食べさせた。
そこまでにする予定だったが、口の中の感触が蠱惑的で玉兎は指を動かして上顎を撫でたり舌を絡ませたり、挟んだりして、一刀の中を堪能する。
指をぬくとき丹念にクッキーの欠片を舐め取る一刀の舌が玉兎には名残惜しかった。
「うむ」
涎で光る自分の指を自分の唇に当ててその感触を玉兎は楽しんだ。
その仕草に一刀はドキリとする。
雅と一刀が昔からの幼馴染みで、まだ家に馴染まない一刀に雅が料理を箸で摘まんで差し出した、いわゆる<あーん>をして一刀と心を通わせた、と。
その話しを聞いた玉兎は羨ましくなり自分でもして見たかった。
今日、クッキーを作りたいと言ったのは玉兎自らの手で一刀に食べさせるためだった。
その時玉兎は悪戯心で一刀の口の中に指を入れる事を思いつき、実行したが中々良かった。
色々と試してみるものだ、と玉兎は思った。
「むーう」
だが雅にはそれが面白くなかった。
確かに玉兎から料理の相談を持ちかけられていて、お膳立てはした。しかし指まで入れるのは聞いていない。この時思いついて試しにやってみただけだったのだが、普段の言動から雅は玉兎が最初から企んでいたと思い込んでしまった。
玉兎は大切な存在だが、一刀を譲るつもりは無かった。
二人で愛する事は決めているが、独占させるつもりはない。
だから雅は鉄板の上のクッキーを一つつまみ上げると一刀に声を掛けた。
「一刀」
玉兎の好意に放心状態だった一刀を振り向かせると、目の前で持っていたクッキーを口に咥えて一刀に向かって突き出す。
「!」
雅の今まで行ったことのない行為に一刀は驚いた。
普段大人しい雅では考えられない。
だが、雅は元から情熱的で子供っぽい所がある。
学校で玉兎に意識を乗っ取られたとき、一刀にクッキーを口で咥えて差し出しキスをしたという話を聞いて雅は強い嫉妬心を抱いていた。
自分が行うのは勇気が無かったが、いま玉兎が一刀に行った行為を見て自分もと思い、実行に移した。
一刀は戸惑った。
だが思い詰めたような表情と、受け容れて欲しいと懇願する表情が混ざって、潤んだ瞳で雅に見つめられると拒むことは出来なかった。
一刀は差し出されたクッキーを口に入れてそのままキスをした。
かみ砕いたクッキーの甘い香りと共に雅の舌が入ってくる。
口の中に付いたクッキーの欠片を取り除くように雅の舌は一刀の口の中を丹念に舐め上げて行く。
雅の体液と混ざったクッキーはより甘くより香ばしくなり、一刀は少しずつ飲み込んでゆく。
「ぷはっ」
長いキスの後、ようやく二人の唇は離れた。
雅はようやく自分の望みを叶えた満足感と達成感の快感に酔ったが、直ぐに冷めて羞恥心が広がり、顔を真っ赤に染める。
「部屋に戻ってクッキーを食すとしよう」
玉兎がそう言っていなければ、二人は何時までも台所で立ち尽くしていただろう。
1
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。

一年で死ぬなら
朝山みどり
恋愛
一族のお食事会の主な話題はクレアをばかにする事と同じ年のいとこを褒めることだった。
理不尽と思いながらもクレアはじっと下を向いていた。
そんなある日、体の不調が続いたクレアは医者に行った。
そこでクレアは心臓が弱っていて、余命一年とわかった。
一年、我慢しても一年。好きにしても一年。吹っ切れたクレアは・・・・・

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です

婚約者が巨乳好きだと知ったので、お義兄様に胸を大きくしてもらいます。
鯖
恋愛
可憐な見た目とは裏腹に、突っ走りがちな令嬢のパトリシア。婚約者のフィリップが、巨乳じゃないと女として見れない、と話しているのを聞いてしまう。
パトリシアは、小さい頃に両親を亡くし、母の弟である伯爵家で、本当の娘の様に育てられた。お世話になった家族の為にも、幸せな結婚生活を送らねばならないと、兄の様に慕っているアレックスに、あるお願いをしに行く。


淡泊早漏王子と嫁き遅れ姫
梅乃なごみ
恋愛
小国の姫・リリィは婚約者の王子が超淡泊で早漏であることに悩んでいた。
それは好きでもない自分を義務感から抱いているからだと気付いたリリィは『超強力な精力剤』を王子に飲ませることに。
飲ませることには成功したものの、思っていたより効果がでてしまって……!?
※この作品は『すなもり共通プロット企画』参加作品であり、提供されたプロットで創作した作品です。
★他サイトからの転載てす★

【R18】深層のご令嬢は、婚約破棄して愛しのお兄様に花弁を散らされる
奏音 美都
恋愛
バトワール財閥の令嬢であるクリスティーナは血の繋がらない兄、ウィンストンを密かに慕っていた。だが、貴族院議員であり、ノルウェールズ侯爵家の三男であるコンラッドとの婚姻話が持ち上がり、バトワール財閥、ひいては会社の経営に携わる兄のために、お見合いを受ける覚悟をする。
だが、今目の前では兄のウィンストンに迫られていた。
「ノルウェールズ侯爵の御曹司とのお見合いが決まったって聞いたんだが、本当なのか?」」
どう尋ねる兄の真意は……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる